2025.03.25
固定資産価格審査決定取消請求事件
★「新・判例解説Watch」租税法分野 令和7年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
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LEX/DB25574074/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 2月17日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第177号
本件家屋を所有する上告人(被控訴人・原告)が、大阪市長により決定され家屋課税台帳に登録された本件家屋の平成30年度の価格を不服として大阪市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ、これを棄却する決定(本件審査決定)を受けたため、被上告人(控訴人・被告)・大阪市を相手に、本件審査決定の取消しを求め、第一審が上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、控訴審が第一審判決を取り消して請求を棄却したことから、上告人が上告した事案で、本件登録価格を決定するにあたり、本件家屋について、その低層階を構成する構造に応じたSRC造等経年減点補正率を適用したことが、評価基準に反するものということはできないとして、本件上告を棄却した事例(反対意見あり)。
2025.03.25
旅券発給拒否取消等請求控訴事件
LEX/DB25621991/東京高等裁判所 令和 7年 1月30日 判決(控訴審)/令和6年(行コ)第52号
一審原告(フリージャーナリスト)は、外務大臣に対して一般旅券の発給申請をし、外務大臣から、トルコへの入国が認められない者であるから旅券法13条1項1号に該当するとして、一般旅券の発給拒否処分を受けたため、一審原告は、一審被告(国)に対し、〔1〕本件旅券発給拒否処分の取消し、〔2〕主位的に全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、予備的にトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、〔3〕外務大臣が本件旅券発給拒否処分をしたことが違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として慰謝料等の支払を求め、原審が〔1〕を認容し、〔2〕及び〔3〕を棄却したところ、請求全部の棄却を求めて一審被告が控訴し、請求全部の認容を求めて一審原告が控訴した事案で、本件旅券発給拒否処分の取消請求は理由があるから認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきであるとし、これと同旨の原判決は相当であるとして、一審被告及び一審原告の本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2025.03.18
道路交通法違反被告事件
★「新・判例解説Watch」刑法分野 令和7年5月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25574057/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 2月 7日 判決(上告審)/令和5年(あ)第1285号
被告人が、交通整理の行われていない交差点において、普通乗用自動車を運転中、同交差点に設けられた横断歩道上を歩行中の被害者(当時15歳)に自車を衝突させて、同人を右前方約44.6メートル地点の歩道上にはね飛ばして転倒させ、同人に多発外傷等の傷害を負わせる交通事故を起こし、もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに、直ちに車両の運転を停止して、同人を救護するなど必要な措置を講じず、かつ、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとして、道路交通法違反で起訴され、第一審が被告人を懲役6か月の実刑に処したところ、被告人が控訴し、控訴審が、被告人の救護義務を履行する意思は失われておらず、一貫してこれを保持し続けていたと認められるとして、第一審判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡したことから、検察官が上告した事案で、被告人は、被害者に重篤な傷害を負わせた可能性の高い交通事故を起こし、自車を停止させて被害者を捜したものの発見できなかったのであるから、引き続き被害者の発見、救護に向けた措置を講ずる必要があったといえるのに、これと無関係な買物のためにコンビニエンスストアに赴いており、事故及び現場の状況等に応じ、負傷者の救護等のため必要な措置を臨機に講じなかったものといえ、その時点で道路交通法72条1項前段の義務に違反したと認められるところ、原判決は、本件において、救護義務違反の罪が成立するためには救護義務の目的の達成と相いれない状態に至ったことが必要であるという解釈を前提として、被害者を発見できていない状況に応じてどのような措置を臨機に講ずることが求められていたかという観点からの具体的な検討を欠き、コンビニエンスストアに赴いた後の被告人の行動も含め全体的に考察した結果、救護義務違反の罪の成立を否定したものであり、このような原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。
