注目の判例

刑法

2016.01.12
殺人被告事件(元巡査長 懲役18年)
LEX/DB25541355/大阪地方裁判所 平成27年10月 6日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第433号
被告人は、警察官であったが、自己が婚姻したことを秘したまま被害者と交際していたところ、被害者方において、被告人の結婚に気付いた被害者と口論になり、同人から「社会的制裁は絶対受けてもらう。」などと言われるや、同人との交際の事実を被告人の勤務先や妻に暴露されるかもしれないなどと考え、殺意をもって、同人の首を背後から右腕を回して絞めた上、同人から「何もしない。」などと言われたのに、更にその首を革製ベルトや両手で絞め付け、同所において、同人を頸部圧迫による窒息により死亡させたとして起訴された事案において、本件は、男女関係を動機とする被害者1人の殺人事案の中で重い部類に属するというべきであるとして、被告人に対して懲役18年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.12.29
賭博開張図利幇助(訴因変更後はこれに加えて常習賭博幇助)被告事件
(野球賭博:電子空間は賭博場にあたらず)
LEX/DB25541477/福岡地方裁判所 平成27年10月28日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第1632号
賭博の常習者賭博である被告人が、賭博の常習者である共犯者が電子メール等を利用し、何者かとの間で、プロ野球公式戦の5試合について勝敗を予想し、各試合についてそれぞれ賭博をした際、共犯者に対し、電子メールを利用する等して犯行を容易にさせてこれを幇助した事案において、本件幇助行為当時も、被告人は、賭博常習者であったというべきであり、そのような被告人がP2の賭博を幇助したのであるから、被告人は常習賭博幇助の罪責を免れないとして、懲役6月、執行猶予2年を言い渡した事例。
2015.12.29
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反、恐喝未遂被告事件
(工藤会幹部の控訴棄却)
LEX/DB25541475/福岡高等裁判所 平成27年10月21日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第220号
指定暴力団B會上位幹部の被告人が、組事務所のビル又はその賃借権を喝取しようとした恐喝未遂2件と暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律違反で起訴されたところ、まず、B會による組織的犯行という点であるが、B會は、通常の暴力団とは異なり、一般人の生命又は身体に重大な危害を加える危険性の高い暴力団として広く認知され、平成24年12月以降は特定危険指定暴力団に指定されている唯一の団体であり、本件各犯行は、そのB會の二代目C組の組長である被告人がその地位の威勢を利用し、B會の危険性を十分に認識している被害者に対して行っているのであるから、それだけで悪質性が相当高いといえるとし、そして、被告人は、何ら正当な権限がないのに、それまで賃料を払わないで占有していた経済的価値の相当高い本件ビル又はその賃借権を、組事務所として安定的に使用し続けるため、因縁をつけて本件各犯行に及んだのであり、被告人と被害者らとの間に一定の人的関係があったことを考慮しても、暴力団特有の身勝手で反社会的な犯行というほかなく、動機・経緯にも酌量の余地はない(本件全体の被告人の犯情は、暴力団の威勢を示して脅迫する恐喝未遂事案の中で相当悪い部類に属し、基本的に実刑相当事案である)として、原審は、被告人を懲役3年を言い渡したため、被告人が量刑不当を理由に控訴した事案において、原判決の量刑は重過ぎて不当であるとはいえないとして、控訴を棄却した事例。
2015.12.15
強盗殺人、窃盗被告事件(祖父母殺害 母の殺害指示認定 少年懲役15年)
LEX/DB25541282/東京高等裁判所 平成27年 9月 4日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第174号
少年である被告人が、祖父母方に赴き、祖父に対して借金を申し出たが、祖父がこれを断ったことから、被告人の母親から、祖父母を殺してでも借金をしてくるよう責め立てられていたこともあって、祖母、次いで祖父を殺害し、その後、母親と共謀して祖父母方にある現金等を強取するなどした事案の控訴審において、原審裁判所の訴訟手続には、母親が被告人に対して本件強盗殺人を指示したのに、これを認定しなかった誤りがあり、その結果、少年法55条の解釈、適用を誤り、本件を家庭裁判所に移送しなかった点で、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるという弁護人の主張に対し、被告人の心理傾向や母親の指示が本件強盗殺人を決意するのにかなり影響したことを犯情の評価において相当程度考慮すべきであるとしても、本件強盗殺人が極めて重大な犯行であることからすると、保護許容性は認められないとしてこれを斥け、控訴を棄却した事例。
