2025.04.22
損害賠償請求事件
LEX/DB25574126/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月 7日 判決(上告審)/令和5年(受)第927号
自殺したA警部補の父母である上告人ら(第一審原告ら、控訴審被控訴人ら)が、同警部補の自殺は、同警部補が過重な業務に従事し、強度の精神的及び肉体的負荷を受けた結果、うつ病等の精神疾患を発症し、その精神疾患の影響によって行われたものであるところ、これについて、A警部補の職務を管理監督すべき静岡県警察の公務員は、A警部補が過重な業務に従事してその心身の健康を損なうことがないよう配慮すべき安全配慮義務に違反したものであると主張して、同警部補の所属する静岡県警察の設置者である被上告人(第一審被告、控訴審控訴人)静岡県に対し、国家賠償法1条1項による損害賠償請求権に基づき、同警部補の死亡による慰謝料等の支払を求め、第一審が上告人らの請求を一部認容したところ、被上告人が控訴し、控訴審が被上告人の予見可能性を否定し、第一審判決中、被上告人敗訴部分を取り消し、上告人らの請求をいずれも棄却したことから、上告人らが上告した事案で、警部補の上司らは、A警部補に対する職務上の指揮監督権限を有する者として、その権限を行使するにあたって、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してA警部補がその心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負っていたにもかかわらず、当該注意義務を怠ったというべきであり、これによってA警部補が精神疾患を発症して自殺するに至ったということができるから、被上告人は、上告人らに対し、A警部補の自殺により上告人らが被った損害について、A警部補の上司らが上記注意義務に違反したことを理由として国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うというべきであるところ、控訴審は、A警部補の従事していた業務が本件記述にいう「質的に過重な業務」に該当しないことのみをもって直ちに上記業務とA警部補の自殺との間に相当因果関係があるとは認め難いとしたものであるが、この控訴審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるから、原判決は破棄を免れないとして、原判決を破棄し、本件を控訴審に差し戻した事例(補足意見あり)。
2025.04.22
業務上過失致死傷被告事件
LEX/DB25574124/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月 5日 決定(上告審)/令和5年(あ)第246号
東京電力会長等を務めた被告人aら3名が、東電が設置した本件発電所の原子炉施設及びその付属設備等が想定される自然現象により原子炉の安全性を損なうおそれがある場合には、防護措置等の適切な措置を講じるべき業務上の注意義務があったところ、10m盤を超える津波の襲来によってタービン建屋等が浸水し、炉心損傷等によるガス爆発等の事故が発生することがないよう、防護措置等の適切な措置を講じることにより、これを未然に防止すべき業務上の注意義務があったのに、これを怠ったことにより、傷害及び死の結果が発生したとして、業務上過失致死傷罪に問われ、第一審が被告人らにいずれも無罪を言い渡したところ、検察官の職務を行う指定弁護士らが控訴し、控訴審が、被告人らについて、本件発電所に10m盤を超える津波が襲来することの予見可能性があったとは認められず、本件発電所の運転停止措置を講じるべき業務上の注意義務が認められないとした第一審判決の法的な評価は妥当であるなどとして、本件各控訴を棄却したことから、検察官の職務を行う指定弁護士らが上告した事案で、検察官の職務を行う指定弁護士らの上告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとしたうえで、東京電力の役員であった被告人らにおいて、本件発電所の運転停止措置を講じるべき業務上の注意義務が認められないとして、被告人らに無罪を言い渡した第1審判決を是認した原判断は、その法的な評価を含め、相当であるとして、本件各上告を棄却した事例(補足意見あり)。
2025.04.15
過料決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
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LEX/DB25574121/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 3月 3日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第31号
