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2018.02.27
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」商法分野 5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449248/最高裁判所第一小法廷 平成30年 2月15日 判決 (上告審)/平成28年(受)第2076号
上告人(被告・被控訴人)の子会社の契約社員として上告人の事業場内で就労していた被上告人(原告・控訴人)が、同じ事業場内で就労していた他の子会社の従業員Aから、繰り返し交際を要求され、自宅に押し掛けられるなどしたことにつき、国内外の法令、定款、社内規程及び企業倫理の遵守に関する社員行動基準を定め、自社及び子会社等から成る企業集団の業務の適正等を確保するための体制を整備していた上告人において、上記体制を整備したことによる相応の措置を講ずるなどの信義則上の義務に違反したと主張して、上告人に対し、債務不履行又は不法行為に基づき,損害賠償を求め、原審は、上告人は、被上告人に対し、本件行為につき、信義則上の義務違反を理由とする債務不履行に基づく損害賠償責任を負うべきものと解され、上告人に対する債務不履行に基づく損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、上告人が、自ら又は被上告人の使用者である勤務先会社を通じて本件付随義務を履行する義務を負うものということはできず、勤務先会社が本件付随義務に基づく対応を怠ったことのみをもって、上告人の被上告人に対する信義則上の義務違反があったものとすることはできないとし、親会社である上告人が、被上告人に対し、子会社の従業員による相談の申出の際に求められた対応をしなかった行為につき、債務不履行に基づく損害賠償責任を負わないというべきであるとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決中上告人敗訴部分は破棄し、被上告人の上告人に対する請求はいずれも理由がなく、これらを棄却した第1審判決は結論において是認することができ、上記部分に関する被上告人の控訴を棄却した事例。
2018.02.27
損害賠償請求事件
LEX/DB25549262/横浜地方裁判所 平成29年12月26日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第2785号
被告公益財産法人の開設に係る被告診療所で、平成19年から平成21年にかけて毎年1回一般健診を受けていた亡P6が平成24年1月13日に肺がんにより死亡したことにつき、亡P6の相続人である原告らが、上記一般健診のうち平成19年に実施された一般健診及び平成20年に実施された一般健診で亡P6の胸部エックス線画像の読影を担当した被告公益財団法人の理事及び被告診療所の勤務医である被告医師には亡P6に対して精密検査を受けるよう指示・指導をすべき義務の懈怠があり、これによって亡P6は死亡したとして、被告公益財団法人及び被告医師に対し、被告公益財団法人に対しては診療契約に係る債務不履行による損害賠償請求権、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律197条及び同78条に基づく損害賠償請求権、又は民法715条1項に基づく不法行為による損害賠償請求権に基づき、被告医師に対しては一般社団法人及び一般財団法人に関する法律198条及び同117条に基づく損害賠償請求権又は民法709条に基づく不法行為による損害賠償請求権に基づき、連帯して、各損害賠償金の支払等を求めた事案において、被告医師に、平成19年健診及び平成20年健診で、各年の健診で写真に写されていた異常陰影を発見すべき注意義務があったとは認められず、その懈怠があったとも認められないから、原告らの主張を斥け、原告らの請求を棄却した事例。
2018.02.27
首都圏建設アスベスト損害賠償請求神奈川訴訟(第2陣)
LEX/DB25549052/横浜地方裁判所 平成29年10月24日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第1898号
原告らは、建築現場で、石綿含有建材を加工・使用して建物を建築・改修又は石綿含有建材を含む建物を解体する業務等に従事し、同建材の加工・使用又は解体の過程で、同建材から発生する石綿粉じんにばく露し、これにより石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する元建築作業従事者又はその承継人である原告らが、〔1〕被告国に対しては、同被告の公務員である労働大臣、建設大臣、内閣等が、石綿関連疾患の発症又はその増悪を防止するために旧労働基準法、安全衛生法又は建築基準法等に基づく規制権限を適時かつ適切に行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、〔2〕被告企業らに対しては、被告企業らが、その製造・販売する建材が石綿を含有すること、石綿にばく露した場合、石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な疾患にり患する危険があり、これを回避するために呼吸用保護具を着用すべきこと等の警告をすべき義務を負い、また、その製造・販売する建材に石綿を使用しない義務を負っていたにもかかわらず、これらの義務を怠ったなどと主張して、不法行為(民法709条、719条)又は製造物責任(製造物責任法3条、6条、民法719条)に基づき、連帯して、損害賠償金の支払等を求めた事案において、国は遅くとも昭和49年には危険性を認識できたと指摘し、被告企業らは昭和51年以降、建材の外装・包装などに警告を表示する義務を負っていたと認めた上で、労働者が下請け作業に従事するなど、どのメーカーの製品によって被害を受けたか強く推認できる場合に賠償を認めると判断し、被告企業43社のうち、被告Y1社には、原告8人に計約9000万円、被告Y2社には、原告2人に計約1800万円を支払うよう命じた事例。
2018.02.20
再審請求棄却決定に対する即時抗告申立事件
(人工呼吸器を外し入院患者殺害、大阪高裁が再審開始決定)
LEX/DB25549194/大阪高等裁判所 平成29年12月20日 決定 (抗告審)/平成27年(く)第411号
申立人(再審請求人)が平成17年11月29日に大津地方裁判所で殺人被告事件で懲役12年に処せられた確定判決(申立人に対する確定判決が認定した犯罪事実の概要は「被告人は、医療法人社団A会B病院に看護助手として勤務していたものであるが、同病院C階D号室において、慢性呼吸不全等による重篤な症状で入院加療中であった被害者(当時72歳)に対し、そののど元に装着された人工呼吸器の呼吸回路中にあるL字管からこれに接続するフレックスチューブを引き抜いて酸素供給を遮断し、被害者を呼吸停止の状態に陥らせ、同病室で、被害者を急性低酸素状態により死亡させて殺害した」というもの)に対する再審請求をし、原決定は、刑事訴訟法435条6号に規定する証拠には該当しないとして請求を棄却したため、申立人が即時抗告した事案において、弁護人提出の新証拠により、被害者の死因が酸素供給途絶にあるとする確定判決が依拠したd鑑定等の証明力は減殺され、被害者が自然死した合理的な疑いが生じたというべきであり、原決定は、d鑑定等の証明力の程度に関する判断を誤り、その結果、新証拠等の証明力の評価を誤って事実を誤認したものといわざるを得ないとし、弁護人が原審に提出した新証拠のうち死因(致死的不整脈)に関する証拠に明白性を認めなかった原決定の判断を是認することはできず、当審に提出された証拠も併せて検討すると、申立人が本件の犯人であると認めるには合理的な疑いが残っているとして、原決定を取消し、本件について再審開始を決定した事例。
2018.02.20
損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 H30.2月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
「新・判例解説Watch」家族法分野 H30.3月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25548884/神戸地方裁判所 平成29年11月29日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第1653号
原告D(原告Aの母)は、夫(婚姻関係にある配偶者)から継続的に暴力を振るわれ、離婚の手続を取ることができないまま別居し、夫との婚姻継続中、原告Aの生物学上の父と交際し、原告Aを懐胎し出産し、原告Dは、夫に原告Aの存在を知られることを恐れ、その出生届を提出することができず、原告Aの実父が提出した原告Aの出生届は、夫の嫡出推定が及ぶことを理由に不受理とされ、原告D及び原告Aは、妻や子に夫に対する嫡出否認の訴えの提起が法律上認められていないことから、結果として、原告Aは無戸籍となり、原告B(原告Aの子)及び原告C(原告Aの子)は、原告B及び原告Cは、母である原告Aに戸籍がないため、その戸籍に入ることができず、原告Aと同様に無戸籍となったことにつき、民法774条~民法776条(本件各規定)は、父(夫)にのみ嫡出否認の訴えの提訴権を認めることによって、合理的な理由なく、父と子及び夫と妻との間で差別的な取扱いをしており、社会的身分による差別(憲法14条1項)に該当し、同項及び憲法24条2項に違反していることが明らかであり、国会(国会議員)は本件各規定の改正を怠っており、その立法不作為は、国家賠償法上違法であると主張した原告らが、被告(国)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、精神的損害に対する慰謝料及び弁護士費用として、金員の支払を求めた事案において、本件各規定についての憲法適合性に関する原告らの主張はいずれも理由がないとし、原告らの請求を棄却した事例。
