注目の判例

民法(財産法)

2017.05.30
損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25545520/東京高等裁判所 平成29年 3月23日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第2387号
被控訴人(原審原告)が、控訴人(原審被告)に対し、控訴人が運営する病院で、看護師が、甲状腺右葉半切除手術の準備として被控訴人の左前腕に点滴ルートを確保するために、被控訴人の左手関節から4ないし5センチメートル付近に末梢静脈留置針を穿刺した際、同看護師が十分な注意を払わなかったなどの過失があり、被控訴人は、橈骨神経浅枝の損傷を受け、複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症し、後遺障害を負ったなどと主張して、不法行為又は債務不履行に基づき、損害賠償金等を請求したところ、原審は、穿刺行為を行った看護師の過失を認め、これにより被控訴人はCRPSに罹患したなどとして、被控訴人の請求を一部認容したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、原判決が判断した損害賠償金を減額することで変更し、その余の被控訴人の請求を棄却した事例。
2017.05.09
損害賠償請求事件、同反訴事件 
LEX/DB25545412/広島地方裁判所 平成29年 2月28日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第936号 等
原告が、被告に対し、被告運転の自動車によって交通事故に遭ったとの理由で、不法行為による損害賠償金等の支払を求め(本訴請求)、被告が、原告に対し、同事故から2週間程度後以降に原告が負ったとする治療費、施術費は、不要な支出であり、原告が損害拡大防止義務に違反して被告に損害賠償させたものであって、不法行為による損害賠償請求権又は不当利得返還請求権に基づき(選択的請求)既払額の一部金の支払等を求めた(反訴請求)事案において、過失割合は、原告が5%、被告が95%であるとし、原告の本訴請求は、被告に対し、請求額を減額したうえで一部認容し、被告の反訴請求は、原告が信義則上の義務に違反し、被告に賠償させたことについて不法行為責任を負うというべきであるとして、全部認容した事例。
2017.04.04
損害賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」H29.6月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25448466/神戸地方裁判所 平成29年 2月 9日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第1195号
被告の運営する保育園の近隣に居住する原告が、園児が園庭で遊ぶ際に発する声等の騒音が受忍限度を超えているなどと主張し、被告に対し、不法行為による損害賠償を求めるとともに、人格権に基づき、保育園の敷地境界線上において保育園からの騒音が50dB(LA5)以下となるような防音設備の設置を求めた事案において、原告が保育園からの騒音により精神的・心理的不快を被っていることはうかがえるものの、原告宅で測定される保育園の園庭で遊戯する園児の声等の騒音レベルが、未だ社会生活上受忍すべき限度を超えているものとは認められず、不法行為を基礎づける程度の違法があるということはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2017.03.21
貸金請求事件 
「新・判例解説Watch」H29.5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25448515/最高裁判所第二小法廷 平成29年 3月13日 判決 (上告審)/平成28年(受)第944号
上告人(被告・被控訴人)と保証契約を締結していた被上告人(原告・控訴人)が、上告人に対し、同契約に基づき、保証債務の履行を求め、上告人が上記保証契約に基づく保証債務履行請求権の時効消滅を主張したのに対し、被上告人が上告人に対する貸金の支払を求める旨の支払督促により消滅時効の中断の効力が生じていると主張して争い、原審が、被上告人の請求を全部認容したため、上告人が上告した事案において、貸金の支払を求める旨の支払督促で貸金債権が行使されたことにより、これとは別個の権利である保証契約に基づく保証債務履行請求権についても行使されたことになると評価することはできず、上記支払督促は、保証債務履行請求権について消滅時効の中断の効力を生ずるものではないとして、原判決を破棄し、被上告人の請求を棄却した第1審判決の結論は正当であるとし、被上告人の控訴を棄却した事例。
2017.03.21
立替金請求事件 
LEX/DB25545061/最高裁判所第三小法廷 平成29年 2月21日 判決 (上告審)/平成27年(受)第660号
