2022.05.31
不正競争防止法違反幇助被告事件
LEX/DB25572151/最高裁判所第二小法廷 令和 4年 5月20日 判決 (上告審)/令和2年(あ)第1135号
被告人は、火力発電システム等に係る施設又は設備を構成するボイラ、ガスタービン等の機器及び装置の研究、開発、設計、調達、製造等に関する業務等を目的とする本件会社の取締役常務執行役員兼エンジニアリング本部長として同社の火力発電所建設プロジェクト等を統括していたものであるが、同社がタイ王国ナコンシータマラート県カノム郡において遂行していた火力発電所建設工事に関して、同建設工事現場付近に建設した仮桟橋に、火力発電所建設関連部品を積載した総トン数500tを超えるはしけ3隻を接岸させて貨物を陸揚げするに当たり、本件仮桟橋は、総トン数500t以下の船舶の接岸港として建設許可されたものであったため、同郡に管轄を有する同国運輸省港湾局第4地方港湾局ナコンシータマラート支局長として、同郡において、水上輸送に関する検査、船舶検査、船舶登録、タイ領海内船舶航行法に基づく桟橋使用禁止等の権限を有していた外国公務員等であったBから許可条件違反となる旨指摘され、貨物を陸揚げできなかったことから、同社の執行役員兼調達総括部長として同社の物品調達、輸送業務を統括していたC、同社の調達総括部ロジスティクス部長として同社の輸送業務を統括していたDほか数名と共謀の上、平成27年2月17日頃、同郡内において、Bに対し、新たに接岸する船舶の種別の変更申請を行う等の正規の手続によらずに上記許可条件違反を黙認して本件はしけの本件仮桟橋への接岸及び貨物の陸揚げを禁じないなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、同国内の業者を介し、現金1100万タイバーツ(当時の円換算3993万円相当)を供与し、もって外国公務員等に対し、国際的な商取引に関して営業上の不正の利益を得るために、その外国公務員等に、その職務に関する行為をさせないことを目的として、金銭を供与したとして起訴され、第1審判決は、公訴事実と同旨の犯罪事実を認定し、被告人を懲役1年6月、3年間執行猶予に処したため、被告人は、第1審判決に対して控訴し、原判決は、被告人に不正競争防止法18条1項違反罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決は事実誤認があるとして、第1審判決を破棄し、被告人には同罪の幇助犯が成立するとして、被告人を罰金250万円に処したことで、検察官、被告人の双方が上告した事案で、本件供与に関する共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、第1審判決について、論理則、経験則等に照らして不合理な点があることを十分に示したものとは評価することができず、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決を破棄し、不正競争防止法18条1項違反罪の共同正犯の成立を認めた第1審判決の判断は正当として是認することができ、また、記録に基づいて検討すると、被告人のその余の控訴趣意もいずれも理由がなく、第1審判決はこれを維持するのが相当であるとし、被告人の控訴を棄却した事例。