2024.11.19
仮差押命令認可決定に対する保全抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
★「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25573832/最高裁判所第三小法廷 令和 6年10月23日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第1号
抗告人が、文化功労者年金法所定の文化功労者である相手方を債務者として、相手方の第三債務者国に対する同法に基づく年金の支給を受ける権利について仮差押命令の申立て等をし、原審(大阪高等裁判所)が、文化功労者自身が現実に本件年金を受領しなければ本件年金の制度の目的は達せられないから、本件年金の支給を受ける権利は、その性質上、強制執行の対象にならないと解するのが相当であり、上記権利に対しては強制執行をすることができないというべきであると判断し、上記権利の仮差押えを求める本件申立ては理由がないとして、これを却下したことから、抗告人が許可抗告をした事案で、文化功労者年金法その他の法令において、本件年金の支給を受ける権利に対して強制執行をすることはできない旨を定めた規定は存せず、そして、文化功労者年金法の上記の各定めによれば、本件年金は、文化功労者の功績等を世間に知らせ、表彰することを目的として支給されるものと解され、そうすると、国が文化の向上発達に関し特に功績顕著な者を文化功労者として決定することにより、その者に本件年金の支給を受ける権利が認められることで、表彰の目的は達せられるものといえ、その者が現実に本件年金を受領しなければ上記目的が達せられないとはいえず、したがって、本件年金の支給を受ける権利は、その性質上、強制執行の対象にならないと解することはできず、本件年金の支給を受ける権利に対しては強制執行をすることができるというべきであるとして、原決定を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2024.11.19
文書提出命令に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件
★「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25621078/最高裁判所第二小法廷 令和 6年10月16日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第5号
複数の者が共同して実行したとされる学校法人Fを被害者とする大阪地方検察庁の捜査に係る業務上横領事件の被疑者の1人として逮捕、勾留され、本件横領事件について起訴されたが、無罪判決を受けた抗告人が、上記の逮捕、勾留及び起訴が違法であるなどと主張して、相手方に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めた本案訴訟(損害賠償請求事件)において、抗告人が、検察官がEを本件横領事件の被疑者の1人として取り調べる際にEの供述及びその状況を録音及び録画を同時に行う方法により記録した記録媒体等について、民事訴訟法220条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に該当するなどと主張して、文書提出命令の申立てをし、原々審が相手方・国に本件対象部分の提出を命じ、その余の本件申立てを却下する決定をしたことから、相手方が即時抗告をし、原審が、相手方に本件公判提出部分の提出を命ずべきものとする一方、本件申立てのうち本件公判不提出部分に係る部分を却下したところ、抗告人が抗告した事案で、本件公判不提出部分の提出を拒否した相手方の判断は、その裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用するものというべきであるとしたうえで、以上と異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから、論旨は理由があり、原決定のうち本件公判不提出部分に係る本件申立てを却下した部分は破棄を免れず、相手方に本件公判不提出部分の提出を命じた原々決定は正当であるとして、上記部分につき相手方の抗告を棄却した事例(補足意見あり)。
2024.08.06
損害賠償請求事件
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LEX/DB25573641/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月11日 判決 (上告審)/令和4年(受)第2281号
