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2014.08.19
忍野村専決訴訟
LEX/DB25504306/最高裁判所第二小法廷 平成26年6月13日 決定 (上告審)/平成25年(行ツ)第394号等
一審被告(被上告人兼相手方)村長が、本件共同企業体(補助参加人)との間において図書館の建設工事請負契約を締結するに当たり、その前提となる予算等について専決処分を行ったことに関して、一審原告ら(上告人兼申立人)が、前記専決処分は違法なものであり、本件所図書館請負契約は私法上無効であるから、これに関する公金の支出も違法・無効であるとして、一審被告に対し、各補助参加人に支出した請負代金の返還等を請求するよう求めたところ、原判決が、請求を一部認容した第一審判決を取り消し、一審原告らの請求を棄却したため、一審原告らが上告した事案において、民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民事訴訟法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、理由の不備・食違いをいうが、その実質は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しないとし、上告を棄却した事例。
2014.08.19
各詐欺被告事件(朝鮮総連ビル売却問題事件)
LEX/DB25504300/最高裁判所第二小法廷 平成26年5月19日 決定 (上告審)/平成24年(あ)第785号
朝鮮総連が、本件土地建物の売却先を探していたことに乗じて、被告人両名が、共謀の上、被告人B又はその支配する投資家が運用しているファンドの資金を引き上げて本件土地建物の売買代金に充てるのに違約金等の支払が必要になるなどと嘘を言ってその旨誤信させ、現金を詐取するなどした事実につき、原判決が、被告人Aに懲役2年10月、被告人Bに懲役3年、被告人両名に執行猶予5年を言い渡した第一審判決を維持し、各控訴を棄却したため、各被告人が上告した事案において、上告趣意のうち、被告人A及び同Bの各自白調書の任意性につき憲法違反をいう点は、記録を調査しても、その任意性を疑うべき証跡は認められないから、前提を欠き、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は事実誤認、単なる法令違反の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件各上告を棄却した事例。
2014.08.19
民事再生法違反、詐欺被告事件
LEX/DB25504309/大阪高等裁判所 平成26年3月18日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第852号
A社及びB社の代表取締役であり、C社を実質的に経営する被告人が、A社又C社において、B社から婦人服を購入する旨の架空の取引を偽装して、銀行に信用状を発行させるとともに、B社振り出しに係る為替手形を作成した上、D他4名をして、本件船積書類の内容が正確で、正当な買取依頼である旨誤信させ、A社名義の外国預金口座に振込入金させた事実につき、懲役10年が言い渡されたため、被告人が控訴した事案において、原判決が、その挙示する証拠によって、詐欺の故意及び従業員らとの共謀並びに被告人らの行為と本件各銀行が行った本件各手形の買取り及びその代金の振込入金の間の因果関係をいずれも肯認して各詐欺罪の成立を認めたのは正当であるとし、控訴を棄却した事例。
2014.08.19
覚せい剤取締法違反、関税法違反被告事件(無罪事件)
LEX/DB25504375/千葉地方裁判所 平成26年3月17日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第1093号
被告人が、氏名不詳者らと共謀の上、スーツケースに覚せい剤を隠匿し我が国に密輸入しようとしたが、その目的を遂げなかったという公訴事実につき、被告人に本件スーツケース内に覚せい剤を含む違法薬物が隠匿されていたことの認識があったと認めるには合理的な疑いが残り、また、それぞれの事情を総合することによって、この疑いが解消されるともいえないとして、被告人を無罪とした事例。
2014.08.12
不当利得返還請求事件
LEX/DB25446526/最高裁判所第三小法廷 平成26年7月29日 判決 (上告審)/平成25年(受)第78号
