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2022.01.25
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25591382/札幌高等裁判所 令和 3年12月14日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第18号
北海道内の漁業者である控訴人らが、〔1〕被控訴人(国・北海道)らは、遅くとも平成29年7月1日までに法的拘束力のある漁獲制限をする義務があったにもかかわらず、これを怠り、漁業者の自主管理に委ねた結果、第3管理期間において上限を大幅に超過する漁獲を招き、控訴人らは第4管理期間以降のくろまぐろ漁が事実上できなくなった、〔2〕被控訴人国の第4管理期間における超過差引きは裁量権を逸脱・濫用するものであり違法であるなどと主張して、被控訴人らに対し、国家賠償法1条1項に基づき、第4管理期間以降6年間の逸失利益及び慰謝料等の支払をそれぞれ求めたところ、原審は、控訴人らの請求をいずれも棄却したため、控訴人らは、原判決を不服として控訴した事案で、被控訴人国の資源管理法、漁業法及び水産資源保護法に基づく規制権限の不行使について、国家賠償法1条1項の適用上、違法とはいえないとし、また、被控訴人北海道の規制権限不行使についても違法とはいえないなどとして、原判決は相当であるとし、本件各控訴を棄却した事例。
2022.01.18
著作者人格権等侵害行為差止等請求控訴事件
LEX/DB25591330/知的財産高等裁判所 令和 3年12月22日 判決 (控訴審)/令和3年(ネ)第10046号
一審原告から本件懲戒請求を受けた弁護士である一審被告Bが自らのブログ上に掲載した、一審原告の主張に対する反論を内容とする本件記事1及び2に関し、〔1〕一審被告Bが、一審原告の氏名が請求人として記載された本件懲戒請求書をPDFファイルに複製し、インターネットにアップロードした上、本件記事1内に同ファイルへの本件リンクを張った行為が、一審原告の著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)を侵害するとともに、一審原告のプライバシー権を侵害するとして、一審原告が、一審被告Bに対し、著作権法112条1項に基づき、各ブログに本件記事1及び2を掲載することの差止めを求め、同条2項に基づき、本件記事1(本件リンク先のPDFファイルを含む。)及び2の削除を求めるとともに、著作権(公衆送信権)侵害の損害賠償として、本件懲戒請求書のファイルの削除に要した労力と時間に相当する財産的損害と弁護士費用、及び著作者人格権(公表権)侵害の損害賠償として慰謝料の支払を求め〔第1事件〕、第1事件における一審被告Bの訴訟代理人となった一審被告Cが、第1事件に係る訴えの提起後、一審被告Cのブログ記事(本件記事3)に本件記事1に対するリンクを張ったことが、著作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)の侵害の幇助に当たるとして、一審原告が、一審被告Cに対し、箸作権(公衆送信権)及び著作者人格権(公表権)の侵害の幇助の損害賠償として慰謝料の支払を求めた〔第2事件〕ところ、原判決は、一審被告Bに対し、原判決別紙記事目録記載1(1)のブログ(本件ブログ)に掲載されている本件記事1のうち同記載2(1)イのファイル(本件懲戒請求書のPDFファイル)の削除を命じ、その余の一審原告の請求をいずれも棄却したため、一審原告及び一審被告Bが控訴した事案で、一審原告の請求はいずれも理由がないから棄却すべきところ、これと異なり、一審被告Bに対し、本件ブログに掲載されている本件懲戒請求書のPDFファイルの削除を命じた原判決主文第1項は相当でないとして、一審被告Bの控訴に基づき、これを取消し、その取消しに係る部分につき一審原告の請求を棄却することとし、一審原告の本件控訴を棄却した事例。
2022.01.18
不作為の違法確認等請求事件
LEX/DB25591349/広島地方裁判所 令和 3年10月26日 判決 (第一審)/令和2年(行ウ)第32号
原告は、双極性感情障害により、厚生労働大臣から国民年金法及び厚生年金保険法所定の障害等級2級の裁定を受け、同等級に基づく障害基礎年金及び障害厚生年金を受給していたところ、厚生労働大臣は、原告の障害等級が3級の状態にあるとして、障害基礎年金の支給を停止し、障害厚生年金の額を改定する処分を行ったことにより、原告が、障害の状態は障害等級2級に該当し、本件処分が違法であると主張して、被告(国)に対し、本件処分の取消しを求めた事案において、本件現症時における原告の障害の状態は、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又は頻繁に繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受ける状態にあり、障害の程度は、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度に至っているといえるから、原告の障害等級は2級以上に該当しないとはいえないとして、障害基礎年金の支給を停止し、本件処分を取り消し、請求を認容した事例。
