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2025.07.01
傷害致死被告事件 new
LEX/DB25622177/横浜地方裁判所 令和 7年 1月16日 判決(第一審)/令和3年(わ)第1754号
被告人が、社会福祉法人B保育園1階一時保育室内において、C(当時1歳1か月)に対し、その後頭部を鈍体に複数回叩きつける暴行を加え、同人に頭部打撲、頭蓋骨骨折に伴う外傷性くも膜下出血の傷害を負わせ、よって、同人を前記傷害により死亡させたとして、傷害致死の罪で懲役10年を求刑された事案で、本件傷害が本児の死因であるとは認められず、これらの受傷時期を特定できる証拠も見当たらず、出血部位のくも膜下でマクロファージが確認されることから、本件傷害が本児が死亡するより相当以前、具体的には12時間以上前に生じていた可能性もあるとしたうえで、本児に認められる本件傷害が本児の死因であるとは認められず、本件傷害が生じた時期も本児を含む園児と被告人のみが一時保育室にいた時間帯であるとは確定できない以上、その死因が何であるにせよ、被告人が本児にこれらを生じさせた暴行を加えた犯人であるとして有罪とする根拠はないとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2025.07.01
株式交換差止仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件(エルアイイーエイチ元代表取締役による株式交換差止仮処分命令申立事件) new
LEX/DB25622491/東京高等裁判所  令和 6年10月16日 決定(抗告審)/令和6年(ラ)第2271号
相手方(原審債務者)・会社の株主である抗告人(原審債権者)が、令和6年9月24日締結の〔1〕相手方とM社との間の、相手方を完全親会社とし、M社を完全子会社とする株式交換契約及び〔2〕相手方とF社との間の、相手方を完全親会社とし、F社を完全子会社とする株式交換契約に基づいて行おうとしている各株式交換について、本件各株式交換が法令又は定款に違反し、相手方の株主が不利益を受けるおそれがあるなどと主張して、相手方に対する会社法796条の2第1号に基づく株式交換差止請求権を被保全権利として、本件各株式交換の差止めの仮処分を求め、原審が、抗告人の本件申立てをいずれも却下したところ、抗告人が本件抗告をした事案で、公告日の2週間後である反対通知の期限は、相手方が個別株主通知を受けた同年10月11日以降であったことを主張するが、当該広告は当該書面の日付の到来した9月26日午前0時に公告の効力が発生するものであるから(民法140条ただし書き)、抗告人の上記主張は採用することができないとし、抗告人の利益を殊更に保護すべきことや、信義則上、抗告人の反対通知の効力を相手方に対抗することを認めるべきことを基礎付けるに足りる事情は認められないとして、本件抗告を棄却した事例。
2025.06.24
威力業務妨害、暴行、航空法違反、公務執行妨害、器物損壊被告事件 
LEX/DB25574216/最高裁判所第三小法廷 令和 4年 4月 8日 決定(上告審)/令和5年(あ)第1434号
被告人が、威力業務妨害、傷害(認定罪名:暴行)、航空法違反、公務執行妨害、器物損壊の罪で懲役4年を求刑され、第一審が被告人を懲役2年に処し、4年間執行を猶予したところ、被告人が控訴し、控訴審が、被告人らの論旨はいずれも理由がないとして、本件控訴を棄却したことから、被告人が上告した事案で、弁護人及び被告人本人の各上告趣意のうち、航空法150条5号の4、73条の4第5項、航空法施行規則164条の16第3号に関し、処罰対象となる行為の決定を私人である機長に委任しているとして憲法31条、73条6号違反をいう点は、航空法150条5号の4、73条の4第5項、航空法施行規則164条の16は、同法73条の3の禁止する行為のうち、機長が反復し、又は継続してはならない旨の命令をすることができ、当該命令に違反したときに処罰対象となるものを具体的に規定しており、処罰対象となる行為の決定を機長に委任したものとはいえないから、前提を欠き、航空法施行規則164条の16第3号の文言が不明確であるとして憲法31条違反をいう点は、同文言が不明確であるとはいえないから、前提を欠き、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2025.06.24
松橋事件国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和7年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574199/熊本地方裁判所 令和 7年 3月14日 判決(第一審)/令和2年(ワ)第766号
