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2018.04.17
通知処分取消等請求事件
LEX/DB25549745/大阪地方裁判所 平成30年 1月15日 判決 (第一審)/平成28年(行ウ)第68号
破産会社の破産管財人である原告が、本件過払金返還債権1が破産債権者表に記載され、確定判決と同一の効力により確定したことを前提に、各事業年度に計上した益金のうち、本件過払金返還債権1に対応する制限超過利息部分が過大であったとして、破産会社の各事業年度の法人税に係る課税標準等又は税額等につき各更正をすべき旨の請求をしたが、所轄税務署長から更正をすべき理由がないとする各通知処分を受けたため、原告が、主位的請求として、〔1〕本件過払金返還債権1が破産債権者表に記載され、当該債権に係る不当利得返還義務が確定判決と同一の効力により確定したことが国税通則法23条1項1号及び同条2項1号所定の各要件に該当する、〔2〕仮に〔1〕の事情のみでは前記の各要件に該当しないとしても、原告は本件過払金返還債権1に対する配当を行って経済的成果を喪失しており、前記の各要件に該当する、〔3〕所轄税務署長が配当の完了を待たずに本件各通知処分をしたことは、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たる旨主張して、本件各通知処分の一部取消しを求め、予備的請求として、仮に本件各通知処分が適法であるとしても、被告は、本件各事業年度において益金の額に算入された本件過払金返還債権1及び2に対応する当該事業年度の法人税相当額を法律上の原因なく利得している旨主張して、前記法人税相当額の一部である5億円の支払等を求めた事案において、本件各通知処分が違法であるということはできず、また、被告は本件破産会社が納付した本件各事業年度の法人税額について不当利得返還義務を負うとはいえないとして、原告の主位的請求及び予備的請求を棄却した事例。
2018.04.10
大崎事件第3次再審請求開始決定に対する即時抗告棄却決定
「新・判例解説Watch」刑事訴訟法分野 7月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25549643/福岡高等裁判所宮崎支部 平成30年 3月12日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(く)第19号
請求人が、殺人、死体遺棄被告事件(いわゆる大崎事件)で懲役10年に処せられた確定判決について、第3次再審請求をし、請求審における新証拠である鑑定及び新鑑定は、確定審、第1次再審請求及び第2次再審請求において提出された全証拠と併せて総合評価すれば、請求人の本件犯行への関与を認定した確定判決の事実認定には合理的な疑いがあるとし、原決定の再審開始決定に対し、検察官から即時抗告をした事案において、P2鑑定が確定審において提出されていた場合、その立証命題に関連する旧証拠に及ぼす影響により、確定1審判決の事実認定は維持し得なくなり、新旧全証拠をもってしても確定1審判決の認定した殺人、死体遺棄の事実を認定するに十分な証拠はないこととなり、新証拠であるP2鑑定は、新旧全証拠との総合判断により、確定1審判決の認定した殺人、死体遺棄の事実認定に合理的疑いを生じさせるに足りる証拠であると認められ、刑事訴訟法435条6号所定の「無罪を言い渡すべきことが明らかな証拠」に該当し、検察官の本件即時抗告を棄却した事例。
2018.04.10
覚せい剤取締法違反被告事件
(かばん無断で捜索 違法認定し逆転無罪 覚醒剤所持を巡る事件)
LEX/DB25549551/東京高等裁判所 平成30年 3月 2日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1845号
被告人が、営利の目的で、千葉県富里市内の駐車場で、覚せい剤10.078グラムを所持したとの事実を認定し、被告人を懲役4年及び罰金50万円に処した第1審判決に対し、被告人が控訴した事案において、本件における無令状捜索の違法の程度は重大であって、将来の違法捜査の抑制の見地からしても、本件覚せい剤等の証拠能力は否定されるべきものであり、本件覚せい剤に関する本件鑑定書も同様に証拠能力を欠くものであるとし、そうすると、本件覚せい剤及び本件鑑定書の証拠能力を肯定した原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとして、原判決を破棄し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2018.04.10
