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2018.12.04
所得税更正処分等取消請求事件
LEX/DB25561472/大阪地方裁判所 平成30年 4月19日 判決 (第一審)/平成27年(行ウ)第393号
Aの屋号でLPガス、A重油、灯油等の燃料小売業を営む原告が、平成22年分から平成24年分まで(本件各年分)の所得税の確定申告において、原告が代表者を務める本件会社にAの業務を委託したとして、その外注費を事業所得の金額の計算上必要経費に算入したところ、所轄税務署長が、本件外注費を必要経費に算入することはできないとして、原告に対し、本件各年分の所得税の更正及び過少申告加算税の賦課決定をしたため、被告(国)を相手に、本件各更正処分のうち各申告額を超える部分及び本件各賦課決定処分の取消しを求めた事案において、本件外注費は、原告の事業所得に係る必要経費には該当しないとし、また、本件各通知書に附記された理由は、本件各更正処分の根拠を、行政庁の判断の慎重、合理性を担保してその恣意を抑制し、不服申立ての便宜を図るという理由附記制度の趣旨目的を充足する程度に具体的に明示するものというべきであり、所得税法155条2項が求める理由の附記として欠けるところはなく、本件各更正処分について理由附記の不備の違法はないとし、本件各処分はいずれも適法であるとして、原告の請求を棄却した事例。
2018.11.27
神奈川県議会議員政務活動費不正受給確認請求事件
LEX/DB25449809/最高裁判所第二小法廷 平成30年11月16日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第404号
神奈川県の住民である被上告人(被控訴人・原告)が、県議会の会派であるB(本件会派)が平成23年度から同25年度まで(本件各年度)に交付を受けた政務調査費及び政務活動費に関し、収支報告書に支出として記載されたものの一部は実際には支出されていないから、本件会派はこれを不当利得として県に返還すべきであるにもかかわらず、上告人はその返還請求を違法に怠っているとして、地方自治法242条の2第1項3号に基づき、上告人(控訴人・被告。県知事)を相手として、上告人が本件会派に対する不当利得返還請求権の行使を怠ることが違法であることの確認を求めた住民訴訟で、被上告人の請求を認容したため、上告人が上告した事案で、神奈川県議会政務活動費の交付等に関する条例に基づいて交付された政務活動費等について、その収支報告書上の支出の一部が実際には存在しないものであっても、当該年度において、収支報告書上の支出の総額から実際には存在しないもの及び使途基準に適合しないものの額を控除した額が政務活動費等の交付額を下回ることとならない場合には、当該政務活動費等の交付を受けた会派又は議員は、県に対する不当利得返還義務を負わないものとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、被上告人の請求を棄却した事例。
2018.11.27
通知処分取消等請求控訴事件
LEX/DB25561443/大阪高等裁判所 平成30年10月19日 判決 (控訴審)/平成30年(行コ)第21号
破産会社の破産管財人である控訴人が、〔1〕主位的に、本件破産会社の平成7年度から同17年度まで(ただし、同11年度を除く。)の各事業年度に係る法人税の確定申告について控訴人が平成27年6月19日付けでした各更正の請求に対して,所轄税務署長が同年9月14日付けで更正すべき理由がない旨の各通知処分をしたことについて、本件破産会社の破産手続において一般調査期間の経過をもって総額555億3373万9096円の過払金返還請求権が破産債権者表に記載されることにより破産債権として確定したことが国税通則法23条1項1号及び同条2項1号に該当するから、これに対応する法人税額が減額更正されるべきであるのに、これを認めなかった本件各通知処分は違法であると主張して、被控訴人に対し、本件各通知処分のうち法人税額合計5億円の範囲での一部取消し(一部請求)を求めるとともに、〔2〕予備的に、本件各通知処分が適法であるとしても、被控訴人は本件各事業年度において益金の額に算入された上記各過払金返還債権に対応する同事業年度の法人税相当額66億5526万3845円を法律上の原因なく利得している旨主張して、不当利得返還請求権に基づき、そのうち5億円の支払等を求め、原審は、控訴人の主位的請求及び予備的請求をいずれも棄却したため、これを不服とする控訴人が控訴した事案(当審で不服の範囲を限定し、法人税額合計2億5000万円の範囲で本件各通知処分の取消しを求め、予備的に同額の不当利得返還を求めた)で、控訴人が本件破産会社についてした本件会計処理は法人税法22条4項にいう「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に合致するものであり是認されるべきであったから、結果的に、本件申告に係る納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っておらず、同納税申告書の提出により納付すべき税額が過大であったことになり、国税通則法23条1項1号に該当するところ、本件破産手続で本件破産会社が本件過払金返還債権1に係る不当利得返還義務を負うことが確定判決と同一の効力を有する破産債権者表の記載により確定し、その結果、破産会社に生じていた経済的成果が失われたか又はこれと同視できる状態に至ったと解されることにより、本件申告に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実と異なることが確定したというべきであるから、同確定の日から2か月以内にされた本件各更正の請求は理由があり、これに理由がないとした本件各通知処分はいずれも違法であると判断し、これと異なる原判決は不当であり、本件控訴は理由があり、控訴人は当審における不服の範囲を本件各通知処分中法人税額合計2億5000万円に関する部分の取消請求に限定していることから、原判決中上記範囲で原判決を取消した上、同範囲で控訴人の主位的請求を認容した事例。
2018.11.27
離婚等本訴請求・同反訴請求控訴事件、同附帯控訴事件
LEX/DB25561398/東京高等裁判所 平成30年 9月27日 判決 (控訴審)/平成30年(ネ)第2147号 等
控訴人(兼附帯被控訴人・被告(反訴原告))と夫婦関係にある被控訴人(兼附帯控訴人・原告(反訴被告))が、控訴人に対し、悪意の遺棄及び婚姻を継続し難い重大な事由があると主張して、民法770条1項2号及び5号に基づき離婚を求めると共に、離婚に伴う慰謝料300万円の支払等を求め、これに加えて、長男及び二男の親権者を被控訴人とすること、養育費の支払、財産分与(共有不動産の分与を含む。)、年金分割を求めたのに対し、控訴人が、反訴として、離婚、離婚に伴う慰謝料500万円の支払、親権者を控訴人とすること、相当額の財産分与等を求めたところ、原審は、双方の離婚請求を認容した上で、長男及び二男の親権者をいずれも被控訴人と定め、控訴人に対し、長男及び二男の養育費として、それぞれが満20歳に達する日までの間、各月額6万5000円の支払を命じ、財産分与については、控訴人に対し、本件不動産の控訴人持分全部の譲渡及び財産分与を原因とする同持分全部移転登記手続を命じたほか、59万1631円の支払を命じ、年金分割については、請求すべき按分割合を0.5と定め、被控訴人のその余の本訴請求及び控訴人のその余の反訴請求をいずれも棄却したため、控訴人は、原判決中の親権者指定、財産分与及び慰謝料請求に関する部分を不服として控訴し、被控訴人は、原判決中の養育費,財産分与に関する部分及び慰謝料請求に関する部分を不服として附帯控訴した事案で、原判決は相当であると判断し、本件控訴及び本件附帯控訴を棄却した事例。
2018.11.20
違法公金支出損害賠償請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 1月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449792/最高裁判所第三小法廷 平成30年11月 6日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第226号
大竹市による市の土地の譲渡につき、市の住民である被上告人(控訴人・原告)らが、当該譲渡は地方自治法237条2項にいう適正な対価なくしてされたにもかかわらず、同項の議会の議決によるものでないことなどから違法であるとして、同法242条の2第1項4号に基づき、上告人(被控訴人・被告)を相手に、当時市長の職にあった者に対して損害賠償請求をすること等を求めた住民訴訟で、原審が、A市長に対する損害賠償請求をすることを求める被上告人らの請求のうち本件土地の適正な対価の下限であるという金額4億9910万円と本件譲渡価格との差額である1億4910万円に相当する部分を認容したため、上告人が上告した事案において