スキャナ保存制度(電子帳簿保存法)の改正

第2回 スキャナ保存制度の概要と要件

更新日 2015.11.30

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 畑中 孝介

平成27年の税制改正により、電子帳簿保存法の一部が改正され、スキャナ保存制度の要件等が大幅に緩和されました。新制度は平成27年9月30日以後の申請から適用されます。当コラムでは、スキャナ保存制度を中心に電子帳簿保存法の改正について解説します。

 スキャナ保存に当たっては、次のような真実性・可視性を確保するための要件を満たす必要があります(「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」(以下、規則)3)。

(1) 読み取る装置

  1. ①スキャナが原稿台と一体となったものに限ること(規則3④)
    ※デジカメ・スマホ等での写真は認められません。
    平成28年税制改正でスマホ・デジカメでの写真も認める方向で検討されています(H27.11.20 日本経済新聞 電子版)。
  2. ②スキャニング時の解像度である25.4ミリメートル当たり200ドット以上で読み取るものであること(規則3⑤二イ(1))…A4で約388万画素
  3. ③赤色、緑色及び青色の階調がそれぞれ256階調以上で読み取るものであること(規則3⑤二イ(2))

※いわゆる一般書類(規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定める書類)をスキャナ保存する場合、白色から黒色までの階調が256階調以上で読み取るものであること(規則3⑥)

(2) 入力要件(次のいずれかにより入力)

  1. ①書類の作成又は受領後、速やかに(1週間以内に)入力(規則3⑤一イ)
  2. ②業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに入力(規則3⑤一ロ)

※「通常の期間とは?」・・・データの入出力を行う、日次及び週次等の期間をいいます。1年間分がまとめて課税期間終了後に記録されるといったケースは想定されていませんが、外部委託やバッチ処理の場合など、業務処理サイクルとして多少長い期間を要するケースもあることから、おおむね1か月程度までの業務処理サイクルであれば、通常の期間として取り扱うこととされています(国税庁「電子帳簿保存法Q&A)より)。

(3) 電子計算機処理システムの要件

  1. ①解像度・階調(解像度200dpi以上、赤・緑・青それぞれ256階調(1677万色)以上)(規則3⑤二イ(1)、(2))
  2. ②タイムスタンプ(規則3⑤二ロ)

    一ファイルごとにタイムスタンプをその都度付すことが必要(複数ファイルへ1つのタイムスタンプを押す方法も要件を満たせば可)

    一般財団法人日本データ通信協会が定める基準を満たすものとして認定された時刻認証業務によって付与され、その有効性が証明されるものです。認定を受けたタイムスタンプ事業者には、「タイムビジネス信頼・安心認定証」が交付され表示されています。

  3. ③読み取った際の解像度階調・大きさの情報の保存(規則経済新3⑤二ハ)
  4. ④ヴァージョン管理(訂正又は削除の事実及び内容の確認)(規則3⑤二ニ)

(4) 入力者等の情報の確認(規則3⑤三)

(5) 適正事務処理要件(規則⑤四)

→第3回で解説します。

(6) スキャニングした書類と帳簿との関連性の確保(規則3⑤五)

(7) 可視性の確保(14インチ以上のカラーディスプレイ等、4ポイント文字の認識等)(規則3⑤六)

(8) システムの概要書等の備付け(規則3⑤七、同3①三)

(9) 検索機能の確保(規則3⑤七、同3①五)

電磁的記録等による保存等の要件の概要(規則第3条・第4条)
要件 電子保存等
(注1)
(第3条)
スキャナ保存
(第3条)
COM保存等
(注2)
(第4条)
帳簿 書類 書類 帳簿 書類
(注3) (注4)
電子計算機処理関係 真実性 電磁的記録の訂正・削除・追加の事実及び内容を確認することができる電子計算機処理システムの使用(規3①一)        
帳簿間での記録事項の相互関連性の確保(規3①二)        
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け(規3①三、同3②)    
可視性 見読可能装置の備付け等(規3①四、同3②)     ※1
検索機能の確保(規3①五、同3②)     ※1
スキャナ関係 真実性 入力期間の制限(規3⑤一イ、ロ)          
一定水準以上の解像度による読み取り(規3⑤二イ(1))        
カラー画像による読み取り(規3⑤二イ(2))     ※2    
タイムスタンプの付与(規3⑤二ロ)        
解像度及び階調情報の保存(規3⑤二ハ(1))        
大きさ情報の保存(規3⑤二ハ(2))          
ヴァージョン管理(規3⑤二ニ)        
入力者等情報の確認(規3⑤三)        
適正事務処理要件(規3⑤四)          
可視性 帳簿との相互関連性の保持(規3⑤五)        
見読可能装置(カラー)の備付け(規3⑤六)     ※2    
整然・明瞭出力(規3⑤六イ~二)        
電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け(規3⑤七、同3①三)        
検索機能の確保(規3⑤七、同3①五)        
COM
処理関係
真実性 COMの作成過程等に関する書類の備付け(規4①一)        
可視性 索引簿の備付け(規4①二)        
COMへのインデックスの出力(規4①三)        
見読可能装置の備付け等(規4①四)        
当初3年間における電磁的記録の並行保存又はCOMの記録事項の検索機能の確保(規4①五)        
共通 税務署長の承認(法4①②③、同5①②③)
  1. (注)1「電子保存等」とは、①帳簿の電磁的記録による備付け及び保存又は②書類の電磁的記録による保存をいう。
  2. 2「COM保存等」とは、①帳簿の電磁的記録による備付け及びCOMによる保存又は②書類のCOMによる保存をいう。
  3. 3決算関係書類を除く全ての国税関係書類をいう。
  4. 4資金や物の流れに直結・連動しない書類として規則第3条第6項に規定する国税庁長官が定めるものをいう。
  5. 5「※1」は、当初3年間の電磁的記録の並行保存を行う場合の要件である。
    「※2」は、カラー画像、見読可能装置(カラー)でなくても可。

(出典:国税庁「電子帳簿保存法Q&A(平成27年9月30日以後の承認申請対応分)」)

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和4年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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