宗教法人である世界平和統一家庭連合(本件法人)の所轄庁である文部科学大臣は、東京地方裁判所に対し、本件法人が、当該宗教法人の業務又は事業の管理運営に関する事項に関し、報告をしなかったことは、宗教法人の代表役員等を過料に処する場合について定める宗教法人法88条10号に該当するとして、本件法人の代表役員である抗告人を過料に処すべきとする通知をし、東京地方裁判所は、抗告人を過料10万円に処する旨の決定(原々決定)をしたところ、抗告人が抗告し、抗告審が原々決定に対する抗告人の抗告を棄却した(原決定)ことから、抗告人が許可抗告をした事案で、民法709条の不法行為を構成する行為は、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害するものであるから、当該行為が著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる事態を招来するものであってこれに関係した宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切となることも、十分にあり得ることであるから、同条の不法行為を構成する行為が同法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解することは、同号の上記趣旨に沿うものというべきであり、また、解散命令は、宗教法人の法人格を失わせる効力を有するにとどまり、信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わないものであるところ、ある行為が同号所定の行為に当たるといえるためには、その行為が単に法令に違反するだけでなく、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為でなければならないことなどに照らせば、上記のように解したとしても、同号の規定が、宗教法人の解散命令の事由を定めるものとして、不明確であるとも過度に緩やかであるともいえず、以上によれば、民法709条の不法行為を構成する行為は、同法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為に当たると解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2025.04.15
仮の差止めの申立て一部認容決定に対する抗告審の一部取消決定に対する許可抗告事件
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LEX/DB25574110/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 2月26日 決定(許可抗告審)/ 令和6年(行フ)第1号
関東運輸局長が、国土交通大臣から委任された権限により、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(特措法)16条1項に基づき、本件交通圏におけるタクシー事業に係る旅客の運賃の範囲(本件公定幅運賃)を定め、いずれも同法3条の2第1項により準特定地域に指定されている東京都特別区、三鷹市及び武蔵野市の区域に営業所を有する、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む者である相手方らは、それぞれ、本件公定幅運賃の下限を下回る運賃を定めて、同法16条の4第1項による届出をしたところ、相手方R社及び相手方J社が、それぞれ、本件各不利益処分等の差止めを求める訴訟(本案訴訟)に係る差止めの訴えを提起し、併せて、本件各不利益処分等の仮の差止めを求める各申立てをし、第一審が、本件各不利益処分等のうち、運賃変更命令及び事業許可取消処分について、仮の差止めを命じたことから、抗告人・国が即時抗告し、抗告審が、事業許可取消処分に係る部分については、原審と異なり、理由がないとして、原決定を一部取り消し、上記取消部分に係る相手方らの申立てをいずれも却下し、その余の本件抗告をいずれも棄却したところ、抗告人が許可抗告をした事案で、本件公定幅運賃の下限の設定につき、公定幅運賃の変更の程度及び当該変更によるタクシー事業者への影響の程度を考慮していないことを理由として、本件変更が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであると一応認められるとした抗告審の判断には、公定幅運賃の変更に係る裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原決定中、運賃の変更を命ずる処分に関する部分を破棄し、同部分につき原々決定を取り消し、相手方らの申立てを却下した事例(反対意見あり)。
2025.04.15
行政文書不開示決定取消等請求控訴事件
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LEX/DB25622103/大阪高等裁判所 令和 7年 1月30日 判決(控訴審)/令和5年(行コ)第118号
