注目の判例

国際公法

2024.11.05
就籍許可申立許可審判に対する即時抗告事件 
「「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和7年7月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620948/名古屋高等裁判所 令和 6年 9月11日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和5年(ラ)第431号
抗告人が、2022年に、かつてアフガニスタン・イスラム共和国国籍を有していた抗告人父母の間の子として愛知県豊橋市内において出生したが、この頃までに、共和国全土はタリバーンによって国家の要件を欠くなどしたために抗告人父母はいずれも無国籍となっていたから、抗告人は、日本で生まれ、かつ、父母がともに国籍を有しない子であり、国籍法2条3号後段の要件を満たすとして、日本国民として就籍の許可を求めたところ、原審が本件申立てを却下したことから、抗告人が抗告した事案で、抗告人が出生した当時、共和国は、実質的に国家としての実体を失っていたというべきであり、また、暫定政府(タリバン政権)は、「自国民の保護等を他国の政府に求めることができない。」という要件を欠いている状態にあったと解されるし、抗告人父母は、かつて共和国が存在していた領域に戻って暫定政府の保護を受ける意思はないものと解され、そして、国籍は、当該国家が存在することを当然の前提とするものであるから、共和国の国籍をもと有していた抗告人父母は、いずれも、上記当時、少なくとも実質的に国籍法2条3号にいう「国籍を有しないとき」に該当する者であったというべきであるが、抗告人父母は、共和国及び暫定政府のいずれからも国民としての保護を受けられない状態になっていたというべきであるから、抗告人父母が共和国又は首長国の国籍を有するものとし、日本において出生した抗告人に日本国籍の取得を認めないことは、可及的に無国籍者の発生を防止して国家による本人の利益の保護を図るという同号の趣旨に反すると解されるし、児童は出生の時から国籍を取得する権利を有し、締約国はこの権利の実現を確保するとしている「児童の権利に関する条約」7条の趣旨にも反するものと解され、抗告人は、国籍法2条3号に基づき、日本国籍を取得したものというべきであるとして、原審判を取り消し、抗告人の申立てを認容した事例。
2024.10.15
窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年12月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25620895/大阪高等裁判所  令和 6年 9月 3日 判決 (控訴審)/令和6年(う)第439号
被告人が、窃盗、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反の罪で懲役2年6か月を求刑され、原審が、被告人を懲役2年6か月に処し、4年間その刑の執行を猶予し、訴訟費用は被告人の負担としたところ、被告人が控訴した事案で、各故意及び共謀を認定した原判決に事実の誤認はないとしたうえで、刑事訴訟法181条1項本文により原審通訳人に支給される旅費・日当及び通訳料を含む訴訟費用の全部を被告人に負担させた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるとし、また、未決勾留日数の算入をしなかった原判決は、裁量の範囲を逸脱したものであり、この点において、原判決の量刑は重過ぎて不当であるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役2年6か月に処し、原審における未決勾留日数中120日をその刑に算入し、この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予するとともに、原審及び当審における訴訟費用のうち、原審国選弁護人に関する分を被告人の負担とした事例。
2024.06.11
難民不認定処分取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年10月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25599424/名古屋地方裁判所 令和 6年 5月 9日 判決 (第一審)/令和3年(行ウ)第38号
シリア国籍を有する外国人男性である原告が、出入国管理及び難民認定法61条の2第1項の規定に基づき本件難民申請をしたところ、名古屋入管局長から難民の認定をしない旨の本件不認定処分を受けたため、同法61条の2の9第1項に基づく本件審査請求をしたが、法務大臣から本件審査請求を棄却する旨の本件棄却裁決を受けたことから、被告・国を相手として、本件不認定処分及び本件棄却裁決の各取消し並びに難民の認定の義務付けを求めた事案で、原告は、その政治的意見(それに基づく兵役忌避)を理由として、シリア政府から通常人において受忍し得ない苦痛をもたらす攻撃又は圧迫であって、生命又は身体の自由の侵害又は抑圧を受けるおそれがあるという恐怖を抱くような個別的かつ具体的な事情が認められるから、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」と認められるというべきであり、また、原告が「国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの」であることも明らかであるから、原告は難民に該当するものと認められるなどとして、原告の請求をいずれも認容した事例。