被上告人(信販会社)の加盟店であった販売業者との間で宝飾品等の売買契約を締結したとして、被上告人との間で購入代金に係る立替払契約を締結したが、売買契約は架空のものであり、立替払契約は、販売業者の依頼により、上告人らが購入者となることの名義貸しを承諾して締結されたもので、上告人らに対し、立替払契約に基づく未払金の支払等を求め、平成20年法律第74号(改正法)の施行日である平成21年12月1日以降に締結された上告人A及び同Bと被上告人との間の立替払契約(改正後契約)については、割賦販売法35条の3の13第1項により立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことができるか否かが、同日より前に締結された上告人Cと被上告人との間の立替払契約(改正前契約)については、改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項により販売業者に対して生じている売買契約の無効等の事由をもって被上告人に対抗することが信義則に反するか否かが争われ、原審は、改正前契約に係る売買契約は民法93条ただし書又は民法94条1項により無効であるとし、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案において、販売業者が上告人Aらに対してした告知の内容は、割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例(反対意見がある)。
2017.03.07
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」H29.5月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25544949/東京地方裁判所 平成28年12月26日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第13602号
サッカーの社会人リーグにおける試合中、原告が、相手チームに所属する被告bから左脛部を蹴られたことにより、左下腿脛骨骨折、左下腿腓骨骨折の傷害を負ったと主張し、被告b及び同人を指導監督すべき相手チームの代表者である被告cに対し、共同不法行為(民法719条1項前段)に基づき、損害賠償金支払を求めた事案において、被告bの上記行為は、社会的相当性の範囲を超える行為であり、違法性は阻却されないというべきであるとし、原告の請求額を減額したうえで、一部認容した事例。
2017.02.28
立替金等請求本訴、不当利得返還請求反訴事件 
「新・判例解説Watch」H29.5月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25448465/最高裁判所第三小法廷 平成29年 2月21日 判決 (上告審)/平成27年(受)第659号
被上告人(信販会社。原告・控訴人)が、上告人ら(被告・被控訴人)に対し、被上告人の加盟店であったA社との間で宝飾品等の売買契約を締結したとして、被上告人との間で購入代金に係る立替払契約に基づく未払金の支払等を求めた事案(本訴)、上告人Y2が、被上告人に対し、割賦販売法35条の3の13第1項により上記立替払契約の申込みの意思表示を取消したこと等を理由として、不当利得返還請求権に基づき、上記立替払契約に基づく既払金の返還等を求めた事案(反訴)した。(本件反訴は、原審で提起され、その後、上告人Y2に対する本訴は、取り下げられた。)上記立替払契約のうち、平成20年法律第74号の施行日である平成21年12月1日以降に締結されたものについては、割賦販売法35条の3の13第1項により立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことができるか否かが、同日より前に締結されたものについては、改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項により本件販売業者に対して生じている売買契約の無効等の事由をもって被上告人に対抗することが信義則に反するか否かが争われ、改正前契約に係る売買契約は民法93条ただし書又は民法94条1項により無効であるとし、被上告人の本訴請求を認容し、上告人Y2の反訴請求を棄却したため、上告人らが上告した事案において、個別信用購入あっせんで、販売業者が名義上の購入者となることを依頼する際にした上告人らに対する告知の内容は、割賦販売法35条の3の13第1項6号にいう「購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」に当たるとして、原判決を破棄し、高等裁判所に差し戻しを命じた事例(反対意見がある)。
2017.02.28
損害賠償請求事件(「阪神Vで単位付与」虚偽の投稿で学生に賠償命令) 
LEX/DB25448453/大阪地方裁判所 平成28年11月30日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第4852号
大学教授である原告が、講義時に「阪神タイガースが優勝すれば無条件で単位を与える。」という発言をしていないのに、大学生である被告により、原告が本件発言をした旨をツイッターに投稿され、それがインターネット上で広く取り上げられたために精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき,慰謝料の支払を求めた事案において、被告の本件投稿により、原告が本件発言をしたという虚偽の情報がインターネット上で広がり、原告に権利侵害及び損害が生じたことが認められるとして、原告の請求額を減額し、一部認容した事例。