(奈良地裁 夫殺害 妻に無罪判決 死体遺棄は有罪)
LEX/DB25549652/奈良地方裁判所 平成30年 2月 5日 判決 (第一審)/平成29年(わ)第62号 等
被告人は、長女のAと共謀の上、奈良県生駒郡の被告人及びA方で、黒色ポリ袋等で覆った被告人の夫であるBの死体を被告人の運転する軽四乗用自動車に積載し、同所から同県吉野郡の道路まで運搬した上、同死体を山林斜面に投棄し、死体を遺棄したとする事案において、被告人とAの間には,死体遺棄についての共謀が認められ、判示事実は優に認定できるとし、懲役1年6月(執行猶予3年)を言い渡し、殺人の点については、被害者の殺害につき、被告人がAと意思を通じ合っていたり、実行者等としてこれに関与した事実を認定することも到底できないとし、無罪を言い渡した事例。
2018.04.03
詐欺未遂被告事件(「受け子」に逆転有罪 最高裁)
LEX/DB25449341/最高裁判所第一小法廷 平成30年 3月22日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第322号
詐欺未遂事件につき、第1審判決は犯罪事実を認定し、詐欺未遂罪に当たるものとして、被告人を懲役2年4月に処したため、被告人が、第1審判決に対して量刑不当を理由に控訴したところ、控訴審判決は、控訴理由に対する判断に先立ち、職権で以下のとおり判示して第1審判決を破棄し、詐欺罪にいう人を欺く行為(欺罔行為)は認められず、本件公訴事実は罪とならないとして、被告人に無罪を言い渡したため、検察官が上告した事案において、本件嘘を一連のものとして被害者に対して述べた段階で、被害者に現金の交付を求める文言を述べていないとしても、詐欺罪の実行の着手があったと認められるとして、刑事訴訟法411条1号により原判決を破棄し、第1審判決は、被告人に対し懲役2年4月に処した量刑判断を含めた内容で維持し、被告人の控訴を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.04.03
保護責任者遺棄致死(予備的訴因重過失致死)被告事件(難病長女衰弱死 母親無罪確定へ)
LEX/DB25449335/最高裁判所第二小法廷 平成30年 3月19日 判決 (上告審)/平成28年(あ)第1549号
被告人は、A(平成22年生)の実母であり、Aと養子縁組をした夫と共に親権者として自宅でAを監護していたものであるが、夫と共謀の上、自宅等で、幼年者であり、かつ、先天性ミオパチーにより発育が遅れていたAに十分な栄養を与えるとともに、適切な医療措置を受けさせるなどして生存に必要な保護をする責任があったにもかかわらず、その頃までに栄養不良状態に陥っていたAに対して、十分な栄養を与えることも、適切な医療措置を受けさせるなどのこともせず、その生存に必要な保護をせず、Aを低栄養に基づく衰弱により死亡させたとする事件で、第1審は、被告人が、Aが生存に必要な保護として、より栄養を与えられるなどの保護を必要とする状態にあることを認識していたというには合理的な疑いが残るとして、無罪を言い渡したが、検察官が控訴し、控訴審では、被告人は、上記状態にあるという認識があったと認定でき、第1審判決には事実誤認があるとし、訴訟手続の法令違反の点について判断することなく、第1審を破棄し、地方裁判所に差戻しを命じたが、これに対し、被告人が上告した事案で、控訴審において、重過失致死罪に係る予備的訴因並びに罪名及び罰条追加請求の許可決定がされているが、事後審である控訴審で追加変更された訴因、罰条についての審理、判断は、第1審判決に事実誤認又は法令違反があることを理由に第1審判決が破棄されることを前提として行うべきものであるから、第1審判決に誤りを見いだすことができない本件において、重過失致死罪の予備的訴因を審理、判断することはできないとして、原判決を破棄し、控訴を棄却した事例。
2018.04.03
傷害致死被告事件
LEX/DB25449344/最高裁判所第一小法廷 平成30年 2月26日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第1869号
