更新日 2022.10.17
TKC税務研究所
副所長
丸山 慶一郎
2019年12月に掲載した「疑問を解消!印紙税よくある質問Q&A」の続編として掲載します。
当コラムのポイント
- TKC税務研究所に寄せられた質問から12種類を厳選
- 関連情報として根拠条文等を記載
- 目次
-
【Q1】業務委託契約と印紙税
甲社及び乙社(いずれも株式会社)は、業務委託契約(本件契約)を締結するため、以下の業務内容等を定めた基本取引契約書を取り交わしました。この基本取引契約書には契約期間の定めは設けておりませんが、印紙税法上、請負と委任のいずれに該当するか、また、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当するのは分かりかねています。ご教示の程よろしく願います。
- 第2条(本件業務)
本契約の対象業務(以下「本件業務」という)は、以下のとおりとする。- 〔1〕ECサイト上に出店する店舗及び関連ウェブサイトの運営代行業務
- 〔2〕ECサイト上に出店する店舗のサイトデザイン、キャンペーン企画、実施
- 〔3〕SNSサイト上の公式アカウント及び関連ウェブサイトの運営代行業務、サイトデザイン
- 〔4〕マーケティングに関するコンサルティング業務
- 〔5〕マーケティングに関する調査報告ならびに分析レポートの作成業務
- 〔6〕販促活動に関する戦略の提案及び事務代行
- 〔7〕〔1〕から〔6〕までに関するその他業務
- 第3条(本契約の適用)
本契約は、第4条に定める本件業務に関する個別契約(以下「個別契約」という)の全てに適用される。ただし、個別契約において、本契約と異なる事項を定めた場合は、個別契約に定める事項が本契約に優先する。 - 第4条(個別契約)
- 甲は、サービス申込書(以下「申込書」という)を乙に対してメール又は乙が定める方法で提出することによって、本件業務を委託する。
- 申込書には、本件業務の委託に必要な下記事項を記載するものとする。
- (1) 本件業務の名称・内容
- (2) 本件業務の期間又は納期
- (3) 委託料及び支払方法
- (4) その他必要な条件
- 各申込書は、乙が申込書をメールその他の方法で承諾したときに個別契約として成立する。
- 前項に基づき個別契約が成立した時点以降、乙が本契約及び個別契約に違反した場合を除き、甲は、本契約及び個別契約を解除できない。
【A1】
- 請負と委任の違いについて
印紙税法別表第一「課税物件表」第2号文書にいう「請負」の意義については、民法632条にいう「請負」、すなわち、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果(成果)に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約をいい、これに対して、「委任」(民法643条)とは、民法656条に規定する準委任(会計帳簿の検査等、法律行為でない事務の委託をいいます。)を含み、当事者の一方(委任者)が、相手方(受任者)の有する知識、経験、才能などを利用して、法律行為又は法律行為でない事務を相手方に委託し(前者が「委任」に、後者が「準委任」に当たります。)、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいうと解されております(印紙税法基本通達第2号文書1参照)。 - お尋ねの基本取引契約書(本件契約書)の請負に関する契約書該否
一般的に、市場調査、技術調査、品質調査、地質調査等一定の事項についての調査分析を委託することについての契約書は、上記1の判断基準からして「委任」に該当するものと思われます。すなわち、諸種の調査を委託する契約は、委託者が、受託者の有する知識、経験、才能に基づき、一定の事項について調査することを委託するものであって、その結果よりも、調査の内容を期待するものである場合は委任契約と解されます。
しかしながら、調査委託の契約であっても、調査の結果を報告書等に取りまとめて提出することに対して報酬が支払われるなど、仕事の完成が目的とされ、仕事の完成に至るまでの危険も受託者が負担することとされている場合などは第2号文書(請負に関する契約書)になると解されています。
お尋ねの本件契約書は、第2条に規定する本件業務のうち〔5〕の調査結果の分析レポートの作成業務が謳われており、それを作成して委託者に提出することにより、一定の対価が支払われるものと思われ、具体的な対価の額及び支払方法については個別契約で定めるとしていますが、本件契約書は単にマーケッティング調査にとどまらず、その調査結果を分析したレポートの作成とりまとめまでを承諾したものであり、それに対しての対価性が認められますので、上記1の観点から「請負」契約に該当するものと考えます。 - 本件契約書の第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)該否
