「LEX/DBインターネット」の「新着判例」コーナー
から、実務・研究上重要と思われる「注目の判例」を
ピックアップしてご紹介します。

その他の最新収録判例は、「LEX/DBインターネット」
ログイン後のデータベース選択画面にあります
「新着判例」コーナーでご確認いただけます。

「LEX/DBインターネット」の詳細は、こちらからご確認いただけます。

2025.09.30
懲戒処分取消請求事件 new
LEX/DB25574508/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 9月 2日 判決(上告審)/令和6年(行ヒ)第214号
糸島市消防本部の職員であった被上告人(原告・被控訴人)が、他の職員に対するハラスメント行為を行ったことなどを理由として、処分行政庁により、停職6か月の懲戒処分を受けたところ、本件処分が違法であると主張して、上告人糸島市(被告・控訴人)に対し、本件処分の取消しを求め、第一審が被上告人の請求を認容したため、上告人が控訴し、控訴審が、処分行政庁の判断は、重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠き、裁量権の範囲を超えるものとして違法と評価せざるを得ず、被控訴人の請求を認容した原判決は相当であるとして、上告人の請求を棄却したことから、上告人が上告した事案で、本件各行為は指示や指導としての範ちゅうを大きく逸脱し許容される余地はないのであって、上告人の消防組織の秩序や規律に看過し難い悪影響を及ぼすものであり、被上告人には本件処分以外に懲戒処分歴がないこと等の事情があるとしても、停職6か月という本件処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできず、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであるとして、原判決を破棄し、第1審判決を取り消して、被上告人の請求を棄却した事例。
2025.09.30
懲戒免職処分取消等、懲戒処分取消請求事件 new
LEX/DB25574509/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 9月 2日 判決(上告審)/令和6年(行ヒ)第241号
糸島市消防本部の職員であった第一審原告B及び第一審原告Cが、他の職員に対するハラスメント行為を行ったことなどを理由として、処分行政庁により、Cについては懲戒免職処分を、Bについては戒告の懲戒処分を受けたところ、第一審被告糸島市に対し、各処分の取消しを求めるとともに、Cが、第一審被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、本件免職とこれに関する情報流出による慰謝料等の支払を求め、第一審がBの請求を棄却し、Cの請求のうち、本件免職の取消し並びに慰謝料100万円等の支払を求める限度で認容したところ、Bが控訴し、第一審被告がCの請求を全部棄却するよう求めて控訴し、Cが附帯控訴し、控訴審が、Bの請求を棄却した原判決は相当であるから、同人の控訴を棄却し、Cの請求は、本件免職の取消し並びに慰謝料等110万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるとして、原判決を変更し、第一審被告の控訴を棄却したことから、第一審被告が上告した事案で、本件各行為は、部下に対する言動として極めて不適切なものであり、長期間、多数回にわたり繰り返されたものであることにも照らせば、その非違の程度は極めて重いというべきであり、被上告人には本件処分以外に懲戒処分歴がないこと等の事情があり、免職処分が公務員の地位の喪失という重大な結果を生じさせるものであることを踏まえても、被上告人に対する処分として免職を選択した消防長の判断が、社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできず、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断には、懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるというべきであるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取り消すとともに、被上告人の請求をいずれも棄却し、被上告人の附帯控訴を棄却した事例。
2025.09.24
接見等禁止の裁判に対する準抗告棄却決定に対する特別抗告事件 
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574489/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 8月14日 決定(特別抗告審)/令和7年(し)第672号