、本件譲渡議決に関しては、市議会で、本件譲渡価格に加えて平成23年鑑定評価額を踏まえた上で、本件譲渡が適正な対価によらずにされたものであったとしてもこれを行う必要性と妥当性についても審議がされており、審議の実態に即して、本件譲渡が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを行うことを認める趣旨でされたものと評価することができるから、本件譲渡議決をもって、地方自治法237条2項の議会の議決があったということができ、本件譲渡の方式等についてみても、プロポーザル方式により本件公募をし、エポックワンらを選定した経緯等に関し、A市長が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したことをうかがわせる事情は存しないとして、本件譲渡に財務会計法規上の義務に違反する違法はなく、A市長は、本件譲渡に関して、市に対する損害賠償責任を負わないというべきであるとして、原判決中上告人敗訴部分につき破棄し、上記部分に関する被上告人らの請求を棄却した第1審判決は相当であるとし、上記部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例(補足意見あり)。
2018.11.20
停職処分取消請求事件
LEX/DB25449793/最高裁判所第三小法廷 平成30年11月 6日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第320号
上告人(加古川市)の男性職員である被上告人は、勤務時間中に訪れた店舗においてその女性従業員に対してわいせつな行為等をしたことを理由に、停職6月の懲戒処分を受けたことにつき、被上告人が本件処分は重きに失するものとして違法であるなどと主張して、上告人を相手に、その取消しを求め、原審は、被上告人の請求を認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、本件処分が重きに失するものとして社会観念上著しく妥当を欠くものであるとまではいえず、市長の判断が、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできないとし、これに反する原判決を破棄し、第1審判決を取消し、被上告人の請求を棄却した事例。
2018.11.20
勾留の裁判に対する準抗告の裁判に対する特別抗告事件
LEX/DB25449783/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月31日 決定 (特別抗告審)/平成30年(し)第585号
勾留の裁判に関する準抗告決定(原裁判取消し、勾留請求却下)に対し、検察官が特別抗告した事案において、原決定が、本件勾留の被疑事実である大麻の営利目的輸入と、本件勾留請求に先立つ勾留の被疑事実である規制薬物として取得した大麻の代替物の所持との実質的同一性や、両事実が一罪関係に立つ場合との均衡等のみから、前件の勾留中に本件勾留の被疑事実に関する捜査の同時処理が義務付けられていた旨説示した点は是認できないが、いまだ刑事訴訟法411条を準用すべきものとまでは認められないとし、本件抗告を棄却した事例(補足意見あり)。
2018.11.20
損害賠償請求事件
LEX/DB25561322/東京地方裁判所 平成30年 9月19日 判決 (第一審)/平成29年(ワ)第21485号
死刑確定者として東京拘置所に収容されていた原告X及び弁護士である原告Aが、被告に対し、原告Xに対する信書の発信不許可処分及び面会不許可処分についての各国家賠償請求事件並びに再審請求事件の打合せを目的とする原告らの面会につき、職員を立ち会わせる措置をしてはならない旨の仮の差止めの各決定が東京地方裁判所によってされたにもかかわらず、東京拘置所長が、それらに従わなかったと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、それぞれ、損害賠償金の支払等を求めた事案の上告審において、行政庁である東京拘置所長が、行政事件訴訟における最も基本的な法律である行訴法の規定を把握していなかった上、原告Aによる再三の抗議にもかかわらず、行政事件訴訟法の規定の確認すら怠り、このために違法な本件各処分をしたことは、到底容認し難いものであって、行政庁に対する信頼を失墜させる異常な事態を生じさせたものといわざるを得ないから、東京拘置所長には、本件各処分をすることについて極めて重大な過失があったものというべきであるが、本件各決定に効力が生じていることを認識しながら、あえて、本件各処分をしたものとまでは認められないとし、原告らの請求を一部認容し、その余の請求をいずれも棄却した事例。
