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2021.07.06
売却不許可決定に対する執行抗告棄却決定に対する許可抗告事件
LEX/DB25571597/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月21日 決定 (許可抗告審)/令和3年(許)第7号
横浜地方裁判所は、平成25年12月27日、Aが所有する本件土地建物につき、Aを債務者とする根抵当権の実行としての競売の開始決定(本件競売事件)をし、Aは、平成26年6月18日、破産手続開始の決定を受け、同年9月18日、破産手続廃止の決定を受けた。Aは、同日、免責許可の決定を受け、同決定はその後確定した。上記根抵当権の被担保債権は、上記免責許可の決定の効力を受けるものである。その後、Aは、平成27年2月23日に死亡し、その子である抗告人等がAを相続した。執行官は、令和2年12月1日午前9時に開かれた本件競売事件の開札期日において、抗告人を最高価買受申出人と定めた。そして、執行裁判所は、令和2年12月21日、本件競売事件の債務者であったAの相続人である抗告人は上記土地建物を買い受ける資格を有せず、民事執行法188条において準用する同法71条2号に掲げる売却不許可事由があるとして、抗告人に対する売却不許可決定をしたため、抗告人が執行抗告をしたところ、原審は、抗告人の執行抗告を棄却したため、抗告人が許可抗告をした事案で、担保不動産競売の債務者が免責許可の決定を受け、同競売の基礎となった担保権の被担保債権が上記決定の効力を受ける場合には、当該債務者の相続人は被担保債権を弁済する責任を負わず、債権者がその強制的実現を図ることもできなくなるから、上記相続人に対して目的不動産の買受けよりも被担保債権の弁済を優先すべきであるとはいえないし、上記相続人に買受けを認めたとしても同一の債権の債権者の申立てにより更に強制競売が行われることはなく、上記相続人に買受けの申出を認める必要性に乏しいとはいえず、また、上記相続人については、代金不納付により競売手続の進行を阻害するおそれが類型的に高いとも考えられず、上記の場合、上記債務者の相続人は、民事執行法188条において準用する同法68条にいう「債務者」に当たらないと判示し、これと異なる見解の原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消した上、その他の売却不許可事由の有無につき審理を尽くさせるため,本件を原々審に差し戻すこととした事例。
2021.06.29
情報不開示決定取消等請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年9月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571573/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月15日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第102号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた上告人(原告・控訴人)が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、東京矯正管区長に対し、収容中に上告人が受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報(本件情報)の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、被上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき慰謝料等の支払を求めたところ、原審は、本件情報については、本件決定は適法であるとして、上告人の請求を棄却したため、上告人が控訴した事案で、被収容者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないから、同法12条1項の規定による開示請求の対象となるとして、原判決を破棄し、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差戻した事例(補足意見がある)。
2021.06.29
遺言確認申立却下審判に対する抗告事件
「新・判例解説Watch」家族法分野 令和3年9月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25569562/東京高等裁判所 令和 2年 6月26日 決定 (抗告審)/令和2年(ラ)第560号
