2018.11.13
危険運転致死傷,道路交通法違反被告事件
LEX/DB25449766/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月23日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第927号
被告人は、夜間、片側2車線道路で、第1車線を進行するA運転の普通乗用自動車(A車)のすぐ後方の第2車線を、普通貨物自動車(被告人車)を運転して追走し、信号機により交通整理が行われている交差点を2台で直進するに当たり、互いの自動車の速度を競うように高速度で走行するため、本件交差点に設置された対面信号機の表示を意に介することなく、本件信号機が赤色を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え、Aと共謀の上、本件信号機が約32秒前から赤色を表示していたのに、いずれもこれを殊更に無視し、Aが、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約111kmで本件交差点内にA車を進入させ、その直後に、被告人が、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速100kmを超える速度で本件交差点内に被告人車を進入させたことにより、左方道路から信号に従い進行してきたB運転の普通貨物自動車(C、D、E及びF同乗)にAがA車を衝突させて、C及びDを車外に放出させて路上に転倒させた上、被告人が被告人車でDをれき跨し、そのまま車底部で引きずるなどし、B、C、D及びEを死亡させ、Fに加療期間不明のびまん性軸索損傷及び頭蓋底骨折等の傷害を負わせた事故につき、第1審判決は、被告人及びAに対しそれぞれ懲役23年を言い渡したため、被告人両名が控訴し、控訴審判決は、被告人及びAが、いずれも、本件信号機の赤色表示を確定的に認識し、又はそもそも信号機による交通規制に従うつもりがなくその赤色表示を意に介することなく、自車を本件交差点に進入させたものとして、自動車運転処罰法2条5号にいう赤色信号を「殊更に無視し」たことが推認できるとした上、被告人及びAは、本件交差点に至るに先立ち、赤色信号を殊更に無視する意思で両車が本件交差点に進入することを相互に認識し合い、そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上、各自が高速度による走行を継続して本件交差点に進入し、危険運転の実行行為に及んだことが、優に肯認できるとして、A車との衝突のみによって生じたB、C、E及びFに対する死傷結果を含む危険運転致死傷罪の共同正犯の犯罪事実を認定した第1審判決を是認し、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、被告人とAは、赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する意思を暗黙に相通じた上、共同して危険運転行為を行ったものといえるとし、被告人には、A車による死傷の結果も含め、自動車運転処罰法2条5号の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとし、危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決を是認した控訴審判決の判断は正当であるとし、本件上告を棄却した事例。