TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2019.06.03

平成31年度(2019年度)税制改正のポイント

第3回(最終回) 地方法人課税の見直し・国際課税の見直し

税理士 宇野元浩

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 宇野 元浩

平成31年度税制改正では、引き続きデフレ脱却と経済再生を確実なものとするため、研究開発税制の見直し等が行われています。また、国際的な租税回避に効果的に対応するための国際課税制度の見直し、経済取引の多様化等を踏まえた納税環境の整備等も行われています。
当コラムでは、平成31年度税制改正の概要と大法人の制度を中心に、主な税制改正の内容について解説します。

1.地方法人課税の見直し

(1) 概要

 特定地域における税収偏差を是正することを目的として、法人事業税の税率を改正し、新たに特別法人事業税(国税)が創設されます。改正により負担税率はほぼ変わらず、法人の実効税率には影響しません。

(2) 法人事業税率の改正

 普通法人の法人事業税の所得割、収入割の標準税率は下記の通り改正されます。

所得割 所得金額 資本金1億円超 資本金
1億円以下
現行 改正前 改正後 改正後
年400万円以下 0.3% 1.9% 0.4% 3.5%
年400万円超800万円以下 0.5% 2.7% 0.7% 5.3%
年800万円超 0.7% 3.6% 1.0% 7.0%

※現行の地方法人特別税(所得割に対して414.2%)の廃止

収入割   改正前 改正後
電気供給業、ガス供給業および保険業を行う法人の収入金額に対する税率 1.3% 1.0%
(3) 特別法人事業税(国税)の創設

 特別法人事業税(国税)が創設されます。その徴収は都道府県において、法人事業税とあわせて行われることとなります。
 課税標準は標準税率により計算した法人事業税(所得割額または収入割額)であり、税率は下表の通りです。

外形標準課税対象法人(資本金1億円超) 260.0%
所得割額によって法人事業税を課税される特別法人 37.0%
所得割額によって法人事業税を課税される普通法人 34.5%
収入割額によって法人事業税を課税される法人 30.0%
(4) 現行税率との比較(所得金額800万円超の標準税率にて比較)
外形標準課税対象法人(資本金1億円超)税率比較
  現行税率 改正後税率
  税率 税率
①所得割 0.7% 1.0%
②地方法人特別税(所得割×税率) 414.2%  
③特別法人事業税   260.0%
合計①+①×②or③ ①+①×②=3.5994% ①+①×③=3.6%
(5) 適用関係

 令和元年10月1日以後開始事業年度より適用されます。

2.国際課税の見直し

(1) 外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)の見直し

 ペーパーカンパニーの範囲の縮小、外国関係会社が適用を受ける連結納税およびパススルー規定の取り扱いの明確化等の改正が行われました。

(2) 移転価格税制の見直し
  • ①移転価格税制の対象となる無形資産の明確化
     法人が有する資産のうち次の2つの要件を満たすもの

    1. 有形資産および金融資産(現金、預貯金、有価証券等)
    2. 独立の事業者の間で通常の取引の条件に従って譲渡・貸付け等が行われるとした場合に対価の支払いが行われるべきもの
  • ②独立企業間価格の算定方法の整備
     独立企業間価格の算定方法として、DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)が追加されました。

  • ③評価困難な無形資産に係る取引(特定無形資産取引)に係る価格調整措置の導入
     特定無形資産取引に係る独立企業間価格の算定の基礎となる予測と結果が相違した場合、税務署長は、その結果およびその相違の原因となった事由の発生の可能性を勘案して、最適な価格算定方法により算定した金額を独立企業間価格とみなして更生等することが出来ることとされました(価格調整措置)。
     ただし、上記により算定した金額と当初取引価格との相違が20%を超えていない場合は、この限りではありません。
     また、国税当局の職員の要求で一定期間内に一定の書類の提出があった場合には、価格調整措置は適用されません。

  • ④更正期間等の延長
     移転価格税制にかかる法人税の更正期間および更正の請求等が7年(改正前は6年)に延長されます。

  • ⑤利益率に関する差異調整方法の整備
     定量的に把握することが困難な差異があるために必要な調整が出来ない場合には、四分位法に基づき差異調整を行うことが出来ることとされました。

  • ⑥適用関係
     令和2年4月1日以降に開始する事業年度について適用されます。

(3) 過大支払利子税の見直し

 対象となる純支払利子等の額、調整所得金額、損金算入限度額の基準値、適用免除基準の改正が行われています。

この連載の記事一覧へ

プロフィール

税理士 宇野 元浩(うの もとひろ)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
TKC企業グループ経営支援プロジェクト(Eプロジェクト)リーダ

ホームページURL
税理士法人エフ・エム・エス

会計・税制の改正情報をいち早くお知らせします!メールマガジン配信申込みはこちら

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。