2017.02.21
環境権等に基づく差止請求事件(第1事件、第2事件) 
「新・判例解説Watch」H29.4月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25544858/大分地方裁判所 平成28年11月11日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第29号 等
大分県由布市湯布院町の塚原地区に居住し又は旅館等の経営をする原告らが、被告会社らの太陽光発電事業計画の実施により、当該土地上にメガソーラー設備が設置されるなどすると、原告らの有する人格権(塚原地区の景観を含む自然環境を享受する権利)及び塚原地区の景観に対する景観利益並びに営業権が侵害されると主張して、被告会社らに対し、それらの権利に基づき、メガソーラー設備の設置等の開発行為等の差止めを求めた事案において、上記開発行為は景観利益を違法に侵害するもので、差止められるべき旨の原告らの主張は理由がないとし、また、原告らの営業権に基づく上記開発行為の差止請求には理由がないとし、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2017.02.21
不当利得返還等請求事件(TV付賃貸 入居者 受信料支払い義務なし) 
LEX/DB25536965/東京地方裁判所 平成28年10月27日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第36853号
被告(NHK)との間で放送の受信契約を締結して2か月分の受信料を支払った原告が、自分はL社が提供する被告の放送を受信することができる受信設備が設置された部屋に一時的に入居していたにすぎず、放送法64条1項所定の「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」に当たらず被告との受信契約を締結する義務を負わない者であったから、本件受信契約は公序に反して無効であると主張して、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、被告から未返還の1か月分の受信料相当額の支払を求めた事案において、本件受信契約は、放送法64条1項の要件を充足しない者との間で締結されたものであって同項に反するものであり、公序に反する法律行為として無効であるとし、原告の請求を認容した事例。
2017.02.14
投稿記事削除仮処分決定認可決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」H29.7月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25448434/最高裁判所第三小法廷 平成29年 1月31日 決定 (許可抗告審)/平成28年(許)第45号
インターネット上で抗告人が提供する検索サービスで、検索語として相手方の住所の県名及び氏名を入力して検索すると、検索結果として、相手方が犯した児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律4条(平成26年法律第79号による改正前)所定の児童買春行為に係る逮捕歴を含む内容のものが複数表示されることについて、相手方が、人格権を被保全権利として、その侵害排除請求権に基づき、民事保全法23条2項の仮の地位を定める仮処分として、上記検索結果の削除を命じる仮処分命令の申立てをしたところ、原審は、本件申立てを認容する本件仮処分決定を発令し、これに対し、抗告人が申し立てた保全異議に対しても、本件仮処分決定を認可する原決定をしたため、これらを不服とする抗告人が、原決定及び本件仮処分決定をいずれも取消した上で本件申立てを却下することを求め抗告した事案において、現時点で、本件検索結果の削除又は非表示措置を求める保全の必要性があるとは認められないとして、原決定及び本件仮処分決定をいずれも取消し、本件申立てを却下した事例。
2017.02.07
クロレラチラシ配布差止等請求事件 
LEX/DB25448403/最高裁判所第三小法廷 平成29年 1月24日 判決 (上告審)/平成28年(受)第1050号
適格消費者団体である上告人(原告・被控訴人)が、健康食品の小売販売等を営む会社である被上告人(被告・控訴人)に対し,被上告人が自己の商品の原料の効用等を記載した新聞折込チラシを配布することが、消費者契約の締結について勧誘をするに際し消費者契約法4条1項1号に規定する行為を行うことに当たるとして、被上告人が自ら又は第三者に委託するなどして新聞折込チラシに上記の記載をすることの差止め等を求め、第一審は、上告人の請求を認容したが、控訴審は、消費者契約法12条1項及び2項にいう「勧誘」には不特定多数の消費者に向けて行う働きかけは含まれないところ、本件チラシの配布は新聞を購読する不特定多数の消費者に向けて行う働きかけであるから上記の「勧誘」に当たるとは認められないと判断して、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちにその働きかけが消費者契約法12条1項及び2項にいう「勧誘」に当たらないということはできないとした事例。
2017.02.07