2024.05.28
サケ捕獲権確認請求事件
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年7月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25599018/札幌地方裁判所 令和 6年 4月18日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第22号
北海道十勝郡浦幌町内に居住するアイヌで構成される団体であって、権利能力なき社団である原告が、被告・国及び被告・北海道に対し、原告はアイヌの集団としての固有の権利である内水面におけるサケ捕獲権(本件漁業権)を有する旨主張するとともに、内水面におけるさけの採捕を原則として禁止する水産資源保護法28条が原告の漁業(本件漁業)に関する限り無効である旨主張して、原告が本件漁業権を有することの確認を求めるとともに、水産資源保護法28条は本件漁業に関する限り無効であることの確認を求めた事案で、現行法上、北海道の内水面においてさけの漁業を営むことはできず、アイヌの人々の文化享有権の行使との関係において、さけの採捕は最大限尊重されるべきものであることを考慮しても、原告が本件漁業権を文化享有権の一環又は固有の権利として有すると認めることはできないところ、原告の本件無効確認の訴えは確認の利益を欠き不適法であるとして却下し、本件漁業権確認の訴えに係る請求は理由がないとして棄却した事例。
2024.03.05
難民の認定をしない処分取消等請求、訴えの追加的変更申立控訴事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年4月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25597228/名古屋高等裁判所 令和 6年 1月25日 判決 (控訴審)/令和5年(行コ)第38号 
ミャンマーで出生した外国人男性である控訴人(一審原告)が、平成27年(2015年)2月17日、法務大臣に対し出入国管理及び難民認定法61条の2第1項の規定に基づき難民の認定を申請したところ(本件難民認定申請〔1〕)、平成28年6月16日、難民の認定をしない旨の処分(本件難民不認定処分〔1〕)を受けたため、被控訴人(一審被告。国)を相手として、本件難民不認定処分〔1〕の取消し及び上記規定に基づく難民の認定の義務付けを求めるとともに(第1事件)、令和3年(2021年)2月15日、法務大臣に対し同項の規定に基づき難民の認定を申請したところ(本件難民認定申請〔2〕)、令和4年1月24日、難民の認定をしない旨の処分(本件難民不認定処分〔2〕)を受けたため、被控訴人を相手として、本件難民不認定処分〔2〕の取消し及び上記規定に基づく難民の認定の義務付けを求め、原審が、本件訴えのうち、本件各義務付けの訴えをいずれも却下し、控訴人のその余の請求をいずれも棄却したところ、控訴人がこれを不服として控訴した事案で、本邦にある外国人である控訴人は、難民に該当するから、本件難民不認定処分〔1〕は違法なものであるとして、控訴人の本件難民不認定処分〔1〕の取消しを求めた請求を認容し、本件難民認定申請〔1〕に係る義務付けの請求も認容すべきであり、そうすると、第2事件のうち本件難民不認定処分〔2〕の取消しを求める部分は訴えの利益がないことになるからその訴えを却下すべきであり、第2事件の義務付けの訴えは訴訟要件を欠き不適法であるから却下すべきであるところ、原判決の第2事件の義務付けの訴えを却下した部分は結論において相当であるが、その余の部分は不当であるとして、原判決を変更した事例。
2023.10.17
琉球民族遺骨返還等請求控訴事件  
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和6年1月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596046/大阪高等裁判所 令和 5年 9月22日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第1261号
沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する控訴人らが、昭和初期に京都帝国大学(当時)の研究者が沖縄県α村βに所在する第一尚氏の王族等を祀る墳墓から遺骨を持ち去り、京都帝国大学を承継した被控訴人がその遺骨の一部である原判決別紙2遺骨目録記載の各遺骨を現在まで占有保管していることについて、(1)本件遺骨の引渡請求、(2)不法行為に基づく損害賠償請求等をしたところ、原審が、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らがこれを不服として控訴し、また、控訴人A及び控訴人Bは、当審において、本件遺骨の引渡しを求める根拠として、被控訴人との間の寄託契約類似の無名契約に基づく返還請求権を選択的に追加した事案において、控訴人らの請求は理由がないとし、これと同旨の原判決は相当であるとし、また、控訴人A及び控訴人Bの当審における追加請求はいずれも理由がないとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.05.09