2025.03.18
オンライン資格確認義務不存在確認等請求事件(第1事件、第2事件、第3事件)
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LEX/DB25574026/東京地方裁判所 令和 6年11月28日 判決(第一審)/令和5年(行ウ)第81号 他
保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)には、令和5年4月1日に施行された令和4年厚生労働省令第124号による改正の結果、健康保険法63条3項1号の厚生労働大臣の指定を受けた病院又は診療所は、患者が同法3条13項に規定する電子資格確認(オンライン資格確認)によって療養の給付を受ける資格があることの確認を求めた場合には、原則として、同資格があることをオンライン資格確認によって確認しなければならず(3条2項)、また、その資格があることの確認ができるよう、あらかじめ必要な体制を整備しなければならない(同条4項)旨の規定が設けられたところ、医師又は歯科医師である原告らが、本件改正療担規則3条2項及び4項は、健康保険法70条1項の委任の範囲を逸脱する違法なものであって無効であるなどと主張して、被告に対し、本件各規定に基づく上記のような確認義務及び体制整備義務を原告らが負わないことの確認を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する損害賠償金及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案で、本件各規定の適法性について、本件各規定は、健康保険法70条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものということはできないものというべきであり、また、原告らの平成25年最判の射程に関する主張について、両事案は前提となる事実関係や性質が異なり、平成25年最判の上記説示部分が必ずしも本件にそのまま妥当するものではなく、さらに、オンライン資格確認の義務化が目的達成の手段として実質的関連性を欠くとはいえないから、オンライン資格確認の義務化によって原告らの憲法上の権利が違法に侵害されたということはできないなどとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2025.03.11
電子計算機使用詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用被告事件
LEX/DB25621843/大阪地方裁判所 令和 7年 1月14日 判決(第一審)/令和5年(わ)第590号 他
被告人B及び被告人Cが、被告人Dの許諾を得て、被告人D名義のETCカードを、被告人Dが乗車することなく高速道路で利用したとして、被告人Bが電子計算機使用詐欺の罪で、被告人Cが電子計算機使用詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪で、また被告人Dが電子計算機使用詐欺の罪でそれぞれ起訴され、被告人Bにつき懲役1年6か月、被告人Cの電子計算機使用詐欺、道路交通法違反につき懲役1年4か月、確定判決前余罪である電磁的公正証書原本不実記録・同供用につき懲役1年2か月、被告人Dにつき懲役10か月を求刑された事案で、被告人Cにつき、〔1〕前刑の執行猶予判決の宣告後確定前に、内容虚偽の住民異動届を提出して住民基本台帳ファイルに不実の記録をさせるなどし、〔2〕同判決確定後の刑執行猶予期間中に、高速道路で最高速度を超過して普通自動車を運転して進行したとして犯罪事実を認定し、一方、被告人3名に対する電子計算機使用詐欺の罪について、名義人本人以外の者によるETCカードの利用が一般に禁止されていることを踏まえても、本件ETCカード名義人である被告人Dと同被告人から使用の許諾を得た被告人Bとが生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、ETCカード使用の際には本人確認のための措置がクレジットカード使用の場合とは異なり厳格にはされていない状況の下で、G社等が本件各行為のような生計を一にする同居の事実婚の夫婦間での1枚のETCカードの貸し借りによって使用することまで、不正通行に当たるとして許容していない旨の周知を十分にしていなかったなどの本件事実関係の下では、本件各行為が処罰に値するだけの虚偽の情報を与えたものということはできないと解されるとして、被告人Cを上記〔1〕の罪について懲役1年2か月、執行猶予3年間に、また〔2〕の罪について懲役4か月、執行猶予2年間に処するとともに、執行猶予期間中被告人Cを保護観察に付する一方、被告人Cの電子計算機使用詐欺の点については無罪を言い渡し、被告人B及び被告人Dについても、いずれも無罪を言い渡した事例。
2025.03.11
住居侵入、殺人、殺人未遂、現住建造物等放火被告事件
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LEX/DB25621968/甲府地方裁判所 令和 6年 1月18日 判決(第一審)/令和4年(わ)第97号