熊本県下益城郡(現宇城市)松橋町内において昭和60年1月に発生した本件殺人事件について、任意取調べを経て逮捕・勾留されたうえで公訴を提起され、有罪判決を受けて服役した亡Aの相続人である原告らが、本件殺人事件における熊本県警の警察官及び熊本地検の検察官による捜査活動並びに熊本地検の検察官による公訴提起及び公訴追行等が違法に行われたため、亡Aが損害を被ったと主張して、(1)原告X1が、国家賠償法1条1項に基づき、被告県及び被告国に対し、連帯して、亡Aに生じた損害金及び遅延損害金の支払を求め、(2)原告X2が、同法1条1項に基づき、被告県及び被告国に対し、連帯して、亡Aに生じた損害金及び遅延損害金の支払を求めた事案で、本件公訴提起の時点において、検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案した合理的な判断過程によると、本件公訴事実について、亡Aには有罪と認められる嫌疑があったというべきであるから、本件公訴提起が国賠法上違法であるとは認められないとする一方、確定審第一審において、各種証拠調べや一通りの被告人質問を経た後、検察官が第19回公判期日で論告をする頃には、検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案した合理的判断過程によれば、本件公訴事実について、亡Aに有罪と認められる嫌疑があるとは判断できない状況に至っていたものであるところ、そうであるにもかかわらず、検察官は、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく、漫然と公訴追行をしたものと認められるから、その公訴追行は、国賠法上違法であるとして、原告らの被告国に対する請求をそれぞれ一部認容し、被告県に対する請求をいずれも棄却した事例。
2025.06.17
生物学上の親調査義務確認等請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年7月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和7年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622506/東京地方裁判所 令和 7年 4月21日 判決(第一審)/令和3年(ワ)第28700号
昭和33年○月に本件産院にて出生し、本件産院内において他の新生児と取り違えられたために生物学上の親とは異なる夫婦の下で育てられた原告が、本件産院を設置・管理していた被告・東京都に対し、〔1〕主位的には、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)及び児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)の各規定に基づき(主位的調査請求)、予備的に分娩助産契約(予備的請求1)、更に予備的に医療事故に準ずる重大な問題事案におけるてん末報告義務(予備的請求2)、更に予備的に上記取り違えを先行行為として条理上認められる原状回復義務(予備的請求3)に基づき、いずれも原告の生物学上の親を特定するための調査の実施等を求め、また、〔2〕主位的調査請求と選択的に、被告が自由権規約及び子どもの権利条約の各規定に基づく調査義務を負うことの確認を求めるとともに、〔3〕被告が調査義務を怠ったことを理由として、主位的には不法行為に基づき、損害賠償として慰謝料等及び遅延損害金の支払を求め、予備的には分娩助産契約の債務不履行に基づき、損害賠償として慰謝料及び遅延損害金の支払を求めた事案で、本件訴えのうち本件調査請求に係る部分が不適法であるとはいえず、また本件訴えのうち本件義務確認請求に係る部分について、直ちに不適法であるとは認められないとしたうえで、本件各条約の各規定に基づき本件調査請求ないし本件義務確認請求に係る具体的な権利が原告に付与されていると解することはできないから、本件調査請求のうち、主位的調査請求は理由がなく、また、本件義務確認請求についても理由がないが、原告の本件分娩助産契約に基づく本件調査請求(予備的請求1)は、一部理由があるとして、請求〔1〕を一部認容し、その余の請求を棄却した事例。
2025.06.17
平群町メガソーラー林地開発許可処分取消請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和7年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622468/奈良地方裁判所 令和 7年 3月25日 判決(第一審)/令和5年(行ウ)第20号
参加人が奈良県知事から森林法10条の2による林地開発許可を受けて生駒郡平群町に大規模太陽光発電所(いわゆるメガソーラー)を建設していることにつき、開発区域の下流域に居住する原告らが、被告・奈良県を相手に、林地開発許可処分の取消しを求めた事案で、原告らは、本件許可処分に係る開発行為に起因する水害等の災害が発生した場合に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住するものと認められるから、本件許可処分の取消しを求める原告適格を有すると認められるとしたうえで、本件各調整池の計画容量が森林法10条の2第2項1号及び同項1号の2の要件に係る審査基準に適合するとした処分行政庁の判断は、その審査に用いた審査基準の設定につき処分行政庁の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるとは認められず、当該審査基準への当てはめに誤りがあるとも認められないから、本件許可処分に違法があるとは認められないなどとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2025.06.10