印紙税法別表第1課税物件表第7号文書の「継続的取引の基本となる契約書とは、特約店契約書、代理店契約書、銀行取引約定書その他の契約書で、特定の相手方との間に継続的に生ずる取引の基本となるもののうち、政令で定めるものをいう。」と定義され、「契約期間の記載のあるもののうち、当該契約期間が3月以内であり、かつ、更新に関する定めのないものを除く」との除外規定が設けられています。
つまり、特約店契約書など文書の表題に関係なく、契約当事者間において何回も同じような取引が反復継続する場合において、取引に共通して適用される令第26条に定める取引条件(例えば、請負に係る「目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払方法等」)をあらかじめ定めておく契約書のことをいい、その契約書に記載された具体的な契約期間が3か月以内で、かつ、更新に関する定めのないものは、第7号文書から除かれるということになります。
お尋ねの本件契約書は、本件業務に関して複数回行われる取引に係る個別契約を締結するに当たっての基本的事項を定めるものであり、契約書上、取引条件の一つである「目的物の種類が定められているものと認められます。
すなわち、上記の取引条件の一つである「目的物の種類」に関しましては、印紙税法基本通達第7号文書の8(目的物の種類の意義)において、「令26条第1号に規定する「目的物の種類」とは・・・請負である場合には仕事の種類・内容等がこれに該当する。」とされており、本件契約書では、上記2で検討しましたように、本件契約書の〔5〕に定められた本件業務のうちのマーケッティング調査の結果を分析したレポートの作成業務が本件請負に係る「目的物の種類」と解されます。また、本件契約書はお尋ねの文面では期間の定めは見当たらず、定めが無いことを前提とする限り、第7号文書の除外規定である「契約期間が3月以内であり、かつ、更新に関する定めのないもの」には該当しませんので、本件契約書は、基本的には第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当するものと考えます。 - 本件契約書が第2号文書と第7号文書のいずれにも該当する場合の取扱い
上記2及び3で検討したように、本件契約書は、基本的に第2号文書(請負に関する契約書)と第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)のいずれにも該当すると思われますが、この場合にいずれの課税文書に該当するかの判断は、印紙税法別表第1課税物件表の適用に関する通則3に具体的に定められています。
同通則3において「一の文書が2の規定によりこの表の各号のうち二以上の号に掲げる文書に該当することとなる場合には、次に定めるところによりその所属を決定する。」とし、そのイには「第一号又は第二号に掲げる文書と第三号から第十七号までに掲げる文書とに該当する文書は、第一号又は第二号に掲げる文書とする。ただし、第一号又は第二号に掲げる文書で契約金額の記載のないものと第七号に掲げる文書とに該当する文書は、同号に掲げる文書とし、・・・」と規定しています。すなわち、第2号文書と第7号文書のいずれにも該当する場合には、基本的には号の若い文書(つまり第2号文書)に該当するものとし、当該契約書に契約金額が記載されていない場合には第7号文書に該当するとしています。
したがいまして、本件契約書には委託料の定めはなく、その取り決めは個別契約に委ねていますので、本件契約書は契約金額の定めが無いものとして、第7号文書に該当すると考えます。
【関連情報】
- 《法令等》
- 民法632条
民法643条
民法656条
印紙税法別表一課税物件表第2号文書
印紙税法別表一課税物件表第7号文書
印紙税法別表一課税物件表の適用に関する通則3
印紙税法施行令26条1号
【Q2】FAX又は電子メールによる注文請書の送信及び電子契約書と印紙税
- 発注元から、FAX又は電子メールで注文書の送付を受け、これに対して注文請書をFAX又は電子メールで送信した場合、印紙税の納税義務を負うことになりますか。
- web上で請負に係る契約及び契約書の作成を行い、会社の覚えとして、それを紙に印刷した場合、印紙税の納税義務を負うことになりますか。
【A2】
- 注文請書をFAXで送信した場合
