2024.10.08
退職共済年金及び老齢厚生年金減額処分無効確認乃至取り消し等請求事件
LEX/DB25573746/最高裁判所第二小法廷 令和 6年9月13日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第352号
被上告人(一審原告、控訴審控訴人)が、上告人(一審被告、控訴審被控訴人)・国らを相手に、特老厚年金の一部を支給停止とする処分を除く3個の処分の取消しを求めるとともに、上記支給停止に係る特退共年金の支払を求めるなどし、第一審が訴えのうち処分の取消請求に係る部分を却下し、その余の請求を棄却したことから、被上告人が控訴し、控訴審が、複数の適用事業所を有する法人内での異動等により適用事業所が変更になったが、引き続き同一法人内において継続して就労しており、給与に関する雇用条件が異ならないような場合には、本件規定1に規定する者及び本件規定2に規定する者と同視して、本件配慮措置の適用があるものと解するのが相当であるところ、本件は上記の場合に当たるから、被上告人の平成28年5月分以降の特老厚年金及び特退共年金に本件配慮措置を適用すべきであり、本件各処分は違法であるとして、その取消請求を認容するとともに、特退共年金の支払請求の一部を認容したところ、上告人・国が上告した事案で、被上告人は、平成28年4月1日、一元化法施行日の前から有していたB高校を適用事業所とする厚生年金保険の被保険者資格を喪失したというのであるから、これにより、本件規定1に規定する者及び本件規定2に規定する者に該当しなくなったものというべきであり、被上告人の同年5月分以降の特老厚年金及び特退共年金には本件配慮措置は適用されず、以上によれば、控訴審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、被上告人の本件各処分の取消請求は理由がなく、また、特退共年金の支払請求のうち原審が認容した部分も理由がなく、これらはいずれも棄却すべきであるとして、原判決を変更した事例。
2024.09.24
出席停止処分差止め請求控訴事件、同附帯控訴事件
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LEX/DB25620823/大阪高等裁判所 令和6年 8月28日 判決 (控訴審)/令和6年(行コ)第24号 他
市議会は、市議会議員である被控訴人(附帯控訴人・原告)の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、被控訴人に対して陳謝の懲罰を科したが、被控訴人は、陳謝文の朗読を拒否したため、市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに被控訴人に陳謝の懲罰を科し、これに対し被控訴人が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に被控訴人に陳謝の懲罰を科すということが繰り返され、市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を被控訴人に科した後、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、被控訴人に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をしたところ、被控訴人が、本件処分が違法であると主張して、控訴人(附帯被控訴人・被告)香芝市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料及び弁護士費用並びに遅延損害金の支払を求め、原審が被控訴人の請求を一部認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した事案で、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるかの評価をするうえで、本件処分に至る経緯の中でされた陳謝処分についての適法性、相当性の検討は避けられないというべきであって、本件処分は違法との評価を避けられないとし、また、本件処分の内容、程度等に鑑み、被控訴人が指摘する事情を踏まえても、被控訴人が被った議員としての責務に対する侵害、名誉、信頼の棄損等による精神的苦痛の慰謝料は30万円をもって相当と認めるとして、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した事例。
2024.08.27
損害賠償請求事件(国家賠償請求)
LEX/DB25620432/東京地方裁判所 令和 6年 7月18日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第5542号
弁護士であった原告が、犯人隠避教唆の被疑者として検察官から受けた取調べに違法があり、精神的苦痛を受けたと主張して、被告・国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件取調べにおけるP4検察官の言動は、事案の内容・性質、嫌疑の程度及び取調べの必要性を考慮しても、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものといわざるを得ず、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであり、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえるところ、原告の請求は、被告に対し、違法な本件取調べと相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2024.08.13
公有水面埋立撤回処分に対し国土交通大臣がなした裁決の取消請求控訴事件
LEX/DB25620049/福岡高等裁判所那覇支部 令和 6年 5月15日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第7号
