2025.01.21
行政処分取消請求控訴事件
★「新・判例解説Watch」環境法分野 令和7年1月17日解説記事が掲載されました★
LEX/DB25573869/札幌高等裁判所 令和 6年10月18日 判決(控訴審)/令和4年(行コ)第1号
北海道猟友会甲支部の支部長であり、ヒグマを駆除するためにライフル銃を発射した被控訴人が、公安委員会から銃砲所持許可を取り消す旨の処分を受けたところ、当該処分は銃砲刀剣類所持等取締法(令和3年6月16日号外法律第69号による改正前のもの)所定の要件を満たさず、また、同公安委員会の判断は裁量権を逸脱・濫用したものであると主張して、控訴人・北海道に対し、その取消しを求め、原審が被控訴人の請求を認容したところ、控訴人が控訴した事案で、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)は、本件建物及びe会館が存した方角(北東及び北)とさほど乖離しておらず、本件一般住宅、本件物置及び本件空き家についても、その方角(北東、北北西及び北北西)が、被控訴人が本件発射行為の際本件ライフルを向けた方角(北北東)と大きく乖離するものではなかったこと、本件周辺建物5軒は、いずれも本件発射行為をした位置から90メートル以内にあったことを考慮すれば、本件発射行為は、「建物等に向かってする銃猟行為」に当たるというべきであるとし、また、公安委員会の判断が、重要な事実を欠くか、又は社会通念に照らして著しく妥当性を欠くものとして認めることはできないから、同公安委員会の判断が裁量権の逸脱・濫用に該当するとはいえないとして、原判決を取り消し、被控訴人の請求を棄却した事例。
2025.01.21
損害賠償請求事件
★「新・判例解説Watch」民事訴訟法分野 令和7年3月上旬頃解説記事の掲載を予定しております★
★「新・判例解説Watch」倒産法分野 令和7年6月中旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25621455/名古屋地方裁判所 令和 6年 3月 6日 判決(第一審)/令和5年(ワ)第2684号
本件交通事故に関して、原告が、被告に対し、損害賠償を請求し、これに対し、被告が、原告の被告に対する損害賠償請求権は、被告が申し立てた破産手続において免責許可決定が確定したときは、同決定の効力により免責されるべきものであると主張した事案で、被告は、運転免許が停止されていた状態で自動車を運転し、本件事故を生じさせたところ、交差点を右折するに際し、横断歩道を歩行中の者を看過したこと自体は過失であるとしても、免許停止中の運転は故意的なものといわざるを得ず、悪質であるから、被告の悪質性に鑑み、傷害慰謝料を増額することが相当であり、原告の症状及び入通院日数を考慮すると、傷害慰謝料は230万円とすることが相当であるが、被告の原告に対する不法行為は、故意又は重大な過失により人の身体を害したものともいえないから、原告の被告に対する損害賠償請求権は、前記破産手続の中で免責許可決定が確定したときは、同許可決定の効力を受けるものであり、被告は、その責任を免れるものと認められるとし、原告の請求は、被告に対する免責許可決定が確定したときは、原告が、本件事故によって発生した、被告に対する民法709条に基づく損害賠償請求権に基づき、被告から同賠償額及びこれに対する令和2年11月18日から同免責許可決定が確定する日の前日まで年3パーセントの割合による金員を受領する権利を有することを確認する限度で理由があるとして認容し、その余の請求は理由がないとして棄却した事例。
2025.01.14
傷害致死、強制わいせつ致傷、傷害被告事件(女児虐待致死事件控訴審逆転無罪判決)
LEX/DB25621501/大阪高等裁判所 令和 6年11月28日 判決(控訴審)/令和3年(う)第593号
被告人が、養子であった被害児(当時2歳の女児)に対し、〔1〕その左足を骨折させ、〔2〕その肛門に異物を挿入して傷害を負わせ、〔3〕その頭部に強度の衝撃を与えて頭蓋内損傷等の傷害を負わせ、搬送先の病院で死亡させたとして、傷害致死、強制わいせつ致傷、傷害の罪で懲役17年を求刑され、原判決が、〔1〕の事件について、被害児の骨折が他者からの暴行以外の原因で生じた合理的疑いが残り、被告人が同児に暴行を加え骨折させたと認めるには立証が十分ではないとして無罪とし、〔2〕及び〔3〕の各事件につき有罪と認めて、被告人を懲役12年に処したところ、検察官及び被告人が控訴した事案で、〔1〕の事件について、被害児の左足に強い衝撃を与える暴行が加えられ、同児が本件骨折の傷害を負ったことや、その暴行の主体が被告人であったことを認めるには合理的な疑いが残り、立証が不十分とした原判決の判断は正当であり、論理則経験則等に反する点はないとし、〔2〕の事件について、E医師の見解は、本件裂傷の発生原因を異物挿入と特定する根拠を合理的に示したものといえず、これによっては同裂傷が被害児の肛門への異物挿入により生じたと推認することはできず、しかるに、原判示第1の事実を認めた原判決の認定・判断は、論理則経験則等に反する不合理なものであり是認することができず、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判示第1の事実を認めた部分は破棄を免れないとし、〔3〕の事件について、M医師やQ医師らの原審証言等の関係証拠によっては、被告人が被害児の頭部に何らかの方法によって強度の衝撃を与える暴行を加え、同時に頭蓋内損傷の傷害を負わせた事実を認定することはできないのに、原判示第2の事実を認めた原判決の認定・判断は、論理則経験則に反する不合理なものであり是認することができず、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであり、破棄を免れないとして、検察官の本件控訴を棄却し、原判決中、被告人の有罪部分を破棄して、本件公訴事実中、傷害致死及び強制わいせつ致傷の各点について、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.01.14