被上告人宗教法人の信者であった亡Aが被上告人宗教法人に献金をしたことについて、上告人(亡Aは原審係属中に死亡し、同人の長女である上告人が亡Aの訴訟上の地位を承継した。)が、被上告人らに対し、上記献金は被上告人Y1を含む被上告人宗教法人の信者らの違法な勧誘によりされたものであるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償等を求め、原審は、上告人の被上告人宗教法人に対する損害賠償請求(ただし、亡Aの承継人として請求する部分に限る。)に係る訴えを却下し、被上告人Y1に対する請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、亡Aと被上告人宗教法人との間に念書による本件不起訴合意は、亡Aがこれを締結するかどうかを合理的に判断することが困難な状態にあることを利用して、亡Aに対して一方的に大きな不利益を与えるものであったと認められ、公序良俗に反し、無効であるとし、また、被上告人宗教法人の信者らによる献金の勧誘した行為が不法行為法上違法であるとはいえないとした原審の判断には、献金勧誘行為の違法性に関する法令の解釈適用を誤った結果、判断枠組みに基づく審理を尽くさなかった違法があるとして、原判決中、不服申立ての範囲である本判決主文第1項記載の部分は破棄し、被上告人らの不法行為責任の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2023.11.21
訴訟救助付与申立て却下決定に対する抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件
LEX/DB25573117/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月19日 決定 (許可抗告審)/令和5年(許)第1号
相手方らを含む32名は、豪雨による河川の氾濫により被災したと主張して、各自の被った損害につき、抗告人ほか3名に対して損害賠償金等の連帯支払を求める訴えを共同して提起するとともに、訴訟上の救助を申し立て、原々審は、相手方らは民事訴訟法82条1項本文に規定する要件を欠くことを理由として、相手方らの上記の申立てを却下したところ、相手方らが即時抗告をし、原審は原々決定を取消し、本件を原々審に差し戻したため、抗告人が許可抗告をした事案において、共同して訴えを提起した各原告の請求の価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする場合、各原告の請求に係る訴え提起の手数料の額は、上記訴訟の目的の価額を基礎として算出される訴え提起の手数料の額を各原告の請求の価額に応じて案分して得た額であるとし、上記の場合、訴え提起の手数料につき各原告に対する訴訟上の救助の付与対象となるべき額は、案分して得た額に限られるとし、各原告につき民訴法82条1項本文にいう「訴訟の準備及び追行に必要な費用」として考慮すべき訴え提起の手数料の額は、上記訴額を基礎として算出される訴え提起手数料の額を各原告の請求に応じて案分して得た額であるとし、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、民訴法82条1項本文に規定する要件の該当性について更に審理を尽くさせるため、本件を高等裁判所に差し戻した事例。
2023.10.17
移送決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25573079/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 9月27日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第21号
大阪拘置所に収容されている死刑確定者である相手方は、抗告人の執筆した雑誌記事により名誉が毀損されたなどとして、抗告人に対し、不法行為に基づき、損害賠償金等の支払を求めた本件訴訟を大阪地方裁判所へ提起したが、当事者双方が、口頭弁論期日に連続して出頭しなかった場合に、原審は、本件口頭弁論期日において、審理を継続することが必要であるとして、期日の延期とともに新たな口頭弁論期日の指定がされたので、本件口頭弁論期日は民事訴訟法263条後段の「期日」に当たらず、同条後段の規定にかかわらず本件訴訟について訴えの取下げがあったものとはみなされないと解すべきであると判断した上、本件移送申立てに基づき、本件訴訟を東京地方裁判所に移送すべきものとしたため、抗告人が許可抗告した事案で、本件口頭弁論期日において、審理を継続することが必要であるとして、期日の延期とともに新たな口頭弁論期日の指定がされたのであるから、本件口頭弁論期日は民事訴訟法263条後段の適用が否定されると解することはできないというべきであり、本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされないとした原審の判断には同条後段の解釈適用を誤った違法があるとして、原決定を破棄し、本件訴訟について訴えの取下げがあったものとみなされ、本件移送申立ては不適法であるから、原々決定を取消し、相手方の本件移送申立てを却下した事例(補足意見がある)。
2021.08.24
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25590021/千葉地方裁判所 令和 3年 6月22日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第10号