犯行当時19歳であった被告人が、当時通っていた高校の後輩であるCの心に大きな傷を与えるために同人の家族を殺害すること等を考え、Cやその家族の住居であった被害者方に侵入した上で、Cの両親であるA及びBの2名を殺害し、Cの妹であるDにも攻撃を加えたが殺害の目的を遂げず、被害者方に放火して全焼させたとして、住居侵入、殺人、殺人未遂、現住建造物等放火の罪で死刑を求刑された事案で、被告人の成育環境等が限定的とはいえ本件各犯行の動機形成過程に影響を与えていたといえること、被告人が犯行時19歳の少年であったことなどの事情を合わせて最大限考慮したとしても、被告人の刑事責任の重大さや現時点での更生可能性の低さなどに照らすと、死刑選択を回避する事情となり得るものではないなどとして、被告人を死刑に処した事例(裁判員裁判)。
2025.03.04
監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
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LEX/DB25621841/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 1月27日 決定(上告審)/令和6年(あ)第753号
被告人が、監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪で懲役9年を求刑され、第一審が、被告人を懲役6年に処したところ、被告人が控訴し、控訴審が、被告人は、Bを現に監護する者であるAと共謀し、現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてBと性交をしたと認められるから、被告人に対し、刑法65条1項により、監護者性交等罪の共同正犯の成立を認めた原判決に誤りはなく、判決に影響を及ぼすような法令適用の誤りもないとし、また、原判決の量刑事情に関する認定、評価に論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、量刑判断も不当とはいえないとして、控訴を棄却したことから、被告人が上告した事案で、弁護人の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらず、なお、18歳未満の者を現に監護する者の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合、監護者の身分のない者には刑法65条1項の適用により監護者性交等罪の共同正犯が成立すると解するのが相当であり、被告人は、当時16歳であった本件児童の監護者ではないが、監護者である同児童の実母と意思を通じ、被告人との性交に応じるよう同実母から説得等された同児童と性交をしたというのであるから、被告人に監護者性交等罪の共同正犯が成立することは明らかであるとして、本件上告を棄却した事例。
2025.03.04
(受託収賄被告事件の証拠開示命令請求に関する決定に対する即時抗告申立て事件)
LEX/DB25621724/東京高等裁判所 令和 6年12月27日 決定(抗告審(即時抗告))/令和6年(く)第823号
被告人に対する受託収賄被告事件について、別紙の1から5までの各証拠について、弁護人が証拠開示命令請求をしたところ、東京地方裁判所が請求を棄却する決定をしたことから、これに対し、弁護人が即時抗告を申し立てた事案で、別紙の3記載の証拠について、他の理事の報酬の有無及び具体的な金額を知り、その理事の職務権限とC(無報酬であることに争いなし)とを比較することで、Cの職務権限の範囲を推認できるかを検討することは、被告人の防御の準備のために意味のあることと認められるところ、当該報酬は、受領の有無を含め、公共性の高い職務に関するものであることを考えると、プライバシー保護の要請もそれに応じた限度を有するものともいえ、開示された証拠の目的外使用は法律上禁止されていること(刑訴法281条の4、5)等を前提とすると、上記必要性の高さに対し、開示の弊害が大きいとまではいえないから、検察官は別紙の3記載の証拠を開示することが相当であり、原決定中、これについて証拠開示命令請求を棄却した点は、判断を誤っているといわざるを得ないとして、原決定を変更し、別紙の3記載の証拠を弁護人に開示することを命じ、その余の本件証拠開示命令請求を棄却した事例。
2025.02.25
選挙無効請求事件
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LEX/DB25574034/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 1月28日 判決(上告審)/令和5年(行ツ)第404号 等
千葉県議会議員の定数及び選挙区等に関する条例(昭和49年千葉県条例第55号)に基づいて令和5年4月9日に行われた千葉県議会議員一般選挙について、船橋市選挙区の選挙人である上告人が、本件条例のうち各選挙区において選挙すべき議員の数を定める規定が公職選挙法15条8項及び憲法14条1項に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の本件選挙区における選挙も無効であると主張して選挙無効を求めたところ、原審が、本件定数配分規定が定められた本件改正当時において同法15条8項ただし書にいう特別の事情があるとの評価がそれ自体として合理性を欠いていたとも、本件選挙当時において上記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたともいい難いから、本件選挙当時における本件定数配分規定が公選法15条8項に違反していたものとはいえず、適法というべきであるとして、請求を棄却したことから、