被疑者は、正当な理由がないのに、ひそかに、アパートに居住する女性に対し、同アパートの浴室窓から携帯電話機を浴室内に向けて差し入れ、同人の性的な部位等を撮影しようとしたが、同人に気付かれたためその目的を遂げなかったという被疑事実の下で、被疑者が勾留され、原々審が、同日、検察官の請求により、被疑者と弁護人又は弁護人となろうとする者等以外の者との接見等を禁止する旨の裁判をし、これに対し、弁護人が本件準抗告を申し立てたところ、原決定が、被疑者の母を含めて接見等を禁止した原々裁判の判断は正当であるとして、本件準抗告を棄却したことから、弁護人が特別抗告した事案で、本件は、事案の性質、内容をみる限り、被疑者が被疑事実を否認しているとしても、勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれがあるとはうかがわれない事案であるから、原審は、原々裁判が不合理でないかどうかを審査するにあたり、被疑者が接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあることを基礎付ける具体的事情が一件記録上認められるかどうかを調査し、原々裁判を是認する場合には、そのような事情があることを指摘する必要があったというべきであって、そのような事情があることを何ら指摘することなく原々裁判を是認した原決定には、刑訴法81条、426条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、原決定を取り消さなければ著しく正義に反すると認められるとして、原決定を取り消し、本件を地方裁判所に差し戻した事例。
2025.09.24
殺人被告事件(福井女子中学生殺人事件第二次再審検察官控訴棄却判決) 
LEX/DB25623230/名古屋高等裁判所金沢支部 令和 7年 7月18日 判決(再審請求審)/令和4年(お)第2号
被告人(当時20歳)が、被害者方において、同女の二女であるP17(当時15歳)に対し、灰皿でその頭部を数回殴打し、電気カーペットのコードでその首を締め、包丁でその顔面、頸部、胸部等をめった突きにし、よってその頃、同所において、被害者を脳挫傷、窒息、失血等により死亡させ、もって殺害したとして起訴され、一審である福井地方裁判所は、殺人の公訴事実について、主要関係者供述の信用性を否定して被告人を無罪とし、併合審理していた毒物及び劇物取締法違反により被告人を罰金3万円に処したところ、検察官が無罪部分について控訴し、控訴審は、主要関係者供述の信用性を肯定して被告人を本件殺人事件の犯人と認め、原判決の無罪部分を破棄したうえ、被告人が本件犯行当時心神耗弱の状態にあったとして法律上の減軽をして、被告人を懲役7年に処し、その後、同判決は確定したが、被告人が、上記確定判決に対し、2度目となる再審請求を行ったところ、再審請求審である名古屋高裁金沢支部が再審開始を決定したため、これにより行われた同支部での再審公判の事案で、被告人が本件殺人事件の犯人であることについては合理的な疑いを超える程度の立証がされているとは認められず、被告人を犯人であると認めることはできず、同様に判断し、被告人を無罪とした原判決は正当であって誤りはなく、事実誤認をいう論旨には理由がないとして、本件控訴を棄却した事例。
2025.09.16
事務管理費用償還等請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和8年1月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574442/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月14日 判決(上告審)/令和5年(受)第606号
福井県敦賀市内に設置された廃棄物の最終処分場に多量の廃棄物が処分され、その周辺の河川に汚染水が流入するなどの生活環境保全上の支障ないしそのおそれが生じたとして、同処分場をその区域内に有する地方公共団体である上告人(一審原告敦賀市)が、廃棄物処理業者への委託により一般廃棄物を同処分場に処分した被上告人(一審被告組合)らに代わって上記支障等を除去するための工事等を行い、そのための費用の支出を余儀なくされたと主張して、一審被告組合らに対し、事務管理に基づく有益費償還請求権、不当利得返還請求権、国家賠償法1条1項、民法715条1項及び同法709条に基づく損害賠償請求を求め、第一審が請求を一部認容、一部棄却をしたところ、一審原告が控訴し、一審被告組合らが附帯控訴し、控訴審が、一審原告の請求はいずれも理由がなく、これと異なる原判決は相当でないとして、一審被告組合らの各敗訴部分を取り消し、一審被告組合らに対する請求をいずれも棄却し、一審原告の控訴をいずれも棄却したことから、一審原告が上告した事案で、立地市町村が廃棄物の処理及び清掃に関する法律19条の7第1項に基づきその支障の除去等の措置を講じた場合には、その措置は当該立地市町村の事務としての性質を有するところ、この場合であっても、上記委託をした市町村が本来的にその支障の除去等の措置を講ずべき地位にあるものとしてこれを講ずる法的義務を負うことに変わりはなく、事務管理の成立が否定されるものではなく、そして、上記委託をした者が一般廃棄物の処理に関する事務を共同処理するために市町村によって設置された一部事務組合であっても異なるものではないとしたうえで、上告人の事務管理に基づく費用償還請求を棄却すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件を名古屋高等裁判所に差し戻した事例。
2025.09.16
産業廃棄物処理施設変更許可処分取消請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和7年10月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25623080/千葉地方裁判所 令和 7年 6月27日 判決(第一審)/平成31年(行ウ)第8号