抗告人・日本放送協会が、相手方が遅くとも平成25年10月21日までに抗告人のテレビジョン放送を受信できる受信機を設置したと主張して、相手方に対し、〔1〕相手方には抗告人の放送受信契約の申込みに対する承諾義務があるとして、同申込みに対する承諾の意思表示をすることを求めるとともに、〔2〕〔1〕の判決確定を条件として、同意思表示により成立する放送受信契約に基づき、未払放送受信料の支払を求めた基本事件について、原決定が、民事訴訟法18条に基づき、基本事件を千葉簡易裁判所から千葉地方裁判所に職権で移送したところ、抗告人がこれを不服として抗告した事案で、本件において、現時点で基本事件を地方裁判所で審理することが相当であるとうかがわせる事情は認められず、基本事件を地方裁判所に移送した原決定は、簡易裁判所に与えられた合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ないとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.24
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25590022/千葉地方裁判所 令和 3年 6月22日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第14号
抗告人・日本放送協会が、相手方が遅くとも平成26年10月までに抗告人のテレビジョン放送を受信できる受信機を設置したと主張して、相手方に対し、〔1〕相手方には抗告人の放送受信契約の申込みに対する承諾義務があるとして、同申込みに対する承諾の意思表示をすることを求めるとともに、〔2〕〔1〕の判決確定を条件として、同意思表示により成立する放送受信契約に基づき、未払放送受信料の支払を求めた基本事件について、原決定が、民事訴訟法18条に基づき、基本事件を千葉簡易裁判所から千葉地方裁判所に職権で移送したところ、抗告人がこれを不服として抗告した事案で、本件において、現時点で基本事件を地方裁判所で審理することが相当であるとうかがわせる事情は認められず、基本事件を地方裁判所に移送した原決定は、簡易裁判所に与えられた合理的な裁量を逸脱したものといわざるを得ないとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.03
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25569781/千葉地方裁判所 令和 3年 6月21日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第13号
放送法により設立された法人である抗告人が、抗告人のテレビジョン放送を受信することのできる受信設備を設置した相手方に対し、放送受信契約の申込みに対して承諾する義務を負うとして、承諾の意思表示をすべきことを求めるとともに、当該承諾を命ずる判決の確定を条件として、平成26年11月分から令和3年3月分までの受信契約に基づく受信料合計の支払を求める基本事件を千葉簡易裁判所に提起したところ、同裁判所が、基本事件を民事訴訟法18条に基づき職権により千葉地方裁判所に移送するとの原決定をし、それに対して抗告人が抗告した事案で、現時点で、基本事件が複雑な争点を含む、あるいは審理に時間を要する見込みであり、社会に与える影響が大きいなどといった事情も認められず、加えて、原審は、職権で原決定をするに際し、当事者の意見聴取(民事訴訟規則8条2項)をしていないため、相手方が、地方裁判所における審理及び裁判を希望していることをうかがわせる事情もないから、基本事件について地方裁判所における審理及び裁判が相当であるといえる事情が認められない現時点において、基本事件を千葉地方裁判所に移送した原決定は、民事訴訟法18条に基づく移送をすべきかどうかの判断が簡易裁判所の合理的裁量に委ねられていることを前提としても、同判断の際に考慮すべき事情を考慮したものであるとはいえず、裁量の範囲を逸脱したものというべきであるとして、原決定を取り消した事例。
2021.08.03
移送決定に対する即時抗告事件
LEX/DB25569780/千葉地方裁判所 令和 3年 6月18日 決定 (抗告審(即時抗告))/令和3年(ソ)第12号
基本事件は、放送法に基づいて設立された抗告人が、相手方が衛星系によるテレビジョン放送を受信することができるテレビジョン受信機を設置したことにより、相手方は、抗告人に対し、受信契約を締結し、本件受信契約に基づき受信料を支払う義務を負うなどと主張して、相手方に対し、放送法64条1項に基づき、本件受信契約締結の申込みに対する承諾の意思表示を求めるとともに、当該意思表示により成立する本件受信契約に基づき、令和2年10月分から令和3年3月分までの受信料の合計の支払を求めたところ、原審簡易裁判所が、事案の性質に鑑み、地方裁判所における審理が相当であるとして、民事訴訟法18条に基づき、職権で基本事件を千葉地方裁判所に移送する旨の決定をしたことから、抗告人がこれを不服として、即時抗告申立てをした事案で、本件においては、原決定がされた当時、いまだ基本事件について第1回期日の指定も相手方に対する訴状の送達もされておらず、抗告人の請求に対する相手方の答弁も不明であって、相手方の答弁次第では、簡易裁判所における簡易かつ迅速な審理により終局することも十分想定し得るところであり、現時点で、地方裁判所において審理した方が適切な解決となるような複雑な事件であることはうかがわれず、その他、現時点で、基本事件を地方裁判所に移送するのが相当というべき事情は認めるに足りないとして、原決定を取り消した事例。
2021.06.08
執行判決請求、民訴法260条2項の申立て事件