被上告人が、貸金業者であるA株式会社及び同社を吸収合併した上告人との間で、指定された回数に応じて元本及び利息の合計支払額が毎月同額となるよう分割して返済する方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約を締結したところ,各弁済金のうち利息制限法1条1項(平成18年法律第115号による改正前のもの)所定の制限を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して、上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、過払金の返還等を求めた事案の上告審において、元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合に、借主から約定分割返済額を超過する額の支払がされたときには、当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事情のない限り、当該超過額は、その支払時点での残債務に充当され、将来発生する債務に充当されることはないと解するのが相当であるとし、原審は、特段の事情の有無について審理判断しないまま、約定分割返済額を超過する額の支払がされていたことをもって、将来発生する債務、すなわち平成14年2月1日及び同年4月1日における元本だけではなく利息の支払をもしていたことになる旨判断したもので、原審は、平成17年2月4日にも期限の利益を喪失したとの上告人の主張については、判断を遺脱したものであり、原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとして、原判決中、不服申立ての範囲である38万4922円及びこれに対する平成23年5月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を超える金員の支払請求に関する部分は破棄を免れないとし、更に審理を尽くさせるため、同部分につき本件を原審に差し戻しを命じた事例(補足意見がある)。
2014.08.12
許可処分無効確認及び許可取消義務付け,更新許可取消請求事件
LEX/DB25446527/最高裁判所第三小法廷 平成26年7月29日 判決 (上告審)/平成24年(行ヒ)第267号
宮崎県北諸県郡高城町に設置された産業廃棄物の最終処分場を事業の用に供する施設として、宮崎県知事が参加人に対してした産業廃棄物処分業及び特別管理産業廃棄物処分業の各許可処分及び各許可更新処分につき、高城町ほかの地域に居住する上告人らが、被上告人を相手に、上記各許可処分の無効確認及びその取消処分の義務付け並びに上記各許可更新処分の取消しを求めた事案の上告審において、上告人X1を除くその余の上告人らは、いずれも本件処分場の中心地点から約1.8kmの範囲内の地域に居住する者であって、本件環境影響調査報告書において調査の対象とされた地域にその居住地が含まれており、本件処分場の種類や規模等を踏まえ、その位置と上記の居住地との距離関係などに加えて、環境影響調査報告書において調査の対象とされる地域が、一般に当該最終処分場の設置により生活環境に影響が及ぶおそれのある地域として選定されるものであることを考慮すれば、上告人X1を除くその余の上告人らについては、本件処分場から有害な物質が排出された場合にこれに起因する大気や土壌の汚染,水質の汚濁,悪臭等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるものと想定される地域に居住するものということができ、著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから、本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有するものと解するのが相当であるとして、上告人X1を除くその余の上告人らが本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとした原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、原判決のうち上記の上告人らに関する部分は破棄を免れず、また、上記の上告人らについて本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める訴えを却下した第一審判決も取消しを免れないとし、本件各許可処分及び本件各更新処分の適法性等について審理させるため、原判決のうち上告人X1を除くその余の上告人らに関する部分につき、本件を第一審に差し戻すべきであるとした一方で、上告人X1が本件各許可処分の無効確認等及び本件各更新処分の取消しを求める原告適格を有しないとして上告人X1の訴えを却下すべきものとした原審の判断は、結論において是認することができるとして、上告人X1の上告は、棄却した事例。