懲戒免職処分取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年8月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年8月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574225/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 4月17日 判決(上告審)/令和6年(行ヒ)第201号
上告人・京都市が経営する自動車運送事業のバスの運転手として勤務していた被上告人が、運賃の着服等を理由とする懲戒免職処分を受けたことに伴い、京都市公営企業管理者交通局長から、京都市交通局職員退職手当支給規程(昭和57年京都市交通局管理規程第5号の2)8条1項1号の規定により一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分を受けたため、上告人を相手に上記各処分の取消しを求め、第一審が本件全部支給制限処分の取消請求は理由がないとして請求を棄却したところ、被上告人が控訴し、控訴審が本件全部支給制限処分の取消請求を認容したことから、上告人が上告した事案で、本件着服行為の被害金額が1000円でありその被害弁償が行われていることや、被上告人が約29年にわたり勤続し、その間、一般服務や公金等の取扱いを理由とする懲戒処分を受けたことがないこと等をしんしゃくしても、本件全部支給制限処分に係る本件管理者の判断が、社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできず、本件全部支給制限処分が裁量権の範囲を逸脱した違法なものであるとした控訴審の判断には、退職手当支給制限処分に係る管理者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであるとして、控訴審判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の控訴を棄却した事例。
2025.06.10
国家賠償請求控訴事件 
LEX/DB25622400/名古屋高等裁判所 令和 7年 3月 7日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第570号
戸籍上の性別が同性の者同士である控訴人(原告)らが、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定は、憲法24条及び14条1項に違反するにもかかわらず、被控訴人(被告)・国が必要な立法措置を講じていないため、婚姻をすることができない状態にあると主張して、国家賠償法1条1項に基づき、被控訴人に対し、各慰謝料及び遅延損害金の支払を求め、原審が、同性婚を認めていない民法及び戸籍法の諸規定は、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないという限度で、憲法24条2項及び14条1項に違反するが、上記諸規定が憲法24条2項及び14条1項に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠っていたと評価することはできないから、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないとして、控訴人らの請求をいずれも棄却したところ、控訴人らが控訴した事案で、本件諸規定が憲法24条及び14条1項に違反するかについて(争点1)、本件諸規定が同性カップルが法律婚制度を利用することができないという区別をしていることは、憲法14条1項に違反するとともに、憲法24条2項に違反するに至ったというべきであるとし、本件諸規定を改廃しないことが国家賠償法上違法であるかについて(争点2)、原判決を一部補正するほかは、原判決の「事実及び理由」に記載のとおりであるとしたうえで、原判決は結論において相当であり、本件各控訴はいずれも理由がないとして、本件各控訴をいずれも棄却した事例。
2025.06.03
性別の取扱いの変更申立事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年5月2日解説記事が掲載されました
LEX/DB25622260/京都家庭裁判所 令和 7年 3月19日 審判(第一審)
性同一性障害の診断を受けた生物学的には男性である申立人が、妻との婚姻関係を維持したまま性別の取扱いを男から女に変更することを求め、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項に基づき、男から女への性別の変更を申し立て、申立人は、同項2号の「現に婚姻をしていないこと」の要件(非婚要件)は、憲法13条及び24条に違反するから無効であり、非婚要件を除いた同項の要件をすべて満たす申立人については、性別の取扱いを変更する旨の審判がされるべきであると主張した事案で、非婚要件の存在により、憲法上保障された婚姻の継続という法的利益又は人権が制約を受けるとしても、あるいは二者択一として、性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける法的利益に制約を受けるとしても、国会において定められるべき婚姻関係を含めた法律関係の整合性の担保として非婚要件が定められている趣旨に照らせば、非婚要件が、直ちに憲法13条、24条に反して無効となると解することはできず、本件申立ては、非婚要件を欠くものであって、理由がないことに帰するといわざるを得ないとして、本件申立てを却下した事例。