P1株式会社は、「P2センター」との名称の管理型最終処分場を運営しているところ、本件処分場の第1期埋立地の地下水の観測井戸から高濃度の塩化物イオンが検出されたことから、第1期埋立地への廃棄物の搬入は現在も停止されたままであるにもかかわらず、P1が、第2期埋立地の運用を開始し、次いで、処分行政庁に対し、埋立地を更に増設する内容の産業廃棄物処理施設変更許可申請をし、処分行政庁が、P1に対し、本件変更許可申請を許可する旨の処分をしたことは、一般廃棄物の最終処分場及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令等で定める許可の基準に適合していないにもかかわらずされた違法なものであると主張して、本件処分場の周辺に居住する原告らが、処分行政庁が属する被告・千葉県に対し、本件変更許可処分の取消しを求めた事案で、前記増設分の埋立地における遮水工等の設備は、いずれも基準省令の要件に適合するものであるから、本件変更許可処分には取り消されるべき違法はないと認められるとしたうえで、本件環境影響調査書の調査対象地域に居住等する原告らについては、本件変更許可処分の取消しを求める原告適格を有するものと認めることができるが、その他の原告らについては原告適格を有するものと認めることはできないとして、これらの原告らの訴えを不適法却下し、その余の原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2025.09.09
消極的確認請求事件、損害賠償請求反訴事件 
「新・判例解説Watch」知的財産法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574340/東京地方裁判所 令和 7年 5月15日 判決(第一審)/令和5年(ワ)第70527号 他
本訴は、原告製品を製造販売する原告が、発明の名称を「環状タンパク質チロシンキナーゼ阻害剤」とする発明に係る本件特許の特許権者である被告に対し、存続期間の延長登録を受けた本件特許権の効力は、原告製品の生産、譲渡及び譲渡の申出に及ばない旨を主張して、主位的にはその旨の確認を求めると共に、予備的に、被告が原告に対して本件特許権に基づく差止請求権及び本件特許権侵害の不法行為に基づく損害賠償請求権をいずれも有しないことの確認を求め、反訴は、被告が、本件特許権侵害の不法行為による損害賠償を求めた事案において、原告の本訴請求に係る訴えはいずれも確認の利益を欠くとして却下し、原告製品は、「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」たるスプリセル錠と医薬品として実質同一であると認めることはできないから、延長登録された本件特許権の効力が原告製品の製造等に及ぶとはいえないとして、被告の反訴請求を棄却した事例。
2025.09.09
否認請求認容決定に対する異議請求事件 
「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和7年11月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25623074/大分地方裁判所 令和 6年10月25日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第179号
破産者株式会社Zが有していた電子記録債権の窓口金融機関である原告・銀行は、破産者に対する破産手続開始決定がされた後、当該電子記録債権の決済のために破産者の普通預金口座宛てに送金された各支払金を破産者の普通預金口座に入金せず、原告の別段預金に入れて保管し、銀行取引約定書に基づき自らの破産者に対する破産債権に充当したところ、破産者の破産者管財人である被告が、本件行為は破産法162条1項1号ロ所定の否認事由に該当すると主張して、同法174条に基づく否認の請求をし、原告に対して充当額及びこれに対する遅延損害金の支払を求めたところ、大分地方裁判所は、上記請求を認容する旨の決定をしたことから、原告が、被告に対し、原決定の取消し及び否認の請求の棄却を求めて破産法175条1項に基づく異議の訴えを提起した事案で、本件各でんさいには別除権たる商事留置権が成立しているとはいえず、また、原告による相殺権の行使には理由がなく、そして、原告は、本件行為について悪意の受益者に当たるといえるから、被告による破産法162条1項に基づく否認権の行使には理由があり、被告は、原告に対し、同法167条1項ないし寄託金返還請求権及び履行遅滞に基づく損害賠償請求権に基づき、本件行為による充当額につき支払を求めることができるとともに、これに対する遅延損害金の支払を求めることができるものと認められるとして、大分地裁がした否認の請求を認容する決定を認可した事例。
2025.09.02
遺留分減殺請求事件 
LEX/DB25574428/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月10日 判決(上告審)/令和6年(受)第2号
被上告人らが、亡Aの遺言により亡Aの遺産を相続した上告人に対し、民法(平成30年法律第72号による改正前)1031条の規定による遺留分減殺請求権の行使に基づき、亡Aの遺産のうち、不動産について持分移転登記手続等を求めるとともに、預貯金等について金員の支払を求めた事件における上告審の事案で、遺留分権利者から遺留分減殺に基づく目的物の現物返還請求を受けた受遺者が民法1041条1項の規定により遺贈の目的の価額を弁償する旨の意思表示をした場合において、遺留分権利者が受遺者に対して価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたときは、遺留分権利者は、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権を遡って失い、これに代わる価額弁償請求権を確定的に取得するが、遺留分権利者が上記意思表示をするまでは、遺留分減殺によって取得した目的物の所有権及び所有権に基づく現物返還請求権のみを有するものと解するのが相当であるとしたうえで、本件各持分について、上告人が価額を弁償する旨の意思表示をしたのに対して、被上告人らが価額弁償を請求する権利を行使する旨の意思表示をしたことはうかがわれないから、被上告人らは、価額弁償請求権を確定的に取得したとは認められず、共有持分権及び共有持分権に基づく現物返還請求権のみを有するものであるから、本件各持分の価額の支払を命じた原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を変更した事例。