2022.01.11
再生計画認可決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571876/最高裁判所第二小法廷 令和 3年12月22日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第4号 等
医療法人を再生債務者とする再生手続においてされた再生計画認可の決定に対し、再生債権者である各抗告人が民事再生法174条2項3号等に該当する事由があると主張して即時抗告をしたところ、原審が上記事由はないとして抗告棄却決定をしたため、各抗告人が上記決定に対して更に抗告をした事案で、上記決議について民事再生法174条2項3号に該当する事由はないとした原審の判断を是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例(補足意見がある)。
2022.01.11
新株予約権無償割当差止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25591322/東京高等裁判所 令和 3年11月 9日 決定 (抗告審)/令和3年(ラ)第2391号
相手方(債務者)の株主である抗告人(債権者)らが、相手方に対し、相手方取締役会によって導入が決定されたいわゆる有事導入型買収防衛策に基づく対抗措置の本件新株予約権無償割当てについて、〔1〕株主平等の原則(会社法109条1項)に違反する法令違反がある、〔2〕著しく不公正な方法により行われるものである旨主張して、同法247条1号及び2号(類推適用)に基づき、これを仮に差し止めることを求めたところ、原審は、被保全権利についての疎明がされていないとして、抗告人らの本件申立てをいずれも却下したので、これに不服の抗告人らが本件抗告をした事案で、抗告人らの本件申立ては、被保全権利(会社法247条1号及び2号(類推適用)の差止請求権)についての疎明がされていないので、抗告人らの本件申立てはいずれも却下すべきであるから,これと同旨の原決定は相当であるとし、抗告人らの本件抗告はいずれも棄却した事例。
2022.01.04
納付告知処分取消請求控訴事件
LEX/DB25591274/東京高等裁判所 令和 3年12月 9日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第241号
控訴人(原告会社)が、当時、その代表取締役及び取締役から、代表取締役らの控訴人に対する各求償債権につき債務の免除を受けたとして、関東信越国税局長が、国税徴収法39条に基づき、控訴人に対し、滞納者である代表取締役らの各国税につき、第二次納税義務に係る納付告知書による各告知処分をしたことについて、本件各告知処分は違法であるとして、被控訴人(被告。国)に対し、それらの取消しを求めたところ、原審が控訴人の請求を棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案で、本件各債務免除の時における本件各求償債権の価額が0円を超えるとは認められず、本件各債務免除により控訴人の受けた利益は現に存しないというほかないから、本件各債務免除は国税徴収法39条の要件を満たすものではなく、本件各告知処分は違法であって取消しを免れないとして、控訴人の請求を認容すべきところ、これを棄却した原判決は失当であり、原判決を取消した上、控訴人の請求を認容した事例。
2021.12.28
不当利得返還請求事件
LEX/DB25571864/最高裁判所第三小法廷 令和 3年12月21日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第335号
岡山市の住民である被上告人(原告・控訴人兼附帯被控訴人)が、市議会の複数の会派が平成27年度に交付を受けた政務活動費に関し、岡山市議会の各会派に対する政務活動費の交付に関する条例の定めに適合しない違法な支出がされているから、各会派はこれを不当利得として市に返還すべきであるにもかかわらず、上告人(被告・被控訴人兼附帯控訴人。