TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2014.10.20

法人税の所得計算の基本構造

第1回 益金の額

株式会社TKC 顧問 税理士 朝長 英樹

株式会社TKC 顧問
税理士 朝長 英樹

法人税法22条は、所得の金額の計算の通則を定める規定であり、法人税において最も重要な条文です。法人税に携わるに当たっては、この条文を正しく解釈し、所得の金額の計算の基本を理解しておく必要があります。
当コラムでは、この法人税法22条の条文を確認しながら、法人税の所得計算の基本的な構造をわかりやすく解説しています。

はじめに

 法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算。以下「22条」といいます。)は、その款名が「各事業年度の所得の金額の計算の通則」とされていることから分かるとおり、所得の金額の計算の通則を定める規定となっています。
 このように、22条は所得の金額の計算の通則(一般原則)を定める規定となっていますので、所得の金額の計算においては、特例の定めがある部分を除き、全てに同条が適用されることとなります。
 仮に、所得の金額の計算に関して、法人税法23条(受取配当等の益金不算入)などの特例が全くなかったとしても、22条さえあれば、それだけで所得の金額の計算を行うことができる、ということになります。
 このように、22条は、所得の金額の計算に関する他の規定とは別格の重要な規定となっているわけです。
 この22条の所得の金額の計算の構造は、企業会計上の利益の額又は損失の額を基礎として所得の金額を計算する法人税申告書の計算の構造とは異なり、次のとおり、同条1項で益金の額から損金の額を控除した金額が「所得の金額」であるとした上で、同条2項と3項でそれぞれ「益金の額」と「損金の額」になるものを自ら書き下ろして定義しています。

(各事業年度の所得の金額の計算)
第22条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の
 額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。

 この22条の規定の解釈が、個々の実務において問題となることはあまり多くはないと思われますが、法人税に携わるに当たっては、法人税における所得の金額の計算の基本を正しく理解しておくことが必要であると考えます。

1.法人税法22条2項の「益金の額」

 22条2項において、「益金の額」は、次のとおり、「資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額」とされています。

2 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

(1)「資産」とは

 法人税法には、「資産」の定義は設けられていません。
 「負債」に関しても、同様です。

 我が国の現在の法人税法は、特に、損益に偏した定めとなっており、貸借に関する定めがあまり充実していません。
 実務においては、「資産」に当たるのか否か、どのような種類の資産であるのかというような疑問が生じてくることもあるはずですが、このような場合には、取扱い事例等を探しつつ、個別に検討する他ありません。

 なお、近年は、法人税法と企業会計との乖離が大きくなってきていますので、企業会計にける資産や負債の認識を安易に法人税法におけるそれらに代置するようなことのないように注意する必要があります。

(2)「有償又は無償」とは

 「有償又は無償」という文言は、無償又は低廉による資産の譲渡においても時価に基づいて益金の額を計上させる趣旨で規定されたものです。

 「資産の販売」には、「有償又は無償」という文言が付されていないことから、資産の無償又は低廉による取引が行われた場合には、「資産の販売」と「資産の譲渡」のいずれに該当するのかということが問題となることがあり得ます。しかし、「譲渡」は「販売」を含む概念であることから、この判断は、容易ではありません。「資産の販売」と「資産の譲渡」のいずれにも該当するものがあった場合、どちらになるのかという疑問が湧いてくるかもしれませんが、「資産の譲渡」に「資産の販売を除く」という括弧書きを付けるというような手当てがされているわけではないものの、わざわざ二つを書き分けていることからすると、「資産の販売」に該当し、「資産の譲渡」には含まれない、と解するのが適当と考えられます。
 立法者は、主に棚卸資産の販売を念頭に置いて「資産の販売」と規定したものと思われますが、「販売」とは、反復的かつ継続的に行われる売却を指しますので、この「資産」は、「棚卸資産」とされるものだけでなく、反復的かつ継続的に売却されることとなっている「資産」を含むことになります。仮に、この「資産」が「棚卸資産」のみを指すのであれば、立法の常識からすると、「資産」ではなく、「棚卸資産」とする必要があります。
 また、「無償」による「資産の譲受け」において益金の額が生ずることとされているのは、無償又は低廉で資産を譲り受けた場合に、時価との差額を受贈益として計上させるためです。「低廉」という用語は用いられていませんが、「低廉」を含む趣旨であることは、条理上、明らかです。
 法人税法で一般的に用いられている「資産の取得」ではなく、「資産の譲受け」としているのは、その前にある「譲渡」(譲り渡し)に対応する用語を用いることとしたためであると考えられますが、特に「譲受け」を「取得」と別意に解すべき理由はない、と考えます。