傷害致死被告事件につき、原判決が理由中で、訴因外の被告人の妻との傷害致死の共同正犯が成立するとしたことは、原審では当事者双方とも共同正犯の成立を主張せず、被告人に対する不意打ちを防止するための措置も何ら採られていないなどの本件事案の下では是認できないとし、訴因どおりに傷害致死の単独犯を認定して被告人を懲役9年に処した第1審判決は相当と認められ、控訴を棄却した原判決の結論に誤りはないとし、本件上告を棄却した事例。
2018.04.03
否認請求の認容決定に対する異議控訴事件
「新・判例解説Watch」倒産法分野 5月中旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25549515/東京高等裁判所 平成30年 1月18日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第3936号
自動車販売会社から自動車を購入したB(破産者)の支払不能により、破産者の連帯保証人として保証債務の履行を行った控訴人(ファイナンス会社)が、同自動車の留保所有権に基づき破産者から自動車の引渡しを受けて換価及び債務への充当を行ったことにつき、その後、破産者につき破産手続開始決定がされたことにより破産管財人に選任された被控訴人が、控訴人の上記行為は破産法162条1項1号イの偏頗行為に該当すると主張して否認の請求を行い、価額の償還を求めたのに対し、破産裁判所がこれを認容する決定(原決定)をしたことについて、控訴人が異議の訴えをしたところ、原審は、控訴人の異議を排斥して原決定を認可したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案において、原決定を認可した原判決は相当であり、控訴を棄却した事例。
2018.03.27
人身保護請求事件
LEX/DB25449323/最高裁判所第一小法廷 平成30年 3月15日 判決 (上告審)/平成29年(受)第2015号
米国に居住する上告人(夫)が、日本に居住する被上告人(妻)により、上告人と被上告人との間の二男である被拘束者(米国で出生し、戸籍法104条1項所定の日本国籍を留保する旨の届出がされたことによる米国籍と日本国籍との重国籍。現在13歳)が法律上正当な手続によらないで身体の自由を拘束されていると主張して、人身保護法に基づき、被拘束者を釈放することを求めたところ、原審は、上告人の請求を棄却したため、上告した事案において、本件請求は、被拘束者の自由に表示した意思に反してされたもの(人身保護規則5条)とは認められず、被上告人による被拘束者に対する拘束には、顕著な違法性があるとし、原判決を破棄し、上告人の本件請求は認容すべきでところ、本件については、被拘束者の法廷への出頭を確保する必要がある点をも考慮し、原審に差し戻した事例。
2018.03.27
LEX/DB25549506/仙台高等裁判所 平成30年 2月28日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成26年(く)第24号
准看護師であった請求人が、当時勤務していた医療法人クリニックで、診療を受けていた5名の患者に対し、それぞれ点滴が行われていた際、未必の殺意をもって、点滴ルートを介して、呼吸抑制を引き起こす筋弛緩剤マスキュラックス溶液を各体内に注入して容体を急変させ、うち1名を死亡させて殺害し、他の4名については殺害に至らなかったという、殺人1件及び殺人未遂4件からなるとした事件で、第1審で無期懲役の有罪判決となり、控訴審、上告審も棄却され、第1審の確定判決に対する再審請求をしたが棄却決定となったため、請求人から即時抗告の申立てをした事案において、新証拠の大学教授(当時)医師作成の意見書が、刑事訴訟法435条6号所定の無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たらないとした原決定の結論に誤りはないとして、即時抗告を棄却した事例。
2018.03.27
常習累犯窃盗被告事件
LEX/DB25549505/福島地方裁判所郡山支部 平成30年 1月31日 判決 (第一審)/平成27年(わ)第230号
