注目の判例

刑法

2015.05.07
有印私文書偽造・同行使、詐欺、業務上横領被告事件(元米子市職員 業務上横領 第一審破棄)
LEX/DB25506083/広島高等裁判所松江支部 平成27年3月6日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第30号
被告人は、米子市役所の職員として高齢者である被害者の財産を管理していた際、預かっていた現金のうち30万円余を着服したとの業務上横領、被害者の死亡後、同人名義の銀行口座に入金された年金について、銀行窓口の職員を欺罔して15万円余を詐取したとの有印私文書偽造・同行使、詐欺被告事件において、原判決は懲役2年の実刑を言い渡し、これに対し、被告人が控訴をした事案において、事実誤認の主張は排斥したが、原判決の言渡し後に被害弁償を行ったこと、被害者相続人が被告人に対して寛大な処分を望んでいること、保釈中に正社員として就職したこと等を考慮し、被告人に対し、懲役2年6月、執行猶予5年を言い渡した事例。
2015.05.07
業務上過失傷害(変更後の訴因は業務上過失致死傷)被告事件
(古本屋 本棚倒壊 経営者有罪(控訴審))
LEX/DB25506075/札幌高等裁判所 平成27年3月5日 判決 (控訴審)/ 平成26年(う)第202号
訴外会社の取締役として、同社が経営する古書店の業務全般を統括するとともに、同店内にいる客の安全のため、同店内に設置された書棚の転倒や倒壊を確実に防止する措置を講じるべき業務に従事していた被告人が、各陳列棚の転倒による書棚の倒壊を確実に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、営業を続けた過失により、書棚に加わった軽度の外圧等によって、全ての陳列棚を転倒させて書棚を倒壊させ、客である甲(当時14歳)及び乙(当時10歳)に対し、その身体を書棚と書棚との間に挟ませて傷害を負わせ、乙を死亡するに至らせたとの業務上過失致死傷被告事件により、原審において有罪判決を受け、被告人が事実誤認を理由に控訴をした事案において、控訴を棄却した事例。
2015.04.28
公務執行妨害、傷害、大麻取締法違反、あへん法違反、覚せい剤取締法違反被告事件
(大阪府警 違法捜査 無罪)
LEX/DB25506069/大阪地方裁判所 平成27年3月5日 判決 (第一審)/ 平成26年(わ)第2715号等
被告人は、警察官から職務質問及び所持品検査を受けた際、同警察官に対し、右手で顔面をひっかき、その左上腕及び左母指付近にかみつくなどし、その職務の執行を妨害するとともに、加療約1週間を要する傷害を負わせ、大麻、覚せい剤、あへんを所持したとの事案において、被告人の行為は正当防衛であり、プライバシー侵害の程度の高い違法な所持品検査をした上、強度の有形力行使をしたもので、令状主義の精神を没却するような重大な違法があるから、このような違法行為に密接に関連する証拠を許容することは、将来の違法捜査抑制の見地から相当でないとして、証拠請求された品の証拠能力を否定し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2015.04.21
受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件(岐阜県美濃加茂市長 無罪)
LEX/DB25505958/名古屋地方裁判所 平成27年3月5日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第1494号
被告人が、αから、浄水プラントを市立の学校に設置する契約が締結できるように有利かつ便宜な取り計らいをしてほしい旨の請託を受け、これを承諾し、αから、報酬並びに今後も同様の取り計らいをすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、現金の供与を受け、もって自己の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受するなどしたとして起訴された事案において、当該各現金授受の事実を認めることはできないとして、無罪を言い渡した事例。
2015.04.21
逮捕監禁、爆発物取締罰則違反、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件
(オウム事件 控訴棄却)
LEX/DB25505965/東京高等裁判所 平成27年3月4日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第797号
教団の信者であった被告人が、教団信者の所在を聞き出すため、その兄である被害者Aを拉致することを企て、共犯者と共謀の上、Aを自動車の後部座席に押し込んで同車を発車させ、教団施設内において、同人に全身麻酔薬を投与して意識喪失状態を継続させるなどして同人を脱出不可能な状態において逮捕監禁し、また、教団が宗教弾圧や攻撃を受けているかのように装おうなどと考え、当時教団を擁護する立場であると考えていた人物が居住していたマンションの玄関に手製爆弾を設置し、爆発させるなどした事案の控訴審において、被告人を懲役9年に処した原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2015.04.21
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(散弾銃で父殺害)
LEX/DB25505952/横浜地方裁判所 平成27年3月4日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第333号等