LEX/DB25571523/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 5月25日 判決 (上告審)/令和2年(受)第170号 等
被上告人らが、上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニア州の裁判所の判決について、民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求め、原審は、本件外国判決のうち上告人に対して14万0635.54米国ドル及びこれに対する本件外国判決の言渡し日の翌日である平成27年3月21日から支払済みまでの利息の支払を命じた部分についての執行判決を求めた被上告人らの請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件弁済が本件懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして本件外国判決についての執行判決をすることはできず、本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分は民事訴訟法118条3号に掲げる要件を具備すると認められ、本件外国判決については、本件弁済により本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分に係る債権が本件弁済の額の限度で消滅したものとし、その残額である5万0635.54米国ドル及びこれに対する利息の支払を命じた部分に限り執行判決をすべきであるとして、原判決中、主文第1項及び第2項を破棄し、被上告人らの請求を認容した第1審判決は正当であり、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.05.11
手数料還付申立て却下決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571482/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 4月27日 決定 (許可抗告審)/令和2年(行フ)第2号
平成31年4月21日執行の新宿区議会議員選挙で、当選人とされたが、選挙人からの異議の申出を受けた新宿区選挙管理委員会から、引き続き3か月以上新宿区の区域内に住所を有する者という被選挙権の要件を満たしていないとして、当選を無効とする決定を受け、東京都選挙管理委員会に審査の申立てをしたところ、これを棄却するとの裁決を受け、本件の本案訴訟(東京高等裁判所令和2年(行ケ)第1号)は、抗告人が、東京都選挙管理委員会を相手に、本件裁決の取消し及び本件決定の取消しに加え、上記選挙で当選人とされたAの当選を無効とすることを求めた(本件裁決の取消しを求める請求を「請求1」、本件決定の取消しを求める請求を「請求2」、Aの当選無効を求める請求を「請求3」)。本件は、抗告人が、本案訴訟の訴え提起の手数料として、訴訟の目的の価額320万円に応じた2万1000円を納めたが、訴訟の目的の価額は正しくは160万円であり、これに応じた手数料の額は1万3000円であるとして、民事訴訟費用等に関する法律9条1項に基づき、8000円の還付を申し立てたところ、原審は、本案訴訟の目的の価額は、少なくとも、請求1及び2に係る160万円と請求3に係る160万円を合算した320万円になるとして、抗告人の申立てを却下したため、抗告人が許可抗告した事案において、請求1及び2と請求3とでは、訴えで主張する利益が共通であるということはできないと判示し、本案訴訟の目的の価額は、少なくとも、請求1及び2に係る160万円と請求3に係る160万円とを合算した320万円になり、これに応じて訴え提起の手数料の額を算出することとなるとして、抗告人の申立てを却下した原審の判断は是認できるとし、本件抗告を棄却した事例。
2021.03.30
検証物提示命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571393/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 3月18日 決定 (許可抗告審)/令和2年(許)第10号
相手方は、本件メールの送信者に対する損害賠償請求訴訟を提起する予定であり、本件送信者の氏名、住所等(送信者情報)が記録され、又は記載された電磁的記録媒体又は文書(本件記録媒体等)についてあらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると主張し、訴えの提起前における証拠保全として、本件記録媒体等につき検証の申出をするとともに抗告人に対する検証物提示命令の申立てをしたところ、原審は、電気通信事業に従事する者には民事訴訟法197条1項2号が類推適用されるとした上で、本件申立てを認容すべきものとしたたため、抗告人が抗告した事案で、抗告人は、本件メールの送信者情報について黙秘の義務を免除されていないことが明らかであるから、本件記録媒体等を検証の目的として提示する義務を負わないというべきであり、これと異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消し、本件申立てを却下した事例。
2020.09.15
売却許可決定に対する執行抗告棄却決定に対する特別抗告及び許可抗告事件