控訴人(原告)が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条に基づき、財務大臣及び近畿財務局長に対し、学校法人Fに対する国有地の売却に関連する被疑事件の捜査について、財務省及び近畿財務局が東京地方検察庁又は大阪地方検察庁に対して任意提出した一切の文書及び準文書の開示請求をしたところ、財務大臣及び近畿財務局長から、当該行政文書の存否を答えるだけで同法5条4号所定の不開示情報を開示することになるとして、同法8条及び9条2項に基づき当該行政文書の存否を明らかにしないで不開示とする各決定を受けたため、控訴人が、被控訴人(被告)・国に対し、上記各決定の取消しを求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、本件各請求対象文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することになるとはいえないし、本件各被疑事件における任意提出の範囲が明らかになることにより、将来の同種事犯のみならず犯罪一般の捜査等に支障を及ぼすおそれがあるものとも認められないところ、財務省及び近畿財務局が控訴人に対してした本件各不開示決定は違法であって、これらはいずれも取り消されるべきであるから、これと異なる原判決は相当でないとして、原判決を取り消したうえ、本件各不開示決定を取り消した事例。
2025.04.08
特許権侵害差止等請求事件(表示装置、コメント表示方法、及びプログラム)
LEX/DB25574108/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月 3日 判決(上告審)/令和5年(受)第14号 他
名称を「表示装置、コメント表示方法、及びプログラム」とする発明の本件特許権1及び本件特許権2を有する被上告人(第一審原告、控訴審控訴人)が、上告人(第一審被告、控訴審被控訴人)FC2が提供する各サービスに用いられている各プログラムは本件特許1の請求項9及び10に係る各特許発明並びに本件特許2の請求項9ないし11に係る各特許発明の技術的範囲に属し、上告人ら(第一審被告ら、控訴審被控訴人ら)各プログラムがインストールされた情報処理端末である各装置は本件特許1の請求項1、2、5及び6に係る各特許発明並びに本件特許2の請求項1ないし3に係る各特許発明の技術的範囲に属し、上告人らによる上告人ら各装置の生産及び使用並びに上告人ら各プログラムの生産、譲渡、貸渡し及び電気通信回線を通じた提供並びに譲渡等の申出は本件各特許権を侵害すると主張し、上告人らに対して、〔1〕特許法100条1項に基づき、上告人ら各装置の生産及び使用並びに上告人ら各プログラムの生産、譲渡等及び譲渡等の申出の差止めを求め、〔2〕同条2項に基づき、上告人ら各プログラムの抹消を求め、〔3〕民法709条及び同法719条に基づき、損害賠償金等の連帯支払を求め、第一審が被上告人の請求を全部棄却したことから、被上告人が各控訴し、控訴審が、原判決を変更し、被上告人の請求を上告人らに対し上告人らプログラム1の生産、譲渡等及び譲渡等の申出の差止め、上告人ら各プログラムの抹消並びに損害賠償金の連帯支払を求める限度で一部認容したところ、上告人らが上告した事案で、本件配信は、特許法2条3項1号にいう「電気通信回線を通じた提供」に当たるというべきであり、上告人らは、本件配信によって、実質的に我が国の領域内において、前記装置の生産にのみ用いる物である本件各プログラムの電気通信回線を通じた提供としての譲渡等をしていると評価するのが相当であるから、本件配信は、特許法101条1号にいう「譲渡等」に当たるというべきであるとして、原審の判断を是認し、本件各上告を棄却した事例。
2025.04.08
特許権侵害差止等請求事件(コメント配信システム)
LEX/DB25574109/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月 3日 判決(上告審)/令和5年(受)第2028号
名称を「コメント配信システム」とする発明の特許権者である被上告人(第一審原告、控訴審控訴人)が、米国法人である上告人(第一審被告、控訴審被控訴人)Fが運営する動画配信サービスは、本件特許に係る発明の技術的範囲に属するものであり、本件特許権を侵害する旨主張して、上告人の各ファイルの日本国内に存在するユーザ端末への配信の差止め等を求めたところ、第一審が請求を棄却したため、被上告人が控訴し、控訴審が、ネットワーク型システムを新たに作り出す行為が、特許法2条3項1号の「生産」に該当するか否かについては、当該システムを構成する要素の一部であるサーバが国外に存在する場合であっても、当該行為が我が国の領域内で行われたものとみることができるときは、特許法2条3項1号の「生産」に該当すると解するのが相当であるところ、被控訴人Fは、被告システム1を「生産」したものと認められるとして、第一審判決を一部変更したことから、上告人が上告した事案で、本件配信による本件システムの構築は、我が国で本件各サービスを提供する際の情報処理の過程としてされ、我が国所在の端末を含む本件システムを構成したうえで、我が国所在の端末で本件各発明の効果を当然に奏させるようにするものであり、当該効果が奏されることとの関係において、前記サーバの所在地が我が国の領域外にあることに特段の意味はないといえ、そして、被上告人が本件特許権を有することとの関係で、上記の態様によるものである本件配信やその結果として構築される本件システムが、被上告人に経済的な影響を及ぼさないというべき事情もうかがわれないから、上告人は、本件配信及びその結果としての本件システムの構築によって、実質的に我が国の領域内において、本件システムを生産していると評価するのが相当であり、本件配信による本件システムの構築は、特許法2条3項1号にいう「生産」に当たるというべきであるとして、本件上告を棄却した事例。