沖縄防衛局は、沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市内に所在する辺野古崎地区及びこれに隣接する本件埋立海域に設置するための公有水面の埋立てにつき、同県知事から公有水面埋立法42条1項の承認を受けていたが、事後に判明した事情等を理由として本件埋立承認を取り消す旨の処分(本件撤回処分)がされたことから、これを不服として国土交通大臣に対し行政不服審査法に基づく審査請求をしたところ、国土交通大臣は、本件撤回処分を取り消す旨の裁決をしたことから、本件埋立海域の周辺に居住する住民であると主張する控訴人(原告)らが、国土交通大臣の所属する被控訴人・国を相手方として、本件裁決の取消しを求め、原審が控訴人らの訴えをいずれも却下したため、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの主張するその余の観点から原告適格の有無について検討するまでもなく、控訴人らは、本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものということができるとし、控訴人らの本件訴えはいずれも適法であり、これを不適法として却下した原判決は取消しを免れないところ、本件訴訟の経過とその内容等に照らすと、本件については、原告適格に係る上記判断内容を踏まえて原審において更に弁論をする必要があると認められるとして、原判決を取り消し、本件を那覇地方裁判所に差し戻した事例。
2024.08.06
療養補償給付支給処分(不支給決定の変更決定)の取消、休業補償給付支給処分の取消請求事件
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LEX/DB25573630/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第108号
被上告人・法人の支局に勤務していた上告補助参加人が精神疾患を発症したことについて、札幌中央労働基準監督署長が、労働者災害補償保険法に基づき、療養補償給付及び休業補償給付の各支給処分をしたことにつき、被上告人が、メリット制の適用を受ける特定事業主は、自らの事業について業務災害保険給付等に係る支給処分(業務災害支給処分)がされた場合、同処分の法的効果により労働保険の保険料の納付義務の範囲が増大して直接具体的な不利益を被るおそれがあり、同処分の取消しを求めるにつき、法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)に当たると主張して、本件各処分の取消しを求めたところ、差戻し前第一審が、被上告人は本件各処分の取消訴訟の原告適格を有しないから、本件訴えは不適法であるとしてこれをいずれも却下したため、被上告人が控訴し、差戻し前控訴審が、被上告人はその特定事業についてされた本件各処分の取消しを求める原告適格を有するとして、第一審判決を取り消し、本件を第一審に差し戻したことから、上告人・国が上告した事案で、特定事業の事業主は、上記労災支給処分の取消訴訟の原告適格を有しないというべきであるとしたうえで、特定事業の事業主は、自己に対する保険料認定処分についての不服申立て又はその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張することができるから、上記事業主の手続保障に欠けるところはなく、以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、第1審判決は結論において正当であるとして、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した事例。
2024.08.06
賃料減額等請求事件
LEX/DB25573601/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 6月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1744号
地方住宅供給公社法にいう地方住宅供給公社であり、神奈川県内において、多数の住宅を賃貸している被上告人は、上告人らに、それぞれ、一棟の建物の一室を賃貸し、おおむね3年ごとに、上告人らに対し、各室の家賃を改定する旨を通知していたところ、上告人らが、被上告人に対し、本件各家賃改定による家賃の変更のうち適正賃料を超える部分は効力を生じないなどと主張して、家賃の額の確認を求めるとともに、変更後の家賃を支払ってきたことを理由に不当利得返還請求権に基づいて過払家賃の返還等を求め、原審が、地方公社は、公社法24条の委任を受けた地方住宅供給公社法施行規則16条2項に基づき、その賃貸する住宅の家賃を変更することができ、同項は、借地借家法32条1項に対する特別の定めに当たるから、公社住宅の使用関係について、同項の適用はないなどとして、上告人らの請求を棄却したところ、上告人らが上告した事案で、公社法24条の趣旨は、その内容を国土交通省令に委ねることにあると解され、当該省令において、公社住宅の使用関係について、私法上の権利義務関係の変動を規律する借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に対し、同項所定の賃料増減請求権とは別の家賃の変更に係る形成権を付与する旨の定めをすることが、公社法24条の委任の範囲に含まれるとは解されず、同項は、地方公社が公社住宅の家賃を変更し得る場合において、他の法令による基準のほかに従うべき補完的、加重的な基準を示したものに過ぎず、公社住宅の家賃について借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に対して上記形成権を付与した規定ではないというべきであるから、公社住宅の使用関係については、借地借家法32条1項の適用があると解するのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事例。