退去強制令書発付処分取消等請求事件等 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和5年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25572781/大阪地方裁判所 令和 5年 3月15日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第134号
ウガンダ共和国国籍を有する原告は、出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づく難民認定の申請をしたところ、法務大臣から順次権限の委任を受けた大阪出入国在留管理局長から、難民の認定をしない旨の処分を受けるとともに、入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない旨の処分を受け、原告は、大阪出入国在留管理局主任審査官から、退去強制令書の発付処分を受けたため、原告は、これらの処分は、原告が難民であるにもかかわらず、これを看過した違法なものであり、仮に原告が難民に該当しないとしても、本件在特不許可処分及び本件退令発付処分は憲法及び市民的及び政治的権利に関する国際規約等に違反するなどと主張して、被告(国)を相手に、本件不認定処分、本件在特不許可処分及び本件退令発付処分の各取消しを求めるとともに、難民の認定の義務付けを求めた事案で、原告はレズビアンであることを「理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有する」ものであるとし、原告は難民に該当すると認め、原告につき難民の認定をしない旨の本件不認定処分は違法であるとし、本件在特不許可処分はその前提を欠くもので違法であるとし、及び、原告をウガンダに向けて送還する旨の本件退令発付処分は違法であるとして、原告の各処分の取消請求をいずれも認容した事例。
2022.06.28
北朝鮮帰国事業損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和4年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25592517/東京地方裁判所 令和 4年 3月23日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第26750号
昭和34年から昭和59年までの間に、本邦に居住していた在日朝鮮人及びその配偶者らを対象として、朝鮮民主主義人民共和国への集団帰国を推進する、いわゆる北朝鮮帰国事業が実施され、〔1〕原告らが、被告(朝鮮民主主義人民共和国)は、帰国事業において北朝鮮が地上の楽園であるなどと虚偽の宣伝を行って北朝鮮への渡航を勧誘し、それに応じて昭和35年から昭和47年までに北朝鮮に渡航した原告らを北朝鮮内に留め置いた行為が国家誘拐行為であって原告らの移動の自由等を侵害したものであるなどと主張する(本件不法行為1)とともに、〔2〕原告Aが、被告が北朝鮮内に居住する原告Aの家族が北朝鮮から出国することを妨害し続けている行為が原告Aの家族と面会交流する権利を侵害するものであると主張して(本件不法行為2)、被告に対し、不法行為に基づき、原告一人当たり慰謝料1億円の支払等を求めた事案で、民事訴訟法3条の3第8号にいう「不法行為があった地」とは、加害行為そのものが行われた地(加害行為地)と加害行為によって惹起された結果が発生した地(結果発生地)の双方を含むと解され、また、日本国内に住所等を有しない被告に対し提起された不法行為に基づく損害賠償請求訴訟につき、「不法行為があった地」が日本国内にあるとして日本の裁判所の管轄権を肯定するためには、原則として、被告がした行為によって原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明される必要があると解されることを前提としたうえで、本件不法行為1については、原告らが、被告に対し、被告が原告らを被告国内に強制的に留置した行為によって原告らの居住場所及びそれに伴う国家体制を自ら選択する権利を侵害したとして不法行為に基づき損害賠償金の支払を求める訴えは、日本の裁判所が管轄権を有しないから不適法であるとし、本件不法行為2については、いわゆる緊急管轄を肯定すべきとの主張も採用できないことからすれば、本件不法行為2に係る訴えは、日本の裁判所が管轄権を有しないから不適法であるとして却下し、本件不法行為1のうち勧誘行為の不法行為による損害賠償請求権は、改正前民法724条後段に規定する除斥期間の経過により消滅したとして、請求を棄却した事例。
2021.02.16
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25568416/名古屋高等裁判所 令和 3年 1月13日 判決 (控訴審)/令和1年(ネ)第664号