岡山市長)はその返還の請求を違法に怠っているとして、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、上告人を相手に、各会派に対して不当利得返還を求めた住民訴訟で、原審は、印刷代の全額及び講座費用のうち一部が使途基準に適合しないとした上で、被上告人のネクスト岡山に係る請求を全部認容し、市民ネットに係る請求のうち平成27年5月以降分の政務活動費に係るものを一部認容したため、上告人が上告した事案で、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、被上告人のネクスト岡山に係る請求について認容額を一部変更し、また、市民ネットに係る請求に関する部分については、不当利得返還義務の存否等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すことを命じた。他方、本件上告のうち自由民主党岡山市議団に係る請求に関する部分については、上告受理申立てを棄却し、その余の本件上告については却下した事例(補足意見がある)。
2021.12.28
夫婦間の協力扶助に関する処分申立事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和4年3月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25591233/東京家庭裁判所立川支部 令和 3年11月30日 審判 (第一審)/令和2年(家)第2510号
別居中の夫婦間において、夫である申立人が、妻であり、未成年者らを実際に監護養育している相手方に対し、民法752条に基づき(主位的申立て)又は民法766条を類推適用して(予備的申立て)、養育計画に従って申立人と相手方が協力して、未成年者らの利益のために親権を共同行使せよとの審判を求めた事案で、申立人の主位的申立てについては却下し、予備的申立てについて、相手方は、申立人に対し、本審判確定の日の属する月の翌月から、毎月2回、実施日と実施時間等の要領を取り決めたうえで、申立人が未成年者らと面会交流することを認めた事例。
2021.12.21
脅迫被告事件
LEX/DB25571846/最高裁判所第三小法廷 令和 3年12月10日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第964号
管轄移転の請求が、訴訟を遅延させる目的のみでされたことが明らかである場合には、刑事訴訟規則6条により訴訟手続を停止することを要しないとし、これと同旨の原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2021.12.21
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和4年2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25591156/宇都宮地方裁判所 令和 3年 5月13日 判決 (第一審)/令和2年(ワ)第264号
破産会社に対する求償金債権を有していた原告が、破産会社の破産手続において配当を受けられなかったことについて、破産会社の申立代理人であった被告Y1及び破産会社の破産管財人であった被告Y2にそれぞれ注意義務違反があったと主張して、被告らに対し、民法709条、719条1項に基づき、連帯して損害賠償金(原告が本件破産手続に参加していれば得られたはずの配当金相当額)及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、被告Y1の注意義務違反行為により原告に生じた損害については、原告に5割の過失を認めて、過失相殺を行うのが相当であるとし、原告の被告Y1に対する請求は、請求額の5割の限度で一部認容し、その余の請求は棄却した事例。
2021.12.14
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する特別抗告事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和4年3月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」憲法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571834/最高裁判所第三小法廷 令和 3年11月30日 決定 (特別抗告審)/令和2年(ク)第638号
性同一性障害者が、戸籍上の性別の取扱い変更の申立てをした審判で却下され、抗告審でも却下されたため、特別抗告をした事案において、性同一性障害者につき性別の取扱いの変更の審判が認められるための要件として「現に未成年の子がいないこと」を求める性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項3号の規定が憲法13条、14条1項に違反しないとし、本件抗告を棄却した事例(反対意見がある)。
2021.12.14
殺人、殺人未遂、住居侵入、建造物侵入、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25591126/神戸地方裁判所 令和 3年11月 4日 判決 (第一審)/平成30年(わ)第453号
被告人は、【第1】被告人方で、祖母b(当時83歳)に対し、その頭部等を金属製バットで殴打し、その後頸部及び背部を文化包丁(刃体の長さ約16.3センチメートル)で突き刺すなどし、左総頸動脈及び左椎骨動脈切損、右外頸静脈切断並びに右肺刺創により失血死させて殺害した事案、【第2】同日、被告人方敷地内で、祖父c(当時83歳)に対し、その頭部等を前記金属製バットで殴打し、その頸部等を文化包丁で突き刺すなどし、右総頸動脈及び右内頸静脈切損により失血死させて殺害した事案、【第3】同日、被告人方で、母d(当時52歳)に対し、その頭部等を金属製バット及び合板(重量約2キログラム)等で殴打し、その頸部を両手で絞め付けるなどして殺害しようとしたが、同人が逃走したため、加療約32日間を要する頭部挫創等の傷害を負わせたにとどまり、その目的を遂げなかった事案、【第4】同日、別宅の敷地内に侵入し、e(当時79歳)に対し、その頸部等を文化包丁で突き刺すなどし、左内頸動脈及び左外頸動脈切断並びに左内頸静脈切損により失血死させて殺害した事案、【第5】同日に、fが看守する小屋内に侵入し、g(当時65歳)に対し、その頭部等を文化包丁で突き刺すなどして殺害しようとしたが、抵抗されたため、全治約14日間を要する頭部刺創等の傷害を負わせたにとどまり、その目的を遂げなかった事案、【第6】同日、路上で文化包丁1本を携帯した事案で、被告人が5人を殺傷した当時、心神耗弱状態にあったことに間違いがないとまでは認められず、心神喪失状態にあったのではないかとの合理的疑いを払拭することができないとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2021.12.07
不当利得返還等請求事件(第1事件)、供託金還付請求権帰属確認請求事件(第2事件)
「新・判例解説Watch」財産法分野 令和4年2月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25591082/旭川地方裁判所 令和 3年10月 1日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第187号 等
名寄市の第3セクターの原告が、同セクターの支配人Dによって締結された被告との間の各債権譲渡契約が無効であるなどと主張して、被告に対し、【1】不当利得(民法703条)に基づいて、原告が被告から受領した金員(譲渡代金)と原告が被告に交付した金員(買戻代金)の差額556万2000円及びこれに対する遅延損害金の支払、【2】本件各供託金の還付請求権を原告が有することの確認を求めるとともに、上記【1】に係る予備的請求として、仮に各債権譲渡契約の全部が無効でないとしても、制限利率を超えて被告が買戻代金を取得した部分は無効であり、被告は悪意の受益者であるなどと主張して、不当利得に基づいて、原告被告間の取引を一連計算した上で、被告が制限利率を超えて受領した過払金及び最終取引日である令和元年5月29日までの過払利息の合計427万7751円、並びに遅延利息の支払を求めた事案(第1事件)と、被告が、原告に対し、上記各債権譲渡契約が有効であることを前提として、本件各供託金の還付請求権を被告が有することの確認を求めた事案(第2事件)で、被告は、原告に対し、196万2000円及びこれに対する遅延損害金の支払いを命じ、原告と被告との間において、原告が本件供託金の還付請求権を有することを確認するとして一部認容し、第1事件に係る原告のその余の請求をいずれも棄却し、第2事件に係る被告の請求を棄却した事例。
2021.12.07
危険運転致死傷被告事件
LEX/DB25591081/長野地方裁判所 令和 3年 9月 9日 判決 (第一審)/令和1年(わ)第175号
被告人は、昼間、普通乗用自動車(セレナ)を運転し、最高速度が法定により60km毎時と定められている左方に湾曲する下り勾配の道路(本件カーブ)を、少なくとも時速104km以上の速度で自車を走行させて本件カーブに進入し、その進行を制御することが困難な高速度で自車を走行させたことにより、自車を本件カーブの湾曲に応じて進行させることができずに自車線から対向車線に逸走させて進行し、折から同車線を対向進行してきたP2(当時71歳)運転の普通貨物自動車前部に自車前部を衝突させ、自車に同乗していたP3(当時19歳)に加療約6か月間を要する右急性音響性外傷の傷害を、同じく自車に同乗していたP4(当時19歳)に加療約10日間を要する頚椎捻挫及び背部挫傷の傷害を、同じく自車に同乗していたP5(当時21歳)に加療約2週間を要する外傷性気胸、左肋骨不全骨折等の傷害を、同じく自車に同乗していたP6(当時20歳)に加療約4週間を要する右腸骨打撲傷、胸部打撲の傷害を、P2に右血気胸、両下肢開放性骨折の傷害をそれぞれ負わせ、P2を傷害に伴う出血性ショックにより死亡させたとして、危険運転致死傷の罪で懲役7年を求刑された事案で、被告人には、本件カーブの状況や自己の運転操作等の事実を認識していなかったと疑うべき事情はなく、被告人は、セレナが進行を制御することが困難な高速度であったことを基礎づける事実を認識し故意があったと認め、危険運転致死傷罪が成立するとして、懲役6年に処した事例。