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、本件選挙当時、本件条例による各選挙区に対する定数の配分が千葉県議会の合理的裁量の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法14条1項に違反していたものとはいえないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁等)の趣旨に徴して明らかというべきであり、また、その余の上告理由は、違憲をいうが、その前提を欠くものであって、民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しないとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、反対意見あり)。
2025.02.25
業務上過失致死被告事件
LEX/DB25621698/仙台高等裁判所 令和 6年12月16日 判決(控訴審)/令和5年(う)第68号
A船に船長として乗り組み、A船の操船業務に従事していた被告人が、猪苗代湖上を北東に向けて時速約15ないし20kmで航行するにあたり、針路前方左右の見張りを厳に行い、その安全を確認しながら航行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、針路前方左右の見張りを厳に行わず、その安全確認不十分のまま漫然前記速度で航行した過失により、折から、針路前方で、いずれもザップボードに乗るためにライフジャケットを着用して湖上に浮かんでいたP4(当時8歳)、P5(当時35歳)及びP6(当時8歳)に気付かないまま、P4ら3名に自船後部に設置された推進器の回転中のプロペラを接触させ、よって、P4に傷害を負わせて死亡させるとともに、P5及びP6にそれぞれ傷害を負わせたとして、業務上過失致死傷の罪で起訴され、原審が被告人を禁錮2年に処したところ、被告人が控訴した事案で、被告人が本件時、針路前方左右の見張りを厳に行い、安全を確認しながら航行したとしても、本件事故に至るまでの間に、被害者らを発見することができず、本件事故を回避することができなかった具体的な可能性を否定することはできないといわざるを得ず、被告人に過失を認めることはできないところ、原判決は、視認距離に関する証拠評価について誤りがあり、A船の航路について客観証拠と整合しない認定をした結果、被告人の過失について事実を誤認するに至ったものであり、この点が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.02.18
第二次世界大戦戦没者合祀絶止等請求事件
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LEX/DB25574001/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 1月17日 判決(上告審)/令和6年(受)第275号
靖國神社は、被上告人(被告・被控訴人)・国から第二次世界大戦で戦没した軍人及び軍属の氏名等の情報の提供を受け、それらの者を合祀していたところ、大韓民国の国籍を有する上告人(原告・控訴人)らが、被上告人に対し、被上告人が、上告人らの了承を得ずに、靖國神社に上告人らの各父親の情報をも提供した行為は違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく慰謝料の支払等を求め、第一審が請求をいずれも棄却した事件の上告審の事案で、上告人らの請求に係る損害賠償請求権については、平成29年法律第44号による改正前の民法724条後段の除斥期間が経過していることが明らかであり、そして、原審が適法に確定した事実及び上告人らの主張を精査しても、被上告人が上記除斥期間の主張をすることが、信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断するに足りる事情があるとはうかがわれないから、本件情報提供行為に係る上告人らの損害賠償請求を棄却すべきものとした原審の結論は是認することができ、論旨は、原判決の結論に影響を及ぼさない事項についての違法をいうに帰着し、採用することができないとして、本件上告を棄却した事例(原判決を破棄して事件を原裁判所に差し戻す旨の反対意見あり)。
2025.02.18
株式買取価格決定に対する抗告事件(ファミリーマート株式公開買付けにかかる株式買取価格決定申立事件抗告審決定)
LEX/DB25621723/東京高等裁判所 令和 6年10月31日 判決(抗告審)/令和5年(ラ)第977号
抗告人F社が令和2年11月16日を効力発生日として行った株式併合(本件株式併合)に反対した株主である相手方A、相手方B、相手方RMB及び抗告人O社ら(本件株主ら)が、抗告人F社に対し、それぞれが保有する普通株式を公正な価格で買い取るよう請求したが、その価格の決定につき協議が調わなかったため、抗告人F社、相手方B、相手方RMB及び抗告人O社らが、会社法182条の5第2項に基づき、価格の決定の申立てをしたところ、原審が、本件株主らが保有する抗告人F社の合計414万2732株の株式(本件対象株式)の買取価格を1株につき2600円と決定したことから、抗告人F社及び抗告人O社らが、原決定を不服として抗告した事案で、(1)本件公開買付けが「一般に公正と認められる手続」により行われたと認めることはできないとし、(2)株主分配価格が公正なものであったならば当該株式買取請求がされた日においてその株式が有していると認められる価格について、本件特別委員会の判断方法が不合理なものということはできないなどとし、本件株主らが保有していた本件対象株式の買取価格は、1株につき2600円と定めるのが相当であり、これと同旨の原決定は相当であるとして、本件各抗告をいずれも棄却した事例。