2018.02.20
窃盗,強盗殺人,住居侵入被告事件(大阪ドラム缶遺体事件)
LEX/DB25449223/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月 8日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第120号
被告人が、被害者夫婦方敷地に金品奪取目的で赴き、同夫婦を殺害し、金品を奪取し、強盗殺人の後に、被害者らの死体をドラム缶内に隠匿して放置し続けたとして、被告人に対し、第1審判決、控訴審判決とともに、死刑を言い渡したため、被告人が上告した事案において、量刑判断の中心となる強盗殺人の犯行は、被告人が、以前関わった居宅等工事の関係で生活状況を把握していた高齢の被害者夫婦の財産を狙って、200万円を超える金品を奪い、その機会に被害者両名の頭部をいずれも重量のある鈍器で殴打するなどし、短時間のうちに絶命させたというもので、その殺害態様は冷酷かつ悪質で、強固な殺意が認められる上、犯行の利欲性も高く、何らの落ち度も認められない2名の生命を奪ったという結果は重大であるなどとして、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、やむを得ないものとして、上告を棄却した事例。
2018.02.13
組合員代表訴訟控訴事件(JA延岡組合員訴訟 原告側訴え棄却)
LEX/DB25548213/福岡高等裁判所宮崎支部 平成29年11月17日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第91号
農協の組合員である被控訴人ら(原告)が、農協は本件貸付債権を有しており、基金協会、控訴人ら(被告)はこれを連帯保証していたところ、農協の理事であった控訴人らが、理事会において本件補償契約を解除する旨の決議をするなどし、本件保証債務を免除したため、被控訴人らが損害を被ったとして、損害賠償を求めたところ、請求が一部認容されたため、控訴人らが控訴した事案において、本件貸付けの連帯保証人であった基金協会、控訴人P1及び同P2に対し、本件保証債務の履行を求めなかった控訴人らの決定は、控訴人らの農協に対する善管注意義務又は忠実義務に違反するとはいえないとし、原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消し、被控訴人らの請求を棄却した事例。
2018.02.13
暴力団事務所使用差止仮処分命令申立事件
(対立2組事務所 同時使用差し止め 全国初の同時命令)
LEX/DB25548291/福井地方裁判所 平成29年10月20日 決定 (第一審)/平成29年(ヨ)第32号
本件土地建物の付近に居住する住民らから委託を受けた債権者が、本件土地建物が本件暴力団事務所として使用されていることにより、本件住民の生命や身体に危険が及ぶおそれがあるとして、組長である債務者に対し、本件土地建物につき、指定暴力団事務所としての使用差止めの仮処分を求めた事案において、本件土地が今後も本件暴力団事務所として使用されることにより、本件土地建物の付近を日常的に通行する機会のある一般市民の人格権が受忍限度を超えて違法に侵害されるおそれがあるということができるところ、本件住民については、人格権侵害のおそれが疎明されているものというのが相当であり、債権者は債務者に対し、本件土地建物を本件暴力団事務所として使用することの差止めを求めることができるとし、申立てを認容した事例。
2018.02.13
暴力団事務所使用差止仮処分命令申立事件
(対立2組事務所 同時使用差し止め 全国初の同時命令)
LEX/DB25548293/福井地方裁判所 平成29年10月20日 決定 (第一審)/平成29年(ヨ)第33号
本件土地建物の付近に居住する住民等から委託を受けた債権者が、本件土地建物が本件暴力団事務所として使用されていることにより、本件住民等の生命や身体に危険が及ぶおそれがあるとして、債務者に対し、本件土地建物につき、指定暴力団事務所としての使用差止めの仮処分を求めた事案において、本件土地建物が今後も本件暴力団事務所として使用されることにより、本件土地建物の付近を日常的に通行する機会のある一般市民の人格権が受忍限度を超えて違法に侵害されるおそれがあるということができるところ、本件住民等は、人格権侵害のおそれが疎明されているものというのが相当であり、債権者は債務者に対し、本件土地建物を暴力団事務所として使用することの差止めを求めることができるとし、申立てを認容した事例。