遺言者がした危急時遺言について、その証人となった抗告人A(原審申立人)が、民法976条4項に基づき遺言の確認を求め、原審が原審申立人の申立てを却下したところ、原審申立人及び利害関係人(遺言者の長男)である抗告人Bが即時抗告した事案で、本件遺言の際における原審申立人と遺言者とのやりとりの内容については、原審申立人を含む3人の証人が一致しているところ、これらの証人がいずれも弁護士からの依頼に基づいて証人となった行政書士であることからすると、各供述の信用性は高いというべきであり、また、本件遺言の内容は遺言者の状況からみて合理性を有する内容といえることからしても、本件遺言は遺言者の真意に適うものであると考えられるところ、原審申立人の申立てを却下した原審判は失当であるとして、原審判を取り消したうえで、遺言者が本件遺言をしたことを確認した事例。
2021.06.29
新株予約権無償割当差止仮処分決定認可決定に対する保全抗告事件(日本アジアグループ事件)
LEX/DB25569527/東京高等裁判所 令和 3年 4月23日 決定 (抗告審)/令和3年(ラ)第798号
抗告人の株主である相手方が、抗告人に対し、抗告人が取締役会決議に基づいて現に手続中の株主に対する甲種新株予約権の無償割当ては、〔1〕株主平等の原則に反し、〔2〕著しく不公正な方法によるものであると主張して、会社法247条1号及び2号に基づき、これを仮に差し止めることを求め(基本事件)、これに対し東京地方裁判所が、上記新株予約権の無償割当てを仮に差し止める旨の決定をしたところ、本件仮差止決定を不服とする抗告人が保全異議を申し立て、原審が本件仮差止決定を認可する旨の決定をしたため、原審決定を不服とする抗告人が保全抗告を申し立てた事案で、本件新株予約権無償割当ては、抗告人の経営支配権に現に争いがある場合において、抗告人株式の敵対的買収によって経営支配権を争う相手方らの株券等保有割合を低下させ、経営を担当している取締役等又はこれを支持する特定の株主の経営支配権を維持・確保することを主要な目的とするものであり、新株予約権の無償割当てに類推適用される会社法247条2号の「新株予約権の発行が著しく不公正な方法により行われる場合」に該当するというべきであるところ、それにより相手方が不利益を受けるおそれがあると一応認められるのであるから、相手方はその差止請求権を有するとして、抗告人の本件新株予約権無償割当てにより、債権者が著しい損害を被ることが一応認められるとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.06.29
保全異議申立事件の決定に対する保全抗告事件(日邦産業事件)
LEX/DB25569526/名古屋高等裁判所 令和 3年 4月22日 決定 (抗告審)/令和3年(ラ)第138号
相手方の株主である抗告人が、相手方の取締役会決議に基づく新株予約権無償割当ては、株主平等の原則(会社法109条1項)に違反し、著しく不公正な方法によるものであるとして、相手方に対し、会社法247条(類推適用)により、当該新株予約権無償割当てを仮に差し止めることを求め、保全裁判所が、抗告人の上記仮処分の申立てを認容する決定をしたので、相手方が保全異議を申し立てたところ、原審が原々決定を取り消し、基本事件に係る抗告人の申立てを却下する旨の原決定をしたことから、これを不服とする抗告人が本件抗告をした事案で、抗告人の本件仮処分の申立てについては、被保全権利の疎明がないから、原々決定を取り消し、基本事件に係る抗告人の申立てを却下するのが相当であると判断するとして、本件抗告を棄却した事例。
2021.06.22
強盗致傷,犯人隠避教唆,犯人蔵匿教唆被告事件
LEX/DB25571572/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 6月 9日 決定 (上告審)/令和3年(あ)第54号
犯人が他人を教唆して自己を蔵匿させ又は隠避させたときは、刑法103条の罪の教唆犯が成立すると解するのが相当であり、被告人について同条の罪の教唆犯の成立を認めた第1審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例(反対意見がある)。
2021.06.22
入院を継続すべきことを確認する旨の決定に対する抗告棄却決定に対する再抗告事件
LEX/DB25571570/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 6月 9日 決定 (再抗告審)/令和3年(医へ)第5号
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇制度が、憲法14条、31条、34条の規定に違反しないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁)の趣旨に徴して明らかであるとし、本件抗告を棄却した事例。
2021.06.15
被災者生活再建支援金支給決定取消処分取消請求本訴,不当利得返還請求反訴,不当利得返還請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年8月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571555/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 6月 4日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第133号