2025.09.02
年金額減額処分取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年11月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574433/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月10日 判決(上告審)/令和7年(行ツ)第125号
国民年金法上の老齢基礎年金並びに厚年法上の老齢厚生年金及び遺族厚生年金の受給権者である第一審原告らが、第一審原告らの年金の額を減額する旨を定めた平成24年改正法は、憲法13条、25条及び29条、社会権規約並びにILO102号条約に違反しており、いずれも無効であるから、平成24年改正法及び平成25年政令に基づいて厚生労働大臣がした原告らの年金額を減額する旨の改定処分は違法であるなどとして、同処分の取消しを求めるとともに、同処分をした被告職員の行為により損害を被ったとして、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料の支払を求め、第一審が、処分の取消しを求める部分を却下し、その余の請求を棄却した事件の上告審の事案で、記録によれば、原審の第1回及び第2回口頭弁論期日において控訴状の陳述その他の実質的弁論がされたうえ、第3回口頭弁論期日において合議体の裁判官の1名が代わったが、従前の口頭弁論の結果が陳述されないまま、第4回口頭弁論期日において弁論が終結され、上記の交代後の裁判官によって原判決がされたことが明らかであるところ、そうすると、原判決は、民訴法249条1項に違反し、判決の基本となる口頭弁論に関与していない裁判官によってされたものであり、同法312条2項1号に規定する事由が存在するから、上告理由について判断をするまでもなく、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻すのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を原審に差し戻した事例。
2025.08.26
行政処分取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574450/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 7月17日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第276号
被上告人(原告・控訴人)が、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律20条1項に基づき、介護給付費の支給決定に係る申請をしたところ、上告人(被告・被控訴人)・千葉市からこれを却下する処分を受けたため、本件処分が違法であると主張して、上告人を相手に、本件処分の取消し及び支給決定の義務付けを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、原審(控訴審)が、本件処分の取消請求及び支給決定の義務付け請求を認容するとともに、損害賠償請求を一部認容したところ、上告人が上告した事案で、上告人が原審のいう不均衡を避ける措置をとらなかったことを理由として、本件処分に裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法があるということはできず、原審の判断には、市町村の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った結果、受けることができる介護給付のうち自立支援給付に相当するものの量を算定することができないとした上告人の判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものと認められるか否かについて審理を尽くさなかった違法があるというべきであるから、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事例。
2025.08.26
窃盗、電子計算機使用詐欺、覚醒剤取締法違反被告事件 
「新・判例解説Watch」刑法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574439/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 7月11日 判決(上告審)/令和6年(あ)第264号