2024.06.04
法人税青色申告承認取消処分取消請求事件
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LEX/DB25573500/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 5月 7日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第334号
上告代理人の上告理由のうち憲法31条違反をいう部分について、税務署長が上告人に対してした、上告人の平成30年7月1日から令和元年6月30日までの事業年度以後の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(本件処分)につき、事前に防御の機会が与えられなかったことをもって、本件処分が違憲であるとの論旨で、法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえないなどとして、本件上告を棄却した事例(反対意見、補足意見がある)。
2024.03.12
生活保護基準引下げ処分取消等請求控訴事件
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LEX/DB25597542/名古屋高等裁判所 令和 5年11月30日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第31号
〔1〕原審第1事件原告らが、原判決別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第1事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分1)は、憲法25条の理念を受けた生活保護法3条、8条等に違反し、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであるから違法であるなどと主張して、本件各処分1の取消しを求め(原審第1事件・取消訴訟)、〔2〕原審第2事件原告らが、原判決別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第2事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分2)には本件各処分1と同様の違法事由があるなどと主張して、本件各処分2の取消しを求め(原審第2事件・取消訴訟)、さらに、〔3〕原審原告らが、本件各処分の根拠となった生活扶助基準の改定は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、被控訴人国に対し、それぞれ損害賠償金の支払等を求め、原審は、原審原告らの請求をいずれも棄却したため、控訴人ら(原審原告らの一部)が、これを不服として控訴した事案(なお、なお、控訴人13(原審第2事件原告)は、控訴状によれば、当審において、被控訴人国に対する損害賠償請求についての附帯請求の起算日を、原審における平成26年4月1日から平成25年8月1日に変更しており、当審において附帯請求の拡張をしたものと解される。)で、控訴人らの原審における請求はいずれも理由があり、これらを棄却した原判決は相当でなく、本件各控訴はいずれも理由があるから、原判決を取消し、控訴人らの上記請求をいずれも認容し、また、控訴人13の当審における拡張請求は、理由がないとして棄却した事例。
2024.02.20
出席停止処分差止め請求事件
LEX/DB25596863/奈良地方裁判所 令和 6年 1月16日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第14号
香芝市議会は、市議会議員である原告の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、原告に対して陳謝の懲罰を科したが、原告は、陳謝文の朗読を拒否した。市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに原告に陳謝の懲罰を科したが、原告が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に原告に陳謝の懲罰を科すということが繰り返された。市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を原告に科した後の令和4年12月5日、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、原告に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をした。本件は、原告が、本件出席停止処分が違法であると主張して、被告(香芝市)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案で、陳謝の拒否を理由にした出席停止処分について、市議会が裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したもので違法であるとして、請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2024.02.13
裁決取消請求事件
LEX/DB25573296/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 1月30日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第2号