2025.04.08
裁決取消請求事件
LEX/DB25622008/東京高等裁判所 令和 7年 2月19日 判決(差戻第一審)/令和6年(行ケ)第4号
門司地方海難審判所は、原告が船長として操船するa丸とCが船長として操船するb丸とが衝突した本件事故につき、原告にはb丸の動静監視を十分に行うべき注意義務があり、これを怠った職務上の過失がある旨判断して、原告の小型船舶操縦士の業務を1か月停止し、Cを懲戒しない旨の裁決をしたところ、原告が、被告・海難審判所長に対し、本件裁決の取消しを求め、差戻前第1審が、b丸の速力、航跡及びa丸との衝突地点について本件裁決とは異なる事実を認定したものの、原告にはb丸の動静監視を十分に行うべき注意義務に違反する職務上の過失があり、また本件事故と原告の無灯火航行との間には因果関係がある旨判断して、原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡したことから、原告が上告受理を申し立て、上告審が、上告を受理したうえで、差戻前第1審には職務上の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法がある旨判断して、差戻前第1審判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事案で、〔1〕衝突時におけるb丸の速力は少なく見積もっても15ノット以上であり、〔2〕その航跡も、Cが証言するような右小回りではなく、原告が主張・供述するように、それよりも北側を右大回りしていたものであって、〔3〕これにより、a丸との衝突地点についても、原告が主張・供述するように、本件裁決の認定位置よりも更に北側であったものと認めるのが相当であるとしたうえで、Cはb丸の速力を少なくとも15ノット以上に保ったまま、泊船だまりに入航しようとし、もってa丸に衝突したものでもあって、本件事故に係る海難につき、Cに過失は認められないとするのは、困難であるものといわざるを得ず、一方、本件事故の発生につき、原告に職務上の過失があったとみることはできず、原告に職務上の過失があるとして小型船舶操縦士の業務を1か月停止するとした本件裁決は、その前提を欠き、取消しを免れないとして、原告の請求を認容した事例。
2025.04.01
特別地方交付税の額の決定取消請求事件
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LEX/DB25574103/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 2月27日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第297号
上告人・泉佐野市が、総務大臣がした特別交付税の額の決定(本件各決定)について、令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前)は、いわゆるふるさと納税に係る収入が多額であることをもって特別交付税の額を減額するものであって、地方交付税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるなどと主張して、被上告人・国に対し、本件各決定の取消しを求め、第一審が上告人の請求をいずれも認容したところ、被上告人が控訴し、控訴審が、本件訴えは、行政主体としての上告人が、法規の適用の適正をめぐる一般公益の保護を目的として提起したものであって、自己の財産上の権利利益の保護救済を目的として提起したものと見ることはできないから、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらないとして、原判決を取り消し、上告人の訴えをいずれも却下したことから、上告人が上告した事案で、特別交付税は、地方交付税の一種であり、交付されるべき具体的な額は、総務大臣がする決定によって定められるものである(地方交付税法4条2号、6条の2第1項、15条1項、2項、16条1項)から、特別交付税の交付の原因となる国と地方団体との間の法律関係は、上記決定によって発生する金銭の給付に係る具体的な債権債務関係であるということができ、地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、国と当該地方団体との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に当たるというべきであり、また、特別交付税の額の決定は、地方交付税法及び特別交付税に関する省令に従ってされるべきものであるから、上記訴えは、法令の適用により終局的に解決することができるものといえ、以上によれば、地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たると解するのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2025.04.01
再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件(大崎事件第4次再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告棄却決定)