被告人が窃盗、電子計算機使用詐欺、覚醒剤取締法違反の罪に問われ、第1審が、氏名不詳者らと共謀して現金自動預払機から現金合計198万3000円を引き出して窃取したと認定し、また各犯罪事実を認定して、被告人を懲役4年に処したところ、被告人が控訴し、控訴審が、原判決は、第1審判決が本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めた点には事実誤認があるとして、第1審判決を破棄して自判し、その余の罪について被告人を懲役3年6か月に処し、本件各電子計算機使用詐欺について無罪を言い渡したことから、検察官が上告した事案で、原判決が、被告人に本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めることができないとした点には、事実誤認があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるとして、原判決を破棄し、本件控訴を棄却した事例(補足意見1名)。
2025.08.26
保釈請求却下決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件 new
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 令和7年9月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574308/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 5月21日 決定(特別抗告審)/令和7年(し)第328号
頭書被告事件の控訴裁判所である札幌高等裁判所が、同被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官を含む合議体で、保釈請求を却下する決定をしたところ、抗告人が異議申し立てをし、原審が、申立人からの異議申立てを棄却する決定をしたことから、抗告人が特別抗告した事案で、第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥されると解するのが相当であるから、職務の執行から除斥されるべき裁判官が関与してされた原々決定及びこれを是認した原決定には、同法20条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められるとして、原決定及び原々決定を取り消し、本件を札幌高等裁判所に差し戻した事例。
2025.08.19
損害賠償、求償金請求事件 
LEX/DB25574415/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 7月 4日 判決(上告審)/令和5年(受)第1838号
上告人が、普通乗用自動車で走行中に進入しようとした駐車場の設置又は保存の瑕疵により傷害を負ったと主張して、被上告人に対し、不法行為(工作物責任)に基づく損害賠償を求め、上告人は、上記自動車の登録使用者が自動車保険契約を締結していた保険会社から、上記保険契約に適用される普通保険約款中の人身傷害条項に基づき、人身傷害保険金の支払を受けたことから、上記保険会社が上告人の被上告人に対する損害賠償請求権を代位取得する範囲、すなわち、裁判所が、被上告人の上告人に対する損害賠償の額を定めるにあたり民法722条2項の規定を類推適用して上記の事故前から上告人に生じていた身体の疾患をしんしゃくし、その額を減額する場合に、支払を受けた人身傷害保険金の額のうち上記損害賠償請求権の額から控除することができる額の範囲が争われた事案の上告審で、上記疾患が本件限定支払条項にいう既存の身体の障害又は疾病に当たるときは、被害者に対して人身傷害保険金を支払った訴外保険会社は、支払った人身傷害保険金の額と上記の減額をした後の損害額のうちいずれか少ない額を限度として被害者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得すると解するのが相当であり、このことは、訴外保険会社が人身傷害保険金の支払に際し、本件限定支払条項に基づく減額をしたか否かによって左右されるものではないとしたうえで、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、正当として是認することができ、論旨は採用することができず、なお、その余の上告受理申立て理由は、上告受理の決定において排除されたとして、本件上告を棄却した事例(補足意見1名)。
2025.08.19
死体遺棄幇助、死体損壊幇助被告事件 
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和7年10月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574350/札幌地方裁判所 令和 7年 5月 7日 判決(第一審)/令和6年(わ)第156号
被告人は、夫である分離前の相被告人A方において、娘である分離前の相被告人Bと同居して生活していたものであるが、(1)Bが、前記A方において、かねて殺害したCの死体の胴体から切断し同所に持ち込んでいた同人の頭部を継続して隠匿し、もって死体を遺棄した際、その情を知りながら、同所において、Bの前記隠匿を容認し、もって同人の死体遺棄の犯行を容易にさせて幇助し、(2)Bが、同所において、多機能ナイフ等を使用するなどして、前記Cの頭部から右眼球を摘出し、もって死体を損壊した際、これに先立つ同日、A方浴室においてビデオ撮影しながら前記死体損壊をすることを計画していたBから、同ビデオ撮影をするよう求められ、その情を認識しながら、Aに対し、Bの前記求めを伝えて同ビデオ撮影を依頼し、これを承諾したAに、Bの前記死体損壊の場面をビデオ撮影させ、もって同人の死体損壊の犯行を容易にさせて幇助したとして、死体遺棄幇助、死体損壊幇助の罪で懲役1年6か月を求刑された事案で、被告人の行為や態度は、Bの前記死体遺棄の犯行を容易にさせ、また、死体損壊の犯意を増強させてこれを心理的に幇助したものと認定評価でき、被告人の幇助の故意に欠けるところもないから、被告人には死体遺棄幇助罪及び死体損壊幇助罪が成立するとしたうえで、被告人が幇助したBの犯行は常軌を逸する犯行であり、刑法190条に係る犯行の中で犯情は非常に悪く、被告人の幇助行為をみると、Bの犯意を促進した程度も小さくなかったとみるべきである一方、死体損壊幇助の点は、物理的に幇助したとはいえないし、Aに比べれば、Bの死体損壊を促進した程度は小さく、Bの犯行を止めなかったことについて後悔を述べているなど、更生可能性に関する事情も加味するとして、被告人を懲役1年2か月に処し、3年間その刑の執行を猶予した事例。
