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2018.10.23
各損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」商法分野 12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449731/最高裁判所第一小法廷 平成30年10月11日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1496号
東京証券取引所に上場されていた被上告人(1審被告)の株式を募集等により取得した上告人(1審原告)らが、被上告人が提出した有価証券届出書に参照すべき旨を記載された半期報告書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、それにより損害を被ったなどと主張して、被上告人に対し、金融商品取引法23条の2により読み替えて適用される同法18条1項に基づく損害賠償等を求める事案の上告審において、金融商品取引法18条1項に基づく損害賠償請求訴訟で、請求権者の受けた損害につき、有価証券届出書の虚偽記載等によって生ずべき当該有価証券の値下がり以外の事情により生じたことが認められる場合に、当該事情により生じた損害の性質上その額を立証することが極めて困難であるときは、裁判所は、民事訴訟法248条の類推適用により、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果に基づき、金融商品取引法19条2項の賠償の責めに任じない損害の額として相当な額を認定することができるとし、原審の判断は是認することができるとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.10.23
松橋事件即時抗告棄却決定に対する特別抗告棄却決定
LEX/DB25561330/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月10日 決定 (特別抗告審)/平成29年(し)第718号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反及び火薬類取締法違反事件(いわゆる松橋事件)につき、被告人に懲役13年に処する旨の判決が言い渡され、控訴、上告をしたものの、これらが全て棄却され、刑の執行を受け終えた後、被告人の法定代理人成年後見人弁護人が、殺人被告事件について無罪を言い渡すべき明らかな証拠を新たに発見したとして、再審を請求したところ、再審開始が決定したため、検察官が即時抗告し、即時抗告審も、再審請求審の決定の説示するとおり、巻き付けた布切れに関する新証拠及び使用された凶器に関する新証拠は、被害者殺害の事実について、被告人に無罪を言い渡すべき新規かつ明白な証拠ということができるから、再審請求審の決定には刑事訴訟法435条6号の要件充足の判断を誤ったところはないとし、即時抗告を棄却したため、検察官が特別抗告した事案において、検察官の本件抗告趣意は、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとし、本件特別抗告を棄却した事例。
2018.10.23
損害賠償請求事件(「茶のしずく」石鹸 福岡集団訴訟)
LEX/DB25449631/福岡地方裁判所 平成30年 7月18日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第1447号
各原告が、被告Y社(販売会社)及び被告F社(製造元)が製造した石けん(商品名「茶のしずく石鹸」)を使用したところ、同石けん中に成分として含有されていた、被告K社(小麦グルテン加水分解物(商品名「グルパール19S」)製造会社)によって感作されてアレルギーにり患し、それによりアレルギー症状を発症したと主張して、製造物責任法3条に基づき、本件6名原告らを除くその余の各原告は、被告Y社及び被告F社に対しては上記石けんの欠陥を、被告K社に対してはグルパール19Sの欠陥を原因とする損害賠償請求の一部請求として、各1500万円及び遅延損害金の連帯支払を求め、本件6名原告らは、それぞれ、被告K社に対し、グルパール19Sの欠陥を原因とする損害賠償請求の一部請求として、各1500万円及びこれに対する同各原告のアレルギー発症の日以降の日から支払済みまで同割合による遅延損害金の支払を求めた事案において、原告14名分については被告3社連帯で認容額を合計約4120万円の支払を命じ、被告Y社と被告F社と和解が成立した本件6名原告らは、被告K社に合計約1615万円の支払を命じた事例。