2018.11.13
接見妨害等国家賠償請求事件
LEX/DB25449764/最高裁判所第一小法廷 平成30年10月25日 判決 (上告審)/平成29年(受)第990号
拘置所に被告人として勾留されていた上告人X1及びその弁護人であった上告人X2が、上告人X1が刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容中であることを理由に拘置所の職員が上告人X1と上告人X2との面会を許さなかったことにより、接見交通権を侵害されたなどとして、被上告人に対し、慰謝料及び遅延損害金の支払を求め、被告人が保護室に収容中であることを理由として被告人と弁護人との面会を許さない措置の違法性につき、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求をいずれも棄却したため、上告人が上告した事案で、拘置所において刑事収容施設法79条1項2号イに該当するとして保護室に収容されていた被告人である上告人X1との面会を求める本件申出が、その弁護人である上告人X2からあったのに対し、同拘置所の職員は、本件申出があった事実を上告人X1に告げないまま、保護室に収容中であることを理由として面会を許さなかったもので、上告人X1は、本件申出の前後にわたり保護室において大声を発していたが、当時精神的にどの程度不安定な状態にあったかは明らかではなく、意図的に抗議行動として大声を発していたとみる余地もあるところ、本件申出があった事実を告げられれば、上告人X2と面会するために大声を発するのをやめる可能性があったことを直ちに否定することはできず、上告人X1の言動に係る事情のみをもって、特段の事情があったものということはできないとし、原判決中、上告人らの接見交通権の侵害を理由とする損害賠償請求に関する部分を破棄し、特段の事情の有無等について更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例(補足意見あり)。
2018.11.13
危険運転致死傷,道路交通法違反被告事件
LEX/DB25449766/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月23日 決定 (上告審)/平成29年(あ)第927号
被告人は、夜間、片側2車線道路で、第1車線を進行するA運転の普通乗用自動車(A車)のすぐ後方の第2車線を、普通貨物自動車(被告人車)を運転して追走し、信号機により交通整理が行われている交差点を2台で直進するに当たり、互いの自動車の速度を競うように高速度で走行するため、本件交差点に設置された対面信号機の表示を意に介することなく、本件信号機が赤色を表示していたとしてもこれを無視して進行しようと考え、Aと共謀の上、本件信号機が約32秒前から赤色を表示していたのに、いずれもこれを殊更に無視し、Aが、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速約111kmで本件交差点内にA車を進入させ、その直後に、被告人が、重大な交通の危険を生じさせる速度である時速100kmを超える速度で本件交差点内に被告人車を進入させたことにより、左方道路から信号に従い進行してきたB運転の普通貨物自動車(C、D、E及びF同乗)にAがA車を衝突させて、C及びDを車外に放出させて路上に転倒させた上、被告人が被告人車でDをれき跨し、そのまま車底部で引きずるなどし、B、C、D及びEを死亡させ、Fに加療期間不明のびまん性軸索損傷及び頭蓋底骨折等の傷害を負わせた事故につき、第1審判決は、被告人及びAに対しそれぞれ懲役23年を言い渡したため、被告人両名が控訴し、控訴審判決は、被告人及びAが、いずれも、本件信号機の赤色表示を確定的に認識し、又はそもそも信号機による交通規制に従うつもりがなくその赤色表示を意に介することなく、自車を本件交差点に進入させたものとして、自動車運転処罰法2条5号にいう赤色信号を「殊更に無視し」たことが推認できるとした上、被告人及びAは、本件交差点に至るに先立ち、赤色信号を殊更に無視する意思で両車が本件交差点に進入することを相互に認識し合い、そのような意思を暗黙に相通じて共謀を遂げた上、各自が高速度による走行を継続して本件交差点に進入し、危険運転の実行行為に及んだことが、優に肯認できるとして、A車との衝突のみによって生じたB、C、E及びFに対する死傷結果を含む危険運転致死傷罪の共同正犯の犯罪事実を認定した第1審判決を是認し、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案で、被告人とAは、赤色信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する意思を暗黙に相通じた上、共同して危険運転行為を行ったものといえるとし、被告人には、A車による死傷の結果も含め、自動車運転処罰法2条5号の危険運転致死傷罪の共同正犯が成立するとし、危険運転致死傷罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決を是認した控訴審判決の判断は正当であるとし、本件上告を棄却した事例。
2018.11.13
著作権侵害差止等請求事件
「新・判例解説Watch」知的財産法分野 2月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449723/大阪地方裁判所 平成30年 9月20日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第2570号
ハワイに在住するクムフラ(フラダンスの師匠ないし指導者)である原告は、従前、被告(フラダンス教室事業を営む会社)と契約を締結し、被告ないし被告が実質的に運営するHHAやその会員に対するフラダンス等の指導助言を行っていたが、両者の契約関係は解消され、原告が、被告に対し(1)原告は、被告が、被告の会員に対してフラダンスを指導し、又はフラダンスを上演する各施設で、本件振付けを被告代表者自らが上演し、会員等に上演させる行為が、原告が有する本件各振付けについての著作権(上演権)を侵害すると主張して、被告に対し、本件各振付けの上演の差止めを求め、(2)原告は、被告が、被告の会員に対してフラダンスを指導し、又はフラダンスを上演する各施設で、本件楽曲を演奏する行為が、原告が有する本件各楽曲についての著作権を侵害すると主張して、被告に対し、本件各楽曲の演奏の差止めを求め、(3)原告は、被告が、本件各振付けを上演し又は被告の会員等に上演させた行為及び本件各楽曲を演奏した行為が、原告の著作権を侵害すると主張して、被告に対し、不法行為に基づき、損害賠償金642万2464円(使用許諾料相当額409万2120円及び弁護士費用233万0344円)の一部として250万3440円の支払等を求め、(4)原告は、被告との間で、HHA等が平成26年秋に開催するワークショップ等で被告ないしKHAの会員に対してフラダンス等の指導を行うことを内容とする準委任契約を締結していたところ、被告が同契約を原告に不利な時期に解除したと主張して、被告に対し、損害賠償金385万1910円の支払等を求めた事案において、フラダンスの本件各振付けの著作物性につき、全体として見た場合に原告の個性が表現されており、全体としての著作物性を認め、原告の本件各振付けの上演等の差止請求及び本件各楽曲の演奏の差止請求は、本件振付け6等の上演等の差止めを求める限度で理由があるとして、一部認容した事例。
2018.11.13
住居侵入、強盗殺人、強盗殺人未遂、窃盗被告事件(愛知一家強盗殺傷事件)
LEX/DB25449775/最高裁判所第一小法廷 平成30年 9月 6日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第1585号
被告人が、(1)窃盗事件を起こして検察官から罰金刑に処せられる見込みである旨告げられて、罰金の支払に充てる資金を犯罪によって手に入れようと考え、金品窃取の目的で、A方に侵入して物色中、Aに発見されるや、金品を強取することを決意し、A(当時57歳)をモンキーレンチで殴打するなどして殺害し、Aの二男B(当時26歳)を包丁で突き刺すなどして殺害し、その後帰宅したAの三男C(当時25歳)をクラフトナイフで突き刺すなどして殺害しようとしたが、死亡させるに至らず、その際、金品を強取したという住居侵入、強盗殺人、強盗殺人未遂のほか、(2)携帯電話機や普通乗用自動車を窃取したという窃盗2件から成る事案の上告審において、上記(1)の犯行前は前科がなかったことなど、被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても、被告人を死刑に処した第1審判決を維持した控訴審の判断を是認せざるを得ないとして、本件上告を棄却した事例。
