2013.10.29
再審開始決定及び死刑執行停止決定に対する異議申立ての決定に対する特別抗告事件
(名張毒ぶどう酒殺人事件第7次再審請求の差戻し後の特別抗告事件)
(名張毒ぶどう酒殺人事件第7次再審請求の差戻し後の特別抗告事件)
LEX/DB25445953 / 最高裁判所第一小法廷 平成25年10月16日 決定 (特別抗告審) / 平成24年(し)第268号
原決定(差戻し後の異議審決定)が、新たに実施した鑑定結果によれば、TRIEPPは有機化合物の成分を分離する一方法であるエーテル抽出では抽出されないから、その方法を用いて抽出が行われていた事件検体からTRIEPPが検出されていないからといって、本件使用毒物がニッカリンTでなかったことを導き出すものとはいえないと判断し、また、対照検体からTRIEPPが検出された点については、ニッカリンTに含まれる物質であるペンタエチルトリホスフェート(PETP)がエーテル抽出され、エーテル抽出後にTRIEPPを生成して検出されたものと考えられる旨判断し、本件使用毒物がニッカリンTであることと,TRIEPPが事件検体からは検出されなかったこととは矛盾するものではなく,証拠群3は,刑事訴訟法435条6号には該当するものではない旨判断し、原決定(差戻し後の異議審決定)は、その余の4つの証拠群についても最高裁決定(平成19年(し)第23号同22年4月5日第三小法廷決定)同様に判断して同号該当性を否定して、改めて再審開始決定を取り消して再審請求を棄却したたため、弁護人が特別抗告をした事案において、原審(差戻し後の異議審)の鑑定は、科学的に合理性を有する試験方法を用いて、かつ、当時の製法を基に再製造したニッカリンTにつき実際にエーテル抽出を実施した上でTRIEPPはエーテル抽出されないとの試験結果を得たものである上、そのような結果を得た理由についてもTRIEPPの分子構造等に由来すると考えられる旨を十分に説明しており、合理的な科学的根拠を示したものであるということができ、証拠群3は,本件使用毒物がニッカリンTであることと何ら矛盾する証拠ではなく、申立人がニッカリンTを本件前に自宅に保管していた事実の情況証拠としての価値や、各自白調書の信用性に影響を及ぼすものではないことが明らかであるとして、証拠群3につき刑事訴訟法435条6号該当性を否定した原判断は正当であるとし、また、本件ぶどう酒の開栓方法等に係る実験結果報告書等のその余の4つの証拠群についても,最高裁決定(平成19年(し)第23号同22年4月5日第三小法廷決定)の判示のとおり同号該当性は認められず、同旨の原判断は正当であるとした事例。