2018.12.25
覚せい剤取締法違反、詐欺未遂、詐欺被告事件
LEX/DB25449854/最高裁判所第三小法廷 平成30年12月11日 判決 (上告審)/平成29年(あ)第44号
覚せい剤取締法違反の罪(使用・所持)、詐欺並びに詐欺未遂事件につき、第1審判決は、被告人を懲役4年6月に処したため、被告人が事実誤認を理由に控訴し、原判決は、第1審判決を破棄し、無罪を言い渡した。このため、検察官が上告した事案で、被告人は、Gの指示を受けてマンションの空室に赴き,そこに配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に渡すなどし、加えて、被告人は、異なる場所で異なる名宛人になりすまして同様の受領行為を多数回繰り返し、1回につき約1万円の報酬等を受け取っており、被告人自身、犯罪行為に加担していると認識していたことを自認していることから、荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり、本件の手口が報道等により広く社会に周知されている状況の有無にかかわらず、それ自体から、被告人は自己の行為が詐欺に当たる可能性を認識していたことを強く推認させるものといえ、原判決のいうような能力がなければ詐欺の可能性を想起できないとするのは不合理であって是認できないとし、原判決が第1審判決を不当とする理由として指摘する論理則、経験則等は、いずれも本件詐欺の故意を推認するについて必要なものとはいえず、また、適切なものともいい難いとし、そして、被告人は、荷物の中身が拳銃や薬物だと思っていた旨供述するが、荷物の中身が拳銃や薬物であることを確認したわけでもなく、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情は見当たらず、被告人は、自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ、詐欺の故意に欠けるところはなく、共犯者らとの共謀も認められ、原判決が第1審判決の故意の推認過程に飛躍があり、被告人の詐欺の故意を認定することができないとした点には、第1審判決が摘示した間接事実相互の関係や故意の推認過程に関する判断を誤ったことによる事実誤認があるとして、原判決を破棄し、第1審判決の事実誤認を主張する被告人の控訴は理由がないことに帰するとして、控訴を棄却した事例。