2018.02.06
インターネット上での掲載サイト情報記事の削除請求控訴事件
(平成29年8月10日松江地方裁判所(平成29年(ワ)第65号)の控訴審)
LEX/DB25549094/広島高等裁判所松江支部 平成30年 1月10日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第63号
控訴人(原告)が、ウェブサイト管理運営している被控訴人(被告)に対し、控訴人に係る被疑事件について不起訴処分がされたにも関わらず、被控訴人が同事件に関する控訴人の逮捕を報じる記事をインターネット上に掲載し続けていることが人権侵害に当たるとして、不法行為に基づき、本件記事の削除及び損害賠償金の支払を求め、原判決は、請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案において、記事をウエブサイトに複製掲載することができる者が無数に存在すること、被控訴人の元記事を実際にウエブサイトに複製掲載した者を特定するのが極めて困難な場合も多いことは容易に推測でき、それらの者との間で元記事を含む本件ウエブサイト掲載記事の複製掲載についてルール化を求めるのは、不可能を強いるものというべきであるとし、原判決は相当であるとして、控訴を棄却した事例。
2018.02.06
インターネット上での掲載サイト情報記事の削除請求事件
(平成30年1月10日広島高等裁判所松江支部(平成29年(ネ)第63号)の原審)
LEX/DB25549093/松江地方裁判所 平成29年 8月10日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第65号
原告が、ウェブサイト管理運営している被告に対し、原告に係る被疑事件について不起訴処分がされたにも関わらず、被告が同事件に関する原告の逮捕を報じる記事をインターネット上に掲載し続けていることが人権侵害に当たるとして、不法行為に基づき、本件記事の削除及び損害賠償金の支払を求めた事案において、検索サイトを利用して表示される本件記事は、被告ではない第三者が管理するウェブページにおいて掲載されているものであることが認められ、インターネット上で記事の複製をすることが容易にできること(公知の事実)からすれば、本件記事は、被告が掲載した記事を被告以外の当該第三者が複製し、掲載しているものであることが強く窺われるとし、原告の請求を棄却した事例。
2018.02.06
公務外認定処分取消請求控訴事件
LEX/DB25549117/大阪高等裁判所 平成29年12月26日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第68号
東日本大震災の被災地支援として岩手県に派遣されていた大阪府元職員の亡Aが同派遣中に死亡したことにつき、亡Aの妻である控訴人(1審原告)が、地方公務員災害補償基金大阪府支部長(処分行政庁)に公務災害認定請求をしたところ、処分行政庁から公務外認定処分を受けたため、被控訴人(1審被告。地方公務員災害補償基金)に対し、本件処分の取消しを求め、原審は控訴人の請求を棄却したところ、これを不服とする控訴人が控訴した事案において、本件疾病の発症と公務との間の相当因果関係の存在を肯定し、亡Aの死亡は、地方公務員災害補償法にいう公務上の死亡に当たるとして、これと異なる原判決を取消し、控訴人の請求を認容した事例。
2018.01.30
不開示決定処分取消等請求事件
「新・判例解説Watch」H30.3月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449195/最高裁判所第二小法廷 平成30年 1月19日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第46号
上告人(1審原告)が、情報公開法に基づき、内閣官房内閣総務官に対し、平成24年12月から同25年12月31日までの内閣官房報償費の支出に関する行政文書の開示を請求したところ、これに該当する行政文書のうち、政策推進費受払簿、支払決定書、出納管理簿、報償費支払明細書、領収書、請求書及び受領書の本件各文書に記録された情報が情報公開法5条3号及び6号所定の不開示情報に当たるとして、本件各文書を開示しないなどとする決定を受けたため、被上告人(1審被告。