控訴人が、被控訴人(国)に対し、入国管理局の職員が、難民不認定処分に対する取消訴訟等の意向を示していた控訴人を集団送還の対象者に選定した上、本件異議棄却決定の後、上記訴訟等の提起を妨害するために、上記決定の告知をその40日後まであえて遅らせ、同告知後に弁護士との連絡ができないようにしたほか、帰国後に訴訟ができるとの虚偽の説明をするなどして、本件送還をしたことにより、控訴人の裁判を受ける権利を侵害したなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金の支払を求め、原審は、入管法上、在留資格未取得外国人について難民不認定処分に対する異議申立てについての決定があるまで送還を停止する旨の規定以外に送還を停止すべき旨の規定がなく、被退去強制者については裁判所による執行停止決定がない限り送還が法令上停止されるものでなく、これらに当たる場合でなければ入管職員に送還を停止すべき義務が生ずるものではないから、本件異議棄却決定がされ執行停止決定を得ていない控訴人を送還対象者に選定し、強制送還を中止しなかったことにつき、国賠法1条1項の適用上違法があるとはいえないとしつつ、本件異議棄却決定の告知に際して、控訴人が送還された後も難民不認定処分に対する取消訴訟が可能であるかのような誤った教示をしたことは、同項の適用上違法であるとして、控訴人の請求につき合計8万8000円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却したところ、控訴人がその敗訴部分を不服として控訴した事案で、控訴人の請求は、44万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余を棄却すべきところ、これと異なる原判決は一部不当であるとし、原判決を変更した事例。
2020.11.10
建物明渡等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 令和3年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25566836/大阪高等裁判所 令和 2年 6月19日 判決 (控訴審)/平成31年(ネ)第691号
阪神・淡路大震災の被災地の地方公共団体であり、かつ、公営住宅の事業主体である被控訴人(1審原告。神戸市)が、復旧・復興対策として、住宅・都市整備公団(現在は独立行政法人都市再生機構に承継され、UR都市機構)から期間20年で借り上げた本件居室の入居者(転借人)である控訴人に対し、〔1〕主位的に、本件賃貸借契約の借上期間が満了したとして、公営住宅法32条1項6号及び神戸市営住宅条例50条1項7号に基づき、仮に本件転貸借契約に同法32条1項6号等の適用がないとしても、予備的に、本件賃貸借契約の期間満了による終了によって本件転貸借契約も当然に終了し、又は被控訴人からの正当事由のある解約申入れによって本件転貸借契約が終了したとして,本件転貸借契約の終了に基づき、本件居室の明渡しを求め、〔2〕本件居室のUR都市機構からの借上期間満了日の翌日である平成28年1月31日から平成30年3月31日までは1箇月10万2290円の割合(合計266万2839円)、同年4月1日から本件居室の明渡済みまでは1箇月10万1700円の割合による各賃料及び共益費(賃料等)相当損害金の支払を求めたところ、原審は、被控訴人の主位的請求としての明渡請求(上記〔1〕)及び同附帯請求(同〔2〕)を認容したため、これを不服とする控訴人が控訴した事案において、本件転貸借契約には新法(公営住宅法32条1項6号)が適用され、また公営住宅法25条2項所定の通知は、同法32条1項6号に基づく明渡請求の要件とはいえないなどとして、被控訴人の主位的請求を認容した原判決は相当であるとし、本件控訴を棄却した事例。
2020.06.09
終局決定変更申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25570886/最高裁判所第一小法廷 令和 2年 4月16日 決定 (許可抗告審)/令和1年(許)第14号
抗告人、相手方及び両名の子は、ロシアで同居していたが、本件子(当時9歳)が平成28年5月に、抗告人が同年8月に、日本に入国した。相手方は、平成28年11月、本件子について、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(ハーグ条約実施法)26条の規定による子の返還の申立てをし、同申立てに係る事件は家事調停に付され、平成29年1月、抗告人と相手方との間で、抗告人が同年2月12日限り本件子をロシアに返還する旨の合意及び養育費、面会交流等についての合意が成立し、これらが調書に記載された。本件子は、平成29年2月12日の経過後も、日本にとどまっている。本件は、抗告人が、本件調停の成立後に、事情の変更により本件返還条項を維持することが不当となったと主張して、ハーグ条約実施法117条1項の規定に基づき、本件返還条項を変更することを求め、原審は、抗告人の本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告した事案で、子の返還申立事件に係る家事調停において、子を返還する旨の調停が成立した後に、事情の変更により子の返還条項を維持することを不当と認めるに至った場合は、ハーグ条約実施法117条1項の規定を類推適用して、当事者の申立てにより、子の返還条項を変更することができると解するのが相当であり、抗告人の本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には法令の違反があるとして原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2020.01.21