2018.10.16
請求異議控訴事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25561114/福岡高等裁判所 平成30年 7月30日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第19号
国営諫早湾土地改良事業としての土地干拓事業を行う控訴人(国)が、佐賀地裁の判決及び福岡高裁の判決によって、諫早湾干拓地潮受堤防の北部排水門及び南部排水門の開放を求める請求権が認容された者らを被告として、上記各判決による強制執行の不許を求めたところ、原判決は、控訴人の請求のうち、一部の一審被告らに対する訴えを却下し、一部の一審被告らに対する請求を認容したが、その余の一審被告である被控訴人らに対する請求についてはこれを棄却したため、同棄却部分を不服として控訴人が控訴した事案(なお、原判決のうち上記訴え却下に係る一審被告らに関する部分及び上記請求認容に係る一審被告らに関する部分については、いずれも不服が申し立てられなかったため、上記各一審被告らは被控訴人となっていない。)で、控訴人の被控訴人らに対する請求はいずれも理由があるから認容すべきであるところ、これと異なる原判決中被控訴人らに関する部分は不当であり、本件控訴はいずれも理由があるとし、民事執行法37条1項に基づき同法36条1項の処分を命じた事例。
2018.10.16
損害賠償請求事件(「茶のしずく」石鹸 東京集団訴訟)
LEX/DB25560920/東京地方裁判所 平成30年 6月22日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第11529号 等
原告(23名)らが、本件石けんの使用により小麦アレルギーに罹患し、その多くは小麦依存性運動誘発アナフィラキシーを発症し、小麦摂取の制限や摂取後の日常生活の制限を受けることとなったなどと主張して、上記石けんを製造販売した被告株式会社Y社、上記石けんを製造した被告F社及び上記石けんの原材料の一つとして配合された加水分解コムギ末を製造した被告K社に対し、製造物責任法3条に基づき、連帯して、損害賠償として、原告一人当たり1500万円又は1000万円の包括一律請求での支払を求めた事案において、本件石けんは通常有すべき安全性を欠いているものと認められ、本件石けんには欠陥があるとし、被告Y社は、製造物責任法2条3項3号の実質的製造業者に当たるとしたした上で、、被告Y社、被告F社に対する請求については、請求額を減額した形で一部認容し、原材料の成分であるグルパール19Sが、完成品の製品設計のいかんにかかわらず社会通念上期待される安全性の水準を欠いているとまでは認められず、グルパール19Sには欠陥がないとして、原材料の小麦由来成分を製造した被告K社に対する請求については、棄却した事例。
2018.10.09
納税告知処分等取消請求事件
LEX/DB25449691/最高裁判所第三小法廷 平成30年 9月25日 判決 (差戻上告審)/平成29年(行ヒ)第209号
上告人(被控訴人・原告。権利能力のない社団)が、その理事長であったAに対し、同人の上告人に対する借入金債務の免除をしたところ、所轄税務署長から、上記の債務免除に係る経済的な利益がAに対する賞与に該当するとして、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分を受けたため、被上告人(控訴人・被告。国)を相手に、上記各処分(ただし、上記納税告知処分については審査請求に対する裁決による一部取消し後のもの)の取消しを求めた事案の差戻後上告審において、給与所得に係る源泉所得税の納付義務を成立させる支払の原因となる行為が無効であり、その行為により生じた経済的成果がその行為の無効であることに基因して失われたときは、税務署長は、その後に当該支払の存在を前提として納税の告知をすることはできないものと解され、当該行為が錯誤により無効であることについて、一定の期間内に限り錯誤無効の主張をすることができる旨を定める法令の規定はなく、また、法定納期限の経過により源泉所得税の納付義務が確定するものでもないとし、給与所得に係る源泉所得税の納税告知処分について、法定納期限が経過したという一事をもって、当該行為の錯誤無効を主張してその適否を争うことが許されないとする理由はないというべきであるとし、上告人が法定納期限の経過後に本件債務免除の錯誤無効を主張することは許されないとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるものといわざるを得ない。しかしながら、上告人は、本件債務免除が錯誤により無効である旨の主張をするものの、納税告知処分が行われた時点までに、本件債務免除により生じた経済的成果がその無効であることに基因して失われた旨の主張をしておらず、上告人の主張をもってしては、本件各部分が違法であるということはできないとして、本件各部分が適法であるとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2018.10.09