2025.06.03
地位確認等請求事件 
「新・判例解説Watch」労働法分野 令和7年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622415/京都地方裁判所 令和 7年 2月13日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第1652号
被告法人が運営する高校の常勤講師として被告に雇用されていた原告が、その後常勤嘱託という事務職員への配置転換命令を受けたことに関し、〔1〕原告と被告との間には原告の職種及び業務内容を教育職員に限定する合意(本件職種限定合意)が成立しており、原告を事務職員に配転することはできないなどと主張して、常勤講師としての労働契約上の権利を有する地位の確認を求めるとともに、〔2〕仮に本件職種限定合意が成立していないとしても、原告を常勤嘱託に配置転換したことは配転命令権の濫用であるなどと主張して、常勤嘱託として勤務する義務がないことの確認を求め、さらに、〔3〕期間の定めのない労働契約を締結している労働者である専任教員と有期労働契約を締結している労働者である常勤講師との間の賃金の差は、合理的な根拠のない差別であり、原告に対して常勤講師の賃金しか支払わなかったことは違法であるなどと主張して、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、原被告間で、本件職種限定合意が存在するとは認められないところ、原告の教育職員としての勤務態度には多大な問題があり、かつ、継続的な指導によっても容易に改善しなかったなどの事実からすれば、本件配転命令は、社会通念上相当性を欠き、被告の配置転換命令権を濫用したものとはいえない一方、就業規則及び給与規程により、常勤講師であった原告と専任教員との間に賃金の差を設けることは、違法というべきであるから、原告に専任教員よりも低い賃金しか支給しなかった被告の対応は、原告に対する不法行為を構成するものと認められるところ、原告の請求のうち、〔1〕に係る訴えは確認の利益を欠くとして不適法却下し、〔2〕に係る請求を棄却し、〔3〕に係る請求を上記の限度で認容した事例。
2025.05.27
差押禁止債権の範囲変更(差押命令取消し)申立事件 
LEX/DB25622399/大阪地方裁判所 令和 6年 7月 5日 決定(第一審)/令和6年(ヲ)第9088号
申立人が、本件差押命令により、継続的な業務委託契約に基づく報酬債権全額(6か月分)を差し押さえられたことについて、生活困窮等を理由に、民事執行法153条1項に基づき、本件差押命令の取消しを求めた事案で、本件差押命令により差し押さえられた報酬債権は、実質的に、民事執行法152条1項2号の「給与に係る債権」と同視することができ、そうすると、本件差押命令の一部を取り消して、差押禁止債権の範囲を別紙(申立人から4000円の入金があったため、同額につき相手方は申立てを取り下げた。)のとおり変更するのが相当であるとしたうえで、各種ローンの返済額があることを理由に差押禁止債権の範囲を変更すると、他の債務の返済を優先することを認めることになるから、本件でこれを理由に範囲変更を認めることはできず、申立人の収入・支出の状況を踏まえると、収入によって生活に要する費用を賄うことができないとまで認めることはできず、現時点における申立人の経済的困難の程度は自助努力で対応すべき範囲内のものというべきであるとして、申立人の申立てを一部認容し、その余を却下した事例。
2025.05.27
α市立保育園廃止処分取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574151/東京地方裁判所 令和 6年 2月22日 判決(第一審)/令和4年(行ウ)第549号
α市議会に提出された、本件保育園の令和5年度における0歳児募集の廃止及び令和9年度末をもっての廃園などを内容とする本件募集廃止条例の制定に係る議案につき、市議会が継続審査としたため、当時のα市長が、「議会において議決をすべき事件を議決しないとき」(地方自治法179条1項本文)に該当するとして、本件募集廃止条例を制定する旨の専決処分(本件専決処分)をし、また、本件保育園に第1子を通園させており、当時0歳児であった第2子につき令和5年度からの本件保育園の利用申請をした原告に対して、本件募集廃止条例の規定が有効であることを前提に、その施設利用を不可とする旨の処分(本件利用不可処分)をしたことについて、原告が、被告に対し、本件専決処分は違法であると主張して、(1)主位的請求として本件専決処分による本件募集廃止条例の制定、その予備的請求として本件