2018.11.06
遺留分減殺請求事件
LEX/DB25449749/最高裁判所第二小法廷 平成30年10月19日 判決 (上告審)/平成29年(受)第1735号
上告人が、被上告人に対し、本件相続分譲渡によって遺留分を侵害されたとして、被上告人が遺産分割調停によって取得した不動産の一部についての遺留分減殺を原因とする持分移転登記手続等を求め、本件相続分譲渡が、亡Aの相続において、その価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与(民法1044条、903条1項)に当たるか否かが争われ、原審は、上告人は遺留分を侵害されていないとして、上告人の請求を棄却すべきものとしたため、上告人が上告した事案で、共同相続人間でされた無償による相続分の譲渡は、譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き、上記譲渡をした者の相続において、民法903条1項に規定する「贈与」に当たるとし、本件相続分譲渡はその価額を遺留分算定の基礎となる財産額に算入すべき贈与に当たらないとして上告人の請求を棄却すべきものとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととした事例。
2018.11.06
公金違法支出損害賠償等請求事件
LEX/DB25449756/最高裁判所第三小法廷 平成30年10月23日 判決 (上告審)/平成29年(行ヒ)第185号
鳴門市が経営する競艇事業に関し、市が平成25年度において漁業協同組合である上告補助参加人らに対して公有水面使用協力費を支出したことが違法、無効であるとして、市の住民である被上告人(原告・被控訴人)らが、地方自治法242条の2第1項4号の規定に基づき、上告人(被告・控訴人)を相手に、当時の市公営企業管理者企業局長の職にあった者に対する損害賠償請求及び参加人らに対する不当利得返還請求をすること等を求める住民訴訟の事案の上告審で、市が本件各請求権を放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であるとは認め難いというべきであり、本件議決が市議会の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるということはできないとし、本件議決を受けて、上告人がA及び参加人らに対し、本件各請求権を放棄する旨をそれぞれ通知したことにより、その放棄は有効にされ、同請求権は消滅したものと判断し、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、第1審判決中上告人敗訴部分を取消し、同部分に関する被上告人らの請求をいずれも棄却した事例。
2018.11.06
発信者情報開示仮処分命令申立事件 
LEX/DB25561324/東京地方裁判所 平成30年 9月14日 決定 (第一審)/平成30年(ヨ)第1081号
債権者(「美整顔」と呼ぶフェイスアップ、ほうれい線の解消等の施術を行っている者)が、債務者(インターネット検索サービス等を提供する法人)が管理・運営する地図情報と連動した口コミ投稿サイトに何者かが投稿した記事によって、名誉権を侵害された、ないし業務妨害を受けたと主張して、債務者に対し、プロバイダ責任制限法4条1項に基づく発信者情報開示請求権を被保全権利として、上記侵害に係る別紙発信者情報目録記載の各情報の仮の開示を求めた事案において、本件投稿は、債権者の名誉権を侵害するものであるとは認められず、本件投稿が業務妨害に当たるということもできないとして、本件申立てを却下した事例。
2018.11.06
所得税更正及び加算税賦課決定一部取消等請求事件
LEX/DB25561323/東京地方裁判所 平成30年 4月12日 判決 (第一審)