保険金請求事件 
「新・判例解説Watch」商法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449702/最高裁判所第一小法廷 平成30年 9月27日 判決 (上告審)/平成29年(受)第659号 等
自動車同士の衝突事故により被害を受けた1審原告が、加害車両を被保険自動車とする自賠責保険の保険会社である1審被告に対し、自賠法16条1項に基づき、保険金額の限度における損害賠償金の支払を求めた事案の上告審において、自賠法16条の9第1項にいう「当該請求に係る自動車の運行による事故及び当該損害賠償額の確認をするために必要な期間」とは、保険会社において、被害者の損害賠償額の支払請求に係る事故及び当該損害賠償額の確認に要する調査をするために必要とされる合理的な期間をいうと解すべきであり、その期間については、事故又は損害賠償額に関して保険会社が取得した資料の内容及びその取得時期、損害賠償額についての争いの有無及びその内容、被害者と保険会社との間の交渉経過等の個々の事案における具体的事情を考慮して判断するのが相当であるとし、被害者が直接請求権を訴訟上行使した場合であっても異なるものではないとし、1審原告が直接請求権を訴訟上行使した本件において、1審被告が訴訟を遅滞させるなどの特段の事情がないからといって、直ちに1審被告の損害賠償額支払債務が原判決の確定時まで遅滞に陥らないとすることはできないと判示し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、344万円に対する平成27年2月20日から本判決確定の日の前日までの遅延損害金の支払請求を棄却した部分を破棄し、同部分につき、本件を高裁へ差し戻し、1審原告のその余の上告、及び1審被告の上告を棄却した事例。
2018.10.02
地位確認等請求事件
LEX/DB25449676/最高裁判所第二小法廷 平成30年 9月14日 判決 (上告審)/平成29年(受)第347号
被上告人(被控訴人・被告。日本郵便株式会社)との間で、有期雇用契約を締結して就労していたが、雇止めがされた上告人(控訴人・原告)らが、被上告人に対し、各雇止めは、解雇権濫用法理が類推適用されることにより無効であると主張し、雇用契約上の権利を有する地位にあることの確認と、未払賃金及び遅延損害金の支払いを求めるとともに、不法行為に基づき慰謝料の支払いを求めたところ、原判決は、上告人らの労働契約上の地位の確認及び本件各雇止め後の賃金の支払を求める請求をいずれも棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、上告人らと被上告人との間の各有期労働契約が実質的に無期労働契約と同視し得るとして、本件各雇止めが解雇に関する法理の類推によれば無効になるとしながら、本件上限条項によって根拠付けられた適法なものであるとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとしたが、加齢による影響の有無や程度を労働者ごとに検討して有期労働契約の更新の可否を個別に判断するのではなく、一定の年齢に達した場合には契約を更新しない旨をあらかじめ就業規則に定めておくことには相応の合理性があり、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に抵触しないとした上で、本件各雇止めは適法であり、本件各有期労働契約は期間満了によって終了したものというべきであるとし、上告人らの労働契約上の地位の確認及び本件各雇止め後の賃金の支払を求める請求をいずれも棄却すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとし、本件上告を棄却した事例。
2018.10.02
難民不認定処分取消等請求事件
「新・判例解説Watch」国際公法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25561140/東京地方裁判所 平成30年 7月 5日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第524号