募集廃止条例の制定による令和5年4月1日からの本件保育園における0歳児募集の廃止(本件各処分)の各取消しを求めるとともに、(2)本件利用不可処分の取消しを求め、さらに、(3)国家賠償法1条1項に基づき、本件専決処分及び本件利用不可処分によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件議案は、特定の緊急性が高い事件であるということはできず、また、何らかの事情により前市長にとって市議会の議決を得ることが不可能であったなどということもできないから、本件専決処分は、「議会において議決すべき事件を議決しないとき」の要件を充足しないものというべきであって、国家賠償法1条1項の違法及び過失があると認められ、原則としてこれに基づいて制定された本件募集廃止条例もまた無効であるといわざるを得ないところ、本件募集廃止条例の制定行為については、処分の取消しの訴えの対象となる処分に該当するとはいえないから、本件訴えのうち、本件各処分の取消しを求める部分は、いずれも不適法であるとして却下し、本件利用不可処分の取消しを求める請求を認容し、国家賠償請求については、本件専決処分と相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で一部認容した事例。
2025.05.20
債権差押命令に対する執行抗告審の取消決定等に対する許可抗告事件 
LEX/DB25574163/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月19日 決定(許可抗告審)/令和6年(許)第12号
抗告人が、子ども・子育て支援法29条1項に規定する特定地域型保育事業者として同項に規定する特定地域型保育を行っている相手方に対し、抗告人の相手方に対する金銭債権を表示した債務名義による強制執行として、相手方の第三債務者熊谷市に対する本件被差押債権の差押えを求める申立てをし、第一審が申立てを認容したため、相手方が抗告し、原審が本件申立てを認容した原々決定を取り消し、本件申立てを却下したことから、抗告人が許可抗告をした事案で、保育事業者債権は、同法17条にいう「子どものための教育・保育給付を受ける権利」に当たらないというべきであるから、原審が、本件被差押債権は、「子どものための教育・保育給付を受ける権利」に当たり、差押えが禁止されると判断したことには、法令の解釈適用を誤った違法があり、そして、その他に保育事業者債権に対して強制執行をすることができないと解すべき理由はないから、原審の判断の上記違法は裁判に影響を及ぼすことが明らかであるとしたうえで、上記の趣旨をいう論旨は理由があり、原決定は破棄を免れないとして、原決定を破棄し、原々決定に対する抗告を棄却した事例。
2025.05.20
死刑の執行告知と同日の死刑執行受忍義務不存在確認等請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和7年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622230/大阪高等裁判所 令和 7年 3月17日 判決(控訴審)/令和6年(行コ)第69号
死刑確定者である控訴人らが、死刑執行告知と同日にされる死刑執行は違法であるとして、被控訴人に対し、〔1〕行政事件訴訟法4条後段の実質的当事者訴訟として、死刑執行告知と同日にされる死刑執行を受忍する義務がないことの確認を求めるとともに(本件確認の訴え)、〔2〕死刑執行に関わる公務員らは、死刑確定者に対し死刑執行告知と同日に死刑執行を行うという方法による死刑執行をしてはならない義務を負うにもかかわらず、同義務に違反し、このような死刑執行方法を維持していることにより控訴人らが精神的苦痛を被っている旨主張して、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ、損害金(慰謝料及び弁護士費用)及び遅延損害金の支払を求めた(本件各賠償請求)ところ、原審が、本件確認の訴えはいずれも不適法であるとして却下し、控訴人らのその余の請求はいずれも理由がないとして棄却したことから、控訴人らが控訴した事案で、仮に死刑執行における本件運用が違憲・違法であるならば、これを改め、執行の当日ではなく前日までのしかるべき時期に告知を行うようにすればよいのであって、これにより適法に死刑執行を行うことは十分可能であるから、本件運用が違憲・違法であることをもって、直ちに死刑判決そのものを違法の判決と解さなければならない理由は見当たらず、そうである以上、「もし本件運用が違憲・違法であれば、死刑判決そのものが違法の判決に帰す」という関係は成立せず、結局、本件確認の訴えが、実質上において、行政事件訴訟をもって刑事判決の取消変更を求めることに帰すものということはできないから、本件確認の訴えを行政事件訴訟で争うことは許されるというべきであり、本件確認の訴えには確認の利益があるものと認められ、いずれも適法であるというべきであるとして、原判決中上記〔1〕に対する部分を取り消し、原審に差し戻すとともに、控訴人らのその余の本件控訴をいずれも棄却した事例。
2025.05.13