2014.08.12
大崎事件
LEX/DB25504376/福岡高等裁判所宮崎支部 平成26年7月15日 決定 (抗告審)/平成25年(く)第5号
殺人、死体遺棄事件(いわゆる大崎事件)で懲役10年に処せられ確定判決を受けた請求人が、第2次となる本件再審請求をしたところ、地裁がした再審請求棄却決定に対し、十分な審理を行わず、新証拠の明白性判断の手法を誤り、新証拠の証拠評価を誤ったものであるので、原決定を取り消し、再審を開始する決定を求めた即時抗告審の事案において、本件において提出された新証拠は、これを確定審及び第1次再審までに提出された全証拠を併せて総合評価しても、確定判決の事実認定に合理的な疑いを抱かせるには足りないのであって、無罪と認めるべき明らかな証拠とはいえず、刑事訴訟法435条6号所定の再審事由があるとはいえないとし、なお、原審の審理不尽をいう点については、当審において、検察官に対し証拠開示の勧告をし、また、3名の証人尋問をしているから、その判断をするまでもなく、抗告の理由がないとして、抗告を棄却した事例。
2014.08.12
殺人被告事件(京都・木津川市女性殺害事件)
LEX/DB25504334/大阪高等裁判所 平成26年6月27日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第992号
スナックのホステスである被告人が、来店客と知り合い、以後断続的に交際していたが、来店客とクラブのホステスであった被害者(当時27歳)が同伴出勤をしていることを知り、交際しているものを考え、被害者宅を訪れ、強引に室内に入り込んだ上、刃物様のもので、被害者βの左胸部、右乳房部、右側胸部、左手背部、右上腕部、右前腕部等を突き刺すなどし、さらに、その頚部をバスタオルで絞め付け、頚部圧迫により窒息死させて殺害し、原判決が被告人に懲役17年を言い渡したところ、検察官及び被告人の双方が控訴した事案において、被害者が先行して刃物で被告人を攻撃した可能性は認められず、被告人の刺突行為と頚部絞付け行為のいずれについても殺意が認められ、被告人には殺人罪が成立するとし、原判決は、被害者による先制攻撃の可能性と被告人の刺突行為時の殺意について事実を誤認したものであり、有期懲役の法定刑のうち最上限の刑を科するのが相当であるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役20年に処した事例。
2014.08.12
損害賠償等請求控訴事件(猫の里親詐欺・猫の返還請求は退ける)
LEX/DB25504354/大阪高等裁判所 平成26年6月27日 判決 (控訴審)/平成26年(ネ)第367号
猫の里親を探すボランティア活動をしている原告ら(控訴人)が、被告(被控訴人)に対し、被告が猫を適切に飼養する意思がないにもかかわらず、そのような意図を秘し、猫を適切に飼養する等の虚偽の事実を告知してその旨誤信させたと主張し、本件猫を詐取したこと等を理由として、本件各猫の引渡し及び損害賠償を求めたところ、請求が一部認容され、敗訴部分を不服とする原告らが控訴した事案において、原告らの動物愛護のための活動は尊重され、法的にも保護されるべきものであること、被告の詐欺行為は、積極的かつ巧妙なものであって、およそ動物愛護の精神と相いれない悪質な行為であること等を総合すると、原告らに対する慰謝料としては各20万円が相当であるとし、控訴に基づき原判決を変更した事例。
2014.08.12
裁決等取消請求控訴事件(横浜市路上喫煙訴訟)
LEX/DB25504318/東京高等裁判所 平成26年6月26日 判決 (控訴審)/平成26年(行コ)第76号
被控訴人が、横浜市空き缶等及び吸殻等の散乱の防止等に関する条例11条の2第1項に基づく喫煙禁止地区内で喫煙をしたことで、同条例30条に基づき2000円の過料に処する本件処分を受け、市長に対する異議申立てをしたが棄却され、さらに県知事に対する審査請求を棄却する旨の本件裁決を受けたことから、本件処分及び本件裁決の取消しを求めた事案において、喫煙者が路上喫煙禁止地区と認識しなかったことについて過失がなかった場合には、注意喚起が十分にされていなかったことになるから、過料の制裁を科すことはできないとした上で、被控訴人には、路上喫煙禁止地区に侵入するに当たって路面表示により路上喫煙禁止場所であることを認識すべきであったのにこれを見落とした過失があるとして、本件処分を取り消した原判決を取り消した事例。
2014.08.12
各損害賠償請求控訴事件(西武鉄道事件)