国)に対し、本件決定のうち同年1月1日から同年12月31日までの本件対象期間の内閣官房報償費の支出に関する本件各文書(本件対象文書)を不開示とした本件不開示決定部分の取消し及び本件対象文書の開示決定の義務付けを求めたところ、第1審判決は、一部の行政文書を不開示した部分を取り消し、開示決定をする旨を命じたほか、一部開示決定の義務付け請求に係る訴えを却下したため、双方が控訴し、原判決は、本件対象文書のうち政策推進費受払簿、出納管理簿(国庫からの内閣官房報償費の支出(受領)に係る記録部分を除く。)及び報償費支払明細書に係る本件不開示決定部分の取消請求を棄却し、これに係る開示決定の義務付けを求める訴えを却下すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、政策推進費受払簿、出納管理簿のうち政策推進費の繰入れに係る記録部分及び月分計等記録部分並びに報償費支払明細書のうち政策推進費の繰入れに係る記録部分及び繰越記録部分に係る本件不開示決定部分が適法であるとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、内閣官房内閣総務官が上記の文書及び各記録部分について開示決定をすべきであることは明らかであり、これに係る上告人の本件不開示決定部分の取消請求及び開示決定の義務付け請求は、いずれも認容し、他方、報償費支払明細書のうち調査情報対策費及び活動関係費の各支払決定に係る記録部分に係る本件不開示決定部分が適法であるとした原審の判断は、是認することができ、これに関する上告人の上告は理由がなく、また、上告人のその余の請求に関する上告については、上告受理申立て理由が上告受理の決定において排除し、原判決を変更した事例(意見がある)。
2018.01.23
(平成29年 6月28日東京高等裁判所(平成28年(ネ)第5763号)の上告審)
LEX/DB25548338/最高裁判所第三小法廷 平成29年12月12日 決定 (上告審)/平成29年(受)第1808号
一審原告(申立人)は、本件土地並びにその一部の土地上にある3階建共同住宅(本件不動産)を購入して代金を支払い、自己に対する所有権移転登記を経たが、その際、弁護士である一審被告が、不動産登記規則72条に基づく本人確認情報を提供し、登記義務者代理人として所有権移転登記申請をし、売主として売買契約に立ち会った者が売主に成りすました他人であり、売主の住民基本台帳カード等の書類が偽造されたものであったため、後に、真実の所有者から所有権移転登記抹消登記手続を求められ、当該不動産の所有権を取得することができず損害を被ったとして、一審原告が、一審被告に対し、一審被告が過失により、売主の本人確認の際に提示を受けた住民基本台帳カード等の書類が偽造されたことに気付かないまま誤った本人確認情報を提供したとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払等を求めた事案において、第一審判決は、一審被告には、売主である女性(自称g)の本人確認で、成りすましによるものであることを疑うべき事情があり、これによって一審原告が損害を被ることについての結果予見可能性及び結果回避可能性があるところ、一審被告において注意義務を尽くしたとはいえないから不法行為責任を負うべきであるとして、一部認容、一部棄却したため、これに不服の双方(なお、一審被告が死亡したため一審被告の相続について限定承認をした一審被告訴訟承継人が地位を承継した)が控訴し、控訴審判決は、一審原告の請求は理由がないから全部棄却すべきであり,これを一部認容した原判決は失当であり、一審被告訴訟承継人の控訴は理由があるとし、原判決中一審被告訴訟承継人敗訴部分を取消した上、前記取消しに係る一審原告の請求を棄却することとし、一審原告の控訴を棄却したため、一審原告が上告受理の申立てをした事案において、本件を上告審として受理しないと決定した事例。
2018.01.23
損害賠償請求控訴事件
(平成29年12月12日最高裁判所第三小法廷(平成29年(受)第1808号)の原審)
LEX/DB25548251/東京高等裁判所 平成29年 6月28日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第5763号
7筆の土地並びにその一部の土地上にある3階建共同住宅を購入して代金を支払い、自己に対する所有権移転登記を経たが、その際、弁護士である被告が、不動産登記規則72条に基づく情報を提供し、登記義務者代理人として所有権移転登記申請をしたところ、売主として売買契約に立ち会った者が売主に成りすました他人であり、売主の住民基本台帳カード等の書類が偽造されたものであったため、後に、真実の所有者から所有権移転登記抹消登記手続を求められ、当該不動産の所有権を取得することができず損害を被ったとして、原告が、被告に対し、被告が過失により、売主の本人確認の際に提示を受けた住民基本台帳カード等の書類が偽造されたことに気付かないまま誤った本人確認情報を提供したとして、不