損害賠償請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」民法(財産法)分野 令和7年5月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574036/大阪高等裁判所 令和 7年 1月20日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第619号
被控訴人(被告)会社の従業員である被控訴人(被告)Eが被控訴人会社の業務の執行中に運転していた小型特殊自動車が、歩行中の被害者(先天性の聴覚障害を有していた児童)に衝突し、被害者が死亡した交通事故につき、被害者の父母である控訴人(原告)らが、被控訴人Eに対しては民法709条に基づき、被控訴人会社に対しては同法715条に基づき、損害賠償を求め、原審は請求を一部認容し、控訴人らが、逸失利益等に係る判断を不服として控訴を提起した事案において、被害者児童の労働能力は、一般に未成年者の逸失利益を認定するための基礎収入とされる労働者平均賃金を、当然に減額するべき程度の制限があったとはいえない状態であったと評価するのが相当であると判断し、原判決を変更した事例。
2025.05.13
消費者契約法による差止請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」民法(財産法)分野 令和7年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574030/大阪高等裁判所 令和 6年12月19日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第1812号
適格消費者団体である控訴人(原告)が、テーマパークを運営する被控訴人(被告)に対し、被控訴人が消費者との間でインターネットを経由してチケットの購入契約を締結する際に適用される利用規約(WEBチケットストア利用規約)中にある、一定の場合を除き購入後のチケットのキャンセルができない旨の条項が、消費者の利益を一方的に害する条項に該当するなど消費者契約法10条及び同法9条1項1号の条項に当たると主張するとともに、同利用規約中にある、チケットの転売を禁止する旨の条項が、同じく同法10条の条項に当たると主張し、同法12条3項に基づく差止請求として、同各条項を内容とする意思表示の停止、同各条項が記載された上記利用規約が印刷された規約用紙等の破棄及び上記の意思表示の停止等のための被控訴人の従業員らに対する書面の配布を求め、原審が控訴人の請求を全部棄却したので、これを不服とする控訴人が控訴した事案において、控訴人の当審における訴えの変更(追加請求)は許さないこととし、控訴人のその余の請求は、いずれも理由がなく、原判決は相当であるとして、控訴を棄却した事例。
2025.05.07
難民不認定処分取消等請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」国際公法分野 令和7年6月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622258/大阪高等裁判所 令和 7年 2月27日 判決(控訴審)/令和6年(行コ)第102号
チュニジア共和国の国籍を有する外国人男性である被控訴人(原審原告)は、チュニジアにおいて、同性愛者であることを理由に家族から暴力を受け、警察官に助けを求めても逮捕を示唆され保護を受けられなかったことなどから、帰国すると同性愛者であることを理由に迫害を受けるおそれがあるとして、令和5年法律第56号による改正前の出入国管理及び難民認定法61条の2第1項に基づいて難民認定申請をしたが、大阪出入国在留管理局長から、難民の認定をしない処分を受け、本件不認定処分について審査請求をしたが、法務大臣から、本件審査請求を棄却する旨の裁決を受けたため、被控訴人が、控訴人(原審被告)・国を相手に、被控訴人は難民に該当するなどと主張して、本件不認定処分及び本件裁決の取消しを求め、原審が、被控訴人は難民に該当すると認められるから本件不認定処分は違法であるとして、本件不認定処分の取消請求を認容し、本件裁決の取消しを求める訴えは、訴えの利益が消滅し、不適法であるとして却下したことから、控訴人が控訴した事案で、同性愛者として処罰を受けるということは、まさに、同性愛者であることを理由とする身柄拘束や訴追を受ける現実的なおそれがあるというべきであり、またチュニジア政府が、非国家主体によるLGBTの人々に対する迫害に対して効果的な措置を講じているとはいい難く、これを放置しているとの評価を免れないものというべきであるとし、原告が警察に保護を求めた経緯からすれば、単なる家族間のトラブルとして黙認すべき事案とは思われず、警察官が原告を保護しない理由について合理的な説明をした事実も認められず、むしろ、警察官は、原告が同性愛者であることを主な理由として原告を保護しなかったと推認されるのであり、このような警察官の対応は、チュニジア政府が、非国家主体による同性愛者に対する迫害を放置しているという実態を反映したものと評価すべきであるなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2025.05.07
株主権確認等請求控訴事件 