幼少期から長年にわたり、実父の暴力さらされ、恐怖心により逆らうこともできす、人生の芽を摘まれたと何度も感じてきた生育歴のある被告人が、実父(当時55歳)に対し、殺意をもって、至近距離から散弾銃で散弾1発を発射して実父の腹部に命中させ、同人を失血により死亡させて殺害するなどした事案において、特筆すべきは、被告人が、確実に殺害を遂げることができるように、ブレーカーを落として暗くした室内で待ち伏せをした上、猟銃を使用して、実父を至近距離から射殺したという態様であり、危険性の高さが際立っており、しかも、被告人は、実父の殺害を考え始めてから、殺害後に遺体を速やかに火葬して犯行を隠ぺいするための棺桶を用意するなど、時間をかけて周到な準備をしており、いわゆる完全犯罪をも目論んだ、非常に計画性の高い、巧妙な犯行であるとし、懲役15年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.04.21
殺人、非現住建造物等放火被告事件(埼玉 両親殺害・放火 無罪)
LEX/DB25505963/さいたま地方裁判所 平成27年3月3日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第832号
被告人が、被害者2名を殺害した上、同人らが居住していた建物に放火して全焼させたとして、殺人及び非現住建造物等放火の罪で起訴された事案において、認定できた事実を総合しても、被告人が殺人及び放火の犯人でないとしたならば説明が困難であるとはいえないというべきであり、被告人が各事件の犯人であると認定するにはなお合理的な疑いが残るとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.04.21
収賄被告事件(京都大学元教授 収賄罪 二審も有罪)
LEX/DB25505966/東京高等裁判所 平成27年2月26日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第527号
京都大学大学院教授である被告人が、研究機器等の納入業者の代表取締役であるA(原審相被告人)から、その職務に関し、賄賂の趣旨で、クレジットカードの利用の利益及びその使用分を含む合計943万円余相当の財産的利益の供与を受けたという事案の控訴審において、原判決後の被告人の反省状況等を考慮すると、被告人を懲役2年に処した原判決の量刑は、現時点においては、刑期の点で重すぎる結果になったというべきであるとして、原判決中被告人に関する部分を破棄し、被告人を懲役1年8月に処した事例。
2015.04.14
偽計業務妨害、航空機の強取等の処罰に関する法律違反、威力業務妨害、脅迫、不正指令電磁的記録供用被告事件(パソコン遠隔操作事件)
LEX/DB25505940/東京地方裁判所 平成27年2月4日 判決 (第一審)/平成25年(合わ)第48号等
被告人が、自ら作成した他人のパソコンを遠隔操作するためのコンピュータプログラムを用いるなどして、見ず知らずの第三者のパソコンに指令を送り、その第三者が知らない間にそのパソコンを遠隔操作するなどして、犯罪予告文を送信させるという方法により、約2か月半の間に合計9件にわたり行った偽計業務妨害、航空機の強取等の処罰に関する法律違反、威力業務妨害、脅迫、不正指令電磁的記録供用罪の事案において、一連の犯行の全体の犯情、個々の事件の犯情に照らせば、経緯・動機、態様、経過等の点において悪質であり、そのような事件を9件も繰り返した被告人については、相応に重い刑を科すのが相当であるとして、被告人を懲役8年に処した事例。
2015.04.07
傷害、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(アイドルグループ握手会 切りつけ事件)
LEX/DB25505909/盛岡地方裁判所 平成27年2月10日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第94号
女性人気アイドルグループのメンバーがCDを購入したファンと握手をするイベントにおいて、被告人がイベント参加者に紛れてメンバーに近づき、隠し持っていた凶器(折り畳み式のこぎり)で、突然同グループのメンバー二人に続けざまに切りつけて傷害を負わせ、それを見て止めに入った男性スタッフにも傷害を負わせたという事案において、被告人の責任は重大であり、複数被害者に対する凶器を用いた無差別的な傷害事案という類型の中でも、非常に重いものと位置づけられるとして、被告人を懲役6年に処した事例。
2015.03.31
住居侵入、殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(東京 三鷹ストーカー 女子高生殺害 (控訴審))
LEX/DB25505813/東京高等裁判所 平成27年2月6日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第1440号
東京都三鷹市で、女子高校生(当時18歳)を刃物で刺して殺害したとして、元交際相手の被告人が、殺人や銃砲刀剣類所持等取締法違反などの罪に問われた事案(リベンジポルノに関するストーカー殺人事件)の控訴審において、本件投稿行為(被告人が被害者の裸体の画像データをインターネット上に公開したこと)に関して、起訴された各罪の審理に必要な範囲を超えた主張・立証がされている上、原判決の説示内容を検討すると、本件各罪の犯情及び一般情状として考慮できる範囲を超え、実質的にはこれ(名誉棄損罪)をも併せて処罰するかのような考慮をして被告人に対する刑を量定した疑いがあり、原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとして、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻した事例。
2015.03.31
不正競争防止法違反被告事件(ODA贈賄 コンサル前社長ら有罪)
LEX/DB25505904/東京地方裁判所 平成27年2月4日 判決 (第一審)/平成26年(特わ)第970号等
