更新日 2025.07.10
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
税理士・公認会計士 足立 好幸
グループ通算制度を適用している法人の防衛特別法人税の概要について解説する。
当コラムのポイント
- 通算後の基準法人税額を基礎に課税標準法人税額を計算
- 基礎控除額は500万円を通算法人間で配分計算
- 基礎控除額には当初申告固定措置(遮断措置)を適用
- 外国税額控除限度額は全体計算
- 申告及び納付等は地方法人税と同様の仕組み
- 目次
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前回の記事 : 第1回 グループ通算制度は防衛特別法人税にも適用される。
第2回は、グループ通算制度特有の取扱いである基礎控除額の遮断措置と外国税額控除について解説したい。
5.基礎控除額の遮断措置
(1) 基礎控除額の遮断措置
通算法人の基礎控除額は、年500万円を各通算法人の基準法人税額の比で配分した金額とするが、各通算法人の基礎控除額は、当初申告額で固定される(当初申告固定措置。防確法13②③④⑤)。
つまり、当初申告固定措置の適用により、修正申告又は更正により通算法人の法人税額が増減したとしても、その通算法人及び他の通算法人の基礎控除額は変動せず、修更正による影響が遮断されることとなる。
この基礎控除額の遮断措置は、800万円の配分額を当初申告額で固定させる「交際費の通算定額控除限度分配額の遮断措置」や「中小通算法人の軽減対象所得金額の遮断措置」と同様の仕組みとなる。
また、通算法人において基準法人税額に特定同族会社の留保税額が加算されている場合の基礎控除残額の計算についても、当初申告固定措置が適用される(防確法13②③④⑤)。
(2) 基礎控除額の全体再計算
次の一号から三号までのいずれかに該当するときは、基礎控除額又は基礎控除残額の遮断措置は適用されず、修更正後の法人税額に基づき各通算法人の基礎控除額又は基礎控除残額の再計算(全体再計算)を行うこととなる(防確法13⑥)。
[基礎控除額又は基礎控除残額の全体再計算を行う事由]
- 一 基礎控除額又は基礎控除残額の遮断措置を適用しないものとした場合における各通算法人の基準法人税額の合計額が500万円以下である場合
- 二 通算グループ全体で欠損金額が生じる場合の損益通算の全体再計算(遮断措置の不適用。法法64の5⑥)の適用がある場合
- 三 法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる場合の損益通算の全体再計算(濫用防止に係る遮断措置の不適用。法法64の5⑧)の適用がある場合
(3) 期限内申告額の洗替え
通算事業年度について全体再計算の事由一号又は二号に該当する場合に全体再計算を適用して修正申告書の提出又は更正がされた場合、その後における基礎控除額又は基礎控除残額の遮断措置の適用については、その修正申告書又はその更正に係る更正通知書にその通算事業年度の基準法人税額、加算前基準法人税額、基準法人税加算額として記載された金額を当初申告基準法人税額、当初申告加算前基準法人税額、当初申告基準法人税加算額とみなす(防確法13⑦)。
(4) 基礎控除額の計算例
基礎控除額の計算例は次のとおりとなる。
6.外国税額控除
防衛特別法人税についても外国税額控除が適用される(防確法16)。
グループ通算制度を適用している場合、防衛特別法人税の外国税額控除限度額は、法人税の控除限度額と同様に、グループ調整計算(グループ全体で控除限度額を計算すること)により計算される。
この場合、通算法人の防衛特別法人税の控除限度額は、法人税の控除限度額と同様の計算方法となり、計算要素である「法人税の額」を「防衛特別法人税の額」に置き換えた場合の計算式で計算される(防確法16④、防衛法令3④⑤⑥)。
なお、地方法人税の外国税額控除と同様に、防衛特別法人税の外国税額控除についても、控除余裕額又は控除限度超過額は生じない。
また、防衛特別法人税の外国税額控除についても、法人税及び地方法人税の外国税額控除と同様に、期限内申告書の申告期限後において当初申告税額控除額の誤りが発覚した場合の調整方法として、当初申告固定措置及び進行年度調整措置が適用される。
その仕組みは、法人税及び地方法人税の外国税額控除の当初申告固定措置及び進行年度調整措置(全体再計算に該当する場合を含む)と同様となる(防確法16⑤~⑭⑯~⑱、防衛法令3⑦)。
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プロフィール
税理士・公認会計士 足立 好幸(あだち よしゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
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