2025.02.12
殺人、覚せい剤取締法違反被告事件(資産家覚せい剤中毒死無罪判決)
LEX/DB25621573/和歌山地方裁判所 令和 6年12月12日 判決(第一審)/令和3年(わ)第156号
被告人が、法定の除外事由がないのに、b方において、夫であるb(当時77歳)に対し、殺意をもって、何らかの方法により致死量の覚せい剤であるフエニルメチルアミノプロパン又はその塩類を情を知らない同人に経口摂取させ、よって、同人を急性覚せい剤中毒により死亡させて殺害するとともに、覚せい剤を使用したとして、殺人、覚せい剤取締法違反の罪で無期懲役を求刑された事案で、被告人が、本件時にbに致死量を超える覚せい剤を摂取させることは一応可能であり、被告人が、本件に先立ち、インターネット上の掲示板を使って致死量を超える覚せい剤を注文し、現実に密売人と対面して代金と引換えに品物を受け取ることまでしていること、本件当日、b方でbと2人きりでいた時間帯のうち、1時間余りの間に集中して繰り返し2階と1階を行き来するという普段と異なる行動をとっていること、さらに、被告人には、bの死亡により多額の遺産を直ちに相続できるなどbを殺害する動機になり得る事情があったことは、被告人がbに覚せい剤を摂取させて殺害したのではないかと疑わせる事情であるものの、これらの事情を検察官が指摘する被告人の検索履歴等と併せ考慮しても、被告人がbを殺害したと推認するに足りず、さらに、消去法で検討しても、bが本件時に初めて覚せい剤を使用し、その際に誤って致死量を摂取して死亡した可能性については、これがないとは言い切れないから、本件公訴事実については犯罪の証明がないとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2025.02.12
各株券引渡請求控訴、独立当事者参加事件
LEX/DB25621727/東京高等裁判所 令和 6年12月 4日 判決(差戻控訴審)/令和6年(ネ)第2672号
控訴人Aは、株券発行会社であるF社につき、本件株券1(合計345株の株券のうち240株分の株券(100株券2枚及び10株券4枚))を所有し、被控訴人Cが本件株券1を占有していると主張し、また、控訴人Bは、本件株券2を所有し、被控訴人Dが本件株券2を占有していると主張して、控訴人Aは被控訴人Cに対し、控訴人Bは被控訴人Dに対し、それぞれ、所有権に基づき、本件株券1又は本件株券2の引渡しを求め、第1審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが控訴をし、差戻前控訴審で、参加人が、本件株式1(本件株券1が表章するF社の株式)を控訴人Aから買い受け、本件株式2(本件株券2が表章するF社の株式)を控訴人Bから買受けたなどと主張して、独立当事者参加の申出をし、本件株券1及び本件株券2の参加人への引渡しを求めたが、その後、訴えの追加的変更をして、主位的に、被控訴人Cとの間で参加人が本件株式1の株主であることを、被控訴人Dとの間で参加人が本件株式2の株主であることの各確認を求め、予備的に、各株主権に基づき、被控訴人Cに対し本件株券1の、被控訴人Dに対し本件株券2の各引渡しを求めた。なお、控訴人らは、被控訴人らの承諾を得て訴訟から脱退した。差戻前控訴審は、株券発行会社の株式の譲渡は、当該株式に係る株券を交付しなければ、譲渡当事者間においてもその効力を生じないところ、控訴人らは株券発行前に株式の譲渡を受けたもので当該譲渡は無効であるなどとして、参加人の請求をいずれも棄却したため、参加人が、上告及び上告受理の申立てをし、最高裁は、参加人の上告についてはこれを棄却する旨の決定をしたが、参加人の上告受理の申立てに基づき、事件を上告審として受理した上、株券の発行前にした株券発行会社の株式の譲渡は、譲渡当事者間においては、当該株券の交付がないことをもってその効力が否定されることはない、また、株券発行会社の株式の譲受人は、譲渡人に対する株券交付請求権を保全する必要があるときは、債権者代位権により譲渡人の株券発行会社に対する株券発行請求権を代位行使することができるなどとして、差戻前控訴審判決を破棄し、事件を控訴審に差し戻した。差戻後控訴審は、参加人の主位的請求(本件株式1及び本件株式2に関する株主権確認請求)はいずれも理由があると判断し、参加人の主位的請求をいずれも認容した事例(なお、原判決は、控訴人らが本件訴訟から脱退したことにより失効していることから、主文で明らかにした)。
2025.02.04
「結婚の自由をすべての人に」請求控訴事件
LEX/DB25621576/福岡高等裁判所 令和 6年12月13日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第584号
