更新日 2020.05.18
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 宇野 元浩
令和2年度税制改正では、デフレ脱却と経済再生という安倍内閣の基本的な考え方のもと、イノベーション強化に向けた取組みや経済のグローバル化・デジタル化への対応、経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直しが行われています。
当コラムでは、令和2年度税制改正の概要と大法人の制度を中心に、主な税制改正の内容について解説します。
1.連結納税制度の見直しの背景と趣旨
連結納税制度の適用実態やグループ経営の実態を踏まえ、現行の税額計算の煩雑さや税務調査後の修正・更正に時間がかかりすぎるという事務負担の軽減を図り、またグループ経営の多様化に対応した中立性・公平性の観点から制度の見直しを行うことにより、日本の企業がより効率的にグループ経営を行い、競争力を十分に発揮出来る環境を整備するため、グループ通算制度へ移行する改正が行われました。
2.グループ通算制度の概要
(1) 改正前(連結納税制度)
企業グループを一体とみて親会社(連結親法人)と100%子会社である連結完全支配関係にある各法人の所得金額と欠損金額を通算し、連結親法人がグループ全体の法人税(連結法人税)の申告納税を行う制度です。
(2) 改正後(グループ通算制度)
グループ内において損益通算を可能にする基本的な枠組みは維持し、親会社、完全子会社のそれぞれが申告納税を行う制度へ改正されています。
(3) その他
- ①申告納税
- グループ通算制度は、個別申告方式となります。そのため、適用法人がそれぞれ法人税の申告納税義務を負いますが、通算グループ内の他の法人それぞれが法人税の連帯納付責任を負います。
- ②青色申告
- 連結納税制度では、青色申告制度とほぼ同様の要件を設けていたため青色申告ではありませんでしたが、グループ通算制度は青色申告制度を前提とした制度とされます。
- ③修正申告・更正等の取り扱い
- 修正申告や更正等の場合、各法人の当初申告額をもとに計算することとなり、通算グループ内の1つの法人で修正があっても原則として他の法人の所得との損益通算や欠損金の通算には影響させないこととなります。
- ④申告及び納付
- グループ通算制度の適用法人は、e-Taxにより法人税及び地方法人税の確定申告書、中間申告書及び修正申告書を提出する必要があります。また、中間申告を仮決算による場合は通算グループ内の全ての法人が仮決算による中間申告を行う必要があります。
- ⑤適用開始時期
- 令和4年4月1日以後「開始」事業年度から適用されます。
3.グループ通算制度の開始、加入、終了(離脱)時の取り扱い概要
(1) グループ通算制度の開始・加入時
親法人も含めて、原則として開始・加入前に保有していた資産を時価評価して含み損益を実現させる必要があり、またグループ通算制度の開始・加入前に保有している欠損金は原則切り捨てられます。ただし、組織再編税制における適格要件と同様の要件を満たしている場合にはこの限りではありません。
(2) グループ通算制度の離脱時
一定の要件を満たす法人については、離脱直前に保有している資産を時価評価し、含み損益を実現させる必要があります。
なお、グループ通算制度の詳細については以下をご参照ください。
TKCWEBコラム「連結納税制度の見直し」
【緊急掲載】新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための税制改正の概要
新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための税制改正がありましたので主なものを紹介します。
- 納税の猶予制度の特例
- 欠損金の繰戻しによる還付の特例
- テレワーク等のための中小企業の設備投資税制
- 文化芸術・スポーツイベントを中止等した主催者に対する払戻請求権を放棄した観客等への寄附金控除の適用
- 住宅ローン控除の適用要件の弾力化
- 消費税の課税事業者選択届出書等の提出に係る特例
- 特別貸付けに係る契約書の印紙税の非課税
詳細については以下をご参照ください。
財務省ホームページ「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」
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第1回 令和2年度税制改正の概要とイノベーション強化に向けた取組み
プロフィール
税理士 宇野 元浩(うの もとひろ)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員(地域会リーダー)
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
TKC企業グループ経営支援プロジェクト(Eプロジェクト)リーダー
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