スリランカ国籍を有する外国人男性である原告は、出入国管理及び難民認定法61条の2第1項の規定に基づく難民認定の申請をしたが、難民認定をしない旨の処分(本件前不認定処分)を受けたため、その取消し等を求める訴えを提起したところ、地裁で、原告が難民に該当することを理由に本件前不認定処分を取り消す旨の判決(前訴判決)がされ、同判決は確定した。ところが、前訴判決の確定後、法務大臣が、本国情勢の改善を理由に、再度、原告に対し、難民認定をしない旨の処分(本件再不認定処分)をし、その後、本件再不認定処分に係る異議申立てについても、これを棄却する決定(本件異議棄却決定)をした。そこで、原告が、前訴判決により本件前不認定処分時における難民該当性が認められた以上、再度の難民不認定処分をするには難民の地位に関する条約1条Cにいう「難民であると認められる根拠となった事由が消滅したため、国籍国の保護を受けることを拒むことができなくなった場合」に該当することを要するものと解すべきところ、原告について上記の場合に該当するとは認められず、本件再不認定処分は違法であるなどと主張して、被告(国)を相手に、本件再不認定処分の取消し、本件異議棄却決定の無効確認及び難民認定の義務付けを求めた事案において、本件訴えのうち本件異議棄却決定の無効確認を求める部分は不適法であるとして却下し、本件再不認定処分の取消請求及び本件義務付けの訴えに係る請求は認容した事例。
2018.09.25
検索結果削除請求控訴事件
LEX/DB25561115/東京高等裁判所 平成30年 8月23日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第1104号
控訴人(原告。インターネット上における広告業務及び広告代理業務等を目的とする株式会社)が、〔1〕被控訴人(被告。インターネットで検索サイトを管理、運営する米国法人)が管理運営する日本向けグーグル検索サービスで、検索すると、表題、URL及び抜粋等情報(本件検索結果)が表示される、〔2〕本件検索結果は、控訴人ない控訴人の代表取締役が控訴人の事業として詐欺商材を販売し、詐欺行為をしているとの事実を摘示している、〔3〕〔2〕の事実摘示は控訴人の社会的評価を低下させるものであり、名誉毀損が成立する、〔4〕したがって、被控訴人は、本件検索結果を削除する義務を負うと主張して、被控訴人に対し、人格権に基づき、日本向け検索サービスにおいて、本件検索結果の削除を求めたところ、原審は、本件検索結果は、控訴人の社会的評価を低下させるものであるが、その表現行為は、公益を図る目的のものであり、これらの摘示事実が真実でないと認めることはできないとして、控訴人の請求を棄却したため、これを不服として控訴人が控訴した事案で、本件摘示事実が真実でないことが明らかであると認めることはできないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2018.09.25
補償金請求事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 12月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25550748/東京地方裁判所 平成29年11月29日 判決 (第一審)/平成28年(ワ)第8712号
被告銀行に預金口座を開設している原告が、被告銀行から発行を受けたデビットカードを海外で使用したところ、その後何者かによって複数回にわたり上記カードの情報及び暗証番号が不正に使用されて海外の現金自動支払機(ATM)から日本円に換算して合計86万7719円に相当する現地通貨が引き出され、その結果原告の上記預金口座から同額の引落しがされたとして、〔1〕被告がデビットカード取引システムについて定めている規定に基づく補償金支払請求権又は〔2〕原告の預金口座からの上記引落しが預金者保護法の適用又は類推適用により無効となることを前提とした預金払戻請求権に基づき、上記86万7719円の支払等を求めた事案において、偽造デビットカードを用いた本件引出行為に起因する本件引落しについて、預金者保護法4条1項の適用又は類推適用により無効となるということはできないから、原告の被告に対する本件口座からの預金払戻請求も理由がないとして、原告の請求を棄却した事例。
2018.09.25
障害年金不支給決定取消請求控訴事件
LEX/DB25561139/東京高等裁判所 平成29年 4月12日 判決 (控訴審)/平成28年(行コ)第189号