2021.11.30
アスベスト被害に基づく損害賠償請求事件(〔1〕事件)、承継参加事件(〔2〕事件)
LEX/DB25591046/岡山地方裁判所 令和 3年10月20日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第235号 等
過去に石綿工場において石綿を原料に含む煙突製品の製造業務に従事していた亡gの相続人である原告及び参加人b、並びに亡gの相続人である亡hの相続人である参加人c及び参加人dが、石綿含有建築材の使用について規制権限を有していた被告による石綿の粉じん規制が不十分であったために、亡gが、石綿工場において作業に従事したことにより石綿粉じんの曝露を受け、肺がんに罹患して死亡し、被告に対して国家賠償法1条1項に基づく1430万円(慰謝料及び弁護士費用)の損害賠償請求権を有していたところ、原告及び参加人らがこれを相続したと主張して、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、原告及び参加人bにつき各476万6667円、参加人c及びdにつき各238万3333円、並びに、これらに対する遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案で、参加人ら相続債権について、原告による本件訴訟提起により除斥期間経過前に権利行使されたといえるから、除斥期間の経過により消滅していないと判示し、原告及び参加人らの本件各請求を一部認容し、原告らのその余の請求を棄却した事例。
2021.11.30
障害補償給付不支給決定等取消請求控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和4年1月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25590917/札幌高等裁判所 令和 3年 9月17日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第10号
回転寿司店の事業所に勤務していた控訴人が、本件事業所内のトイレに散布された殺菌剤の原液を拭き取る業務に従事した際、当該業務に起因して化学物質過敏症を発症したとして、労働者災害補償保険法による障害補償給付の請求をしたところ、処分行政庁から、〔1〕これを支給しない旨の処分、〔2〕療養補償給付の支給決定を取り消す旨の変更決定処分、及び〔3〕同日付けで休業補償給付の支給決定を取り消す旨の変更決定処分を受けたため、本件各処分の取消しを求めたところ、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、控訴人の化学物質過敏症は、本件拭き取り作業に起因したものと認められるから、これは、労基則別表第1の2第4号9ないし第11号に該当する業務上の疾病ということができ、控訴人の化学物質過敏症の発症及びこれと本件拭き取り作業との相当因果関係を否定したうえでされた本件各処分は違法であるとして、原判決を取り消し、本件各処分をいずれも取り消した事例。
2021.11.30
詐害行為取消請求事件
LEX/DB25591036/東京地方裁判所 令和 3年 9月 8日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第14636号
T社に対して租税債権を有すると主張する原告(国)が、T社が被告銀行らとの間で本件各根抵当権設定契約を締結したことが詐害行為に該当すると主張して、国税通則法42条及び平成29年法律第44号による改正前の民法424条の規定による詐害行為取消権に基づき、被告Y1銀行に対しては、本件各根抵当権設定契約の取消し並びに本件根抵当権設定登記及び根抵当権一部移転登記の抹消登記手続を求め、被告Y2銀行に対しては、本件各根抵当権設定契約の取消し及び根抵当権設定登記の抹消登記手続を求めた事案において、T社による本件各根抵当権設定契約の締結行為は、原告との関係で詐害行為に該当するものとし、被告銀行らが、T社による本件各根抵当権設定契約の締結行為が詐害行為に該当することを認識していなかったものとは認められないとして、原告の請求をいずれも認容した事例。
2021.11.24
投稿記事削除請求事件
LEX/DB25591035/大阪地方裁判所 令和 3年10月28日 判決 (第一審)/令和1年(ワ)第7156号