損害賠償請求事件
LEX/DB25563894/名古屋地方裁判所 令和 1年 7月30日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第3483号
他人名義の偽造旅券を行使して日本に入国したスリランカ国籍の原告が、退去強制令書の発付処分を受けた後、難民不認定処分を受け、その後前記処分に対する異議申立てをし、同申立てが棄却された場合は難民不認定処分に対して取消訴訟等をする意向を示していたにもかかわらず、入国警備官らが、前記異議申立棄却決定の後、原告による難民不認定処分に対する取消訴訟等の提起を妨害するために、同棄却決定の告知をあえて遅らせて原告を収容し、同棄却決定の告知後は弁護士との連絡もできなくしたほか、原告に対してスリランカ帰国後に訴訟ができるとの虚偽の説明をするなどして、原告を強制送還したという一連の違法な公権力行使により、原告の裁判を受ける権利が違法に侵害されたとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償金及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負っているわけではなく、裁判所における裁判を受ける権利が保障されていることを直接の根拠として、退去強制を受ける立場にあった原告について、本件不認定処分に対する取消訴訟を提起するまでの合理的期間、強制送還されない具体的権利が保障されていたと認めることはできないが、原告がスリランカに送還されてしまえば訴えの利益が失われることになるにもかかわらず、入国警備官らは、原告がスリランカに送還されてもなお前記訴訟を提起することが可能であるかのような誤った教示を行っており、これは、公務員たる入国警備官が職務上通常尽くすべき義務を尽くさなかったことにほかならないというべきであるから、国家賠償法上違法であると認めるのが相当であるところ、原告においては、裁判を受ける権利そのものが侵害されたのではなく、その前提となる適切な教示を受ける権利が侵害されていると認められ、原告の請求は、それによる慰謝料を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2019.09.10
損害賠償請求事件
LEX/DB25563675/東京地方裁判所 令和 1年 6月18日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第26013号
弁護士である原告が、被告に対し、被告が原告につき東京弁護士会に申し立てた懲戒請求が不法行為に当たり、これによって弁護士としての名誉・信用を害され、また、いわゆる在日コリアンという属性に基づく人種差別を受けるなどして精神的苦痛を被った旨主張して、不法行為に基づく損害賠償請求として、慰謝料及び弁護士費用の合計55万円の支払等を求めた事案において、本件懲戒請求は弁護士懲戒制度の趣旨目的に照らし相当性を欠くと認められ、不法行為を構成するとして、原告の請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2019.06.25
在留資格認定証明書交付処分仮の義務付け申立却下決定に対する即時抗告事件
「新・判例解説Watch」国際公法分野 8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25562968/名古屋高等裁判所 平成31年 3月27日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成31年(行ス)第2号
外国籍を有する外国人女性の抗告人(申立人)が、本邦内の大学に入学する目的で入管法7条の2第1項所定の証明書(在留資格認定証明書)の交付の申請(本件申請)をしたところ、法務大臣から権限の委任を受けた名古屋入管局長から、入管法5条1項9号ロに掲げる上陸拒否事由に該当することを理由として在留資格認定証明書を交付しない旨の処分を受けたため、本件不交付処分には名古屋入管局長がその裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があると主張して、本件不交付処分の取消し及び本件申請に係る在留資格認定証明書の交付の義務付けを求める訴えを提起した上、行訴法37条の5第1項に基づき、在留資格認定証明書を仮に交付することの義務付けを求め、原審は、本案事件である本件申請に係る在留資格認定証明書の交付の義務付けの訴えは、行訴法37条の3第1項2号の要件を欠く不適法なものであり、本案事件が適法なものとして係属しているとはいえず、本件申立ては不適法であるとして却下したため、抗告人は、これを不服として本件抗告を申し立てた事案において、名古屋入管局長が、抗告人に対し、上陸拒否の特例の適用の前提となる在留資格認定証明書を交付しないと判断したことは、社会通念上著しく妥当性を欠くものといわざるを得ないから、その裁量権の範囲を逸脱し、これを濫用したものというべきであると判示し、本件申立てを却下した原決定を取消し、名古屋入管局長に対し、抗告人に在留資格認定証明書を仮に交付することを命じた事例。
