2014.04.08
保護責任者遺棄致死被告事件
LEX/DB25446293/最高裁判所第一小法廷 平成26年3月20日 判決 (上告審)/平成24年(あ)第797号
被告人両名が、統合失調症の診断を受けていた被告人の妹に対し、日常的に虐待を加え、医師の診察等の医療措置を受けさせず、わずかな飲食物を提供するのみでその生存に必要な保護を加えず、外傷による出血及び低栄養に基づく虚血状態に起因するショック並びに敗血症性ショックにより死亡させたとして、保護責任者遺棄致死罪で起訴された事件で、原判決は、被告人両名において、被害者の生命身体に危険があり、その生存に必要な保護として、医師の診察等の医療措置を受けさせるとの認識を有していたか否かについて、更に審理を尽くす必要があるとして、保護責任者遺棄致死罪の成立を肯定した原判決を破棄し、本件を地方裁判所に差し戻しを命じたため、検察側が上告した事案において、原判決が、被告人Aと共に来院した被害者の様子を述べた医師のE証言及び被告人両名と共に中華料理店を訪れた被害者の様子を述べた店員のF証言を信用できないとし、被告人両名は被害者が生存に必要な保護として医療措置を受けさせるなどの保護を必要とする状態であることを分かっていたとする第一審判決の認定、判断を是認できないとした判断は、第一審判決について、論理則、経験則等に照らして不合理な点があることを十分に示したものとは評価することができないとし、第一審判決に事実誤認があるとした原判断には刑事訴訟法382条の解釈適用を誤った違法があり、この違法が判決に影響を及ぼすことは明らかであり、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められるとして、更に審理を尽くさせるため、本件を高等裁判所に差し戻すこととした事例。