- (1) 印紙税法3条1項は、課税文書を作成した者に印紙税の納税義務を課し、また、同法8条1項は、当該課税文書の作成の時までに印紙税を納付しなければならない旨規定しており、そして、ここにいう「作成」の意義については、「課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう」と、また、「作成の時」の意義については、本件の注文請書のように、「相手方に交付する目的で作成される課税文書」にあっては、「当該交付の時」がその「作成の時」であると、それぞれ解されております。
- (2) 注文請書をFAXで送信した場合には、書面による注文請書(本件原本)が作成されているため、それが課税文書に当たるかが問題となりますが、本件原本は交付する目的で作成された文書でなく、また、本件原本については「交付」の事実がないため、注文請書をFAXで送信したことにより、印紙税〔課税物件表2号文書〕の納税義務を生ずることはないと考えられます。
- 注文請書を電子メールで送信した場合
- (1) この場合には、パソコン上で、電子形態の注文請書(本件請書ファイル)が作成されていることから、それが印紙税法にいう「文書」に該当するかにつき、検討を要することになります。
- (2) 印紙税法3条1項等にいう「文書」の意義については、特別の規定が置かれておりませんので、特段の事情がない限り、その意義については通常の用法に従って解釈することになります。
そして、法令上の「文書」の意義については、「文字その他の記号によって、一定の思想を表現している有形物」、あるいは「紙片等に文字その他の符号をもって何らかの思想を表示したもの」と解されております。このことに、印紙税の納付については、特別の場合(印紙税法9条~12条)を除き、「印紙税に相当する金額の印紙(相当印紙)を、当該文書の作成の時までに、当該課税文書にはり付ける方法により」納付しなければならないとされていること(同法8条1項)を併せ考慮しますと、電子形態である本件請書ファイルは、印紙税法にいう「文書」に該当しないと考えられます。 - (3) したがって、本件請書ファイルを電子メールで送信したことにより、印紙税〔課税物件表2号文書〕の納税義務を生ずることはないと考えられます。
- web上で契約書を作成し、紙に印刷した場合
- (1) web上で作成した契約書(本件契約ファイル)については、上記2(2)と同様の理由により、紙税法にいう「文書」に該当しないと考えられます。
- (2) 次に、本件契約ファイルをプリントアウトした書面(本件書面)は、「契約当事者の双方又は一方の署名又は押印があるもの(ただし、文書の所持者のみが署名又は押印しているものを除く。)」、又は「正本等と相違ないこと、又は写し、副本、謄本等であることの契約当事者の証明(正本等との割印を含む。)のあるもの(ただし、文書の所持者のみが証明しているものを除く。)」(印紙税基本通達・第1章総則・第19条参照)のいずれにも該当しないことから、本件書面は、契約の成立を証明する目的のものでなく、単なる控えと解するのが相当であり、したがって、課税文書には当たらないと考えられます。
- (3) 以上のことから、本件契約ファイル又は本件書面の作成により、印紙税〔課税物件表2号文書〕の納税義務を生ずることはないと考えられます。
- なお、課税庁においても、「電子メールで送信したとしても、ファクシミリ通信により送信したものと同様に、課税文書を作成したことにはならないから、印紙税の課税原因は発生しない」、あるいは、「ファクシミリや電子メールを受信した相手方がプリントアウトした文書はコピーした文書と同様のものと認められることから、課税文書として取り扱わない」こととしております(「国税庁のHP>その他法令解釈に関する情報>印紙税目次>コミットメントライン契約に関して作成する文書に対する印紙税の取扱い」、及び「福岡国税局HP>文書回答事例>印紙税その他の間接税>請負契約に係る注文請書を電磁的記録に変換して電子メールで送信した場合の印紙税の課税関係について」参照)。
【関連情報】
- 《法令等》
- 印紙税法3条1項
印紙税法8条1項
印紙税法基本通達第1章総則第4節19条「同一の内容の文書を2通以上作成した場合」
印紙税法基本通達第1章総則第7節第44条「作成等の意義」
【Q3】継続的取引の基本となる契約書の該否
次の覚書(主要な部分のみ登載)は、営業者の間において継続して行う2以上の売買取引について、共通して適用される取引条件のうち「対価の支払方法」を定めるものに該当すると思われますので、継続的取引の基本となる契約書(第7号文書)になり印紙の貼付が必要と思いますがいかがでしょうか。
覚書
甲社と乙社は、甲社が乙社に発注する甲社及びその関係会社所属の漁船(以下「ドック対象船」という)の入渠、総合的機器解放整備及び修繕工事など(以下「ドック工事」という)に係る費用の支払いについて、以下のとおり合意した。
第一条(概算見積総額の積算)