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LEX/DB25571044/最高裁判所第二小法廷 令和 2年 9月 2日 決定 (特別抗告・許可抗告審)/令和2年(ク)第275号 等
担保不動産競売の手続における期間入札において最高価買受申出人に次いで高額の買受けの申出をした抗告人が、民事執行法71条4号イ(同法188条において準用するもの)に掲げる売却不許可事由を主張して、上記最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対して執行抗告をし、抗告棄却決定に対して更に抗告をした事案で、担保不動産競売の手続において、最高価買受申出人が受けた売却許可決定に対し、他の買受申出人は、特段の事情のない限り、民事執行法71条4号イに掲げる売却不許可事由を主張して執行抗告をすることはできないとし、抗告人は、最高価買受申出人から同人が入札することにつきあらかじめ告知を受けていれば自らが最高の価額で入札をした可能性がある旨を主張するものにすぎず、特段の事情が認められないことは明らかであるから、原々決定に対する抗告は不適法であるとして、原決定を破棄し、原々決定に対する抗告を却下した事例。
2020.04.14
文書提出命令に対する許可抗告事件
LEX/DB25570835/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 3月24日 決定 (許可抗告審)/令和1年(許)第12号
本件の本案訴訟(相手方が、JR北海道の開設する病院の看護師の過失により相手方の父であるAが転倒して頭部を床面に強打したために死亡したなどと主張して、同社に対し、使用者責任に基づく損害賠償を求めたもの)で、本件は、相手方が、上記の転倒によりAが死亡したこと等を立証するために必要であるとして、Aの死体について司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定のために必要な処分として裁判官の許可を受けてした解剖に関して作成した鑑定書等及び上記解剖に関して上記の者が受領した鑑定嘱託書その他外部の関係先から受領した資料並びにこれらの写し(電磁的記録媒体に記録される形式で保管されているものを含む。)であって抗告人が所持するもの(本件文書等)について、抗告人に民事訴訟法220条2号又は4号に基づく提出義務があると主張して、文書提出命令の申立てをし、原審は本件文書等について抗告人に民事訴訟法220条4号に基づく提出義務があるとし、本件文書等の提出を命じたため、抗告人が抗告した事案で、検察官、検察事務官又は司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書等又はその写しは、刑事事件関係書類に該当すると解するのが相当であるとし、以上と異なる原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、本件文書等について民訴法220条2号に基づく提出義務の存否を審理させるため、本件を原審に差し戻すこととした事例(補足意見がある)。
2020.04.14
文書提出命令等に対する許可抗告事件
LEX/DB25570834/最高裁判所第三小法廷 令和 2年 3月24日 決定 (許可抗告審)/令和1年(許)第11号
相手方が、本案訴訟(JR北海道の開設する病院の看護師の過失により相手方の父であるAが転倒して頭部を床面に強打したために死亡したなどと主張して、同社に対し、使用者責任に基づく損害賠償を求めた訴訟)で、転倒によりAが死亡したこと等を立証するために必要であるとして、Aの死体について地方公共団体である抗告人に所属する司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定のために必要な処分として裁判官の許可を受けてした当該死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体であって抗告人が所持するもの(本件準文書)について、民事訴訟法220条3号所定の「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成されたとき」に該当するなどと主張して、文書提出命令の申立てをした事案の抗告審で、本件準文書は、抗告人と相手方との間において、法律関係文書に該当するとし、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2019.08.20
文書提出命令申立についてした決定に対する抗告事件
LEX/DB25563340/大阪高等裁判所 令和 1年 7月 3日 決定 (抗告審)/令和1年(ラ)第620号
補助参加人において分譲マンション用地を購入するに際していわゆる地面師詐欺被害に遭い、購入代金55億円余を支払ったにもかかわらず所有権移転登記を受けることができなかったことにつき、株主である原告が、当時の役員である被告ら各自に善管注意義務違反ないし忠実義務違反があったとして、補助参加人のために前記購入代金相当額の損害賠償等を求めた株主代表訴訟の基本事件に対し、本件は、原告が上記の各義務違反を基礎付ける事実等を立証するために必要があるとして、補助参加人が所持する本件調査報告書外について文書提出命令を申し立てたところ、原決定は、補助参加人に対し、「本決定確定後14日以内に」本件調査報告書を受訴裁判所に提出するよう命ずる決定をしたため、これに不服の抗告人(本案被告ら補助参加人)が抗告した事案で、本件調査報告書は自己利用文書に該当するとは認められないとし、原決定は相当であるとして、本件抗告を棄却した事例。