2015.12.08
公職選挙法違反被告事件
LEX/DB25447617/最高裁判所第三小法廷 平成27年12月 1日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第1731号
平成25年10月6日施行の岡山市長選挙に立候補した被告人が、同選挙における被告人の選挙運動者と共謀の上、被告人の当選を得させる目的で、その選挙運動期間中に法定外選挙運動用文書を頒布したことにつき、第一審判決が被告人を有罪としたため、被告人が控訴し、公職選挙法142条1項は、公職の選挙について文書図画の無制限な頒布を許容するときは、選挙運動に不当な競争を招き、これがため、選挙の自由公正を害し、その適正公平を保障し難いこととなるので、かかる弊害を防止するため必要かつ合理的と認められる範囲において、文書図画の頒布等について一定の規制をしたものであるから、憲法21条に違反するものではないなどとし、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、公職選挙法243条1項3号、平成27年法律第60号による改正前の公職選挙法142条1項の各規定が、憲法21条に違反しないとした事例。
2015.12.01
各未成年者喫煙禁止法違反被告事件(未成年者喫煙禁止法 コンビニ店員無罪)
LEX/DB25541254/高松高等裁判所 平成27年 9月15日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第266号
被告人A及び被告会社Bに対する各未成年者喫煙禁止法違反被告事件の控訴審(一審の簡易裁判所が言い渡した判決に対し、被告人Aに関する有罪部分につき同被告人から、被告会社Bに関する無罪部分につき検察官から、それぞれ控訴の申立てがあった)において、原判決の事実認定には、2回の容貌確認を認めて被告人Aが未成年者であることを認識したと推認できるとした点、同認識の存在に疑問を抱かせる事情を考慮しなかった点、自白の信用性を肯定した点において誤りがあり、上記認識を肯定した原判決の認定は論理則、経験則等に照らし、不合理であって、事実を誤認したものであるとして、原判決中、被告人Aに関する部分を破棄して、被告人Aに対し無罪の言渡しをし、被告会社Bに関する検察官の控訴を棄却した事例。
2015.12.01
金融商品取引法違反被告事件(元日興執行役員インサイダー取引教唆)
「新・判例解説Watch」H28.1上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25541270/東京高等裁判所 平成27年 9月25日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第1830号
証券会社の元執行役員が、物流会社など3社の株式公開買い付け(TOB)の未公開情報を会社役員に漏らし、その会社役員に株券を買付けさせたして、金融商品取引法違反の罪に問われた事案の控訴審(原判決は、株券の公開買付けの実施に関する事実を会社役員に伝えるなどした被告人の行為には金融商品取引法167条3項違反の罪の教唆犯が成立すると判断した)において、原判決の認定した罪となるべき事実について事実誤認があるとは認められないとした上で、金融商品取引法は、公開買付者等関係者自身が公開買付け等に関する事実を知って自ら取引を行うことを規制しており、それに加えて第一次情報受領者による取引をも規制してインサイダー取引の規制の徹底をはかっているのであって、そのような金融商品取引法のインサイダー取引の規制のあり方に照らせば、同法167条3項違反の罪の教唆行為は十分に可罰的であると解すべきであって、その教唆行為に対して刑法総則の教唆犯の規定を適用することは、同条の立法趣旨に何ら反していないと解されるとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2015.11.17
不正競争防止法違反被告事件(ヤマザキマザック元社員 控訴審も有罪)
LEX/DB25541038/名古屋高等裁判所 平成27年 7月29日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第327号
金属工作機械の製造、販売等を業とするb株式会社の従業員であり、同社からその保有する営業秘密を示されていた被告人が、不正の利益を図る目的で、同営業秘密の管理に係る任務に背き、パソコンから同社のサーバーにアクセスし、同社の製品である工作機械を製造するのに必要な部品の設計、製法の情報に当たるファイルをサーバーから自己所有のハードディスクに転送させて複製を作成し、記録の複製を作成する方法により同社の営業秘密を領得したとされた不正競争防止法違反事件で、原判決には事実の誤認があるとして被告人が控訴した事案において、当該ファイルは、その工作機械の製造に利用される図画情報であり、その工作機械を製造、販売する同社の事業活動に有用な技術上の情報であって、有用性が認められる旨説示した原審の判断に誤りはない等と示して、控訴を棄却した事例。