本件本訴は、上告人(宮城県から被災者生活再建支援金の支給に関する事務の委託を受けた被災者生活再建支援法人)が、本件各支援金の支給決定(本件各支給決定)を支給要件の認定の誤りを理由に取り消す旨の決定(本件各取消決定)をしたことから、被上告人(上告人から支援金の支給を受けた者又はその相続人)らが,本件各支給決定を取り消すことは許されないと主張して、上告人を相手に、本件各取消決定の取消しを求め、本件反訴は、上告人が、本件各取消決定により被上告人らが本件各支援金を保持する法律上の原因を失ったと主張して、被上告人らに対し、本件各支援金相当額の不当利得返還を求めたところ、原審は、本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとは認められず、本件各支給決定には違法があるとしたものの、本件各取消決定は違法であるとして、その取消しを求めた本訴請求を認容するとともに、不当利得返還を求めた反訴請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、上告人は、本件各世帯が大規模半壊世帯に該当するとの認定に誤りがあることを理由として、本件各支給決定を取り消すことができると判示し、原判決中被上告人らに関する部分(原判決主文第1項)は破棄し、本件各取消決定は適法であるから、その取消しを求めた本訴請求は理由がなく、また、本件各支援金に係る不当利得返還を求める反訴請求は理由があるとして、本訴請求を棄却するとともに反訴請求を認容した第1審判決は正当であるから,被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.15
憲法53条違憲国家賠償請求事件
LEX/DB25569359/岡山地方裁判所 令和 3年 4月13日 判決 (第一審)/平成30年(ワ)第163号
衆議院議員である原告が、平成29年6月22日、憲法53条後段に基づき、内閣に対して臨時会の召集を要求したところ、内閣が、同要求後98日が経過した同年9月28日まで臨時会を召集しなかったことにつき、内閣は合理的な期間内に臨時会を召集するべき義務があるのにこれを怠ったものであって、憲法53条後段に違反し、その結果、国会議員としての権能を行使することができなかったとして、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案で、憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求に対して、内閣は、召集手続等を行うために通例必要な合理的期間内に臨時会を召集すべき憲法上の法的義務を負うものと解されることから、同条後段に基づく内閣の臨時会の召集決定が同条に違反するものとして違憲と評価される余地はあるといえるものの、他方、内閣が、憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求をした国会議員に対して、国家賠償法1条1項所定の職務上の法的義務として臨時会の召集義務を負うものとは解されないから、内閣が召集要求をした個々の国会議員に対し、同法1条1項所定の損害賠償義務を負う余地はなく、政治的責任を負うにとどまるものといわざるを得ないとして、原告の請求を棄却した事例。
2021.06.08
執行判決請求、民訴法260条2項の申立て事件
LEX/DB25571523/最高裁判所第三小法廷 令和 3年 5月25日 判決 (上告審)/令和2年(受)第170号 等
被上告人らが、上告人に対して損害賠償を命じた米国カリフォルニア州の裁判所の判決について、民事執行法24条に基づいて提起した執行判決を求め、原審は、本件外国判決のうち上告人に対して14万0635.54米国ドル及びこれに対する本件外国判決の言渡し日の翌日である平成27年3月21日から支払済みまでの利息の支払を命じた部分についての執行判決を求めた被上告人らの請求を認容したため、上告人が上告した事案で、本件弁済が本件懲罰的損害賠償部分に係る債権に充当されたものとして本件外国判決についての執行判決をすることはできず、本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分は民事訴訟法118条3号に掲げる要件を具備すると認められ、本件外国判決については、本件弁済により本件外国判決のうち本件懲罰的損害賠償部分を除く部分に係る債権が本件弁済の額の限度で消滅したものとし、その残額である5万0635.54米国ドル及びこれに対する利息の支払を命じた部分に限り執行判決をすべきであるとして、原判決中、主文第1項及び第2項を破棄し、被上告人らの請求を認容した第1審判決は正当であり、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.08
損害賠償請求事件
LEX/DB25571503/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第290号 等