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LEX/DB25621990/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 2月25日 決定(特別抗告審)/令和5年(し)第412号
請求人の母親であるP2に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日鹿児島地方裁判所が言い渡した有罪判決(P2に対する確定判決)及び請求人の父親であるB(平成5年10月2日死亡)に対する殺人、死体遺棄被告事件について昭和55年3月31日同裁判所が言い渡した有罪判決(Bに対する確定判決)に関し、P2及びBに対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとして、請求人が、刑事訴訟法439条1項4号に該当する者として、同法435条6号により各再審開始請求(いわゆる大崎事件第4次再審請求)をしたところ、第一審が各再審請求を棄却したため、請求人が即時抗告し、即時抗告審が、S鑑定及びQ・R鑑定はH及びIの各供述を減殺するものとはいえず、また、N鑑定は、各確定判決が証拠の標目に掲げたJ旧鑑定の信用性を減殺するものではあるが、各確定判決の事実認定においてJ旧鑑定が占める重要性からすれば、各確定判決の事実認定に合理的疑いを生じさせるものとはいえず、H及びIの各供述の信用性、B、C及びFの各自白並びにGの供述の信用性を減殺するものとはいえないとし、弁護人の提出する新証拠は、確定判決の事実認定に合理的疑いを差し挟むものとはいえないと判断した原決定に誤りはないとして、本件各即時抗告を棄却したことから、請求人が各特別抗告した事案で、本件各抗告の趣意は、いずれも、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらず、なお、所論に鑑み、職権により判断すると、本件各再審請求において提出された各新証拠を併せ考慮してみても、各確定判決の有罪認定に合理的な疑いを生ずる余地はないというべきであるから、新証拠はいずれも各確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原々決定を是認した原決定は、正当であるとして、本件各抗告を棄却した事例(再審開始決定をすべきとする反対意見あり)。
2025.03.25
固定資産価格審査決定取消請求事件
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LEX/DB25574074/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 2月17日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第177号
本件家屋を所有する上告人(被控訴人・原告)が、大阪市長により決定され家屋課税台帳に登録された本件家屋の平成30年度の価格を不服として大阪市固定資産評価審査委員会に対して審査の申出をしたところ、これを棄却する決定(本件審査決定)を受けたため、被上告人(控訴人・被告)・大阪市を相手に、本件審査決定の取消しを求め、第一審が上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、控訴審が第一審判決を取り消して請求を棄却したことから、上告人が上告した事案で、本件登録価格を決定するにあたり、本件家屋について、その低層階を構成する構造に応じたSRC造等経年減点補正率を適用したことが、評価基準に反するものということはできないとして、本件上告を棄却した事例(反対意見あり)。
2025.03.25
旅券発給拒否取消等請求控訴事件
LEX/DB25621991/東京高等裁判所 令和 7年 1月30日 判決(控訴審)/令和6年(行コ)第52号
一審原告(フリージャーナリスト)は、外務大臣に対して一般旅券の発給申請をし、外務大臣から、トルコへの入国が認められない者であるから旅券法13条1項1号に該当するとして、一般旅券の発給拒否処分を受けたため、一審原告は、一審被告(国)に対し、〔1〕本件旅券発給拒否処分の取消し、〔2〕主位的に全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、予備的にトルコ以外の全ての地域を渡航先として記載した一般旅券の発給の義務付け、〔3〕外務大臣が本件旅券発給拒否処分をしたことが違法であるとして、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償として慰謝料等の支払を求め、原審が〔1〕を認容し、〔2〕及び〔3〕を棄却したところ、請求全部の棄却を求めて一審被告が控訴し、請求全部の認容を求めて一審原告が控訴した事案で、本件旅券発給拒否処分の取消請求は理由があるから認容し、その余の請求は理由がないからいずれも棄却すべきであるとし、これと同旨の原判決は相当であるとして、一審被告及び一審原告の本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2025.03.18