2025.08.12
不当利得返還等請求事件 
LEX/DB25574403/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 6月30日 判決(上告審)/令和6年(受)第1067号
別荘地の管理を行っている被上告人が、同別荘地内に存在する土地を所有していた訴外E及び訴外Eから本件の土地の所有権を相続により取得した上告人Bは、被上告人による本件の土地を含む別荘地の管理により、法律上の原因なく本件の土地の管理に係る管理費相当額の利得を得た一方、原告はこれにより同額の損失を被ったと主張し、上告人らに対し、不当利得に基づき利得金相当額の支払などを求め、第一審がいずれの請求も棄却したことから、被上告人が控訴し、控訴審が被上告人の請求を認容したところ、上告人らが上告した事案で、亡Aらは、本件管理契約を締結することなく被上告人の本件管理業務という労務により法律上の原因なく利益を受け、そのために被上告人に損失を及ぼしたものと認められ、このことは、本件管理業務が本件土地の経済的価値それ自体を維持又は向上させるものではなかったとしても変わるものではなく、また、亡Aらが被上告人による本件管理業務の提供を望んでいなかったとしても、本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の負担を免れることはできないというべきであり、このように解することが契約自由の原則に反するものでないことは明らかであるから、亡Aらは、被上告人に対し、本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負うものであり、控訴審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例。
2025.08.12
不当利得返還等請求事件 
LEX/DB25574404/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 6月30日 判決(上告審)/令和5年(受)第2461号
上告人(被控訴人・原告)が、被上告人(控訴人・被告)に対し、本件管理業務という労務により被上告人は法律上の原因なく利益を受け、上告人は損失を被ったとして、不当利得返還請求権に基づき、平成28年7月から令和3年6月までの間における管理費と同額の支払を求め、第一審が請求を一部認容したところ、被上告人らが控訴し、控訴審が、上記事実関係の下において、本件管理業務が本件土地の経済的価値に与えた影響は不明であるから、被上告人が利益を受けたとは認められず、被上告人は上告人に対し不当利得返還義務を負わないと判断して、上告人の請求を棄却したところ、上告人が上告した事案で、上告人の本件管理業務という労務は、本件別荘地内の土地に建物を建築してその土地を利用しているか否かにかかわらず、本件別荘地所有者に利益を生じさせるものであるというべきであり、そして、本件管理業務に要する費用は、本件別荘地所有者から本件管理業務に対する管理費を収受することによって賄うことが予定されているといえるから、被上告人からその支払を受けていない上告人には損失があるというべきであるとし、また、被上告人が上告人による本件管理業務の提供を望んでいなかったとしても、本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の負担を免れることはできないというべきであって、このように解することが契約自由の原則に反するものでないことは明らかであるから、被上告人は、上告人に対し、本件管理業務に対する管理費として相当と認められる額の不当利得返還義務を負い、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した事例。
2025.08.05
生活保護基準引下げ処分取消等請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574399/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 6月27日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第397号 他