2015.10.27
傷害致死被告事件(逆転無罪 東京高裁)
LEX/DB25540966/東京高等裁判所 平成27年 7月15日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第1095号
交差点内の路上においてバイクを停車中の被告人が、P4に背後から首を絞められ、顔面等を拳で複数回殴打されたことから、同人の顔面を拳で1回殴打し、さらに、同人の頭部を足で踏み付けて蹴り、もって自己の身体を防衛するため、P4に対し、防衛の程度を超えた暴行を加え、よって、同人に外傷性くも膜下出血等の傷害を負わせ、同人を上記傷害により死亡させたとして起訴された事案の控訴審において、原審で取り調べられた関係証拠から認定できる被告人の被害者に対する暴行は、その顔面を1回殴打し、その頭部を足で踏み付けた行為であるが、それらの行為は、刑法36条1項に該当し、正当防衛行為として罪とならないものであるとして、原判決を破棄し、被告人に対して無罪を言い渡した事例。
2015.10.20
外国人漁業の規制に関する法律違反被告事件(サンゴ密漁事件 船員に有罪判決)
LEX/DB25540923/横浜地方裁判所 平成27年 7月22日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第28号
中華人民共和国に国籍を有し、同国船籍漁船の船員である被告人が、同漁船の船長と共謀の上、本邦の水域内において、同漁船及びさんご漁具を使用して漁業を行った事案において、懲役1年及び罰金200万円(執行猶予5年)を言い渡した事例。
2015.10.20
傷害致死、死体遺棄被告事件(伊予市少女集団暴行死事件)
LEX/DB25540983/松山地方裁判所 平成27年 6月26日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第389号
愛媛県伊予市の市営住宅で、少女(当時17歳)が住人の女や部屋に出入りしていた少年ら計8人から集団暴行を受けて死亡し、遺体が遺棄された事件で、少年(当時16歳)が傷害致死と死体遺棄の罪に問われた事案において、少年法55条の「保護処分に付するのが相当であると認めるとき」として事件を家庭裁判所に移送するか否か、中でも、刑罰ではなく保護処分を選択することが被害感情、社会の不安・処罰感情・正義観念などに照らして社会的に受認・許容される「特段の事情」があるか否かについて、本件における被告人の行為責任は、共犯による被害者が知人・友人である傷害致死1件の量刑傾向の中で軽めの部類に属するものであり、その責任に対応する処遇を保護処分によって実質的に相当程度代替する余地がないではないが、本件における共犯全体の犯情の悪質性は顕著であって、被告人が、本件に、従属的ではない態様で関与している上、犯情以外の要素を考慮しても、被告人は他者に対する共感性が不足している面は見受けられるが、精神的な未熟さの程度が特に高いとはいえないことなどからすれば、裁量的に、刑罰でなく保護処分を選択することが社会的に受認・許容されるとは認められないとし、被告人に対しては、保護処分に付するのが相当であるとは認められず、刑事処分を科すべきであるとして、被告人を懲役3年以上5年6月以下に処した事例(裁判員裁判)。
2015.10.13
業務上過失致死被告事件(ズンズン運動 幼児マッサージ死 元NPO法人理事長有罪)
LEX/DB25540884/大阪地方裁判所 平成27年 8月 4日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第1083号
被告人は、子育ての実践活動と情報提供に関する事業を行うことなどを目的とする特定非営利活動法人の理事長であるが、同法人の活動として、床に座った姿勢で乳児の身体を大腿部の上にうつ伏せにして乗せ、頸動脈の付近を指で繰り返しもむなどする施術(ズンズン運動)を業務として行っていたところ、前記施術は、乳児の胸腹部を圧迫し窒息状態にさせるおそれが大きく、また、頸動脈付近の迷走神経を刺激することで心拍の徐脈を引き起こすおそれが大きいことから、乳児の生命や身体を害する重大な危険性を有するものであり、被告人も、乳児の胸腹部が圧迫されると窒息状態になるおそれがあることや、乳児の頸動脈付近に力を入れて触ると乳児の体調に悪影響があることを認識していたのであるから、前記施術が乳児の生命や身体を害する重大な危険性を有することを認識した上で、前記施術を差し控えるべき業務上の注意義務があったのに、被告人は、前記施術を行っても乳児の生命や身体を害することがないと考え、業務として、被害児(当時生後4か月)に対し、同児の身体を床に座った自身の大腿部の上にうつ伏せにして乗せ、同児の頸動脈の付近を指で繰り返しもんだ過失により、同児を、胸腹部圧迫による窒息状態及び頸動脈洞圧迫が引き起こす迷走神経反射による徐脈に基づく心停止及び呼吸停止に陥らせ、よって、同児を低酸素脳症に基づく多臓器不全により死亡させたとして、被告人を禁錮1年(執行猶予3年)に処した事例。