被告会社(内外鉄道の設計・施工の監督等に関する事項等を目的とする会社)が、ベトナム、インドネシア及びウズベキスタンの各国において、鉄道関連事業に関するコンサルタント契約の締結、履行等について、当該事務の管理するなどの権限を有していた外国公務員らに対し、被告会社に有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下、ベトナムにおいては約4年2か月間で合計6990万円を、インドネシアにおいては約3年3か月間で合計約2000万円相当を、ウズベキスタンにおいては約1年間で合計約5477万円相当の賄賂をそれぞれ供与した事案において、被告会社には、当該各犯行における責任は重く、特に国税調査後にも賄賂の供与を継続したことは、強く非難されるべきであるなどとして罰金9000万円を、被告人B(被告会社の代表取締役)には、国税局の税務調査を契機として海外における賄賂供与の実態を知った後も、賄賂供与を継続する旨の最終決定をし、推し進めたものでその責任は軽いものではないが、最終的に自首を決め、その後の捜査に全面的に協力していることなどから、懲役2年(執行猶予3年)を、被告人Cには、被告会社の海外事業の枢要な地位にあった者をして、相手方から賄賂要求を了承し、当該各犯行を全体にわたって指揮したものでその果たした役割は大きいなどとして、懲役3年(執行猶予4年)を、被告人Dには、被告会社の経理責任者の地位にあり、国際部が約束した外国公務員等への賄賂供与につき協力を求められるや、金銭を拠出したもので、その役割は小さいものではないなどとして、懲役2年6月(執行猶予3年)を言い渡した事例。
2015.03.17
営利誘拐幇助,逮捕監禁幇助,強盗殺人幇助,殺人被告事件
LEX/DB25447124/最高裁判所第三小法廷 平成27年 3月10日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第755号
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律71条以下が定める区分審理制度は、区分事件審判及び併合事件審判の全体として公平な裁判所による法と証拠に基づく適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されているとして、憲法37条1項に違反しないとし、上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2015.03.03
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件(クラブ「NOON(ヌーン)」事件)
「新・判例解説Watch」H27.5月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25505605/大阪高等裁判所 平成27年 1月21日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第705号
被告人は、設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせるクラブを経営するものであるが、共犯者と共謀の上、大阪府公安委員会から風俗営業の許可を受けないで、不特定の来店客にダンスをさせ、かつ、酒類等を提供して飲食させ、もって許可を受けないで風俗営業を営んだとして、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)違反として起訴された第一審判決で、風営法2条1項3号に定める「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」の意義について、形式的にその文言に該当するだけでなく、「その具体的な営業態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し、わいせつな行為の発生を招くなどの性風俗秩序の乱れにつながるおそれが、単に抽象的なものにととまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる営業を指す」との限定的な解釈を行った上で、被告人の本件営業はこれに該当しないとして、無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案において、原判決は、3号営業に対する規制目的を性風俗秩序の維持と少年の健全育成に限定し、他の規制目的を考慮していないと解される点で相当でなく、また、3号営業の解釈自体においても、3号営業に対する事前許可性と両立し難い不適当な基準を定めた点で、法令の解釈適用を誤ったものではあるが、ダンスをさせる営業をその態様を問わず一律に規制対象とすることは合理性を欠くと解釈したことは相当であり、本件公訴事実について3号営業を営んだことに当たらないため犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した原判決の結論は正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2015.03.03
業務上過失致死被告事件(インプラント手術 患者死亡)
LEX/DB25505527/東京高等裁判所 平成26年12月26日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第688号
歯科医師である被告人が、歯科インプラント手術を実施した際、下顎の舌側口腔底にはオトガイ下動脈等の血管が走行しており、その損傷の危険性を認識した上、これらの血管を損傷しないように、ドリルを挿入する角度と深度を適切に調整してインプラントの埋入窩を形成しなければならない業務上の義務があったのにこれを守らなかったために、出血により口腔底等に発生した血腫によって気道閉塞を生じさせて患者(当時70歳)を窒息させ、窒息に起因する低酸素脳症と多臓器不全により死亡させたとされた業務上過失致死被告事件の控訴審において、被告人が、オトガイ下動脈をドリルで挫滅させるなどし、出血により口腔底等に発生した血腫により気道閉塞を生じさせて患者を死亡させたこと、被告人にはインプラント手術における業務上の過失があり、その過失と患者の死亡との間には因果関係があることを認め、被告人を有罪とした原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2015.02.24