大阪府内に居住して生活保護法に基づく生活扶助を受給していた上告人ら(上告人X3らについてはその各夫)は、平成25年から平成27年にかけて行われた、厚生労働大臣による「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定を理由として、所轄の福祉事務所長らから、それぞれ、生活扶助の支給額を変更する旨の保護変更決定を受けたことから、上告人らが、本件改定は違法であるなどと主張して、〔1〕上告人X1ら及び上告人X2らにおいて被上告人各市を相手に上記の保護変更決定の取消しを求め、〔2〕上告人X1ら及び上告人X3らにおいて被上告人国に対し国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第一審が、X1、X2及びX3を除く者の本件各決定の取消請求については認容し、その余の請求(国家賠償請求)については棄却したところ、双方がそれぞれ控訴し、控訴審が、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があるということはできないなどとして、第一審判決中、被上告人ら敗訴部分を取り消し、上告人らの請求を棄却したことから、上告人らが上告した事案で、デフレ調整における改定率の設定については、上記不均衡を是正するために物価変動率のみを直接の指標として用いたことに、専門的知見との整合性を欠くところがあり、この点において、デフレ調整に係る厚生労働大臣の判断の過程及び手続には過誤、欠落があったものというべきであるから、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法というべきであり、したがって上記請求を認容した第1審判決は正当であるとして、同部分につき被上告人各市の控訴を棄却する一方、本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとして当該部分に係る上告を棄却した事例(反対意見1名、補足意見1名)。
2025.08.05
生活保護基準引下げ処分取消等請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574400/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 6月27日 判決(上告審)/令和6年(行ヒ)第170号
愛知県内に居住して生活保護法に基づく生活扶助を受給していた被上告人承継人を除く被上告人らは、平成25年から平成27年にかけて行われた、厚生労働大臣による「生活保護法による保護の基準」(昭和38年厚生省告示第158号)中の生活扶助基準の改定を理由として、所轄の福祉事務所長らから、それぞれ、生活扶助の支給額を変更する旨の保護変更決定を受けたことから、被上告人らを含む一審原告らが、本件改定は違法であるなどと主張して、〔1〕上告人各市を相手に、上記の保護変更決定の取消しを求めるとともに、〔2〕上告人国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、一審が請求をいずれも棄却したため、一審原告らの一部(上告人ら)が控訴し、控訴審が、一審原告らの請求はいずれも理由があるとして、一審判決を取り消し、上記請求をいずれも認容し、当審における拡張請求を棄却したところ、上告人らが上告した事案で、本件改定は、物価変動率のみを直接の指標としてデフレ調整をすることとした点において、その厚生労働大臣の判断に裁量権の範囲の逸脱又はその濫用があり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法というべきであるとする一方、厚生労働大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然とデフレ調整に係る判断をしたと認め得るような事情があったとまでは認められず、他に、同大臣が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件改定をしたと認め得るような事情があったというべき根拠は見当たらないから、上告人各市の上告を棄却し、他方、本件改定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないから、損害賠償請求を認容した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、上告人国の論旨は理由があるから、控訴審判決のうち上記請求に関する部分は破棄を免れず、そして、既に説示したところによれば、上記請求を棄却した一審判決は結論において正当であるとして、同部分につき被上告人らの控訴を棄却した事例(補足意見1名、反対意見1名)。
2025.08.05
破産管財人報酬決定に対する即時抗告事件
「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和7年12月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622948/福岡高等裁判所那覇支部 令和 6年 4月26日 決定(抗告審(即時抗告))/令和6年(ラ)第14号
Bを破産者とする那覇地方裁判所破産手続開始申立事件(基本事件)の申立人であり、破産債権者である抗告人が、基本事件における破産管財人(被抗告人)の報酬を600万円と定めた原決定を不服として、即時抗告した事案で、基本事件は、抗告人の申立てにより開始されたものの、その債務者審尋期日において破産者自身がもともと自己破産を検討しており自らの破産状態につき異議を述べず、破産管財人に対して抵抗する態度を示さなかったうえ、基本事件における破産手続の費用として予納された金額は297万円、債権認否表における破産債権の総額は約4億3102万円、形成された破産財団が約1264万円であり、仮に上記報酬額を600万円とした場合の配当原資は、上記破産財団から上記予納金額と上記報酬額を控除した約367万円(配当率は約0.8%)となるものと認められるところ、上記上申書において指摘されている管財業務の内容等の事情を考慮したとしても、その適正な報酬額は400万円を上回るものではないとみるのが相当であり、これを超えて600万円とした原審の判断は、明らかにその裁量権の範囲を逸脱したものといわざるを得ないなどとして、原決定を取り消し、基本事件に係る破産管財人の報酬を400万円と定めた事例。