2015.09.29
組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律違反被告事件
(会員制温泉リゾートクラブのオーナの有罪確定)
LEX/DB25447452/最高裁判所第三小法廷 平成27年 9月15日 決定 (上告審)/平成27年(あ)第177号
リゾート施設会員組織の運営、管理、会員権の管理、販売及び各種観光地の開発、企画などを業務目的とするA社の実質オーナーとして、業務全般を統括掌理していた被告人が、会員制リゾートクラブの施設利用預託金及び施設利用料名目で金銭を詐取することなどを共同の目的とする同社を率いて、同社の役員及び従業員らと共謀の上、のべ194名の被害者に対し、詐取した現金が総額約4億円に上る、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の組織的詐欺を敢行した事案の上告審において、本件各詐欺行為は、Aという団体の活動として,詐欺罪に当たる行為を実行するための組織により行われたと認めることができるとし、これと同旨の判断を示して組織的詐欺罪の成立を肯定した原判決は正当であるとして、上告を棄却した事例。
2015.09.29
殺人被告事件(98歳 要介護の母殺害 息子に執行猶予判決)
LEX/DB25540844/岐阜地方裁判所 平成27年 6月25日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第30号
被告人が、うつ病の症状により実母である被害者(当時98歳)の介護を行うことを負担に感じ、被害者の首を両手で絞め続け、頸部圧迫による窒息により死亡させて殺害したが、被告人自身がした110番通報により臨場した警察官に対して自首した事案において、本件動機の形成にうつ病が相当程度影響していることを考慮すると、本件は、家族内における殺人(単独犯、被害者1名)の事案全体の中では軽い部類に属するといえ、被告人の年齢及び健康状態をも併せ考慮すると、被告人を実刑に処するのはいささか酷に過ぎるというべきであるとして、懲役3年、執行猶予5年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.09.15
窃盗、建造物侵入、傷害被告事件(GPS違法捜査 量刑に影響しない)
LEX/DB25540767/最大阪地方裁判所 平成27年 7月10日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第5962号等
被告人が、共犯者らと共謀の上、犯行に使用する自動車等を盗み出し、店舗等に侵入して衣類等を盗むという手口で、総額400万円を超える自動車等の窃盗や侵入盗を繰り返した上、被害者の顔面を一方的に殴打し、転倒し無抵抗であった同人の頭部を狙って蹴り付けて加療約2か月の傷害を負わせた事案において、GPS捜査には令状主義の精神を没却するような重大な違法があるものの、量刑上特に考慮すべきものとはいえないとして、懲役5年6月を言い渡した事例。
2015.09.15
傷害、殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、窃盗被告事件(予備校生刺傷事件)
LEX/DB25540874/福岡地方裁判所小倉支部 平成27年 6月22日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第46号等
被告人は、平成26年11月午前、予備校自習室において、殺意をもって、D(当時19歳)の左胸部等を包丁で複数回突き刺すなどしたが、居合わせた予備校生Fらに制止されたため、Dに通院加療約3か月間を要する鋭的心・心膜損傷、左前腕ないし手部複数刺創、右大腿外側刺創等の傷害を負わせたにとどまった殺人未遂(判示第1)、判示第1の日時場所において、業務その他正当な理由による場合でないのに、包丁1本を携帯した銃砲刀剣類所持等取締法違反(判示第2)、平成26年5月深夜、「G店」厨房において、H(当時23歳)に対し、その後頭部を拳で殴り、その場に転倒したHに馬乗りになって、その顔面を拳で多数回殴るなどの暴行を加え、Hに安静加療約1週間を要する顔面(右眼窩周囲)打撲、右肩打撲の傷害を負わせた(判示第3)、平成26年9月深夜、J店従業員控室において、Kが所有する現金約1万9000円及び自動車運転免許証等4点在中の財布1個(時価約5000円相当)を盗んだ窃盗(判示第4)の事案において、殺人未遂事件の特徴、すなわち、かなり強い殺意に基づく生命侵害の危険性が高い犯行であり、被害者の傷害結果も重大であるが、妄想性障害の影響下での衝動的犯行という側面もあることを踏まえて、傷害や窃盗等の犯罪が成立することを加味し、同種事案の中で公平にみた場合、懲役10年に処した事例(裁判員裁判)。
2015.09.02
(首都高 居眠り運転 4人死亡事件 運転手有罪確定)