不動産貸付業を営む原告は、平成22年分から平成24年分までの本件各係争年分の所得税について、各確定申告及び各修正申告をしたところ、所轄税務署長から、(ア)本件各修正申告に基づく過少申告加算税の各賦課決定処分1を受けるとともに、(イ)本件各係争年分に係る原告の不動産所得につき、〔1〕必要経費に算入することができない修繕費や修繕積立金等を必要経費に算入したこと、〔2〕不動産の減価償却費を過大に必要経費に算入したこと、〔3〕総収入金額に算入すべき敷金を算入していないことなどから、本件各修正申告後の申告額が過少であることを理由に、各更正処分及びこれらの更正処分に基づく過少申告加算税の各賦課決定処分2を受けたため、原告が、(ア)本件各更正処分は、その根拠とされている上記〔1〕~〔3〕がいずれも誤りであるから違法である、(イ)本件各賦課決定処分1及び本件各更正処分等は、理由附記の不備があるから違法である、(ウ)本件各修正申告に係る修正申告書の提出は「更正があるべきことを予知してされたものでないとき」(国税通則法65条5項)に行われたものであって、本件各修正申告には同条1項の規定は適用されないから、これに反してされた本件各賦課決定処分1は違法である、(エ)本件各更正処分に基づく税額計算の基礎となった事実につき更正前の税額計算の基礎とされなかったことについて「正当な理由」(同条4項)があるから、同項を適用せずにされた本件各賦課決定処分2は違法であると主張して、本件各更正処分並びに本件各賦課決定処分1及び2(ただし、平成23年分及び平成24年分については平成27年11月4日付け裁決により一部取り消された後のものに限り、かつ、課税の計算の基礎となる金額及び計算方法に争いのない部分を除く。)の取消しを求めた事案において、原告主張の本件修繕費及び本件賃室リフォーム代金を必要経費に算入すべきとするものはその一部(本件会社による修繕及びリフォーム工事等の実施並びにこれらによる原告の費用支払債務の確定が認められる部分)につき理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2018.10.30
裁判官に対する懲戒申立て事件
LEX/DB25449743/最高裁判所大法廷 平成30年10月17日 決定 (上告審)/平成30年(分)第1号
被申立人(高等裁判所の民事事件担当の判事)が、実名が付された自己のアカウントで、高等裁判所で控訴審判決がされて確定した自己の担当外の事件である犬の返還請求等に関する民事訴訟についての報道記事を閲覧することができるウェブサイトにアクセスすることができるようにするとともに、本件アカウントにおける投稿が裁判官である被申立人によるものであることが不特定多数の者に知られている状況の下で行われたものであった本件ツイートをし、上記訴訟を提起して犬の返還請求が認められた当事者の感情を傷つけた事実につき、被申立人である裁判官に対する懲戒申立てをした事案において、被申立人の行為は、裁判所法49条にいう「品位を辱める行状」に当たるとし、被申立人は、本件ツイートを行う以前に、本件アカウントにおける投稿によって裁判官の品位と裁判所に対する国民の信頼を傷つけたなどとして2度にわたる厳重注意を受けており、取り分け2度目の厳重注意は、訴訟に関係した私人の感情を傷つけるものである点で本件と類似する行為に対するものであった上、本件ツイートの僅か2か月前であったこと、当該厳重注意を受ける前の事情聴取の際、被申立人は、訴訟の関係者を傷つけたことについて深く反省しているなどと述べていたことにも照らすと、そのような経緯があるにもかかわらず、本件ツイートに及んだ被申立人の行為は、強く非難されるべきものであるとして、裁判官分限法2条の規定により被申立人を戒告することとした事例(補足意見がある)。
2018.10.30
各放送受信料支払等請求控訴事件
LEX/DB25561275/東京高等裁判所 平成30年 9月20日 判決 (控訴審)/平成29年(ネ)第1993号
1審原告において、(1)1審被告らに対し、1審被告らがそれぞれ運営するホテルの客室等合計3万4426か所に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について、平成26年2月28日付け放送受信契約書が提出されたことにより、1審原告と1審被告らとの間において、それぞれ放送受信契約が成立し、1審被告らが当該受信機の設置の月から放送受信料の支払義務を負うとして、平成24年1月から平成26年1月までの期間における放送受信料合計19億2932万1040円の支払を求めた(第1請求)とともに、(2)1審被告ホテルに対し、同1審被告が平成25年10月まで運営していたホテル支店の客室114室に遅くとも平成24年1月までに設置した衛星受信機について、選択的に、〔1〕1審原告による放送受信契約の申込みが1審被告ホテルに到達した時点で、放送受信契約が成立したとして、平成24年1月から平成25年10月までの期間における放送受信料563万9580円の支払、又は,〔2〕1審被告ホテルは放送受信契約を締結しないことにより、法律上の原因なく1審原告の損失により放送受信料相当額を利得しているとして、不当利得返還請求として