損害賠償請求控訴事件(野外コンサート落雷死 原告控訴棄却)
LEX/DB25544618/大阪高等裁判所 平成28年11月10日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第1738号
原告ら(控訴人)が、被告ら(被控訴人)は、音楽イベントについての公演参加契約に付随する安全配慮義務を怠り、本件落雷事故により原告らの娘亡P5を死亡させたと主張して、損害賠償を求めたところ、請求が棄却されたため、控訴した事案において、被告らが亡P5に対して安全配慮義務又は条理上の保護義務を負っていたと認められるのは、当該場所についての利用・管理の状況、先行行為を含む被告らと亡P5との関係、予見可能性の有無やその具体性等の諸般の事情を総合考慮して、被告らに対し、亡P5を落雷の危険から保護する義務を負わせることが相当といえる客観的状況が存在する場合に限られると解させるところ、本件において、被告らが亡P5に対して安全配慮義務及び条理上の保護義務を負っていたとは認められないとし、控訴を棄却した事例。
2017.01.31
電子マネー不正使用金返還請求事件
(電子マネー不正利用被害 サービス提供会社に賠償命令 東京地裁(平成29年1月18日東京高裁判決の原審)) 
LEX/DB25536610/東京地方裁判所 平成28年 8月30日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第30818号
スマートフォンである携帯電話にインストールされたアプリケーションを用いて被告Y1の提供するプリペイド型電子マネーのサービスを利用し、電子マネーの発行を受けたときの決済方法として被告Y2発行するクレジットカードを利用していた原告が、当該携帯電話を紛失し又は何者かにより窃取されたところ、携帯電話の回線を停止したにもかかわらず、第三者が当該携帯電話を用いてクレジットカード決済により電子マネーを申し込んでその発行を受けたため、原告が当該電子マネーの発行対価を被告Y2に支払ったことについて、原告にはかかる支払義務がないとして、被告Y1がクレジットカード決済により被告Y2から上記発行対価と同額の支払を受けたこと及び被告Y2が原告から同額の支払を受けたことはいずれも法律上の原因のない利得であると主張し、被告らに対し、それぞれ不当利得金の返還を求めるとともに、予備的に、被告Y1がクレジットカードでの決済により電子マネーの発行を行うサービスを提供し、被告Y2が同サービスでクレジットカード決済を行うという役割を担うに当たり、被告らは、電子マネーの不正な発行申込み及び使用によりクレジットカードが不正使用されることを防止する注意義務を共同して負っていたところ、同注意義務に反した結果、原告が電子マネーの発行対価の支払を余儀なくされたと主張して、被告らに対し、それぞれ発行対価相当額の支払を求めた事案において、原告の被告らに対する主位的請求及び予備的請求は、理由がないとして棄却した事例。
2017.01.24
保険金請求控訴事件 
LEX/DB25544457/大阪高等裁判所 平成28年12月 9日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第1257号
控訴人(被告。損害保険会社)との間で自動車保険契約を締結していた被控訴人(原告。車両の使用者)が、控訴人に対し、車両が火災により焼損したとして、保険金650万円、全損時諸費用保険金20万円及び被控訴人が支払った車両運搬費用5万7750円の合計である675万7750円の支払を求め、原判決が、被控訴人の請求を認容したため、控訴人が控訴した事案において、〔1〕上記車両火災は、被控訴人のたばこの吸い殻の火又は本件自動車内の火元となり得る箇所からの出火によるものであると認めることができない以上、何者かが、燃え上がり箇所に火を付けたことによるものとしか考えられないこと、〔2〕被控訴人以外の第三者による放火という事態は考えがたいこと及び〔3〕被控訴人が本件自動車に放火することは容易であり、かつ、その動機も了解が可能であることなどの各事実が認められ、上記車両火災は、被控訴人の故意によるものと認めるのが相当であるとし、火災による損害については、その余の争点(本件火災が被控訴人の重過失によるものか)について検討するまでもなく、保険契約所定の支払拒絶事由(被控訴人の故意によって生じた損害であること)が認められるから、原判決を取消し、被控訴人の保険金請求を棄却した事例。
2017.01.24
賃料減額等請求事件
LEX/DB25530861/東京地方裁判所 平成27年 7月 9日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第7008号
建物の一部分を賃借する原告が、当時の賃貸人であった被告D社に対して賃料減額請求の意思表示をしたとして、D社及びその後賃貸人の地位を承継した被告E社に対し、既払賃料のうちの適正額超過分の支払を求めた事案において、たしかに、本件建物から最寄りの標準地における公示地価は、平成21年時点では、1平方メートルあたり99万5000円であったのが、平成23年時点では、1平方メートルあたり86万円となっている事実は認められるが、現行の家賃が定められてから相当期間が経過していることが不相当性判断における極めて大きな要素であるところ、契約締結から減額の意思表示までわずか2年が経過したに過ぎない本件について、この間の地価の変動のみを理由に賃料の不相当性を判断するのは不合理であり、経済事情の激変といった特別な事情もない本件では、賃料が不相当とは言えないなどとして、請求を棄却した事例。
