注目の判例

2015年

2015.01.13
住居侵入、強姦致傷、窃盗、強姦被告事件(HIV感染知りながら女性に乱暴した事件 懲役23年)
LEX/DB25505260/横浜地方裁判所 平成26年11月14日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第2238号等
被告人は、強いて女性を姦淫する目的で、平成24年7月8日午前2時頃、横浜市内の当時の被害者女性方居室内に無施錠の玄関から侵入し、その頃から同日午前2時45分頃までの間、同所において、同女(当時21歳)に対し、その口を塞ぎ、「静かにしろ、騒ぐと殺すぞ。」と言うなどの暴行、脅迫を加え、その反抗を抑圧した上、強いて同女を姦淫し、その際、同女に全治約1週間を要する膣壁裂傷の傷害を負わせた(被告人は、HIVに感染していながら、強姦致傷及び強姦の犯行を4か月の間に5人もの被害者に対して繰り返し、その際に4件の窃盗も犯している)として、被告人を懲役23年に処した事例(裁判員裁判)。
2015.01.13
わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
LEX/DB25446840/最高裁判所第三小法廷 平成26年11月25日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第574号
日本在住の被告人は、日本及びアメリカ合衆国在住の共犯者らとともに、日本国内で作成したわいせつな動画等のデータファイルをアメリカ合衆国在住の共犯者らの下に送り、同人らにおいて同国内に設置されたサーバコンピュータに同データファイルを記録、保存し、日本人を中心とした不特定かつ多数の顧客にインターネットを介した操作をさせて同データファイルをダウンロードさせる方法によって有料配信する日本語のウェブサイトを運営していたところ、平成23年7月及び同年12月、日本国内の顧客が同配信サイトを利用してわいせつな動画等のデータファイルをダウンロードして同国内に設置されたパーソナルコンピュータに記録、保存し、平成24年5月、被告人らは、前記有料配信に備えてのバックアップ等のために、東京都内の事務所において、DVDやハードディスクにわいせつな動画等のデータファイルを保管した事実につき、刑法175条1項後段にいう「頒布」とは、不特定又は多数の者の記録媒体上に電磁的記録その他の記録を存在するに至らしめることをいうと解され、被告人らが運営する前記配信サイトには、インターネットを介したダウンロード操作に応じて自動的にデータを送信する機能が備付けられていたのであって、顧客による操作は被告人らが意図していた送信の契機となるものにすぎず、被告人らは、これに応じてサーバコンピュータから顧客のパーソナルコンピュータへデータを送信したというべきであり、不特定の者である顧客によるダウンロード操作を契機とするものであっても、その操作に応じて自動的にデータを送信する機能を備えた配信サイトを利用して送信する方法によってわいせつな動画等のデータファイルを当該顧客のパーソナルコンピュータ等の記録媒体上に記録、保存させることは、刑法175条1項後段にいうわいせつな電磁的記録の「頒布」に当たるとし、また、被告人らが、同項後段の罪を日本国内において犯した者に当たることも、同条2項所定の目的を有していたことも明らかであるとして、被告人に対しわいせつ電磁的記録等送信頒布罪及びわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪の成立を認めた原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2015.01.13
関税法違反被告事件
LEX/DB25446834/最高裁判所第二小法廷 平成26年11月7日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第1334号
被告人は、D、B、E、A、C及び氏名不詳者と共謀の上、税関長の許可を受けないで、うなぎの稚魚を中華人民共和国に不正に輸出しようと考え、成田国際空港第2旅客ターミナルにおいて、航空機の搭乗手続を行うに当たり、税関長に何ら申告しないまま、うなぎの稚魚合計約59.22kg在中のスーツケース6個を機内持込手荷物である旨偽って同所に設置されたエックス線装置による検査を受けずに国際線チェックインカウンターエリア内に持ち込み、あらかじめ入手した保安検査済シールを各スーツケースに貼付するなどした上、同カウンター係員に本件スーツケース6個を機内預託手荷物として運送委託することにより、税関長の許可を受けないでうなぎの稚魚を輸出しようとしたが、税関職員の検査により本件スーツケース内のうなぎの稚魚を発見された無許可輸出の未遂罪の事実につき、第一審判決は、被告人らが運送委託を企図したということを示したものと理解するのが相当であるとして、被告人を罰金88万円に処したところ、被告人は、第一審判決に対して量刑不当を理由に控訴し、原判決は、無許可輸出罪の実行の着手時期に関し、「検査済みシールを本件スーツケース6個に貼付するなどした」までの事実をもって、無許可輸出の未遂罪が成立するとはいえず、単に無許可輸出の予備罪が成立するにとどまるというべきであり、第一審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令適用の誤りがあるとして、第一審判決を破棄し、被告人を罰金50万円に処したところ、双方が上告した事案において、本件スーツケース6個を、機内預託手荷物として搭乗予約済みの航空機に積載させる意図の下、機内持込手荷物と偽って保安検査を回避して同エリア内に持ち込み、不正に入手した検査済みシールを貼付した時点では、既に航空機に積載するに至る客観的な危険性が明らかに認められるから、関税法111条3項、1項1号の無許可輸出罪の実行の着手があったものと解するのが相当であるとし、無許可輸出の予備罪にとどまるとして第一審判決を破棄した原判決には法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、第一審判決は、被告人に対し罰金88万円に処した量刑判断を含め、これを維持するのが相当であるとした事例(補足意見がある)。