2018.10.02
難民不認定処分取消等請求事件
「新・判例解説Watch」国際公法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25561140/東京地方裁判所 平成30年 7月 5日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第524号
スリランカ国籍を有する外国人男性である原告は、出入国管理及び難民認定法61条の2第1項の規定に基づく難民認定の申請をしたが、難民認定をしない旨の処分(本件前不認定処分)を受けたため、その取消し等を求める訴えを提起したところ、地裁で、原告が難民に該当することを理由に本件前不認定処分を取り消す旨の判決(前訴判決)がされ、同判決は確定した。ところが、前訴判決の確定後、法務大臣が、本国情勢の改善を理由に、再度、原告に対し、難民認定をしない旨の処分(本件再不認定処分)をし、その後、本件再不認定処分に係る異議申立てについても、これを棄却する決定(本件異議棄却決定)をした。そこで、原告が、前訴判決により本件前不認定処分時における難民該当性が認められた以上、再度の難民不認定処分をするには難民の地位に関する条約1条Cにいう「難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、国籍国の保護を受けることを拒むことができなくなった場合」に該当することを要するものと解すべきところ、原告について上記の場合に該当するとは認められず、本件再不認定処分は違法であるなどと主張して、被告(国)を相手に、本件再不認定処分の取消し、本件異議棄却決定の無効確認及び難民認定の義務付けを求めた事案において、本件訴えのうち本件異議棄却決定の無効確認を求める部分は不適法であるとして却下し、本件再不認定処分の取消請求及び本件義務付けの訴えに係る請求は認容した事例。
2018.09.18
退去強制令書発付処分無効確認等請求控訴事件
LEX/DB25560204/名古屋高等裁判所 平成30年 4月11日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第49号
フィリピン共和国国籍を有する外国人女性である控訴人が、入国審査官から、出入国管理及び難民認定法24条4号ロ(不法残留)に該当する等の認定を受けた後、入管特別審理官から、上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため、同法49条1項に基づき、法務大臣に対して異議の申出をしたところ、法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長から、上記異議の申出には理由がない旨の裁決を受け、引き続き、入管主任審査官から、退去強制令書発付処分を受けたため、本件裁決及び本件処分の無効確認を求めるとともに、法務大臣又はその権限の委任を受けた入管局長に対して在留特別許可の義務付けを求めたところ、原審が控訴人の訴えのうち、本件在特義務付けの訴えを却下し、その余の訴えに係る請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、本件裁決は、控訴人とP7との間に成熟かつ安定した内縁としての夫婦関係が成立していたにもかかわらず、これを看過し、ひいては控訴人をフィリピンへ帰国させることによる控訴人やP7の受ける重大な不利益に想到することもなかった一方で、控訴人の不法残留や不法就労等をことさら重大視することによってなされたものというべきであり、その判断の基礎になる事実の認識に著しい欠落があり、また、その評価においても明白に合理性を欠くことにより、その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことは明らかであるから、裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであり、その違法性は重大かつ明白なものであるとして、原判決を取り消し、本件裁決及び本件処分の無効を確認した事例。
2018.08.07
シリア難民不認定処分無効確認等請求事件(第1事件~第4事件)、訴えの追加的併合請求事件(第5事件)
「新・判例解説Watch」国際公法分野 10月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560659/東京地方裁判所 平成30年 3月20日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第158号 等
シリア国籍を有する外国人である原告らが、それぞれ出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づき難民認定の申請をしたが、処分行政庁から難民の認定をしない旨の処分を受けたため、被告(国)に対し、原告P3においては同処分の取消しを求めるとともに、難民認定の義務付けを求め、その余の原告らにおいてはそれぞれ同処分の無効確認を求めるとともに、難民認定の義務付けを求めた事案において、原告P1及び原告P2の訴え並びに原告P3及び原告P4の義務付けの訴えは不適法であるとして、これらをいずれも却下し、原告P3及び原告P4のその余の請求を棄却した事例。