乙社は、ドック対象船のドック工事代金に係る概算見積総額(消費税抜き)を、当該ドック工事完成日から起算して30日以内に積算しておくものとする。
第二条(概算見積に基づく代金の一部請求)
乙社は、甲社に対し、前条に基づき積算された概算見積総額を記載した概算見積書と、概算見積総額(消費税抜き)の70パーセント相当額の百万円未満を四捨五入した金額に消費税を加算した額を記した代金の一部に係る請求書を遅滞なく提出するものとする。
第三条(概算見積の基づく代金の内払い)
甲社は、前条の概算見積書及び請求書を、ある月の10日以前に受領した場合は当月末に、ある月の11日以降に受領した場合は翌月末に、請求書に記された金額を、乙社の指定する銀行口座に振り込む。振込手数料は甲社が負担するものとし、各支払期日が銀行営業日でない場合は、直後の銀行営業日を支払期日とする。
第四条(協定金額の確定)
乙社は、甲社に対し、第二条の概算見積書提出後遅滞なく、正確に計算された落成見積書を作成・提出するものとし、以後甲社乙社交渉のうえ、協定金額(消費税抜き)を確定するものとする。
第五条(代金の精算)
乙社は、甲社に対し、確定した協定金額(消費税抜き)と第二条の請求金額から消費税相当額を控除した額との差額に、当該差額に係る消費税相当額を加算した額を記した請求書を、確定後遅滞なく提出するものとする。ただし、協定金額(消費税抜き)が第二条の請求金額から消費税相当額を控除した額を下回る場合、甲社は乙社に対しその差額に消費税相当額を加算した額を請求する。
<両社 記名押印>
【A3】
- 課税文書の判断基準
ある文書が課税文書に該当するか否かの判断は、当該文書に記載又は表示されている文言、符号等を基として、その文言、符号等を用いることについての関係法律の規定、当事者間における了解、基本契約又は慣習等を加味し、総合的に行うことになります(印紙税法基本通達第3条参照。) - 本件覚書と「請負に関する契約書」(第2号文書)該否
- (1) 印紙税法別表第一「課税物件表」第2号にいう「請負」の意義については、民法632条にいう「請負」、すなわち、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果(成果)に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約をいい(印紙税法基本通達第2号文書1参照)、何らかの仕事の完成が目的とされ、これに対して報酬を支払うとされている(仕事の完成と報酬の支払とが対価関係にある)場合には、請負に該当することになると解されております。
- (2) ご照会の「覚書」と題する文書(本件覚書)については、その記載内容から、ドック工事に係る費用の支払方法に関する(概算見積総額の積算、概算見積に基づく代金の一部請求、概算見積に基づく代金の内払い、協定金額の確定、代金額の精算)についての合意を証明目的としたものであり、乙社が、甲社に対して、ドック工事の完成を約し、甲社が、乙社に対して、ドック工事の完成(成果)に対して報酬を支払うことについての合意を証明目的としたものではないと解するのが相当であり、したがって、上記(1)に照らし、本件覚書は、「請負に関する契約書」(第2号文書)に該当しないと考えられます。
- 本件覚書と「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)該否
- (1) 印紙税法施行令26条1号は、営業者の間において、売買、売買の委託、運送、運送取扱い又は請負に関する2以上の取引に共通して適用される取引条件のうち所定の事項(対価の支払方法等)を定めるものを「継続的取引の基本となる契約書」の一類型として規定しておりますが、上記2のとおり、本件覚書は、「請負に関する契約書」に該当せず、また、売主が買主に財産権を有償で譲渡すること、すなわち、「売買」に関する契約書にも当たらないと解されることから、同号所定の「継続的取引の基本となる契約書」に該当しないと考えられます。
- (2) そして、本件覚書は、その記載内容に照らし、同条2号ないし5号が規定する「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)にも該当しないと考えられます。
- 本件覚書と印紙税の課非
以上のとおり、本件覚書は、「請負に関する契約書」(第2号文書)及び「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)のいずれにも該当せず、その記載内容に照らし、印紙税法別表第一「課税物件表」所定の他の課税文書にも該当しないと解されるため、印紙税が課されない文書(不課税文書)であると考えられます。
【関連情報】