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めたところ、原審は、被告には、売主であるgを名乗る女性(自称g)の本人確認において、成りすましによるものであることを疑うべき事情があり、これによって原告が損害を被ることについての結果予見可能性及び結果回避可能性があるところ、被告において注意義務を尽くしたとはいえないから不法行為責任を負うべきであるとした上で、原告にも4割の過失相殺を認め、請求を一部認容したため、被告及び原告が控訴した事案において、被告において、本件本人確認情報を作成する際に相応な調査・確認を行っていると認められるのであり、それ以上に、売主と名乗る者の自宅を訪れ、あるいは、QRコードを読み取るなど、住基カードの提示を求める方法以外の方法によって本人確認すべき注意義務があったとは認められないとして、原判決を取り消し、請求を棄却した事例。
2018.01.23
損害賠償請求控訴事件
「新・判例解説Watch」H30.2月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449105/大阪高等裁判所 平成29年11月30日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第53号
控訴人(原告)が、大阪府情報公開条例に基づき、大阪府知事に対し、第16回ピースおおさか展示リニューアル監修委員会配付資料等の公開請求をしたのに対し、大阪府知事から、上記配付資料に記録されている情報が本件条例8条1項所定の非公開条例に該当することを理由とする非公開決定を受けたところ、同決定は違法であり、これにより精神的苦痛を受けたと主張して、被控訴人(被告。大阪府)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料の支払を求めた事案の控訴審において、本件文書を公開することにより、本件センターの正当な利益を害すると認められるとして、法人等情報に該当することを理由に本件非公開決定をしたことに相応の合理的な根拠が認められず、本件非公開決定は、大阪府知事が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と本件非公開決定をした点で、国賠法上も違法であるとして、原判決を変更して、控訴人の請求のうち、被控訴人に対し5万円を支払うよう命じ、その余の請求を棄却した事例。
2018.01.16
傷害、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25548218/仙台高等裁判所 平成29年10月31日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第130号
被告人が、〔1〕駅のプラットホームにおいて、見知らぬ女性の背後から千枚通し様の先端が鋭利な凶器でその背中を1回突き刺して傷害を負わせたといういわゆる通り魔的な傷害の事案、及び〔2〕折りたたみ式ナイフ2本をトートバッグ内に入れて携帯したという銃砲刀剣類所持等取締法違反の事案の控訴審において、被告人は、本件犯行当時、広汎性発達障害の影響を受けてはいたもののその影響は大きいものではなく、善悪を判断する能力や自己の行動を制御する能力が著しく低下していたとはいえないから、完全責任能力を有していたと認められ、原判決に事実の誤認はなく、また、広汎性発達障害に罹患しており、行動の前の緩衝材ともいえる想像力や共感性の欠如が傷害の犯行に影響を与えていた可能性があることなどの原判決が説示するところの酌むべき事情や、その他所論が主張するところを十分考慮しても、本件は刑の執行を猶予するのが相当な事案であるとはいえず、被告人を懲役3年6月に処した原判決の量刑は刑期の点も含めて相当であって、これが重過ぎて不当であるとはいえないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2018.01.16
国家賠償請求控訴事件(面会不許可訴訟 第2審も国が敗訴)
LEX/DB25547531/名古屋高等裁判所 平成29年10月 5日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第480号
岐阜刑務所長が岐阜刑務所に収容中の受刑者である控訴人P1とそれ以外の控訴人ら8名との間の各面会を不許可としたことについて、控訴人らが、これらの処分は、いずれも岐阜刑務所長の裁量権の範囲を逸脱し又は裁量権を濫用した違法なものであると主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ損害賠償を請求した第1事件と、控訴人P1との信書発受を禁じた処分によって生じた損害について、控訴人P1及び控訴人P4らが国賠法1条1項に基づく損害賠償を求めた第2事件からなる事案の控訴審において、本件面会不許可処分は、1審原告P7との面会を除き、刑事収容施設法111条2項に関する岐阜刑務所長の裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものであり、少なくとも1審原告P1との関係では、国家賠償法1条1項の適用上も違法な処分というべきであるなどとして、1審原告P7を除く1審原告らの請求を一部認容した事例。