LEX/DB25540617/最高裁判所第一小法廷 平成27年 5月26日 決定 (上告審)/平成27年(あ)第350号
被告人が、中型貨物自動車を運転し、時速約70ないし80キロメートルで進行中、眠気を感じ、そのまま運転を継続すれば前方注視が困難な状態に陥ることを予想しつつ、直ちに運転を中止すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り、漫然同速度で運転を継続した過失により、仮睡状態に陥り、渋滞のため停止していた被害者運転の普通乗用自動車後部に自車全部を衝突させて被害者及びその他同乗者5名にそれぞれ傷害を負わせ、うち4名を死亡させた自動車運転過失致死傷被告事件で、第一審では、禁錮5年6月を言い渡したため、これを不服として被告人が控訴したところ、第二審では、被告人が重症の睡眠時無呼吸症候群に罹患していたことを知らなかった事実を踏まえても、自動車運転車として適切に高度の眠気に適切に対処すべき点は同様として、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、弁護人の上告趣意は、事実誤認、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2015.09.02
私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律違反被告事件
(リベンジポルノ有罪判決 福島地裁郡山支部)
LEX/DB25540674/福島地方裁判所郡山支部 平成27年 5月25日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第37号等
被告人が、妻子がいたにもかかわらず、不倫関係にあった被害者から別れを告げられた後も納得せず、被害者方を訪れたり、その行動を確認したりしていたところ、被害者から被告人の行動はストーカー行為であると指摘されたことを逆恨みし、被害者を困らせてやろうと考え、交際解消から1年余りも後に、被害者の胸等が写っている写真をばらまいたとされた私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(リベンジポルノ防止法)違反被告事件の事案において、被告人は、被害者の顔や胸の一部にモザイク処理等を施した写真に、被害者を貶める露骨な性的表現や、被害者ないしその勤務先を容易に特定できる情報を記載して、被害者の勤務先の駐車場に複数回にわたり、合計130枚の写真をばらまいたものであり、本件各犯行の犯情はよくないとして、被告人を懲役1年6月(執行猶予3年)に処した事例。
2015.08.25
(広島 義妹虐待死 上告棄却)
LEX/DB25540462/最高裁判所第三小法廷 平成27年 4月17日 決定 (第二次上告審)/平成26年(あ)第1567号
被告人A及び被告人Bの両名が、自宅において、Bの妹であり、医師により統合失調症の診断を受けていた被害者を引き取り同居し、日常的に同人に虐待を加えていたが、被害者が極端に衰弱しているのを知りながら、共謀の上、生存に必要な保護を加えず、同人を死亡させたとの各保護責任者遺棄致死被告事件の事案の第二次上告審において、被害者が、24時間の付添いを要する重度の統合失調症と診断されるような精神状態であったことに加え、死亡した日の3週間前の時点では極度に衰弱した状態にあったことから、自ら進んで必要な医療措置を受けるなどの行動を期待することができなかったこと等を認定して各被告人の控訴を棄却した原審の判断を支持して、弁護人の上告趣意は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、被告人Aによる本件上告を棄却した事例。
2015.08.18
現住建造物等放火被告事件(寄居の住宅放火事件)
LEX/DB25540586/さいたま地方裁判所 平成27年 6月15日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第1208号
被告人が、ストレスを発散するため、2名が現にいる居宅(木造トタン葺平屋建、床面積約115.03平方メートル)に隣接した作業場建物の軒下に積み上げられていた段ボールにライターで着火して火を放ち、同作業場建物を介して前記居宅を全焼させて焼損した事案において、火災が発見されにくい夜明け前に、人が居住する民家の敷地内に大量に積み上げられて、燃え広がりやすい段ボールに放火したという犯行態様の危険性は高く、これにより居宅が焼け落ち、そこに居住していた2名が逃げ切れず一酸化炭素中毒により死亡したものであり、その危険性を正に現実化させているとし、被告人の犯行が、不特定又は多数の人の生命、身体、財産に脅威を及ぼした程度は極めて高いといえ、ストレスを発散するために火を放つという動機に酌量の余地は全くなく、被告人が居宅を燃焼させる積極的な意図を有していなかったことを考慮しても、本件は、同様の動機による現住建造物等放火の事案の中で特に重い部類に位置付けられるとして、懲役13年を言い渡した事例(裁判員裁判)。