上記同額の支払を求めたところ、原審は、1審原告の上記(1)の請求を全部認容し、上記(2)の各請求をいずれも棄却し、1審原告及び1審被告らが敗訴部分を不服として双方が控訴した事案(なお、1審原告は、当審で、上記(2)に関する訴えを変更し、主位的に、1審被告ホテルは、放送法64条1項に基づき、1審原告からの放送受信契約の申込みを承諾する義務があるとして、当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに、これにより成立する放送受信契約に基づく放送受信料として563万9580円の支払を求め、予備的に、上記(2)〔2〕の不当利得返還請求を維持した(第2請求))で、1審原告の第1請求を認容した原判決は相当であるとし、1審被告らの控訴を棄却し、1審原告の当審における第2請求の主位的請求を認容した事例。
2018.10.30
工作委託料等請求控訴事件
「新・判例解説Watch」財産法分野 12月下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25449701/大阪地方裁判所 平成30年 8月29日 判決 (控訴審)/平成30年(レ)第57号
被控訴人が、控訴人に対し、被控訴人が控訴人に協力するという内容で締結された「別れさせ工作委託契約」と称する契約について、着手金として80万円、上記契約の目的が達成されたときは成功報酬として40万円を控訴人がそれぞれ支払う旨の約定があったと主張して、残金70万円等の支払を求めた本訴請求と、控訴人が、被控訴人に対し、本件契約及びこれに付随する調査委託契約が公序良俗に反し無効であるなどと主張して、不当利得返還請求権に基づき、本件契約等に基づいて支払った既払金等の支払を求めた反訴請求からなる事案の控訴審において、本件契約等の目的達成のために想定されていた方法は、人倫に反し関係者らの人格、尊厳を傷付ける方法や、関係者の意思に反してでも接触を図るような方法であったとは認められないなどとして、本件契約等が公序良俗に反するとまではいえないなどとして、原判決を相当であるとし、本件控訴を棄却した事例。
2018.10.30
殺人、商標法違反、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(今市事件控訴審判決)
LEX/DB25561023/東京高等裁判所 平成30年 8月 3日 判決 (控訴審)/平成28年(う)第983号
殺人、商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反(いわゆる今市事件)の各公訴事実のうち、原審では、殺人につき、その犯人と被告人との同一性が争われ(商標法違反及び銃砲刀剣類所持等取締法違反の公訴事実については、争いがなく、区分審理された)、本件殺人の公訴事実は、「被告人は、深夜、茨城県常陸大宮市内の山林西側林道で、被害者(当時7歳)に対し、殺意をもって、ナイフでその胸部を多数回突き刺し、同人を心刺通(心臓損傷)により失血死させた」という事実につき、原審検察官の指摘する客観的事実(情況証拠)のみによって被告人の犯人性を認定できるか検討し、結論として、被告人が殺害犯人である蓋然性は相当に高いものと考えられるが、客観的事実のみから被告人の犯人性を認定することはできないとし、原判決は、被告人が検察官に行った本件自白供述につき、任意性を認めた上、本件殺人の一連の経過や殺害行為の態様、場所、時間等、事件の根幹部分に関する供述は、十分に信用することができるとし、原審関係証拠から認められる客観的事実に、同供述を併せれば、被告人が被害者を殺害したことに合理的な疑いを入れる余地はないとし、被告人を無期懲役に処したため、原審弁護人が被告人のため控訴した事案において、原判決が、自白供述の信用性の補助証拠として採用した取調べの録音録画記録媒体により犯罪事実を直接的に認定したことには訴訟手続の法令違反があり、原判示第1の殺人の日時、場所を自白供述に基づき公訴事実どおりに認定したことには事実誤認が認められ、いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、原判決を破棄した上で、当高裁は、情況証拠によって認められる間接事実を総合すれば、被告人が殺害犯人であることは、合理的な疑いを差し挟む余地なく認められ、当審で予備的に追加された訴因(殺害の日時、場所を拡張したもの)については、直ちに判決をすることができるものと判断し、被告人を無期懲役にするのが相当であるとした事例。