大麻取締法違反被告事件
LEX/DB25621378/千葉地方裁判所 令和 6年 3月14日 判決(第一審)/令和5年(わ)第216号
被告人が、みだりに、駐車中の自動車内において、大麻である液体約2.122グラム及び大麻であるワックス様のもの約0.204グラムを所持したとして、大麻取締法違反の罪で懲役1年4か月を求刑された事案で、検察官が、被告人に大麻所持の故意を推認させるとして主張する各事実については、検察官が主張するほどの強い推認力があるとはいえず、これらを総合しても、本件リキッドについて、友人からCBDだと聞いて、もらったものであり、大麻と思っていなかったとする被告人の供述を排斥することができないから、本件リキッドについて、被告人が違法な大麻かもしれないと認識していたことが間違いないとまではいえず、本件リキッドが大麻取締法上の「大麻」に該当すると認められるものの、本件リキッドについて、被告人に大麻所持の故意を認めるには合理的な疑いが残るから、被告人に対する本件公訴事実については、犯罪の証明がないことになるとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2025.01.07
固定資産評価審査決定取消請求控訴事件
LEX/DB25621372/札幌高等裁判所 令和 6年 4月19日 判決(控訴審)/令和5年(行コ)第16号
被控訴人会社が、平成30年度の控訴人・小樽市の公売において本件家屋を含む不動産を8900万円で落札してその所有権を取得したが、控訴人市長が、本件家屋の固定資産税に関する価格である令和3年度土地・家屋課税台帳への登録価格を3億1556万7800円と決定したことから、被控訴人が、本件登録価格を不服として審査の申出をし、これに対して、小樽市固定資産評価審査委員会が、小樽市の評価額は適正であるとして審査の申出を棄却する旨の決定をしたことについて、被控訴人が、本件決定につき、〔1〕本件家屋は約17年間使用されることなく放置されていたなどの損耗による評価減点事情があり、また〔2〕本件家屋の地域的状況が劣るなどの需給事情による評価減点事情があるにもかかわらず、固定資産評価基準に従ってこれらの事情が考慮されることなく本件登録価格が決定されたため違法であるなどと主張して、控訴人に対し、本件決定の取消しを求め、原審が本件決定の全部を取り消したことから、控訴人が控訴した事案で、本件家屋は、低層階の窓ガラスの多くが破損しても補修されることなく屋内への雨水等の浸入を許す事態が放置されており、通常の維持管理が全くされてないことは明らかであるから、本件家屋の状況については、通常の維持管理を行う場合に生じる損耗を超えた損耗が生じているといえ、これが長期間の経年劣化に伴う程度の損耗に過ぎないなどということはできないところ、経年減点補正率によることが適当でないとして本件決定を取り消した原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2025.01.07
損害賠償等請求控訴事件
★「新・判例解説Watch」民法(家族法)分野 令和7年2月下旬頃解説記事の掲載を予定しております★
LEX/DB25621384/大阪高等裁判所 令和 5年12月15日 判決(控訴審)/令和5年(ネ)第1308号
大阪府吹田子ども家庭センター所長が、控訴人の長男であるEについて、控訴人から虐待を受けていることが疑われるとして、児童福祉法33条1項に基づく一時保護を開始し、家族再統合に向けた話合いを行うためとして、同法27条1項2号に基づく児童福祉司指導措置決定をしたところ、控訴人が、本件一時保護の開始後に本件児童との面会通信が違法に制限されている(本件面会通信制限)と主張して、被控訴人・大阪府に対し、〔1〕本件面会通信制限の差止めを求めるとともに、〔2〕国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する損害賠償金の支払を求め(甲事件)、加えて、控訴人が、現時点で本件一時保護を継続することは違法であると主張して、〔3〕本件一時保護の解除(撤回)の義務付けを求めるとともに、本件指導措置決定は違法であるとして、〔4〕本件指導措置決定の取消しを求め(乙事件)、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が、〔1〕人格権に基づき、本件面会通信制限の差止めを求めるとともに、〔2〕国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する慰謝料の支払を求めて控訴した(原審甲事件)事案で、本件所長による本件面会通信制限は、児童福祉法33条の2第2項による適法な措置であり、控訴人の人格権を侵害する違法な行為であるとはいえないから、本件面会通信制限の差止請求及びこれによる国家賠償法1条1項に基づく慰謝料請求のいずれについても理由がないところ、原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。