LEX/DB25622150/東京高等裁判所 令和 6年 9月11日 判決(控訴審)/令和6年(ネ)第1993号
原審被告会社の株主である被控訴人(原告)が、原審被告会社及び控訴人(被告)に対し、被控訴人が原審被告会社の株式250株を有する株主であること及び控訴人が原審被告会社の株主でないことの確認を求める(請求〔1〕)とともに、原審被告会社に対し、令和3年7月20日付けの臨時株主総会における本件各決議につき、賛成の数が出席株主の議決権の過半数に達していなかったことを理由として、会社法831条1項1号に基づく取消しを求め(請求〔2〕)、原審が、請求〔1〕につき、被控訴人が原審被告会社の株式248株を有する株主であること及び控訴人が原審被告会社の株主でないことを確認する限度で認容してその余を棄却し、請求〔2〕につき認容する判決をしたところ、控訴人が敗訴部分を不服として、被控訴人及び原審被告会社の双方を被控訴人として控訴した事案で、(1)原審被告会社に対する本件控訴の適法性について、控訴人は、本件控訴において、原審被告会社を被控訴人として控訴の申立てをしているが、原審被告会社に対する本件控訴は、原審の被告である控訴人が相被告である原審被告会社を被控訴人として原判決を不服として提起したもので、控訴の利益が認められないから、不適法というべきであり、(2)原判決は、請求〔2〕の当否について、控訴人を被告として判決をしたものでないことは明らかであり、控訴人は、請求〔2〕に関する原判決によって敗訴判決を受けたものではないのであるから、控訴人による被控訴人に対する請求〔2〕に係る本件控訴は、不適法であるというほかないとして、原審被告会社に対する本件控訴を却下するとともに、被控訴人に対する株主総会決議取消請求に係る本件控訴を却下し、被控訴人に対するその余の本件控訴を棄却した事例。
2025.04.30
久米至聖廟撤去を怠る事実の違法確認等請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574147/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 3月17日 判決(上告審)/令和5年(行ツ)第261号
那覇市の住民である上告人が、市長が市の管理する都市公園内に儒教の祖である孔子等を祀る久米至聖廟を設置することを参加人に許可し、これに基づき市が本件土地を本件施設の敷地としての利用に供していることは、憲法上の政教分離原則及びそれに基づく憲法の諸規定(20条1項後段、3項、89条)に違反し、参加人に対し本件施設の収去及び本件土地の明渡しを請求しないことが違法に財産の管理を怠るものであるなどとして、被上告人市長を相手に、地方自治法242条の2第1項3号に基づき、上記の怠る事実の違法確認を求めるとともに、被上告人市を相手に、同項2号に基づき、市長が参加人に対してした本件施設の一部に係る固定資産税の減免処分の無効確認を求め、第一審が請求をいずれも棄却したところ、上告人が控訴し、控訴審が控訴をいずれも棄却したことから、上告人が上告した事案で、社会通念に照らして総合的に判断すると、市長が本件設置許可をし、これに基づき市が本件土地を本件施設の敷地としての利用に供していることは、市と宗教との関わり合いの程度が、我が国の社会的、文化的諸条件に照らし、信教の自由の保障の確保という制度の根本目的との関係で相当とされる限度を超えるものとは認められず、憲法上の政教分離原則及びそれに基づく政教分離規定に違反するものではないと解するのが相当であるとし、本件上告について提出された上告状及び上告理由書には上告人の被上告人市に対する上告理由の記載がないから、被上告人市に対する上告は不適法として却下すべきであるとして、上告人の被上告人那覇市長に対する上告を棄却し、上告人の被上告人那覇市に対する上告を却下した事例。
2025.04.30
損害賠償請求事件
LEX/DB25574127/最高裁判所第二小法廷 令和 7年 3月 7日 判決(上告審)/令和5年(受)第961号
静岡県警察所属のA警部補が自殺したことについて、A警部補の妻子である被上告人らが、静岡県警察を置く上告人・静岡県に対し、上記の自殺は上告人の安全配慮義務違反によるものであり、被上告人らはA警部補の上告人に対する損害賠償請求権を相続したと主張して、その支払を求め、第一審が請求を一部認容、一部棄却したところ、上告人が控訴し、控訴審が、原判決は相当であるとして、控訴を棄却したことから、上告人が上告した事案で、A警部補の上司らは、A警部補に対する職務上の指揮監督権限を行使するにあたって、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積してA警部補がその心身の健康を損なうことがないよう注意すべきであったにもかかわらず、これを怠り、その結果、A警部補が精神疾患を発症して自殺するに至ったというべきであるから、上告人は、被上告人らに対し、A警部補が自殺したことについて、安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負うというべきであり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるなどとして、本件上告を棄却した事例(補足意見あり)。