 また、役務の提供を無償又は低廉で受けた場合には、益金の額を計上しないこととされている点に留意しておく必要があります。
 このような取扱いとしたことに関しては、無償又は低廉で役務の提供を受けた場合には、益金の額を計上させても、損金の額と両建ての関係となり、所得の金額に影響しないことから、わざわざ益金の額を計上させることとはしなかった、と説明されています。
 ただし、このような判断は、適切ではなく、本来は、役務の提供を無償又は低廉で受けた場合にも、益金の額を計上するべきである、と考えられます。
 例えば、減価償却資産を取得する場合に、無償で役務の提供を受けたとすると、その役務の提供を受けるために要する費用は、損金の額ではなく、資産の取得価額となることがあるはずです。その他、役務の提供を受けるために要する費用が寄附金や交際費になるという場合にも、益金の額と損金の額が両建ての関係とはなりません。

(3)「役務」とは

 一般用語として用いられる「役務」とは、労務やサービスなどを指しますが、法人税法においては、それらに止まらず、貸付けや生産なども含む広い概念で用いられています。
 しかし、その概念や範囲は、必ずしも明確ではないため、実務においては、法人税法における「役務」に該当するのか否かの判断が難しいケースが生ずる可能性があります。
 このようなケースが生じた場合には、取扱い事例等を探しつつ、個別に検討する他ありません。

(4)「その他の」とは

 「その他の」という用語が用いられている場合には、「その他」という用語が用いられている場合とは異なり、前に掲げられているものが後に規定されているものの例示となるという関係になり、後に規定されているものは前に掲げられているものと同種のもののみを指す、ということになります。
 このため、規定上は、「資産の販売」「資産の譲渡」「役務の提供」「資産の譲受け」と同種のものにおいてだけ、益金の額が生ずる、ということになります。
 しかし、実務上、益金の額が生ずる場面は非常に広く捉えられています。
 2項の規定自体は、例えば、債務の消滅益が益金となる根拠は何か、というような疑問が呈されてもおかしくない状態となっているわけですが、実務においては、益金の額が生ずる場面を広く捉えることとせざるを得ないものと考えられます。

(5)「取引」とは

 「取引」がある場合にだけ、益金の額が生ずることとされています。
 このため、科目の振り替えなどのように、単なる会計処理としか言えない行為などからは、益金の額が生ずることはありません。

(6)「収益の額」とは

 益金の額となる金額は「収益の額」とされているため、「収益の額」となるものだけが益金の額となることになりますが、この「収益の額」とは、「収入金額」と「利益の額」を指すものと解されています。
 総額である「収入金額」で益金の額を捉えるべき取引と純額である「利益の額」で益金の額を捉えるべき取引をどのように区分するのかという点が必ずしも明確ではありませんが、法人税に関しては、これらの区分は、あまり影響がないはずです。

2.「別段の定め」による修正

 22条2項においては、益金の額に関して「別段の定め」があるものは、その定めに拠ることとされています。
 この「別段の定め」については、法人税法における23条以下の益金の額に関する特別な取扱いのみを指すという見解もありますが、22条2項の規定上、特に法人税法中の別段の定めというように限定が付されているわけではありませんので、租税特別措置法等における益金の額に関する別段の定めも含むと解するべきものです。

 この「別段の定め」に関しては、これを法人税申告書別表4の加減算項目と誤信しないように注意しなければなりません。法人税申告書においては、22条とは異なり、企業会計上の利益の額又は損失の額を基礎として所得の金額を計算することとされていますので、法人税申告書別表4の加減算項目は、「別段の定め」による加減算項目ということではなく、企業会計上の利益の額又は損失の額を22条等の規定に従って法人税法上の所得の金額に修正するものということになります。

3.「資本等取引」の除外

 22条2項においては、資本等取引以外の取引に係る収益の額が益金の額となるものとされています。規定上、資本等取引に係る収益の額は益金の額とはならない、ということになっています。
 そもそも、「資本等取引に係る収益の額」というものが存在するのかという疑問がありますが、このような規定の仕方となっていることは、法人税における所得の金額の認識は、所得税における所得の金額の認識とは異なり、「入ってくるものは全て益金、出て行くものは全て損金」という考え方を採っている、ということの論拠ともなるものです。

 なお、資本等取引以外の取引においてのみ益金を認識するとしている点は、法人税法が「法人税」をどのようなものとして捉えているのかということを理解する上で重要となりますが、この「資本等取引」に関しては、第4回で説明します。

プロフィール

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)
株式会社TKC 顧問
日本税制研究所 代表理事

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朝長英樹税理士事務所

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