上告人(原審原告)が、職務上の過失によって海難を発生させたとして門司地方海難審判所から裁決をもって小型船舶操縦士の業務を停止する懲戒を受けたため、被上告人(原審被告。海難審判所長)を相手に、裁決の取消しを求めたところ、原判決は本件裁決の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、原審は、上告人が、甲船が海上衝突予防法所定の灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば衝突を回避することができたことを認定説示していないものといわざるを得ず、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、本件事故に係る海難につき上告人に職務上の過失があるものということはできないとして、原判決を破棄し、本件事故に係る海難が上告人の職務上の過失によって発生したものであるか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2024.02.06
国家賠償請求事件
LEX/DB25596682/東京地方裁判所 令和 5年12月27日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第23302号
原告会社の代表取締役であったP1ら3名は、共謀の上、原告会社の業務に関し、外国為替及び外国貿易法の規制物件である噴霧乾燥器を経済産業大臣の許可を得ずに中華人民共和国及び大韓民国に輸出したとの外為法違反の容疑で、警視庁公安部の警察官及び東京地方検察庁所属の検察官により逮捕・勾留請求及び公訴提起されたが、その後、検察官により公訴が取り消された。本件は、原告らが、被告都及び被告国に対し、警視庁公安部の警察官による逮捕及び取調べ、並びに検察官による勾留請求及び公訴提起に違法があったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、〔1〕原告会社について名誉及び信用毀損に係る損害等総額2億8005万9104円の損害賠償等の支払を、〔2〕原告P1について慰謝料等総額5325万円の損害賠償の支払等を、〔3〕原告P2(原告会社の取締役であった者)について慰謝料等総額5596万5000円の損害賠償の支払等を、〔4〕亡P10(原告会社の顧問であった者)の相続人である原告P3について慰謝料等の損害賠償金の相続分等7700万円の支払等を、〔5〕亡P10の相続人である原告P4及び原告P5についてそれぞれ慰謝料等の損害賠償金の相続分等4950万円の支払等を、それぞれ求めた事案で、警視庁公安部の逮捕前の任意聴取で、機器の設計担当者ら複数の従業員が、機器には殺菌に必要な温度に達しない箇所があると具体的に説明しており、その確認は「犯罪の成否を見極める上で、当然に必要な捜査だった」と指摘し、実験をしていれば殺菌できないことは容易に明らかになったにもかかわらず、実験をせずに逮捕したことは違法であると認め、また、地検の検察官も、起訴前に同様の報告を受けており、確認していれば要件に該当しないことは、容易に把握できたと指摘し、勾留請求や起訴が違法と認め、被告国と被告都に約1億6000万円の賠償を命じた事例。
2024.02.06
地方自治法第245条の8第3項の規定に基づく埋立地用途変更・設計概要変更承認命令請求事件
★「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25596603/福岡高等裁判所那覇支部 令和 5年12月20日 判決 (第一審)/令和5年(行ケ)第5号
沖縄防衛局が、普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請をしたところ、被告(沖縄県知事)が変更を承認しない旨の処分をし、原告(国土交通大臣)からこれを取り消す旨の裁決や本件変更申請に係る変更の承認をするよう是正の指示を受けた後も本件変更承認をしないことから、原告が、被告に対し、地方自治法245条の8第3項に基づき、本件変更申請を承認すべきことを命ずる旨の裁判を求めた事案で、法定受託事務である本件変更申請に係る沖縄県の事務についての被告の管理等は法令の規定に違反するものであり、地方自治法245条の8所定の代執行以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるから、本件訴えに係る原告の請求は理由があるとして、沖縄防衛局がした令和2年4月21日付け沖防第2056号による普天間飛行場代替施設建設事業に係る埋立地用途変更・設計概要変更承認申請につき、被告がこの判決の正本の送達を受けた日の翌日から起算して3日以内に承認することを命じた事例。
2024.01.30
損害賠償請求権行使請求控訴事件
LEX/DB25596605/名古屋高等裁判所 令和 5年12月20日 判決 (控訴審)/令和5年(行コ)第33号
愛知県の住民である控訴人が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に関し、県が要綱に基づいてあいちトリエンナーレのあり方検証委員会及び同検討委員会を設置したことは、地方自治法138条の4第3項に規定するいわゆる附属機関条例主義に違反するとともに、被控訴人の組織編成権に係る裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、本件各委員会の委員に対する本件報償費等及び検証作業等に要した費用に係る支出負担行為等は違法であると主張して、県の執行機関である被控訴人を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、〔1〕本件各支出当時の県知事であるA知事に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を、〔2〕本件各支出の専決権者である本件職員に対し、地方自治法243条の2の2に基づく賠償命令をすることを求める住民訴訟で、原審が、本件訴えのうち一部却下、、一部棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案で、本件訴えのうち、原判決別紙検証費目録記載の「流用費目」欄の費目に係る「金額」欄の金員の支出、並びに原判決別紙報償費等目録記載の「報償費」欄及び「旅費」欄の金員のうち令和元年9月25日から同年11月26日までにされた支出負担行為及び支出命令について、Aに対し損害賠償請求を、Zに対し賠償命令をそれぞれ行うことを求める部分についてはこれを却下し、控訴人のその余の請求についてはこれらをいずれも棄却するのが相当であり、これと同旨の原判決は結論において正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.01.23