2019.05.28
否認請求事件の排除決定に対する即時抗告事件
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LEX/DB25562764/福岡高等裁判所那覇支部 平成31年 4月10日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成31年(ラ)第15号
U企画(平成28年11月11日解散)を債務者とする破産手続開始申立事件(基本事件)において、同年10月5日にされた破産手続開始決定に伴って選任された破産管財人である相手方が、U企画から抗告人に対してされた本件金銭交付について、破産法に基づき否認する旨を主張して、抗告人に対し、同金員の返還を求める否認請求事件(本件事件)を申し立てたところ、弁護士Aらが抗告人の代理人として本件事件の手続に関与し、本件は、弁護士Aらは破産手続開始決定以前にU企画との間で委任契約を締結していたが、同契約に基づく委任事務と本件事件は同一の事件であるから、同弁護士らの代理行為は弁護士法25条1号に違反すると主張する相手方が、本件事件における弁護士Aらの代理行為の排除を求め、原審は、本件事件が弁護士Aらにおいて「相手方の(略)依頼を承諾した事件」(弁護士法25条1号)に該当するとして、弁護士Aらの代理行為を排除する旨の決定をしたため、抗告人が即時抗告した事案で、相手方の申立ては理由があり、これを認容した原決定は正当であるとして、本件抗告をら棄却した事例。
2019.02.26
移送決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25570030/最高裁判所第三小法廷 平成31年 2月12日 決定 (許可抗告審)/平成30年(許)第10号
離婚訴訟の被告が、原告は第三者と不貞行為をした有責配偶者であると主張して、その離婚請求の棄却を求めている場合で、上記被告が上記第三者を相手方として提起した上記不貞行為を理由とする損害賠償請求訴訟は、人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たるとし、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2019.01.29
執行判決請求事件
LEX/DB25449919/最高裁判所第二小法廷 平成31年 1月18日 判決 (上告審)/平成29年(受)第2177号
上告人らが、被上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニア州の裁判所の判決について、民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求める訴えを起こしたところ、原審は、上告人らの請求を棄却したため、これに対し、上告人が上告した事案で、外国判決に係る訴訟手続において、当該外国判決の内容を了知させることが可能であったにもかかわらず、実際には訴訟当事者にこれが了知されず又は了知する機会も実質的に与えられなかったことにより、不服申立ての機会が与えられないまま当該外国判決が確定した場合、その訴訟手続は、我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものとして、民訴法118条3号にいう公の秩序に反するということができると判示し、本件外国判決の内容を被上告人に了知させることが可能であったことがうかがわれる事情の下で、被上告人がその内容を了知し又は了知する機会が実質的に与えられることにより不服申立ての機会を与えられていたか否かについて検討することなく、その訴訟手続が民訴法118条3号にいう公の秩序に反するとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2019.01.16
損害賠償請求事件
LEX/DB25449874/最高裁判所第二小法廷 平成30年12月21日 判決 (差戻上告審)/平成29年(受)第1793号
郵便事業株式会社に対して弁護士法23条の2第2項に基づき、本件照会(23条照会)をした弁護士会である被上告人(一審原告)が、上記会社を吸収合併した上告人(一審被告)に対し、本件照会についての報告義務があることの確認を求めた差戻上告審の事案において、23条照会をした弁護士会が、その相手方に対し、当該照会に対する報告をする義務があることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であるとして、本件確認請求に係る訴えは却下すべきであり、原審の判断のうち本件確認請求の一部を認容した部分には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、また、原審の判断のうち本件確認請求の一部を棄却した部分にも、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決の全部を破棄し、本件報告義務確認請求に係る訴えを却下した事例。