控訴人(原告)が、本件傷病により、本件20歳到達日において、旧国民年金法別表2級15号に該当する障害の状態にあったから、旧国民年金法57条1項前段の規定する初診日において20歳未満であった者に係る障害福祉年金の受給資格を有していたとして、本件裁定請求をしたところ、処分行政庁から、控訴人の本件20歳到達日における障害の程度を判定することができないとして、本件不支給決定を受けたことから、本件不支給決定が違法であるとして、被控訴人(被告。国)に対し、その取消しを求めたところ、原判決は、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が控訴した事案で、控訴人の請求は理由がなく、これを棄却した原判決は相当であるとし、本件控訴を棄却した事例。
2018.09.18
退去強制令書発付処分無効確認等請求控訴事件
LEX/DB25560204/名古屋高等裁判所 平成30年 4月11日 判決 (控訴審)/平成29年(行コ)第49号
フィリピン共和国国籍を有する外国人女性である控訴人が、入国審査官から、出入国管理及び難民認定法24条4号ロ(不法残留)に該当する等の認定を受けた後、入管特別審理官から、上記認定に誤りがない旨の判定を受けたため、同法49条1項に基づき、法務大臣に対して異議の申出をしたところ、法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長から、上記異議の申出には理由がない旨の裁決を受け、引き続き、入管主任審査官から、退去強制令書発付処分を受けたため、本件裁決及び本件処分の無効確認を求めるとともに、法務大臣又はその権限の委任を受けた入管局長に対して在留特別許可の義務付けを求めたところ、原審が控訴人の訴えのうち、本件在特義務付けの訴えを却下し、その余の訴えに係る請求をいずれも棄却したため、控訴人が控訴した事案で、本件裁決は、控訴人とP7との間に成熟かつ安定した内縁としての夫婦関係が成立していたにもかかわらず、これを看過し、ひいては控訴人をフィリピンへ帰国させることによる控訴人やP7の受ける重大な不利益に想到することもなかった一方で、控訴人の不法残留や不法就労等をことさら重大視することによってなされたものというべきであり、その判断の基礎になる事実の認識に著しい欠落があり、また、その評価においても明白に合理性を欠くことにより、その判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことは明らかであるから、裁量権の範囲を逸脱又は濫用した違法なものであり、その違法性は重大かつ明白なものであるとして、原判決を取り消し、本件裁決及び本件処分の無効を確認した事例。
2018.09.18
住居侵入、強盗致傷被告事件
LEX/DB25560107/東京高等裁判所 平成29年11月 2日 判決 (控訴審)/平成29年(う)第651号
被告人が、妻の母である被害者方に押し入って、同人(当時78歳)に暴行脅迫を加えて、同人の犯行を抑圧し、同人所有又は管理の現金等を強取したなどとされた、住居侵入、強盗致傷被告事件の控訴審において、本件の証拠構造上、犯人と被告人の同一性に関する最も重要な証拠であると認められるP8鑑定の科学的原理やその理論的正当性、更に具体的な分析内容の客観性・信頼性に関する判断材料が不十分であることからすると、原審としては、P8鑑定及びP8証言の信用性を判断するために、検察官に対してその信用性に関して釈明を求めたり、必要な証拠調べを実施したりして、専門的な知見を得る必要があったというべきであるとして、原審の手続には審理不尽の違法があり、その点が判決に影響を及ぼす蓋然性があることを直ちに否定することはできないなどとして、原判決を破棄して、本件を東京地方裁判所に差し戻した事例。
2018.09.11
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」財産法分野 9月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560273/京都地方裁判所 平成30年 2月20日 判決 (第一審)/平成24年(ワ)第1230号 等
分離前相被告Y社と被告F社が製造し販売した化粧石鹸にアレルギー感作を生じさせる成分が含まれていたため、同石鹸を使用した原告(女性17名)らが小麦依存性運動誘発性アレルギーとなり、小麦摂取後の運動で、アナフィラキシー、アナフィラキシーショック症状を起こすなどし、生命の危険にさらされ、小麦摂取の困難、制限、摂取後の安静など日常生活、就労において各種制限を受けることとなったとして、石鹸を製造販売したY社、被告F社及びアレルギー感作を生じさせる成分を製造した被告K社に対して、製造物責任法に基づき、上記一切の損害を包括する慰謝料等として、1人550万円から880万円の損害賠償を請求した事案(提訴後、原告らはいずれもY社と和解。このため、Y社に対する原告らの訴訟はすべて終了。