被告人は、福島県郡山市内の店舗で、同店の牛肉2パック等9点(販売価格合計2740円)を窃取し(本件犯行1)、盗犯等の防止及び処分に関する法律3条、2条、刑法235条に該当するとして、起訴されたところ、保釈中に同系列の別店舗で、ホットケーキ1袋等9点(販売価格合計1936円)を窃取したため(本件犯行2)、起訴状記載の訴因が本件犯行2の公訴事実を追加する内容に変更された事案において、本件犯行1の当時、被告人は自閉症スペクトラム障害(ASD)及び強迫性障害(OCD)と診断されるが、被告人の判断能力や行動制御能力の低下を疑うべき事情はないとしつつ、本件犯行2の当時、被告人は、他の特定される解離性障害-ストレスの強い出来事に対する急性解離反応(OSDD)により心神喪失の状態にあったとの合理的な疑いが残るので、犯罪の証明がないが、この点は本件犯行1と一罪の関係にあるとして訴因変更請求がされたものと認められるから、主文において特に無罪の言渡しをせず、量刑理由として、鑑定人が、被告人の再犯防止のためにはASDに対する治療や、ホームヘルプなどの社会での支援システムを用いることが効果的であると示唆しており、被告人が今後、再犯に及ばないために治療や支援利用への強い意欲を示していることなど、酌むべき事情もあるので、治療及び支援の開始が可能な範囲で早期に行われるのが相当であるとし、求刑懲役3年に対し、被告人を懲役1年8月(未決勾留日数中540日をその刑に算入)に処した事例。
2018.03.20
地位確認等請求事件
LEX/DB25549484/大阪地方裁判所 平成30年 2月21日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第5967号
被告との間で有期労働契約を締結し被告の業務に従事していた原告らが、有期労働契約を締結している従業員と無期労働契約を締結している正社員との間で、労働契約に期間の定めがあることに関連して、手当等の支給について労働条件の相違が、労働契約法20条に違反するもので、また、同条施行前は同一労働同一賃金の原則に反するもので、公序良俗に反すると主張し、被告に対し、損害賠償金の支払等を求めた事案において、原告らが労働契約法20条に違反すると主張する本件各手当のうち、年末年始勤務手当、住居手当及び扶養手当については、同条に違反しているとして、一部認容した事例。
2018.03.20
命令服従義務不存在確認請求控訴事件
「新・判例解説Watch」憲法分野 5月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449235/東京高等裁判所 平成30年 1月31日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第157号
陸上自衛官である控訴人が、いわゆる平和安全法制整備法(平成27年法律第76号)により新設された自衛隊法76条1項2号が違憲であるとして、同号に定める防衛出動の命令に服する義務のないことの確認を求めたところ、原判決が、控訴人が防衛出動命令の発令される事態に現実的に直面しているとはいえず、また、現時点において控訴人又は控訴人が所属する部署に対して防衛出動命令が発令される具体的・現実的可能性があるということはできないとした上で、控訴人の有する権利又は法律的地位に危険や不安が存在するとは認められないから、本件訴えは確認の利益を欠き、不適法であるとして本件訴えを却下したことから、控訴した事案において、本件訴えは適法な無名抗告訴訟と認められるとして、原判決を取り消し、本件を原裁判所に差し戻した事例。
2018.03.20
各水俣病認定申請棄却処分取消等請求控訴事件
LEX/DB25549278/東京高等裁判所 平成29年11月29日 判決 (控訴審)/平成28年(行コ)第259号
1審原告らが1審被告(新潟市)に対し、公害健康被害の補償等に関する法律に基づく水俣病認定申請棄却処分の取消しを求めるとともに、1審原告q11において、亡q1が、そのり患していた疾病が同法施行令1条に基づく別表第2の1において定める新潟県の区域のうち、新潟市及び豊栄市の区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務付けを、1審原告q11を除く1審原告らにおいて、自己が、り患している疾病が上記区域に係る水質の汚濁の影響による水俣病である旨の認定をすることの義務付けをそれぞれ求め、原審は、1審原告q2の訴えのうち水俣病である旨の認定をすることの義務付けを求める部分及び1審原告q11の訴えのうち亡q1が水俣病である旨の認定を受けることができる者であった旨の決定をすることの義務付けを求める部分をいずれも却下し、1審原告q2及び1審原告q11のその余の請求をいずれも棄却し、また、1審原告らの請求を公健法所定の水俣病にかかっていると認定しいずれも認容したため、1審原告q2、1審原告q11及び1審被告がそれぞれ控訴した事案において、1審原告らの請求はいずれも理由があるから、原判決中、1審原告q2及び1審原告q11に係る部分をそれぞれ取消し、1審原告q2及び1審原告q11の請求をいずれも認容し、1審被告の控訴を棄却した事例。