旅券不発給処分無効確認等請求事件
LEX/DB25596481/福岡地方裁判所 令和 5年12月 6日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第25号
原告は、日本国籍を有する父の子として日本において出生し、日本国籍を取得したが、2004年(平成16年)頃、自己の志望により米国の国籍を取得し、原告は、平成29年12月、外務大臣に対し、日本の旅券発給申請をしたが、外務大臣は、平成30年8月、国籍法11条1項により日本国籍を喪失していることを理由として、原告の上記旅券発給申請につき旅券不発給とする処分(本件処分)をした。本件は、原告が、国籍法11条1項は憲法の規定(憲法10条、22条2項及び13条、98条2項、14条1項)に反し無効であるとして、被告(国)に対し、本件処分の無効の確認請求、原告が日本国籍を有することの確認請求、原告が精神的苦痛を受けたことを理由として、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料3億円の一部請求として、慰謝料及び弁護士費用合計22万円等の支払請求をした事案で、国籍法11条1項が、憲法10条、13条及び22条2項並びに14条1項に違反せず、国籍法11条1項を改正しなかった立法不作為をもって、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2024.01.04
不当利得返還請求事件
LEX/DB25573204/最高裁判所第三小法廷 令和 5年12月12日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第317号
上告人が、市会議員であった被上告人に対し、本件有罪判決が確定したため、被上告人の当選は公職選挙法251条の規定により無効となり、被上告人は遡って市会議員の職を失ったなどとして、本件議員報酬等相当額及び本件政務活動費相当額の不当利得の返還等を求めたところ、原審は、上告人は本件会派の唯一の所属議員であった被上告人に対し本件政務活動費相当額の不当利得返還請求権を有するなどとした上で、被上告人の相殺の抗弁を一部認めて、上告人の不当利得返還請求を相殺後の残額の限度で認容したため、上告人が上告した事案で、上記市会議員の職を失った当選人は、上告人に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはないとし、被上告人は、上告人に対し、相殺の抗弁に係る不当利得返還請求権を有するものということはできないとし、相殺の抗弁は全部認められないところ、これを一部認めた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を変更した事例(反対意見及び補足意見がある)。
2023.12.19
助成金不交付決定処分取消請求事件
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LEX/DB25573159/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月17日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第234号
映画製作会社である上告人(原告・被控訴人)が、被上告人(被告・控訴人)の理事長に対し、「宮本から君へ」と題する劇映画の製作活動につき、文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をしたところ、理事長から、本件助成金を交付することは公益性の観点から適当でないとして、本件助成金を交付しない旨の決定(本件処分)を受けたため、被上告人を相手に、本件処分の取消しを求めたところ、第1審判決は、上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、原判決は、本件処分は適法であるとして、本件処分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとし、これと異なる原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件処分の取消請求を認容した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.11.28
情報不開示決定取消等請求事件
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LEX/DB25573120/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 判決 (差戻上告審)/令和4年(行ヒ)第296号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた被上告人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの)に基づき、東京矯正管区長に対し、被上告人が収容中に受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定は違法であると主張して、上告人を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審及び第1次控訴審は、本件情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たり、同法12条1項の規定による開示請求の対象から除外されるから、本件決定は適法であるとして、被上告人の請求をいずれも棄却したが、第1次上告審は、刑事施設に収容されている者(被収容者)が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないとし、本件情報は同法12条1項の規定による開示請求の対象となる旨判断して、第1次控訴審判決を破棄し、本件を原審に差戻した。