2019年7月号Vol.115
【ユーザー事例1】持続可能な自治体経営へ“最適解”を求め続ける
基幹系システム > 茨城県笠間市
総務部 総務課長 西山浩太 氏 / 情報政策調整官 長谷川尚一 氏 / 主査 小谷淳一 氏
- 住所
- 茨城県笠間市中央3丁目2番1号
- 電話
- 0296-77-1101
- 面積
- 240.40平方キロメートル
- 人口
- 74,594人(2019年5月1日現在)
- URL
- https://www.city.kasama.lg.jp/
──基幹系システムの再構築に至った背景を教えてください。
西山 人口減少・少子高齢化が進む中で、いま将来にわたって持続可能な自治体経営が大きな課題となっています。また、市民の価値観や生活スタイルの変化に伴い行政に対するニーズも多様化しており、これまでのように画一的な行政サービスを提供するだけでは市民の満足を得ることが難しくなっています。さらに、昨今では国が推進する「デジタル・ガバメント」の動きも加速しています。限りある人員と財源で、こうしたさまざまな変化へ的確に対応し、市民満足度を維持・向上させていくためには、われわれも変わり続ける必要があるでしょう。
西山浩太 課長
小谷 そうした中で、常に「現在の事業執行はベストなのか」「コストは適切なのか」を検証していくことが大切だと考えています。特に、笠間市は2006年に2町(友部町、岩間町)と新設合併し、その時に構築した基幹系システムを利用し続けていました。そこで10年の節目を機に、長期的な視点から業務のあり方を見直し基幹系システムの再構築を決断しました。
市民満足の向上へ業務を見直し
──システム再構築にあたり重視されたポイントは何でしょうか。
長谷川 大前提としたのは、クラウド型のパッケージシステムを極力ノンカスタマイズで導入するということです。従来システムは“利便性”を高めるため、いろいろとカスタマイズをしてきました。しかし、職員数が減る一方で臨時・非常勤職員が増加している現状において、笠間市固有のカスタマイズ機能は“業務の標準化・効率化”や“システム品質”の面では阻害要因となりかねません。これらを解決できるパッケージシステムを条件に選定した結果、TASKクラウドを採用しました。
なお、茨城県には「いばらき自治体クラウド基幹業務運営協議会」があり、TASKクラウドを共同利用しています。笠間市の参加で5市2町となりました。参加団体は災害時の相互支援で協定を結んでおり、万一に備えた業務継続の確保につながると考えています。
長谷川尚一 情報政策調整官
小谷 1月にシステムが稼働したばかりで、効果を実感するまでには至っていません。ただ、システム移行を機に、これまで個々に管理してきたデータを一つにできたことは大きな進展と考えています。システム全体で重複や漏れなくデータを管理し連携することで、業務効率化とともに住民サービスの向上という点でも有効といえるでしょう。
その代表例が、「福祉相談」です。複合的な悩みを抱える世帯の増加に伴い、庁内の関係各課はもちろん、包括支援センターなど関係機関と連携した支援が求められています。これまでは同じ住民や世帯の相談内容・支援経過の記録を各課がバラバラに持っていましたが、それらを一元管理することで〈ワンストップ相談対応〉や〈関係各課がスムーズに連携した総合支援〉が可能となります。
「変化が常態」へ思考転換を
――窓口サービス改革も積極的です。
小谷淳一 主査
長谷川 現在、さまざまな観点から窓口サービス改革に取り組んでいます。
第一がスマホ決済の導入です。今年4月から「ヤフー公式アプリ」で税金・料金の納付を可能としました。これにより納税者はいつでもどこでも気軽に納付手続きができ、収納率の向上にもつながると期待しています。なお、キャッシュレス化の流れを踏まえ、今後は電子マネーへの対応や窓口決済などでの活用も検討します。
第二が窓口レイアウトの変更です。窓口の数を増やすとともに、市民と職員の動線を考慮し双方にとってムダや無理のないレイアウトに改装します。総合窓口1カ所ではなく、横に並んだ窓口が連携するスタイルです。これにより、市民ができるだけ時間をかけず効率的に手続きを完了できることに加え、職員の負担軽減につなげたいと考えています。さらに来春には、本庁と支所に「かんたん窓口システム」を導入し、マイナンバーカードを活用して証明書等の交付手続きを簡素化するとともに、申請書への手書きを極力なくすなどの取り組みも開始予定です。
小谷 待ち時間の解消という点では、これまで3カ所に分かれていた申告会場を一つに集約しました。当初は「遠方になって不便だ」という声もありましたが、予約システムの導入や集約化により効率的に相談を受けられるようにしたことで待ち時間が大幅に短縮され、市民満足向上につながっています。
――それは逆転の発想ですね。
西山 人口減少社会を迎え、いま行政サービスは過渡期にあります。悩みながらも一歩ずつ前進するのみです。デジタル手続法が可決し今後行政手続きのデジタル化も一気に進むでしょう。これからも市民満足度の維持・向上を図るにはAIやRPAなど最新技術の活用とともに、業務プロセスの抜本的な見直しが不可欠です。その意味では、自治体職員にとって意識改革が求められているといえます。TKCにはともに変化の時代に挑む“パートナー”として、システムの機能強化に加え、法制度改正の解説や業務効率化・標準化の事例紹介など幅広いサポートを期待しています。
掲載:『新風』2019年7月号