- 《法令等》
- 印紙税法別表一課税物件表第2号文書
印紙税法別表一課税物件表第7号文書
印紙税法施行令26条
印紙税法基本通達第3条
【Q4】顧問先と税理士法人を当事者とする業務委託契約書と印紙税
- 顧問先A会社(A会社)を委託者、税理士法人B(B法人)を受託者として、(1)A会社は、B法人に対して、税務書類の作成、税務代理、及び税務相談を委嘱すること、(2)A会社は、B法人に対して、「顧問報酬計算書」(本件計算書)に基づく所定の顧問報酬等を支払うこと、(3)契約の有効期間は1年間とし、双方の意思表示がなければ、満了の日以後1年間契約が継続されること、を主たる内容とする「業務委嘱契約書」と題する文書(本件契約書)を作成する予定でおります。
また、本件契約書と一緒に綴じ込まれる本件計算書では、(1)月額顧問料は10万円とし、決算書類作成報酬、税務書類作成報酬、及び固定資産台帳作成報酬(税務書類作成報酬等)は別に受ける、(2)税務書類作成報酬等については、「旧日本税理士会の報酬規定における総所得金額基準と取引高基準の平均額」等に基づいて計算する旨が記載され、巻末に、「旧税理士会報酬規定」が添付されております。 - 税理士法人が行う顧問業務は、一般的に、請負に当たらず、そして、決算書類作成、税務書類作成、及び固定資産台帳作成は顧問業務の付随業務と思われることから、本件契約書には印紙の貼付が必要でないと考えて良いか、お尋ねします。
【A4】
- ある文書が印紙税法の規定する課税文書に当たるか否かは、物理的な形状から「一つの文書」と判断される当該文書の具体的な記載事項に基づき、その文書に記載又は表示されている文言、符号等を基として、その文言、符号等を用いることについての関係法律の規定、当事者間における了解、基本契約又は慣習等を加味して、文書全体を一つとして判断するのみでなく、その文書に記載されている個々の内容についても検討を加えて、その判断を行うことになります。
また、印紙税法にいう「請負」とは、民法632条にいう「請負」、すなわち、当事者の一方がある仕事の完成を約し、相手方がその仕事の結果(完成)に対して報酬を支払うことを内容とする契約をいい、仕事の完成と報酬の支払とが対価関係にあることが重要なメルクマールであるとされており、このことから、課税実務においても、税理士委嘱契約書は委任に関する契約書に該当するから、課税文書に当たらないのであるが、税務書類等の作成を目的とし、これに対して、一定の金額を支払うことを約した契約書は第2号文書(請負に関する契約書)に該当するとされており、この取扱は正当なものと考えられます。 - 本件契約書及び本件計算書(本件契約書等)には、顧問報酬のほかに、別途、決算書類の作成、税務書類の作成、及び固定資産台帳の作成に対して報酬が支払われることが記載されていることから、上記1に照らして、これらに関わる部分は請負に関する事項に当たり、したがって、本件契約書は、第2号文書(請負に関する契約書)に該当すると考えられます。
また、本件契約書は、A会社及びB法人という営業者を当事者とし、契約期間が1年とされていることから、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にも該当することになると考えられます。 - 「請負に関する契約書」(第2号文書)と「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)とに該当する文書の所属については、「契約金額」の記載がある場合には第2号文書に、「契約金額」の記載がない場合には第7号文書に、それぞれ所属するとされており、そして、本件契約書においては、決算書類作成報酬等が記載されておらず、また、それらを計算することもできないと解される(「総所得基準と取引高基準の平均額」とされておりますが、所得金額及び取引高が未確定です。)ことから、本件契約書は、契約金額の記載がないものとして第7号文書に所属することとなり、その印紙税の額は、4000円であると考えられます。
【関連情報】
- 《法令等》
- 印紙税法別表1「課税物件表」2号
印紙税法別表1「課税物件表」7号
印紙税法別表1「課税物件表の適用に関する通則」3イ
印紙税法施行令26条1号
印紙税法基本通達3条
印紙税法基本通達5条
印紙税法基本通達別表1「課税物件、課税標準及び税率の取扱い」2号文書1
印紙税法基本通達別表1「課税物件、課税標準及び税率の取扱い」2号文書17
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プロフィール
丸山 慶一郎(まるやま けいいちろう)
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