2017.06.06
嘉手納基地爆音差止等請求事件 
「新・判例解説Watch」H29.6月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25545477/那覇地方裁判所沖縄支部 平成29年 2月23日 判決 (第一審)/平成23年(ワ)第245号
本件飛行場の周辺に居住し、若しくは居住していた者又はその相続人である原告らが、本件飛行場において離着陸するアメリカ合衆国の航空機の発する騒音により健康被害を受けていると主張して、日米安保条約及び日米地位協定に基づいてアメリカ合衆国に本件飛行場を提供している被告に対し、人格権、環境権又は平和的生存権に基づき、毎日午後7時から翌日午前7時までの間における本件飛行場における航空機の離発着禁止等を求めた事案において、本件飛行場の航空機の運航等によって、原告らは相当に大きな騒音に曝露され、少なくとも本件コンター上、W75以上を超える区域に居住する原告らについては法的保護に値する重要な利益の侵害があると認められること等、特に本件コンター上W95以上の地域については、航空機騒音対策緊急指針において緊急に対策を講じるべきとされた強度の騒音曝露状況が現在も続いている等として、原告の請求を一部認容した事例。
2016.02.23
退去強制令書発付処分取消請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」H28.3下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25541771/大阪高等裁判所 平成27年11月27日 判決 (控訴審)/平成26年(行コ)第106号
イランの国籍を有する外国人である控訴人(原告)が、大阪入管入国審査官から出入国管理及び難民認定法24条1号の退去強制事由に該当する旨の認定を受けて、これに服し、同審査官から送還先をイランと指定した退去強制令書発付処分を受けたところ、イランに送還された場合には、我が国において有罪判決を受けて既に服役した殺人罪により公開処刑されるおそれがあるから、送還先をイランと指定した同処分は違法であるなどと主張して、被控訴人(被告。国)に対し、その取消しを求め、原審は請求を棄却した事案において、原判決を変更し、退去強制令書発付処分のうち、送還先をイランと指定した部分を取り消し、その余の請求を棄却した事例。
2015.09.24
難民認定等請求事件(第1事件)、訴えの追加的併合申立事件(第2事件)訴えの追加的併合申立事件(第3事件)
「新・判例解説Watch」H27.11下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
 LEX/DB25540979/東京地方裁判所  平成27年 8月28日 判決 (第一審)/平成25年(行ウ)第237号等
コンゴ国籍を有する男性である原告が、自身は宗教的背景を有する同国の政党の党員として、特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の保護を受けることができない難民であるとして、法務大臣に対し、難民の認定を申請したところ、法務大臣は原告が難民である旨の認定をしない旨の処分をし、法務大臣の権限の委任を受けた東京入国管理局長は、出入国管理及び難民認定法61条の2の2第2項の規定に基づいて原告の在留を特別に許可しない旨の処分をしたため、原告が、法務大臣及び東京入管局長の所属する被告国に対し、前記各処分の取消し及び原告が難民である旨の認定の義務付けを求めた事案(第1事件)、原告が出入国管理及び難民認定法24条1号(不法入国)の退去強制対象者に該当するとの東京入管入国審査官の認定が誤りがないとの東京入管特別審理官の判定に対し、原告が出入国管理及び難民認定法49条1項の規定による異議の申出をしたが、法務大臣の権限の委任を受けた東京入管局長が、その異議の申出が理由がないと裁決し、これを受けて東京入管主任審査官が原告に対し、退去強制令書を発付したため、原告が、東京入管局長及び東京入管主任審査官の所属する被告国に対し、難民である原告に対してした本件裁決は違法であり、本件退令発付処分も違法であるとして、これらの取消しを求めた事案(第2事件)、国の公権力の行使に当たる難民調査官が、原告の難民認定申請手続に係る審査に際し、難民審査における最低限度の注意義務を逸脱して、コンゴの情勢について容易に入手することのできる国際連合の特別調査報告書を参照するなどの調査を尽くさなかったのは国家賠償法上も違法であるとして、原告が、被告国に対し、国家賠償法1条1項に基づき、その精神的苦痛に対する100万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案(第3事件)において、第1事件は、原告の在特不許可処分取消請求に係る訴え部分は不適法であるからこれを却下し、第2事件は、原告の難民不認定処分取消請求,難民認定処分義務付け請求,裁決取消請求及び退令発付処分取消請求は理由があるからこれらを認容し、第3事件は、原告の国家賠償請求は理由がないから、棄却した事例。