2013.10.15
殺人未遂被告事件
LEX/DB25445886 / 神戸地方裁判所 平成25年 3月19日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第769号
被告人は、アパートの居室から3階廊下に出たところ、同じアパート3階の住人で、以前口論をしたことがあったA(当時72歳)から、居室ドアの開閉を静かにするよう注意された上、その顔面を拳で殴られるなどしたことから、これに腹を立て、Aを脅して今後このような態度をとらないようにさせようと思い立ち、穴あき洋包丁(刃体の長さ約12.2センチメートルを持ち出し、3階の廊下で、Aに対して、本件包丁の刃先を向け、更に、Aが本件包丁を持った被告人の右手をつかみ、被告人も左手でAの胸ぐらをつかむなどして揉み合いの状態になる中で、Aの手をふりほどこうとし、Aの身体の至近距離で本件包丁を持った右手を振り回すなどの暴行を加え、その際、Aにより加えられた力も相まって、本件包丁の刃先が、Aの左側胸部に突き刺さったり、右頸部に当たるなどした結果、Aに、全治約45日間を要する、左側胸部刺創、左第3肋骨骨折、血気胸、右頸部切創、右手背切創等の傷害を負わせた事案において、被告人は、脅すためにAに包丁を突き付けたところ、Aが被告人の右手首をつかみ、そのまま押したり引いたりの揉み合いになったため、被告人は手を自由に動かすことができない中で、Aの手をふりほどこうと手を振り回し、Aにより加えられた力も加わり、結果として包丁がAの身体に突き刺さったり、体に触れるなどし傷害が発生したもので、被告人は、狙ってAの左側胸部等を刺したわけではないから、自身の行為がAが死ぬ危険性の高い行為であるとわかって行ったとはいえず、被告人には殺意は認められず、傷害罪が成立するにとどまり、懲役3年に処した事例(裁判員裁判)。