2018.01.09
殺人未遂幇助被告事件
LEX/DB25449154/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第137号
オウム真理教による平成7年の東京都庁郵便小包爆破事件に関与したとして、元信徒の被告人が、殺人未遂と爆発物取締罰則違反の幇助罪に問われたところ、第1審判決は、爆発物製造及び爆発物使用の罪については幇助の意思が認められないから、その幇助罪は成立せず、殺人未遂罪については、幇助の意思が認められ、同罪の幇助罪が成立するとして、被告人に対し懲役5年に処したが、原判決は、被告人が本件当時、本件殺人未遂幇助の意思を有していたとの原判決の認定は、経験則、論理則に反する不合理な推論に基づくものであり、原判決の認定した幇助行為を被告人が行った際、正犯者らが人を殺傷するテロ行為を行うことを認識してこれを幇助したものと認めるにはなお合理的な疑いが残るといわざるを得ず、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、原判決は、間接事実からの推論の過程が説得的でないなどとして、第1審判決が説示する間接事実の積み重ねによって殺人未遂幇助の意思を認定することはできないとしたものであり、第1審判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、控訴審で破棄を免れないものであったことに照らすと、第1審判決を破棄し,被告人に対し無罪の言渡しをした原判断は、結論において是認することができるとして、上告を棄却した事例。
2018.01.09
再審請求棄却決定に対する即時抗告の決定に対する特別抗告事件
LEX/DB25449157/最高裁判所第一小法廷 平成29年12月25日 決定 (特別抗告審)/平成27年(し)第587号
a社の実質経営者A及び友人Bと共謀の上、同社の財産に対する徴収職員からの滞納処分の執行を免れる目的で,真実はBに譲渡した事実はないのに,同社が経営する風俗営業店5店舗の営業をBに譲渡したかのように装って同社の財産を隠蔽することを企て、〔1〕4回にわたり,不動産賃貸借契約に関し同社が返還を受け得る賃借保証金債権をBに仮装譲渡し、〔2〕本件店舗の営業主体が同社からBに変更されたかのように装って、79回にわたり、クレジット会社の係員をして、aに帰属すべきクレジット売上金をB名義の口座に振込入金させ、滞納処分の執行を免れる目的で財産を隠蔽した事件で、第1審で、請求人は、A及びBとの共謀の事実を否認し、A公判廷供述やB捜査段階供述の信用性等を争ったが、神戸地裁は、請求人から財産隠蔽のやり方を教えてもらい仮装譲受人としてBを提案された旨のA公判供述、請求人から仮装譲受人になる話を持ち掛けられ了承した旨のB捜査段階供述の信用性を肯定し、共謀の事実を認定した上、請求人を懲役1年6月,執行猶予3年に処したため、請求人は控訴したが、大阪高裁は、控訴棄却の判決を受け、最高裁でも上告棄却の決定を受け、第1審判決は確定(確定判決)したが、請求人は、無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとして、確定判決に対する再審を請求し、新証拠として、Aの陳述書等を提出したが、無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとは到底認められないとして、再審請求を棄却する旨の決定(原々決定)をしたため、請求人からの即時抗告を受けた原審は、事実の取調べとしてAの証人尋問(新証人尋問)を実施した上で、原々決定を取消し、再審を開始する旨の決定(原決定)をしたため、最高裁に特別抗告した事案において、A新供述は、A公判供述の信用性を動揺させるものではなく、その余の新証拠を考え併せてみても、確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせるに足りるものとはいえず、A新供述等の新証拠が、請求人に対し無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たるとした原判断には、刑事訴訟法435条6号の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、原決定を取り消し、即時抗告を棄却した事例。