同性の者との婚姻届を提出したが受理されなかった控訴人(原告)らが、被控訴人(被告)・国に対し、婚姻に関する民法及び戸籍法の諸規定が、異性間の婚姻のみを認め、同性同士の婚姻を認めていないことは、憲法13条、14条及び24条に違反していることが明白であるにもかかわらず、国会は正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠っており、これにより精神的苦痛を被ったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、各慰謝料等の支払を求めたところ、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らが本件各控訴を提起した事案で、(1)〔1〕本件諸規定のうち、異性婚のみを婚姻制度の対象とし、同性のカップルを婚姻制度の対象外としている部分は、異性を婚姻の対象とすることができず、同性の者を伴侶として選択する者の幸福追求権、すなわち婚姻の成立及び維持について法制度による保護を受ける権利に対する侵害であり、憲法13条に違反するものといわざるを得ず、また同性のカップルを法的な婚姻制度の対象とすることは、およそ公共の福祉に反するものではないとし、〔2〕憲法13条に違反する差別的取扱いが不合理なものであることは自明であるから、これが憲法14条1項にも違反することは明らかであるとし、〔3〕また婚姻に関する法律は個人の尊厳に立脚して制定されるべき旨を定める憲法24条2項に違反することは明らかであるとする一方、(2)本件諸規定を巡る下級審裁判所の判決をみると、その判断内容は区々であり、最高裁判所による統一的判断は未だ示されておらず、これを踏まえると、本件立法不作為につき、国会議員に故意又は過失があると認めるのは困難であるから、本件立法不作為が国家賠償法1条1項の各要件を充足するとはいえないとして、本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2025.02.04
独占禁止法違反行為差止等請求控訴事件
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LEX/DB25621286/大阪高等裁判所 令和 6年 9月12日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第1531号
被控訴人(被告)が販売するインクジェットプリンター用の純正品インクカートリッジに関し、使用済みの純正品を回収してインクを充填し、インク残量データを初期化するなどして再使用した再生品インクカートリッジを製造して「エコリカ」ブランドとして販売していた控訴人(原告)が、被控訴人に対し、〔1〕被控訴人が平成29年9月以降現在まで販売している型番BCI-380及びBCI-381シリーズのインクカートリッジ(本件純正品)において、ICチップに記録されるインク残量データを初期化することができない仕様とするなどしたことが、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律19条により禁止される、同法2条9項6号所定の「不公正な取引方法」として昭和57年6月18日公正取引委員会告示第15号(一般指定)が規定する「抱き合わせ販売等」(一般指定10項)又は「競争者に対する取引妨害」(一般指定14項)に当たり、被控訴人がこのような不公正な取引を行った結果、控訴人は、本件純正品の再生品インクカートリッジを販売できなかったなどと主張して、独占禁止法24条に基づき、本件純正品につきインク残量データを初期化して再使用することができない電子デバイス等を用いないことを求める(本件差止請求)とともに、〔2〕このような不公正な取引は不法行為を構成するとして、民法709条に基づき、損害の一部及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、被控訴人が競争者の商品を需要者に買わせないよう妨害したということはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2025.01.28
不作為違法確認等、国家賠償等請求事件
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LEX/DB25573946/最高裁判所第二小法廷 令和 6年12月16日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第430号
上告人らが、被上告人・国に対し、上告人らがSACO見舞金受諾書を提出しないことを理由に沖縄防衛局長がSACO見舞金の支払手続をとらなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、同項に基づき、上記損害金元金と上記慰謝料の差額に相当する額の損害賠償等を求めたところ、第一審が請求を一部却下し、その余を棄却したため、上告人らが控訴し、控訴審が控訴をいずれも棄却したことから、上告人らが上告した事案で、事実関係等によれば、上告人らと被上告人との間において、SACO見舞金を支給する旨の合意は成立していないというのであるから、上告人らはSACO見舞金の支給を受ける権利を有するものということはできず、また、他に、SACO見舞金の支給に関し、上告人らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたというべき事情も見当たらないから、被上告人は、沖縄防衛局長が上告人らに対しSACO見舞金の支払手続をとらなかったことにつき、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負わないとしたうえで、以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとするとして、本件上告を棄却した事例(意見あり)。
2025.01.28
