2020.09.08
業務上過失致死被告事件
★「新・判例解説Watch」刑法分野 令和2年11月中旬頃解説記事の掲載を予定しております★
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LEX/DB25566440/東京高等裁判所 令和 2年 7月28日 判決 (控訴審)/平成31年(う)第791号
特別養護老人ホームに准看護師として勤務し、同施設の利用者に対する看護及び介護業務に従事していた被告人が、食堂で、利用者に間食を提供するに当たり、決められた形態と異なる食事を利用者に提供して摂取させれば、利用者に窒息事故等を引き起こすおそれがあるから、各利用者に提供すべき間食の形態を確認した上、これに応じた形態の間食を利用者に配膳して提供し、窒息等の事故を未然に防止すべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り、ゼリー系の間食を提供するとされていた被害者(当時85歳)に対し、提供すべき間食の形態を確認しないまま、漫然と常菜系の間食であるドーナツを配膳して提供した過失により、同人にドーナツを摂取させ、喉頭ないし気管内異物による窒息に起因する心肺停止状態に陥らせ、病院で、心肺停止に起因する低酸素脳症等により死亡させたとした事案の控訴審において、原判示の過失の成立を認めた原判決の結論は是認することはできず、本件公訴が提起されてから既に5年以上が経過し、現時点では控訴審の段階に至っている上、有罪の判断を下した原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認があるとして原判決を破棄し、被告人が、自ら被害者に提供すべき間食の形態を確認した上、これに応じた形態の間食を被害者に配膳して提供する業務上の注意義務があったとはいえないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。