原告らとともに提訴した者は、被告F社との間でも和解し、被告K社に対する訴えを取り下げたので、これらの者の訴訟は終了。原告らは、Y社から和解金を受領したことを理由として、請求を一部減縮した。Y社と原告らの訴訟は終了したが、その後Y社は、被告らに補助参加した。Y社は、補助参加人として、本件石鹸の欠陥の有無、同欠陥に係る開発危険の抗弁の成否並びに原告らの損害の有無及び範囲について主張し、被告らはこれらを明示的ないし黙示的に援用したが、Y社は弁論終結後の平成30年2月1日補助参加の申出を取り下げた。)において、原告らの被告F社への請求のうち、本件石鹸引渡当時、重篤なアレルギーを回避するための経験知は存在していたと考えられ、また、本件石鹸外箱の表示を警告したことをもって、本件石鹸に欠陥がなかったということはできないとして、請求額を減額したうえで一部認容し、原告らの被告F社に対するその余の請求及び被告K社に対する請求を棄却した事例。
2018.09.11
法人税更正処分取消請求事件 
LEX/DB25550515/東京地方裁判所 平成29年11月24日 判決 (第一審)/平成25年(行ウ)第263号
所轄税務署長(処分行政庁)が、原告(めっき薬品の製造販売等を業とする会社)に対し、原告が租税特別措置法66条の4第1項(平成18年法律第10号による改正前のもの)に規定する国外関連者との間でしためっき薬品の製造・販売に係る技術やノウハウ等の無形資産の使用許諾及び役務提供の取引について、原告が当該国外関連者から支払を受けた対価の額が、同条2項2号ロ、租税特別措置法施行令39条の12第8項(平成16年政令第105号による改正前のもの)所定の方法(利益分割法)のうちの残余利益分割法と同等の方法によって算定した独立企業間価格に満たないとして、その独立企業間価格によって当該取引が行われたものとみなして所得金額を計算し、平成12年3月期ないし平成16年3月期の法人税に係る本件各更正処分及び本件各賦課決定処分をしたところ、原告が、上記取引の独立企業間価格の算定方法として残余利益分割法と同等の方法を採用するのは不相当であり、その算定過程にも誤りがあるなどとして、被告(国)に対し、本件各更正処分等(ただし、法人税の減額更正処分、過少申告加算税の変更決定処分及び国税不服審判所長の裁決による一部取消し後のもの)のうち申告額等を超える部分の取消しを求めた事案において、本件各事業年度の原告の所得金額及び納付すべき法人税額並びに過少申告加算税額を計算すると、予備的主張額の通りとなり、いずれも本件各更正処分等におけるこれらの金額を上回るから、本件各更正処分等は、いずれも適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。
2018.09.04
株主総会決議取消請求控訴事件(山根標板製作所株主総会決議取消請求控訴事件)
「新・判例解説Watch」商法分野 8月24日 解説記事が掲載されました
LEX/DB25560219/広島高等裁判所松江支部 平成30年 3月14日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第78号
被控訴人(190号事件及び34号事件1審原告)X1が、特例有限会社である控訴人(190号事件、34号事件及び35号事件1審被告)の株主として(190号事件)、更に控訴人の取締役として(34号事件)、被控訴人X2(35号事件1審原告)が控訴人の取締役として(35号事件)、控訴人の株主総会における故Bの相続人らに対し同人らが有する控訴人の株式1800株を控訴人に売り渡すことを請求する旨の決議が特別決議の要件を満たさないものであったと主張して、会社法831条1項1号に基づき、その取消しを求めたところ、原判決は、被控訴人らの本訴請求を認容したため、控訴人補助参加人が、これを不服として控訴した事案において、被控訴人X1の本件各訴えのうち34号事件に係る部分は不適法であるとして却下し、本件決議の取消しについては認容すべきところ、これと異なる原判決を変更した事例。
2018.09.04
損害賠償請求控訴事件 
LEX/DB25560858/東京高等裁判所 平成30年 6月28日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第3038号
