スキャナ保存制度(電子帳簿保存法)の改正

第3回 適正事務処理要件とは?

更新日 2015.12.14

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介

平成27年の税制改正により、電子帳簿保存法の一部が改正され、スキャナ保存制度の要件等が大幅に緩和されました。新制度は平成27年9月30日以後の申請から適用されます。当コラムでは、スキャナ保存制度を中心に電子帳簿保存法の改正について解説します。

 スキャナ保存をするためには、スキャナ保存前の紙書類の改ざん防止の観点から「適正事務処理要件」が定められており、社内規程等の整備と順守が求められています。

 「適正事務処理要件」を満たすため社内規程等をどこまで整備するのかについては、「改ざん等の不正を防ぐ」ことができるのかについて、事業規模等も勘案しながら判断する必要があります。

1.「適正事務処理要件」

 「適正な実施を確保するために必要な体制及び手続に関する規程(規則第3条⑤四)」に規定する、いわゆる「適正事務処理要件」は以下のとおりです。

①相互けんせい………
各事務に関する職責をそれぞれ別の者にさせるなど、明確な事務分掌の下に相互にけんせいが機能する事務処理の体制がとられていることが必要。
②定期的なチェック…
事務処理手続きの定期的な(最低限1年に1回以上)検査を行う体制が必要。
③再発防止策…………
検査等を通じて問題点が把握された場合に、経営者を含む幹部に不備の内容が速やかに報告されるとともに、原因究明や改善策の検討、必要に応じて手続規程等の見直しがなされる体制が必要。

2.「適正事務処理規程」のサンプル

 この社内規程等については、事業規模等」により異なることとなりますが、事例として、次のようなものが考えられます。

<サンプル>(国税庁「電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分))より)

参考:スキャナ保存制度に関する規程について

  1. ①「各事務の処理に関する規程(規則3⑤ 一ロ)」
    作業責任者、処理基準及び判断基準等を含めた業務サイクルにおけるワークフローなどの企業の方針を定めたものです。
  2. ②「適正な実施を確保するために必要な体制及び手続に関する規程(規則3⑤ 四)」
    相互けんせい、定期的なチェック及び再発防止を定めたものです。
  3. ③「事務の手続を明らかにした書類(規則3⑥)」
    責任者、作業の過程、順序及び入力方法などの手続を明確に表現したものをいいます。

3.「適正事務処理要件」を満たすことを前提に、今回の改正で緩和された内容

 今回のスキャナ保存制度の改正で規制緩和された内容を一覧にまとめると以下の表のようになります。

入力方式別の国税関係書類 電子化要件
(赤字は 2015年9月末以降の申請から、適正事務処理要件を満たす前提に緩和される内容)
入力方式 速やか
1週間
業務サイクル
1ヶ月と1週間
適時
期限なし
入力期限 書類の作成または
受領後1週間以内
書類毎の業務サイクル1ヶ月+1週間以内 期限無し
(過去分可能)
電子帳簿保存の承認
(関連帳簿の電子保存)
不要 →不要 不要
電子署名
(特定認証事業者による特定認証業務の電子署名)
→不要 →不要 →不要
入力を行う者又はその者を直接管理する者に関する情報の保存(ID等のログ情報)
タイムスタンプ
(タイムビジネス信頼・安心認定マークを持つこと)
不要→要
帳簿との相互関連性
対象書類 国税庁長官が定める資金や物の流れに直結する重要書類帳簿、決算書を除く国税関係書類、帳簿代用書類 国税庁長官が定める資金や物の流れに直結しない書類
契約書、納品書、送り状、請求書、領収書等及びこれらの写し
スキャナ保存対象を「3 万円未満の契約書・領収書及びこれらの写し」に限る規制は撤廃。
主に契約の申込書(定型的約款のあるもの)、他には見積書、注文書、検収書等
「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナ保存」が承認された開始日以降に作成又は受領した書類から 過去に遡って可能
適正事務処理要件
  1. 取引の承認、記録、資産の管理に関して、相互けん制が機能する体制であること。
  2. 事務処理手続きの定期的な検査を行う仕組みを有すること。
  3. 検査等を通じて問題が把握された場合、再発防止の体制や手続きの見直しを行なう。

以上の体制・手続きを社内規程で整備し、これに基づいて事務処理を実施していることを、スキャナ保存の承認申請書に記載して自己申告する。

不要

*書類の大きさ情報が不要となった。

*フルカラーは不要、グレースケール可となった。

特記事項
(事務処理規程など)
国税関係書類の作成又は受領から入力までの各事務の処理に関する規程を定める 電磁的記録の作成及び保存に関する事務の手続きを明らかにした書類の備付が必要(事務の責任者を定めておく)

出典:公益社団法人 日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)「税務関係書類のスキャナ保存 大幅な規制緩和が実現」「増補改訂 e-文書法入門」(平成27年度税制改正の内容説明2015.06.09)

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和4年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
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ビジネス・ブレイン税理士事務所

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