屋外の建設現場における石綿(アスベスト)含有建材の切断、設置等の作業に屋根工として従事し、石綿粉じんにばく露したことにより、中皮腫にり患したと主張するAの承継人である被上告人らが、〔1〕上告人国に対し,建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために上告人国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、〔2〕上告人株式会社ケイミュー及び同株式会社クボタ(上告人建材メーカーら)に対し、上告人建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことによりAが中皮腫にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、上告人建材メーカーらが、平成14年1月1日から平成15年12月31日までの期間に、屋外の建設作業従事者に対し、上記石綿含有建材に当該建材から生ずる粉じんにばく露すると重篤な石綿関連疾患にり患する危険があること等の表示をすべき義務を負っていたということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決を破棄し、被上告人らの上告人建材メーカーらに対する請求は理由がなく、被上告人らの上告人クボタに対する請求を棄却した第1審判決は正当であるとして、原判決中、被上告人らの上告人ケイミュー及び同国に対する請求に関する部分を主文第1項のとおり変更し、被上告人らの上告人クボタに対する請求につき、同上告人敗訴部分を破棄し、同部分につき、被上告人らの控訴を棄却した事例。
2021.06.08
保有個人情報不開示決定処分取消請求控訴事件
LEX/DB25569195/大阪高等裁判所 令和 3年 4月 8日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第133号
大阪刑務所収容中の控訴人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律13条に基づき、処分行政庁に対し、控訴人の診療情報(本件情報)の開示を請求したところ、処分行政庁から、本件情報は同法45条1項により開示請求の規定の適用が除外されている情報に該当するとして、その全部を開示しない旨の決定(本件決定)を受けたことから、本件決定は同項の解釈を誤ったものであるなどと主張して、本件決定の取消しを求め、原判決は控訴人の請求を棄却したので、控訴人が、不服であるとして、控訴した事案において、刑事施設において保有する診療情報は、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律12条1項による開示請求の対象となるから、刑事施設の被収容者(又は被収容者であった者)からその開示請求がされた場合、当該診療情報の全部又は一部に同法14条所定の不開示情報があるかを検討した上でその開示の可否が検討されなければならないとし、本件情報が開示請求の対象外であることを理由としてされた本件決定は、同法45条1項の解釈適用を誤った違法があり、これを適法として控訴人の請求を棄却した原判決を取消し、控訴人の請求を認容した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571501/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第491号 等
〔1〕原告X1が、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、〔2〕原告X2らが、被告積水化学工業に対し、被告積水化学工業が石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより、屋外の建設現場における石綿含有建材の切断、設置等の作業に従事していたBが肺がんにり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告X1の被告国に対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻しを命じ、また、原判決中、原告X2らの被告積水化学工業に対する請求のうち、被告積水化学工業敗訴部分を破棄し、同部分につき、原告X2らの控訴を棄却した事例。
2021.06.01
損害賠償請求事件
LEX/DB25571502/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成31年(受)第596号
建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する者(本件被災者)又はその承継人である上告人らが、被上告人らに対し、被上告人らが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより本件被災者らが上記疾患にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、本件立証手法により建材現場到達事実が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には、経験則又は採証法則に反する違法があるとして、原判決中、別紙一覧表1から19までの各1項記載の上告人らの各2項記載の被上告人らに対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻した事例。