2018.03.20
損害賠償等請求事件
LEX/DB25549491/岐阜地方裁判所 平成30年 1月26日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第137号
被告c(歯科医院の院長)に雇用された歯科技工士の原告が、労働契約又はこれに関連する被告らの不法行為に基づいて、被告らによる産休及び育休の取得に関する嫌がらせ等の違法な行為により、うつ病を発症したために休職に至ったにもかかわらず、被告cが、原告の休職事由が休職期間の満了日までに解消されなかったことを理由に原告を一般退職扱いとしたことについて、業務上の傷病の療養のために休業する期間中において当該労働者を退職させることは許されないと主張して、被告cに対する労働契約上の権利を有する地位にあることの確認請求、及び、未払賃金等の支払を求めた事案において、減給の懲戒処分は無効であるというべきであるとし、また、原告の精神疾患の発症には業務起因性が認められるなどとして、原告の請求を一部認容した事例。
2018.03.13
現住建造物等放火被告事件
LEX/DB25549403/東京高等裁判所 平成30年 2月 9日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第1510号
被告人が、bほか4名が現に住居に使用する鉄筋コンクリート造陸屋根倉庫併用住宅(延べ床面積約141.78平方メートル)に放火しようと考え、同住宅倉庫内で、何らかの方法で点火して火を放ち、その火を同倉庫の木製窓枠に燃え移らせ、前記倉庫併用住宅の一部を焼損(焼損面積合計約0.85平方メートル)したとして、原判決は有罪としたところ、弁護人は、本件放火の犯人は被告人ではないのに、原判決が、被告人が犯人であると認定している点で、事実誤認があるなどとして控訴した事案において、被告人の服装や使用自転車の特徴が特異とはいえず、被告人の居住場所付近で自転車を止めたとはいっても、同所での行動が明らかでない以上、偶然、被告人と似た服装をし、被告人使用自転車と同様の特徴を有する自転車に乗った第三者が、被告人の居住場所付近で自転車を止めた可能性を払拭できず、このほか、原審記録を精査しても、被告人が犯人でないとしたならば合理的に説明することができない、あるいは、少なくとも説明が極めて困難である事実関係を認めることはできないとし、被告人を犯人と認めた原判決の判断は、証拠の評価を誤ったものであり、論理則・経験則等に照らし、著しく不合理なものというほかなく、原判決には,判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があるといわなければならないとして、原判決を破棄し、被告人に対し無罪を言い渡した事例。
2018.03.13
再審請求棄却決定に対する即時抗告事件
(飯塚事件再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定)
LEX/DB25549362/福岡高等裁判所 平成30年 2月 6日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成26年(く)第56号
亡死刑囚に対する死体遺棄、略取誘拐、殺人被告事件について、同人は死刑に処する旨の有罪判決を受け、控訴及び上告はいずれも棄却され、一審判決が確定し、同人に対し、既に死刑が執行されたものであるが、申立人(再審請求人)が再審を請求したところ、弁護人が提出した証拠はいずれも明白性が認められないとして再審請求が棄却されたため、申立人が即時抗告した事案において、論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、当裁判所も正当なものとして是認することができるとし、本件再審請求には刑事訴訟法435条6号の再審事由があるとはいえないとした原決定の判断に誤りはなく、即時抗告を棄却した事例。