その後の第2次控訴審は、本件訴えのうち本件決定の取消請求に係る部分につき、訴えの利益を欠くとして却下する一方、本件決定は行政機関個人情報保護法に反し違法であるとした上で、損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、第2次上告審は、本件決定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の損害賠償請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は結論において正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.09.19
地方自治法第251条の5に基づく違法な国の関与(是正の指示)の取消請求事件
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LEX/DB25573025/最高裁判所第一小法廷 令和 5年 9月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第143号
沖縄防衛局は、普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請(本件変更申請)をしたところ、上告人(原告・沖縄県)は変更を承認しない旨の処分(本件変更不承認)をした。被上告人(被告・国土交通大臣)は、沖縄防衛局の審査請求を受けて、本件変更不承認を取り消す裁決をし、その後、地方自治法245条の7第1項に基づき、沖縄県に対し、本件変更申請に係る変更の承認(本件変更承認)をするよう是正の指示をした。上告人は、本件指示を不服として、国地方係争処理委員会に対し、地方自治法250条の13第1項に基づく審査の申出をしたが、本件指示は違法でないと認める旨の審査結果の通知を受けたたため、上告人は、これを不服として、同法251条の5第1項1号に基づき、本件訴えを提起し、原判決は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件裁決は本件変更不承認が本件各規定に違反することを理由として本件変更不承認を取消したものであるところ、上告人は本件変更不承認と同一の理由に基づいて本件変更承認をしないものといえるから、そのことは地方自治法245条の7第1項所定の法令の規定に違反していると認められるものに該当するとし、本件指示は適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2023.08.29
懲罰決議取消等請求事件
LEX/DB25595611/大阪地方裁判所 令和 5年 7月14日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第154号
市議会は、議員である原告に対し、原告の市議会の定例会の一般質問における発言について謝罪及び反省を求める旨の決議をしたことについて、原告は、〔1〕本件決議は違法な処分であるとして、被告を相手に、本件決議の取消しを求めるとともに、〔2〕本件決議並びに市議会の広報誌への本件決議の掲載及び同広報誌の頒布により原告の名誉が毀損されるなどしたとして、被告市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、損害金等の支払を求めた事案において、本件決議は、地方自治法135条1項1号の「公開の議場における戒告」に当たらず、また、本件決議は、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に当たらないとし、本件取消しの訴えは、処分の取消しの訴えの対象とならない本件決議を対象として、処分の取消しの訴えを提起するものであるから不適法であるとして却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。
2023.07.25
行政措置要求判定取消、国家賠償請求事件
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LEX/DB25572932/最高裁判所第三小法廷 令和 5年 7月11日 判決 (上告審)/令和3年(行ヒ)第285号
一般職の国家公務員であり、性同一性障害である旨の医師の診断を受けている上告人(一審原告)が、国家公務員法86条の規定により、人事院に対し、職場のトイレの使用等に係る行政措置の要求をしたところ、いずれの要求も認められない旨の判定を受けたことから、被上告人(一審被告。国)を相手に、本件判定の取消し等を求め、第1審判決は、上告人の請求を一部認容したが、原判決は、本件判定部分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、本件判定部分に係る人事院の判断は、本件における具体的な事情を踏まえることなく他の職員に対する配慮を過度に重視し、上告人の不利益を不当に軽視するものであって、関係者の公平並びに上告人を含む職員の能率の発揮及び増進の見地から判断しなかったものとして、著しく妥当性を欠いたものといわざるを得ないとし、本件判定部分は、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとして、原判決中、人事院がした判定のうちトイレの使用に係る部分の取消請求に関する部分を破棄し、同部分につき被上告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。