第1審原告(貨物自動車運送事業等を営む株式会社)が、本件土地及び建物を所有していた第1審被告(風水力機械等の製造及び販売等を目的とする株式会社)に対し、第1審被告から物流ターミナル等の建設を目的として本件土地及び本件建物を代金848億円で売買契約を締結し買い受けたが、本件土地から広範囲にわたって発見されたスレート片が石綿を含有していたと主張して、本件売買契約に基づく瑕疵除去義務の不履行又は本件売買契約上の瑕疵担保責任に基づく損害賠償として、本件スレート片の撤去及び処分費用、物流ターミナルの建設工事が遅れたことに伴う追加費用、逸失利益、弁護士費用の支払等を求めたところ、原判決は、第1審原告の請求額を減額したうえで一部認容したため、第1審原告及び第1審被告の双方が、それぞれ原判決のうち敗訴部分を不服として、本件各控訴した事案において、約56億1000万円の支払いを命じた原判決に続き契約上の過失を認め、賠償額を約59億5000万円に増額した内容で変更した事例。
2018.08.28
損害賠償請求控訴事件
LEX/DB25560842/東京高等裁判所 平成30年 1月18日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第4886号
認知症の要介護者が、被控訴人との間の訪問介護契約に基づき在宅介護を受け、被控訴人が派遣したヘルパーが昼食の副食として調理、提供したシュウマイを摂食した際、誤嚥を起こし、シュウマイを喉に詰まらせる事故を起こし、それにより低酸素脳症に陥り、嚥下性(誤嚥性)肺炎が原因で死亡したことについて、亡き要介護者の兄弟姉妹で相続人である控訴人らは、ヘルパーが、(1)要介護者の介護に当たり、食事時の誤嚥リスクを十分に理解していたにもかかわらず、ア 食品の調理を刻み食にするなどせず、シュウマイを4分割しただけで、かつ適切な調理を怠って提供し、イ 食事中も要介護者を見守り、声をかけるに止まり、食事方法について適切な指示、介助をしなかったことにより、本件事故を発生させ、(2)その後も直ちに救急車の出動を要請するなど適切な応急措置を執らなかったことから、要介護者は、低酸素脳症に陥り、嚥下性肺炎により死亡したと主張して、使用者責任による損害賠償請求権に基づき、被控訴人に対し、控訴人につき慰謝料及び弁護士費用、その余の兄弟姉妹らにつき各慰謝料及び各弁護士費用の支払等を求めたところ、原判決は、ヘルパーについて上記(1)ア及びイの注意義務違反を認めることができず、上記(2)のような救命措置についての注意義務違反もなかったとして、控訴人らの本件各請求をいずれも棄却した。このため、第1審で訴えを取り下げた者を除く兄弟姉妹らは控訴人を選定当事者として控訴をし(控訴人以外の者については控訴を取り下げた)、また、控訴人は、当審において、使用者責任(不法行為)に加えて、債務不履行(契約及びそれに付随する安全配慮義務違反)による損害賠償請求も追加した事案において、ヘルパーには、不法行為上並びに本件契約上あるいは本件契約に付随する、食事の調理、提供に関する注意義務(結果回避義務)違反、摂食中の注意義務(結果回避義務)違反及び誤嚥後の注意義務違反はないから、本件控訴及び当審における控訴人の追加請求はいずれも理由がないものと判断し、本件控訴を棄却し、当審における追加請求も棄却した事例。
2018.08.28
不当利得返還等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 10月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25560652/東京高等裁判所 平成29年 3月 9日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第2611号
訴外A社に対して金属スクラップを継続・反復して売却する取引を行い、A社が代金を完済するまで売買目的物の所有権を留保する旨を合意していた被控訴人(被告)が、A社の支払停止に伴い、被控訴人がA社に売却し、同時点で同社の工場内に保管されていた金属スクラップ等についての動産引渡断行の仮処分命令に基づき上記動産を当該工場から引き揚げ、処分したところ、A社に対する融資を担保するため、A社が同社の工場内で保管する在庫製品等に対して集合動産譲渡担保を設定していた控訴人(原告)が、上記動産について、控訴人と被控訴人とは対抗関係に立ち、対抗要件を具備しない被告による処分行為は不法行為を構成し、又は、これにより得た利益は不当利得に当たると主張して、被控訴人に対し、上記動産の価格に相当する金額及び遅延損害金又は民法704条所定の利息の支払を求めたところ、原判決は控訴人の請求を棄却したため、これを不服として控訴した事案において、本件動産譲渡担保の範囲は、目的物の種類(非鉄金属製品の在庫製品等)、数量(全部)及び保管場所(本件工場)により特定されており、被控訴人自認超過部分(一部の各品目を除いたもの)について留保所有権の消滅が認められる以上、その品目及び数量に係る損害が発生したものと認め、控訴人に対する不法行為を構成するとして、原判決を変更し、控訴人の請求を一部認容した事例。