道路交通法違反被告事件
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LEX/DB25574057/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 2月 7日 判決(上告審)/令和5年(あ)第1285号
被告人が、交通整理の行われていない交差点において、普通乗用自動車を運転中、同交差点に設けられた横断歩道上を歩行中の被害者(当時15歳)に自車を衝突させて、同人を右前方約44.6メートル地点の歩道上にはね飛ばして転倒させ、同人に多発外傷等の傷害を負わせる交通事故を起こし、もって自己の運転に起因して人に傷害を負わせたのに、直ちに車両の運転を停止して、同人を救護するなど必要な措置を講じず、かつ、その事故発生の日時及び場所等法律の定める事項を、直ちに最寄りの警察署の警察官に報告しなかったとして、道路交通法違反で起訴され、第一審が被告人を懲役6か月の実刑に処したところ、被告人が控訴し、控訴審が、被告人の救護義務を履行する意思は失われておらず、一貫してこれを保持し続けていたと認められるとして、第一審判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡したことから、検察官が上告した事案で、被告人は、被害者に重篤な傷害を負わせた可能性の高い交通事故を起こし、自車を停止させて被害者を捜したものの発見できなかったのであるから、引き続き被害者の発見、救護に向けた措置を講ずる必要があったといえるのに、これと無関係な買物のためにコンビニエンスストアに赴いており、事故及び現場の状況等に応じ、負傷者の救護等のため必要な措置を臨機に講じなかったものといえ、その時点で道路交通法72条1項前段の義務に違反したと認められるところ、原判決は、本件において、救護義務違反の罪が成立するためには救護義務の目的の達成と相いれない状態に至ったことが必要であるという解釈を前提として、被害者を発見できていない状況に応じてどのような措置を臨機に講ずることが求められていたかという観点からの具体的な検討を欠き、コンビニエンスストアに赴いた後の被告人の行動も含め全体的に考察した結果、救護義務違反の罪の成立を否定したものであり、このような原判決の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例。
2025.03.18
オンライン資格確認義務不存在確認等請求事件(第1事件、第2事件、第3事件)
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LEX/DB25574026/東京地方裁判所 令和 6年11月28日 判決(第一審)/令和5年(行ウ)第81号 他
保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)には、令和5年4月1日に施行された令和4年厚生労働省令第124号による改正の結果、健康保険法63条3項1号の厚生労働大臣の指定を受けた病院又は診療所は、患者が同法3条13項に規定する電子資格確認(オンライン資格確認)によって療養の給付を受ける資格があることの確認を求めた場合には、原則として、同資格があることをオンライン資格確認によって確認しなければならず(3条2項)、また、その資格があることの確認ができるよう、あらかじめ必要な体制を整備しなければならない(同条4項)旨の規定が設けられたところ、医師又は歯科医師である原告らが、本件改正療担規則3条2項及び4項は、健康保険法70条1項の委任の範囲を逸脱する違法なものであって無効であるなどと主張して、被告に対し、本件各規定に基づく上記のような確認義務及び体制整備義務を原告らが負わないことの確認を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する損害賠償金及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案で、本件各規定の適法性について、本件各規定は、健康保険法70条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものということはできないものというべきであり、また、原告らの平成25年最判の射程に関する主張について、両事案は前提となる事実関係や性質が異なり、平成25年最判の上記説示部分が必ずしも本件にそのまま妥当するものではなく、さらに、オンライン資格確認の義務化が目的達成の手段として実質的関連性を欠くとはいえないから、オンライン資格確認の義務化によって原告らの憲法上の権利が違法に侵害されたということはできないなどとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2025.03.11
電子計算機使用詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用被告事件
LEX/DB25621843/大阪地方裁判所 令和 7年 1月14日 判決(第一審)/令和5年(わ)第590号 他