2021.06.01
長男の居所及び通園先開示等仮処分命令申立却下決定に対する抗告事件
LEX/DB25569498/東京高等裁判所 令和 3年 5月 6日 決定 (抗告審)/令和2年(ラ)第2137号
相手方の夫である抗告人が、抗告人と相手方との間の長男と共に別居している相手方に対し、監護権を含む親権及び人格権に基づき、〔1〕親権を共同で行う者として長男の利益のために抗告人と協力すること、〔2〕長男の通園先の施設及び居所をいずれも開示すること、〔3〕抗告人の承諾なく長男の居所を移転させないこと及び〔4〕抗告人が長男の保護者として長男を心身ともに健やかに育成することについて第一義的責任を負うことの確認を求めた仮処分命令の申立てをしたところ、原審は本件申立てをいずれも却下したので、抗告人が即時抗告をした事案において、相手方も親権に基づいて長男を監護しているものであるし、相手方が長男を連れて抗告人と別居するに至った経緯を見ても、相手方による長男の監護が不当であると認めることはできず、他に相手方による親権の行使が不当であることあるいは不当な親権行使がされるおそれがあることを認めるに足りる証拠はなく、抗告人は相手方に対し、長男の居所等の開示や抗告人の承諾なく長男の居所を移転させないことを求めることはできないなどとして、本件申立てを却下した原決定は相当であり、本件抗告を棄却した事例。
2021.05.25
各損害賠償請求事件
LEX/DB25571500/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月17日 判決 (上告審)/平成30年(受)第1447号 等
主に神奈川県内で建設作業に従事し、石綿(アスベスト)粉じんにばく露したことにより、石綿肺、肺がん、中皮腫等の石綿関連疾患にり患したと主張する本件被災者ら又はその承継人である原告らが、被告国に対し、建設作業従事者が石綿含有建材から生ずる石綿粉じんにばく露することを防止するために被告国が労働安全衛生法に基づく規制権限を行使しなかったことが違法であるなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、被告建材メーカーらに対し、被告建材メーカーらが石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示することなく石綿含有建材を製造販売したことにより本件被災者らが上記疾患にり患したと主張して、不法行為に基づく損害賠償を求めた事案の上告審において、原判決中、原告らのうち別紙一覧表1記載の者らの被告国に対する請求に関する部分、原告らのうち別紙一覧表3記載の者らの被告エーアンドエーマテリアルら、被告大建工業及び被告ノザワに対する請求に関する部分、原告らのうち別紙一覧表4記載の者らの被告太平洋セメントに対する請求に関する部分並びに原告らのうち別紙一覧表5及び別紙一覧表6記載の者らの被告ノザワに対する請求に関する部分を破棄し、更に審理を尽くさせるため上記部分につき本件を原審に差戻し、原告らのうち別紙一覧表7の「上告人名」欄記載の者ら(同欄記載の者の訴訟承継人を含む。)の被告エーアンドエーマテリアルらに対する請求に関する部分を主文第2項のとおり変更し、被告国及び被告エーアンドエーマテリアルらの各上告を棄却した事例。
2021.05.25
準強姦被告事件
LEX/DB25571498/最高裁判所第一小法廷 令和 3年 5月12日 決定 (上告審)/令和2年(あ)第343号
被告人は、飲食店で、被害者が飲酒酩酊のため抗拒不能であるのに乗じ、同人と性交をしたとし準強姦の罪に問われ、第1審判決は、被害者を含む上記飲食店にいた8名の証人尋問及び被告人質問を実施した上で、被害者が抗拒不能であったことは認めたものの、本件認識がなかった旨を述べる被告人の公判供述の信用性は否定できないから、被告人に本件認識があったことには合理的な疑いが残るとして、被告人に無罪の言渡しをしたことに対し、検察官が控訴し、控訴審判決は、訴訟記録及び第1審において取り調べた証拠に基づき、被告人は被害者が飲酒酩酊のため眠り込んでいる状態を直接見て、これに乗じて被害者と性交したから、本件認識があったことは明らかであり、第1審判決が、本件認識がなかった旨を述べる被告人の公判供述の信用性は否定できないとしたのは論理則、経験則に反し、同供述は、本件認識があったことに合理的な疑いを生じさせるものとはいえないとして、事実誤認により第1審判決を破棄し、被告人を有罪として懲役4年に処したため、被告人が上告した事案において、原審は、争点の核心部分について事実の取調べをしたということができ、その結果が第1審で取り調べた証拠以上に出なくとも、被告事件について判決をするのに熟していたといえるから、第1審が無罪とした公訴事実を認定して直ちに自ら有罪の判決をしても、刑事訴訟法400条ただし書に違反しないとして、本件上告を棄却した事例。