2018.03.13
伊方原発3号機運転差止仮処分命令申立(第1事件、第2事件)却下決定に対する即時抗告事件
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LEX/DB25449168/広島高等裁判所 平成29年12月13日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第63号
抗告人(債権者。伊方発電所3号機の周辺に居住する住民)らが、相手方(債務者。電力供給を行う一般電気事業者)が設置運転している発電用原子炉施設である伊方発電所3号炉及びその附属施設は、地震、火山の噴火、津波等に対する安全性が十分でないために、これらに起因する過酷事故を生じる可能性が高く、そのような事故が起これば外部に大量の放射性物質が放出されて抗告人らの生命、身体、精神及び生活の平穏等に重大かつ深刻な被害が発生するおそれがあるとして、相手方に対し、人格権に基づく妨害予防請求権に基づき、本件原子炉の運転の差止めを命じる仮処分を申し立て、原審は、本件原子炉施設から放射性物質が外部に放出される事故が発生し、抗告人らの生命、身体に危険が生じるおそれがあるとは認められないとして、抗告人らの本件仮処分命令の申立てをいずれも却下したため、抗告人らが即時抗告した事案において、火山事象の影響による危険性の評価については、本件原子炉施設が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は不合理であり、相手方で、本件原子炉施設の運転等によって放射性物質が周辺環境に放出され、その放射線被曝により抗告人らがその生命、身体に直接的かつ重大な被害を受ける具体的危険が存在しないことについて、主張、疎明を尽くしたとは認められないとし、抗告人らの申立ては、火山事象の影響による危険性の評価について、被保全権利の疎明がなされたというべきであるとして、原決定を変更し、相手方は、平成30年9月30日まで、伊方発電所3号機の原子炉を運転してはならないとした事例。
2018.03.06
建物根抵当権設定仮登記抹消登記手続請求事件
LEX/DB25449266/最高裁判所第二小法廷 平成30年 2月23日 判決 (上告審)/平成29年(受)第468号
上告人が、本件貸金債権につき消滅時効が完成し、本件根抵当権は消滅したなどと主張して、被上告人に対し、仮登記の抹消登記手続を求めた事案の上告審において、抵当権の被担保債権が免責許可の決定の効力を受ける場合には、民法396条は適用されず、債務者及び抵当権設定者に対する関係においても、当該抵当権自体が、民法167条2項所定の20年の消滅時効にかかると解するのが相当であり、担保すべき元本が確定した根抵当権についても、同様に当てはまるものであるとし、免責許可の決定の効力を受けることによって消滅時効の進行を観念することができなくなった債権を被担保債権とする抵当権は、民法396条により、債務者及び抵当権設定者に対しては時効によって消滅しないことを理由に、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるが、本件根抵当権を行使することができる時から20年を経過していないことは明らかであり、上告人の請求には理由がないことになり、上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.03.06
性別の取扱いの変更申立て却下審判に対する即時抗告事件
LEX/DB25549283/広島高等裁判所岡山支部 平成30年 2月 9日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成29年(ラ)第17号
抗告人(申立人)が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律に基づき、性別の取扱いを女から男にすることを求めたところ、原審が抗告人の申立てを却下したため、抗告人がこれを不服として抗告した事案において、性別の取扱いの変更を認める要件の一つとして、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律3条1項4号が定めることが、立法府が有する裁量権の範囲を逸脱するとは認めることはできないとして、憲法13条に反しないとし、申立てを却下した原審判を相当であるとして、抗告を棄却した事例。