被告人B及び被告人Cが、被告人Dの許諾を得て、被告人D名義のETCカードを、被告人Dが乗車することなく高速道路で利用したとして、被告人Bが電子計算機使用詐欺の罪で、被告人Cが電子計算機使用詐欺、道路交通法違反、電磁的公正証書原本不実記録・同供用の罪で、また被告人Dが電子計算機使用詐欺の罪でそれぞれ起訴され、被告人Bにつき懲役1年6か月、被告人Cの電子計算機使用詐欺、道路交通法違反につき懲役1年4か月、確定判決前余罪である電磁的公正証書原本不実記録・同供用につき懲役1年2か月、被告人Dにつき懲役10か月を求刑された事案で、被告人Cにつき、〔1〕前刑の執行猶予判決の宣告後確定前に、内容虚偽の住民異動届を提出して住民基本台帳ファイルに不実の記録をさせるなどし、〔2〕同判決確定後の刑執行猶予期間中に、高速道路で最高速度を超過して普通自動車を運転して進行したとして犯罪事実を認定し、一方、被告人3名に対する電子計算機使用詐欺の罪について、名義人本人以外の者によるETCカードの利用が一般に禁止されていることを踏まえても、本件ETCカード名義人である被告人Dと同被告人から使用の許諾を得た被告人Bとが生計を一にする同居の事実婚の夫婦であり、ETCカード使用の際には本人確認のための措置がクレジットカード使用の場合とは異なり厳格にはされていない状況の下で、G社等が本件各行為のような生計を一にする同居の事実婚の夫婦間での1枚のETCカードの貸し借りによって使用することまで、不正通行に当たるとして許容していない旨の周知を十分にしていなかったなどの本件事実関係の下では、本件各行為が処罰に値するだけの虚偽の情報を与えたものということはできないと解されるとして、被告人Cを上記〔1〕の罪について懲役1年2か月、執行猶予3年間に、また〔2〕の罪について懲役4か月、執行猶予2年間に処するとともに、執行猶予期間中被告人Cを保護観察に付する一方、被告人Cの電子計算機使用詐欺の点については無罪を言い渡し、被告人B及び被告人Dについても、いずれも無罪を言い渡した事例。
2025.03.11
住居侵入、殺人、殺人未遂、現住建造物等放火被告事件
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LEX/DB25621968/甲府地方裁判所 令和 6年 1月18日 判決(第一審)/令和4年(わ)第97号
犯行当時19歳であった被告人が、当時通っていた高校の後輩であるCの心に大きな傷を与えるために同人の家族を殺害すること等を考え、Cやその家族の住居であった被害者方に侵入した上で、Cの両親であるA及びBの2名を殺害し、Cの妹であるDにも攻撃を加えたが殺害の目的を遂げず、被害者方に放火して全焼させたとして、住居侵入、殺人、殺人未遂、現住建造物等放火の罪で死刑を求刑された事案で、被告人の成育環境等が限定的とはいえ本件各犯行の動機形成過程に影響を与えていたといえること、被告人が犯行時19歳の少年であったことなどの事情を合わせて最大限考慮したとしても、被告人の刑事責任の重大さや現時点での更生可能性の低さなどに照らすと、死刑選択を回避する事情となり得るものではないなどとして、被告人を死刑に処した事例(裁判員裁判)。
2025.03.04
監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件
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LEX/DB25621841/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 1月27日 決定(上告審)/令和6年(あ)第753号
被告人が、監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪で懲役9年を求刑され、第一審が、被告人を懲役6年に処したところ、被告人が控訴し、控訴審が、被告人は、Bを現に監護する者であるAと共謀し、現に監護する者であることによる影響力があることに乗じてBと性交をしたと認められるから、被告人に対し、刑法65条1項により、監護者性交等罪の共同正犯の成立を認めた原判決に誤りはなく、判決に影響を及ぼすような法令適用の誤りもないとし、また、原判決の量刑事情に関する認定、評価に論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、量刑判断も不当とはいえないとして、控訴を棄却したことから、被告人が上告した事案で、弁護人の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらず、なお、18歳未満の者を現に監護する者の身分のない者が、監護者と共謀して、監護者であることによる影響力があることに乗じて当該18歳未満の者に対し性交等をした場合、監護者の身分のない者には刑法65条1項の適用により監護者性交等罪の共同正犯が成立すると解するのが相当であり、被告人は、当時16歳であった本件児童の監護者ではないが、監護者である同児童の実母と意思を通じ、被告人との性交に応じるよう同実母から説得等された同児童と性交をしたというのであるから、被告人に監護者性交等罪の共同正犯が成立することは明らかであるとして、本件上告を棄却した事例。
2025.03.04
(受託収賄被告事件の証拠開示命令請求に関する決定に対する即時抗告申立て事件)