原告(結婚情報提供サービス業等を目的とした会社)が、被告が管理運営する地図サービスの「クチコミ」欄を利用して投稿された本件記事により原告の名誉が毀損されたと主張して、被告に対し、人格権(名誉権)に基づく妨害排除請求として、本件記事の削除を求めるとともに、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律4条1項に基づく発信者情報開示請求として、本件ログイン時のIPアドレス等の開示を求めた事案において、本件侵害部分が原告の名誉を毀損することが明らかであるとまで認めることはできないとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2021.11.24
「黒い雨」被爆者健康手帳交付請求等控訴事件
LEX/DB25590503/広島高等裁判所 令和 3年 7月14日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第10号
本件申請者らが、昭和20年8月6日に広島市に原子爆弾が投下された後に発生した雨(黒い雨)に遭ったことをもって、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条3号の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に当たると主張して、広島市長又は広島県知事に対し、同法2条1項に基づく被爆者健康手帳の各交付申請をし、また、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行令附則2条、別表第3が黒い雨降雨域全体を第一種健康診断特例区域に指定していないのは、被爆者援護法附則17条の委任の趣旨を逸脱・濫用するものであり、広島原爆が投下された際黒い雨降雨域に所在した本件申請者らについては、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律施行規則附則2条2項に基づく第一種健康診断受診者証の各交付申請が認められてしかるべきであると主張して、広島市長又は広島県知事に対し、上記各交付申請をしたところ、広島市長及び広島県知事が被爆者健康手帳及び第一種健康診断受診者証の各交付申請をいずれも却下したことから、控訴人・広島市らに対し、主位的に、被爆者健康手帳交付申請の各却下処分の取消しと被爆者健康手帳交付の義務付けを求め、予備的に、第一種健康診断受診者証交付申請の各却下処分の取消しと第一種健康診断受診者証交付の義務付けを求め、原審が、本件申請者らの被爆者健康手帳交付申請の各却下処分の取消し及び被爆者健康手帳交付の義務付けの各主位的請求をいずれも認容したところ、控訴人ら及び参加行政庁が控訴した事案で、被控訴人らの各主位的請求はいずれも理由があるところ、これと同旨の原判決は、本件申請者らが原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律1条3号の「原子爆弾が投下された際又はその後において、身体に原子爆弾の放射能の影響を受けるような事情の下にあった者」に該当するとの判断の根拠として402号通達を用いるなどした点で失当であるが、結論において相当であるとして、本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2021.11.16
損害賠償請求事件
LEX/DB25571787/最高裁判所第三小法廷 令和 3年11月 2日 判決 (上告審)/令和2年(受)第1252号
車両を運転中に交通事故に遭った被上告人が、加害車両の運転者である上告人に対し、不法行為等に基づき、上記交通事故により被上告人に生じた身体傷害及び車両損傷を理由とする各損害の賠償を求め、上記車両損傷を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求権が、平成29年法律第44号による改正前の民法724条前段所定の3年の消滅時効により消滅したか否かが争点となった事案で、被上告人は、本件事故の日に少なくとも弁護士費用に係る損害を除く本件車両損傷を理由とする損害を知ったものと認め、遅くとも平成27年8月13日までに本件事故の加害者を知ったものであるから、本件訴訟提起時には、被上告人の上告人に対する不法行為に基づく上記損害の賠償請求権の短期消滅時効が完成していたことが明らかであると判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中、本件車両損傷を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し、上記部分に関する被上告人の請求は理由がないから、同部分につき第1審判決を取消し、同部分に関する被上告人の請求を棄却し、上告人のその余の上告を却下した事例。