準強姦被告事件 (無罪)
LEX/DB25505426/福岡高等裁判所宮崎支部 平成26年12月11日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第20号
被告人が、自ら主催するゴルフ教室の生徒である被害者(当時18歳)を、ゴルフ指導の一環との口実でホテルの一室に連れ込み、恩師として信頼していた被告人の言動に強い衝撃を受けて極度に畏怖・困惑し、思考が混乱して抗拒不能の状態に陥っている被害者を、その旨を認識しながら姦淫したとする準強姦被告事件において、原審は、被害者が被告人との性交を拒否しなかった原因としては、信頼していた被告人から突然性交を持ちかけられたことによる精神的混乱により抗拒不能に陥っていた可能性がある一方で、そのような精神的混乱はあったものの、その程度は抗拒不能に陥るほどではなく、自分から主体的な行動を起こさなかった可能性も排斥できず、被害者が抗拒不能状態であったことの合理的な疑いを超える証明はできていないとして無罪を言い渡したため、検察官の職務を行う指定弁護士が控訴した事案において、被告人を無罪とした原判決は結論において正当であるとし、控訴を棄却した事例。
2015.02.24
自動車運転過失傷害、道路交通法違反被告事件(無罪)
LEX/DB25505501/札幌地方裁判所 平成26年10月17日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第695号
被告人運転車両が本件横断歩道上を進行していたところに、同横断歩道を駆け足で渡っていたAが同車両右側面の運転席ドア付近に衝突しその場に転倒した本件事故につき、Aが被告人運転車両との衝突ないし接触により傷害を負ったかどうかが争われた自動車運転過失傷害、道路交通法違反被告事件の事案において、Aに本件診断書に記載されたとおりの傷害結果が生じたことについては,合理的な疑いが残るといわざるを得ず、すなわち、本件事故により、Aが公訴事実第1記載の傷害を負ったと認めることはできないとして、本件公訴事実第1については、本件事故による傷害の事実が認められず、本件公訴事実第2についても、被告人は、救護義務及び報告義務の前提となる交通事故を起こしたとは認められず、本件公訴事実のいずれについても犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人に無罪を言い渡した事例。
2015.02.17
住居侵入,強盗強姦未遂,強盗致傷,強盗強姦,監禁,窃盗,窃盗未遂,強盗殺人,建造物侵入,現住建造物等放火,死体損壊被告事件(裁判員の「死刑」破棄 無期懲役確定へ 1)
LEX/DB25447048/最高裁判所第二小法廷 平成27年 2月 3日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第1729号
被告人が、約2か月の間に、強盗殺人や現住建造物等放火の各犯行に加え、強盗致傷や強盗強姦、同未遂等の各犯行を次々と敢行したという事件で、裁判員裁判の第一審では、死刑を言い渡したため、被告人がこれを不服として控訴し、控訴審では、第一審には無期懲役と死刑という質的に異なる刑の選択に誤りがあるとして、第一審(死刑)を破棄し、被告人を無期懲役に処したところ、検察官及び被告人の双方が上告した事案において、本件では、被告人を死刑に処すべき具体的、説得的な根拠を見いだし難いと判断したものと解し無期懲役に処した控訴審判決の結論は、当審も是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2015.02.17
住居侵入,強盗殺人被告事件(裁判員の「死刑」破棄 無期懲役確定へ 2)
LEX/DB25447049/最高裁判所第二小法廷 平成27年 2月 3日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第1127号
金品を強奪する目的で、マンションの被害男性方居室に無施錠の玄関ドアから侵入し、室内にいた当時74歳の被害男性を発見し、同人を殺害して金品を強奪しようと決意し、殺意をもって、その頸部をステンレス製三徳包丁で突き刺し、同人を頸部刺創に基づく左右総頸動脈損傷による失血により死亡させた事件で、裁判員裁判の第一審では、被告人を死刑に処したため、被告人がこれを不服として控訴し、控訴審では、前科を重視して死刑を選択することには疑問があり、第一審は人の生命を奪った前科があることを過度に重視した結果、死刑を選択した誤りがあるとして、無期懲役に処したところ、検察官及び被告人の双方が上告した事案において、本件では、被告人を死刑に処すべき具体的、説得的な根拠を見いだし難いと判断したものと解し無期懲役に処した控訴審判決の結論は、当審も是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2015.02.17
覚せい剤取締法違反被告事件(原判決(無罪判決)破棄(控訴審))
LEX/DB25505415/東京高等裁判所 平成26年12月11日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第786号
覚せい剤の自己使用の事案の控訴審において、被告人の尿から覚せい剤の成分が検出されていることからすると、特段の事情がない限り、被告人が自らの意思で覚せい剤を摂取したものと推認されるとした上で、A供述及び被告人供述の信用性を肯定し、上記推認を妨げる特段の事情があるとした原判決は、経験則等に照らして不合理なものであり、本件において特段の事情は認められないのであって、Aの当審公判供述にも照らすと、被告人が自らの意思で覚せい剤を摂取したものと推認されるべきであるとして、検察官の控訴を容れて、原判決(無罪判決)を破棄し、被告人を懲役2年6月に処した事例。