2017.01.24
貸金等請求事件 
LEX/DB25530863/東京地方裁判所 平成27年 7月 9日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第34270号
原告が、被告Cの連帯保証のもと被告Bに対して金銭を貸し付けたとして、被告Bに対しては金銭消費貸借契約に基づく貸金返還請求及び利息支払請求として、被告Cに対しては連帯保証契約に基づく保証債務履行請求として、連帯して、貸金残金の支払を求めた事案において、原告は、本件貸金債権を担保するために被告ら所有の不動産に設定した根抵当権に基づき不動産競売を申し立てたことが認められるので、消滅時効は申立日に中断したと解すべきであって、その後、民事執行法63条2項に基づく無剰余取消がされたことは権利実行の意思を否定するものではなく、「権利者の請求により又は法律の規定に従わないことにより取り消されたとき」(民法154条)には当たらないとして、請求を認容した事例。
2016.12.27
遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25448337/最高裁判所大法廷 平成28年12月19日 決定 (許可抗告審)/平成27年(許)第11号
Aの共同相続人である抗告人(Aの弟の子でAの養子)と相手方(Aの妹でAと養子縁組をしたB(平成14年死亡)の子)との間におけるAの遺産の分割申立てをし、原審は、本件預貯金は、相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得し、相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないなどとした上で、抗告人が不動産を取得すべきものとしたため、上告した事案において、共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当であるとし、最高裁平成15年(受)第670号同16年4月20日第三小法廷判決・裁判集民事214号13頁の判例の変更をすべきとした上で、本件預貯金が遺産分割の対象とならないとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原決定を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻しを命じた事例(補足意見、意見がある)。
2016.12.27
不当利得返還請求事件 
LEX/DB25448335/最高裁判所第一小法廷 平成28年12月19日 判決 (上告審)/平成27年(受)第1394号
主債務者から信用保証の委託を受けて上告人と保証契約を締結し、主債務者の借入金債務を上告人に代位弁済した被上告人が、主債務者は一定の業種に属する事業を行う中小企業者の実体を有する者でなく、被上告人は、このような場合には保証契約を締結しないにもかかわらず、そのことを知らずに同契約を締結したものであるから、同契約は要素の錯誤により無効であると主張して、上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、代位弁済金の返還及び遅延損害金の支払を求めたところ、原審が、上告人の請求を、遅延損害金請求の一部を除いて認容したため、上告人が上告した事案において、牛乳等の小売業を営んでいたA社が中小企業者の実体を有することという被上告人の動機は、それが表示されていたとしても、当事者の意思解釈上、保証契約の内容となっていたとは認められず、被上告人の保証契約の意思表示に要素の錯誤はないとし、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、被上告人の請求は、破棄部分に関する第1審判決中上告人敗訴部分を取消した上、上記取消部分に関する被上告人の請求を棄却し、かつ、上記破棄部分に関する被上告人の控訴を棄却した事例。
2016.12.27
損害賠償等請求事件 
LEX/DB25544285/福岡地方裁判所 平成28年11月28日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第2399号
原告(弁護士)が所属する弁護士会から内部の委員会に懲戒処分を請求された事実等を報道したことについて、被告(NHK)には、弁護士会による事前公表を鵜呑みにし、必要な取材活動や反対意見に関する情報収集を行わず、原告の実名や個人情報を出して真実に反する報道をしたなどという不法行為があり、原告は上記報道により精神的苦痛を被ったと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料の一部である1000万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、人格権に基づき、謝罪文書の提出や訂正報道を求めた事案において、原告の訴えのうち、給付請求として求められる特定を欠き、不適法であるとして却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。