2021.05.25
住民訴訟による違法確認請求事件
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和3年8月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25571497/最高裁判所第二小法廷 令和 3年 5月14日 判決 (上告審)/令和2年(行ヒ)第238号
徳島県の住民である被上告人(原告・控訴人)が、県知事Aが管弦楽団の演奏会への出席のために公用車を使用したことは違法であり、公用車の燃料費並びに同行した秘書及び運転手の人件費に相当する額につき、県はA知事に対して不法行為に基づく損害賠償請求権を有するにもかかわらず、上告人(被告・被控訴人)はその行使を違法に怠っていると主張して、上告人を相手に、当該怠る事実が違法であることの確認を求めた住民訴訟で、原判決が被上告人の請求を一部認容したため、上告人が上告した事案において、県を統轄して、これを代表し、また、その事務を管理し及びこれを執行する県知事であるA知事が、県の事務として開催された本件演奏会に出席したことは、公務に該当するものというべきであるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の請求を棄却した第1審判決は相当であるから、上記部分につき、被上告人の控訴を棄却した事例。
2021.05.18
建設工事差止等仮処分命令申立事件
「新・判例解説Watch」環境法分野 解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25569325/広島地方裁判所 令和 3年 3月25日 決定 (第一審)/令和2年(ヨ)第78号
債権者らが、本件予定地上に産業廃棄物最終処分場を建設中の債務者に対し、本件処分場の建設、操業により、井戸水、水道水及び河川の水が有害物質によって汚染され、あるいは土砂災害を誘発するおそれがあるとして、人格権等(〔1〕水質汚染による浄水享受権、生命・身体・健康に対する侵害、農業者・漁業者らの生活権に対する侵害、農業者の水利権に対する侵害、〔2〕土砂災害による生命・身体・健康に対する侵害)に基づき、本件処分場の建設、使用、操業を差止めるとの仮処分命令を求めた事案において、債権者らの本件申立てのうち、本件4井戸関係債権者9名の申立ては理由があり、本件事案の性質に照らして同債権者らに担保を立てさせないで、これらを一部認容し、その余の債権者らの申立ては、却下した事例。
2021.05.18
憲法53条違憲国家賠償等請求事件
LEX/DB25569113/東京地方裁判所 令和 3年 3月24日 判決 (第一審)/平成30年(行ウ)第392号
衆議院及び参議院の各総議員の4分の1以上の議員が、平成29年6月22日、憲法53条後段及び国会法3条に基づき、連名で、各院の議長を経由して内閣にそれぞれ要求書を提出することにより、臨時会の召集の決定を要求し、P4前内閣総理大臣を首長とする内閣は、同日、上記の各要求書を受理したにもかかわらず、P4内閣が、臨時会の召集を決定したのは同年9月22日であり、現実に臨時会が召集されたのは同月28日であったが、衆議院は、同日、憲法7条の規定に基づき、解散されたところ、本件召集要求をした参議院議員の1人である原告が、P4内閣がした上記の臨時会の召集の決定又はP4内閣が少なくとも92日間にわたって本件召集要求に対応する臨時会の召集を決定しなかったことが憲法53条後段に違反するものであるとして、原告が、次に、参議院の総議員の4分の1以上の1人として、連名で、議長を経由して内閣に対して臨時会の召集の決定を要求した場合に、主位的には、内閣が、20日以内に臨時会を召集することができるようにその召集を決定する義務を負うことの、予備的には、原告が、20日以内に臨時会の召集を受けられる地位を有することの各確認を求めるとともに、本件不作為等により、臨時会の召集の決定を要求する権能だけではなく参議院議員として有する諸権能も長期間にわたり行使することができなかったという損害を受けたとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害の一部である1万円及び遅延損害金の支払を求めた事案で、原告は、機関訴訟(行政事件訴訟法6条)は、行政権内部又は議会内部の紛争に係る訴えに限定され、憲法上の国家機関相互の紛争は、同条が規定する機関訴訟の概念には当たらないと解すべきである旨主張し、これに沿う証拠もあるが、機関訴訟について、原告が上記に主張するとおりにその範囲を限定して解すべき法令上の根拠は見当たらず、また、機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができるところ(行政事件訴訟法42条)、我が国の法制上、国会議員と内閣との間の権限の行使に関する紛争について、訴えの提起を許す法令の規定は見当たらないから、本件確認訴訟部分は、いずれも不適法なものであるとして、本件確認訴訟部分をいずれも却下し、原告のその余の請求を棄却した事例。