LEX/DB25621724/東京高等裁判所 令和 6年12月27日 決定(抗告審(即時抗告))/令和6年(く)第823号
被告人に対する受託収賄被告事件について、別紙の1から5までの各証拠について、弁護人が証拠開示命令請求をしたところ、東京地方裁判所が請求を棄却する決定をしたことから、これに対し、弁護人が即時抗告を申し立てた事案で、別紙の3記載の証拠について、他の理事の報酬の有無及び具体的な金額を知り、その理事の職務権限とC(無報酬であることに争いなし)とを比較することで、Cの職務権限の範囲を推認できるかを検討することは、被告人の防御の準備のために意味のあることと認められるところ、当該報酬は、受領の有無を含め、公共性の高い職務に関するものであることを考えると、プライバシー保護の要請もそれに応じた限度を有するものともいえ、開示された証拠の目的外使用は法律上禁止されていること(刑訴法281条の4、5)等を前提とすると、上記必要性の高さに対し、開示の弊害が大きいとまではいえないから、検察官は別紙の3記載の証拠を開示することが相当であり、原決定中、これについて証拠開示命令請求を棄却した点は、判断を誤っているといわざるを得ないとして、原決定を変更し、別紙の3記載の証拠を弁護人に開示することを命じ、その余の本件証拠開示命令請求を棄却した事例。
2025.02.25
選挙無効請求事件
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LEX/DB25574034/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 1月28日 判決(上告審)/令和5年(行ツ)第404号 等
千葉県議会議員の定数及び選挙区等に関する条例(昭和49年千葉県条例第55号)に基づいて令和5年4月9日に行われた千葉県議会議員一般選挙について、船橋市選挙区の選挙人である上告人が、本件条例のうち各選挙区において選挙すべき議員の数を定める規定が公職選挙法15条8項及び憲法14条1項に違反し無効であるから、これに基づいて行われた本件選挙の本件選挙区における選挙も無効であると主張して選挙無効を求めたところ、原審が、本件定数配分規定が定められた本件改正当時において同法15条8項ただし書にいう特別の事情があるとの評価がそれ自体として合理性を欠いていたとも、本件選挙当時において上記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたともいい難いから、本件選挙当時における本件定数配分規定が公選法15条8項に違反していたものとはいえず、適法というべきであるとして、請求を棄却したことから、上告人が上告及び上告受理申立てをした事案で、本件選挙当時、本件条例による各選挙区に対する定数の配分が千葉県議会の合理的裁量の限界を超えるものとはいえず、本件定数配分規定が憲法14条1項に違反していたものとはいえないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁平成11年(行ツ)第7号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1441頁等)の趣旨に徴して明らかというべきであり、また、その余の上告理由は、違憲をいうが、その前提を欠くものであって、民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しないとして、本件上告を棄却した事例(補足意見、反対意見あり)。
2025.02.25
業務上過失致死被告事件
LEX/DB25621698/仙台高等裁判所 令和 6年12月16日 判決(控訴審)/令和5年(う)第68号
A船に船長として乗り組み、A船の操船業務に従事していた被告人が、猪苗代湖上を北東に向けて時速約15ないし20kmで航行するにあたり、針路前方左右の見張りを厳に行い、その安全を確認しながら航行すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、針路前方左右の見張りを厳に行わず、その安全確認不十分のまま漫然前記速度で航行した過失により、折から、針路前方で、いずれもザップボードに乗るためにライフジャケットを着用して湖上に浮かんでいたP4(当時8歳)、P5(当時35歳)及びP6(当時8歳)に気付かないまま、P4ら3名に自船後部に設置された推進器の回転中のプロペラを接触させ、よって、P4に傷害を負わせて死亡させるとともに、P5及びP6にそれぞれ傷害を負わせたとして、業務上過失致死傷の罪で起訴され、原審が被告人を禁錮2年に処したところ、被告人が控訴した事案で、被告人が本件時、針路前方左右の見張りを厳に行い、安全を確認しながら航行したとしても、本件事故に至るまでの間に、被害者らを発見することができず、本件事故を回避することができなかった具体的な可能性を否定することはできないといわざるを得ず、被告人に過失を認めることはできないところ、原判決は、視認距離に関する証拠評価について誤りがあり、A船の航路について客観証拠と整合しない認定をした結果、被告人の過失について事実を誤認するに至ったものであり、この点が判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。