2015.01.06
賠償金請求事件
LEX/DB25446831/最高裁判所第二小法廷 平成26年12月19日 判決 (上告審)/平成25年(受)第1833号
共同企業体との間で一般競争入札の方法により請負契約を締結した普通地方公共団体である被上告人が、後に当該共同企業体の構成員のうち1社につき公正取引委員会の排除措置命令及び課徴金納付命令が確定したことを理由に、当該請負契約の約款に基づき、他の構成員である上告人に対し、約定の賠償金及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審は、被上告人の請求を認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、本件賠償金条項において排除措置命令等が確定したことを要する「乙」とは、本件共同企業体又は「A建設及び上告人」をいうものとする点で合意が成立していると解するのが相当であり、後に上告人に対する排除措置命令等が確定すれば、被上告人としては改めて上告人に対して賠償金の支払を求めることができるから、本件賠償金条項の目的が不当に害されることにもならないとして、これと異なる原審の判断には法令の違反があるとし、原判決を破棄し、第一審判決を取消し、被上告人の請求を棄却した事例(補足意見がある)。
2015.01.06
延滞税納付債務不存在確認等請求事件
LEX/DB25446819/最高裁判所第二小法廷 平成26年12月12日 判決 (上告審)/平成25年(行ヒ)第449号
亡Aの相続人である上告人らが、Aの相続について、それぞれ、法定申告期限内に相続税の申告及び納付をした後、その申告に係る相続税額が過大であるとして更正の請求をしたところ、所轄税務署長において、相続財産の評価の誤りを理由に減額更正をするとともに還付加算金を加算して過納金を還付した後、再び相続財産の評価の誤りを理由に増額更正をし、これにより新たに納付すべきこととなった本税額につき、国税通則法60条1項2号、2項及び国税通則法61条1項1号に基づき、法定納期限の翌日から完納の日までの期間(ただし、法定申告期限から1年を経過する日の翌日から上記の増額更正に係る更正通知書が発せられた日までの期間を除く。)に係る延滞税の納付の催告をしたことから、上告人らが、被上告人を相手に、上記の延滞税は発生していないとして、その納付義務がないことの確認を求めた事案の上告審において、本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分は、本件各相続税の法定納期限の翌日から本件各増額更正に係る増差本税額の納期限までの期間については、国税通則法60条1項2号において延滞税の発生が予定されている延滞と評価すべき納付の不履行による未納付の国税に当たるものではないというべきであるから、本件各相続税のうち本件各増差本税額に相当する部分について本件期間に係る延滞税が発生しないと解するのが相当であるとし、異なる見解の原審の判断には、明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第一審判決を取消し、上告人らの請求をいずれも認容すべきであるとした事例(補足意見及び意見がある)。
2015.01.06
相続預り金請求事件
「新・判例解説Watch」H27.2月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25446820/最高裁判所第二小法廷 平成26年12月12日 判決 (上告審)/平成24年(受)第2675号
販売会社のB証券から購入した複数の投資信託に係る受益権を有していた亡A(平成8年10月死亡)の子である上告人(亡Aの法定相続人は、上告人を含めて3名で、その法定相続分は各3分の1)が、被上告人に対し、平成8年11月から平成10年9月までの間に発生した本件投資信託の収益分配金及び平成16年に発生した本件投資信託の元本償還金は,B証券又は同社を吸収合併した被上告人の亡A名義の口座に本件預り金の3分の1に当たる金員及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、原審は、本件預り金債権は当然に相続分に応じて分割されるものではないなどとして、上告人の請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、共同相続人の1人である上告人は、被上告人に対し、自己の相続分に相当する金員の支払を請求することができないとし、原審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2015.01.06
MBO株主代表訴訟事件(シャルレMBOに係る株主代表訴訟事件)
LEX/DB25505137/神戸地方裁判所 平成26年10月16日 判決 (第一審)/平成21年(ワ)第3484号
株式会社シャルレの株主である原告が、同社の取締役である被告らに対し、同社の二段階買収たるマネジメント・バイアウト(MBO)を行うに際し、被告らが利益相反等の善管注意義務違反及び忠実義務違反並びに情報開示義務違反にあたる行為をし、そのために本件MBOが頓挫したことから、同社が無駄な費用を支出し、その信用が失墜したと主張して、会社法432条1項、会社法430条及び会社法847条3項に基づき、連帯して、被告らに対し、同社に損害賠償を支払うことを求めて提起した株主代表訴訟において、本件MBOの実施に当たり被告ら取締役が同社に対して負っている善管注意義務のうち、被告Y1らはMBOの手続的公正さ確保に向けての配慮義務と情報開示義務に違反し、また、被告Y2らは情報開示義務に違反する等と示し、それら義務違反と相当因果関係のある損害額を算出して、原告の請求を一部認容した事例。