覚醒剤取締法違反、関税法違反、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反被告事件
LEX/DB25621560/千葉地方裁判所 令和 6年11月27日 判決(第一審)/令和4年(わ)第1722号
被告人が、覚醒剤取締法違反、関税法違反、国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反の罪で、懲役7年及び罰金200万円を求刑された事案で、本件においては、本件貨物の中身が覚醒剤を含む違法薬物かもしれないとの認識が認められれば、各罪について故意が認められ、また、そのような認識が共犯者との共謀を認定する前提となるところ、麻薬特例法違反の罪については、故意が認められ、本件の経緯によれば、被告人と共犯者との共謀も明らかに認められるから、被告人には、同罪が成立するが、他方で、起訴状記載の公訴事実第1に係る覚醒剤取締法違反(営利目的輸入の罪)については、既遂時、すなわち覚醒剤が隠し入れられた本件貨物がF空港において航空機外に搬出された時点までに、前記認識が生じていたとは認められないから、被告人に故意及び共謀が認められず、同罪は成立しないとしたうえで、本件は、組織的な違法薬物の密輸事案であるところ、本件当時社会経験に乏しく未熟であった被告人が、組織に末端の立場として利用された側面があること、被告人が本件犯行時少年であり現在も若年であること、被告人が反省の態度を示しており更生の意欲も高いことのほか、更生に家族の支援も期待できることに照らせば、被告人を主文の刑に処したうえ、その刑の執行を猶予し、家族の指導監督の下、社会内で更生する機会を与えることが相当であるとして、被告人を懲役1年に処するとともに、3年間その刑の執行を猶予し、一方、本件公訴事実中、覚醒剤取締法違反及び関税法違反の点については、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.01.21
行政処分取消請求控訴事件
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LEX/DB25573869/札幌高等裁判所 令和 6年10月18日 判決(控訴審)/令和4年(行コ)第1号
北海道猟友会甲支部の支部長であり、ヒグマを駆除するためにライフル銃を発射した被控訴人が、公安委員会から銃砲所持許可を取り消す旨の処分を受けたところ、当該処分は銃砲刀剣類所持等取締法(令和3年6月16日号外法律第69号による改正前のもの)所定の要件を満たさず、また、同公安委員会の判断は裁量権を逸脱・濫用したものであると主張して、控訴人・北海道に対し、その取消しを求め、原審が被控訴人の請求を認容したところ、控訴人が控訴した事案で、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)は、本件建物及びe会館が存した方角(北東及び北)とさほど乖離しておらず、本件一般住宅、本件物置及び本件空き家についても、その方角(北東、北北西及び北北西)が、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)と大きく乖離するものではなかったこと、本件周辺建物5軒は、いずれも本件発射行為をした位置から90メートル以内にあったことを考慮すれば、本件発射行為は、「建物等に向かってする銃猟行為」に当たるというべきであるとし、また、公安委員会の判断が、重要な事実を欠くか、又は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとして認めることはできないから、同公安委員会の判断が裁量権の逸脱・濫用に該当するとはいえないとして、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例。
2025.01.21
損害賠償請求事件
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LEX/DB25621455/名古屋地方裁判所 令和 6年 3月 6日 判決(第一審)/令和5年(ワ)第2684号
本件交通事故に関して、原告が、被告に対し、損害賠償を請求し、これに対し、被告が、原告の被告に対する損害賠償請求権は、被告が申し立てた破産手続において免責許可決定が確定したときは、同決定の効力により免責されるべきものであると主張した事案で、被告は、運転免許が停止されていた状態で自動車を運転し、本件事故を生じさせたところ、交差点を右折するに際し、横断歩道を歩行中の者を看過したこと自体は過失であるとしても、免許停止中の運転は故意的なものといわざるを得ず、悪質であるから、被告の悪質性に鑑み、傷害慰謝料を増額することが相当であり、原告の症状及び入通院日数を考慮すると、傷害慰謝料は230万円とすることが相当であるが、被告の原告に対する不法行為は、故意又は重大な過失により人の身体を害したものともいえないから、原告の被告に対する損害賠償請求権は、前記破産手続の中で免責許可決定が確定したときは、同許可決定の効力を受けるものであり、被告は、その責任を免れるものと認められるとし、原告の請求は、被告に対する免責許可決定が確定したときは、原告が、本件事故によって発生した、被告に対する民法709条に基づく損害賠償請求権に基づき、被告から同賠償額及びこれに対する令和2年11月18日から同免責許可決定が確定する日の前日まで年3パーセントの割合による金員を受領する権利を有することを確認する限度で理由があるとして認容し、その余の請求は理由がないとして棄却した事例。