LEX/DB25504317/東京高等裁判所 平成26年6月25日 判決 (差戻控訴審)/平成24年(ネ)第1055号
一審原告ら(上告人)が、一審被告(被上告人)S社がその有価証券報告書等に虚偽記載をし、また、S社株式を所有していたK社においてその虚偽記載に積極的に関与したため、S社株を取得した一審原告らにおいてS社株の上場廃止に伴って損害が生じたと主張して、S社、K社を吸収合併した一審被告P社、S社及びK社の代表取締役であった一審被告Tに対して、損害賠償を請求した事案の差戻控訴審において、虚偽記載と相当因果関係のある損害の額は、取得価額と処分価額の差額を基礎とし、経済情勢、市場動向、当該会社の業績等当該虚偽記載に起因しない市場価格の下落分を上記差額から控除して算定すべきであるとした上で、民事訴訟法248条を適用して相当な損害額を認定した事例。
2014.08.12
独占禁止法第24条に基づく差止請求事件(ソフトバンクBB・ソフトバンクテレコム VS NTT東西)
LEX/DB25504287/東京地方裁判所 平成26年6月19日 判決 (第一審)/平成23年(ワ)第32660号
戸建て向けFTTHサービス(光ファイバーよる家庭向けのデータ通信サービス)を提供するために被告らの設置する設備に接続しようとする原告らが、被告らに対し、接続の単位を1分岐単位としOSU等を原告らと被告らが共用する方式での接続を被告らが拒否したことは、電気通信事業法に基づく接続義務に違反し、独占禁止法19条に違反するなどとして、主位的に、上記単位での接続の申込を拒否しないこと等を、予備的に、被告らが原告らに対し上記単位での接続の申込を拒否しない義務等があることの確認を求めた事案で、被告らは、電気通信事業法33条2項の接続約款の認可又は同条10項の接続に関する協定の認可を受けていない以上、本件請求に係る接続に関する協定を締結するなどして、このような接続をさせることはできないなどとして、主位的請求を棄却し、予備的請求は確認の利益がないとして訴えを却下した事例。
2014.08.12
損害賠償請求事件(NHK外国語乱用訴訟)
LEX/DB25504252/名古屋地方裁判所 平成26年6月12日 判決 (第一審)/平成25年(ワ)第2733号
原告が、被告(日本放送協会)に対し、被告が放送で使用する言語について、外国語ないし外来語を濫用し、事実上その視聴を強制されていることから、憲法13条によって保障された人格権、憲法21条によって保障された表現の自由(情報受領権)、憲法13条によって保障された母国語による情報を自由に享受できるいわゆる言語権をそれぞれ侵害し、放送法81条1項3号に違反し、加えて、被告が原告からの質問に回答しないことが放送法27条に違反していると主張し、不法行為に基づき、慰謝料141万円の損害賠償を求めた事案において、原告は放送受信契約の締結を義務付けられているものの、その受信料の支払は放送受信の対価ではないし、原告は被告が放送する番組の視聴を事実上強制されているものともいえないとし、また、被告に課された放送番組の編集等に係る放送法81条等の規定は、被告に対する倫理的規定ないし公法上の義務を定めた規定にすぎず、原告等の受信契約者との間の私法上の権利義務関係を規定したものと解することはできないとして、原告の請求を棄却した事例。
2014.08.12
間接強制申立事件
LEX/DB25504250/長崎地方裁判所 平成26年6月4日 決定 (第一審)/平成26年(ヲ)第2001号
申立人(債権者・干拓地農業者、漁業者)らと被申立人(債務者・国)との間の諫早湾干拓地潮受堤防北部及び南部各排水門開放差止仮処分事件の保全命令の正本により、債権者らが、(1)債務者は、別紙4(開門方法)記載1ないし3の方法による各排水門の開門をしてはならない(ただし、調整池から諫早湾海域への排水を行う場合を除く。)、(2)間接強制の決定送達の日以降、債務者が(1)の義務に違反したときは、債務者は債権者らに対し、金2500億円を支払えとの間接強制を申し立てた事案において、債務者が、今後、本件開放義務を履行するために、本件対策工事の一部や仮設的な対策工事を行うなどして、別紙4(開門方法)記載1ないし3の方法による本件各排水門の開門をし、本件開放禁止義務に違反するおそれがあり、また、別件各確定判決に基づく本件開放義務の存在は、本件開放禁止義務を履行する上での、事実上の障害に当たるということはできないとした上で、債務者が本件開放禁止義務に違反して、別紙4(開門方法)記載1ないし3の開門(ケース1、ケース3-1、ケース3-2)のいずれかをした場合、債務者に対し、各開門方法に対応する主文掲記の各債権者らに対する1日当たり合計49万円の間接強制金の支払をあらかじめ命じるのが相当であるとした事例。
2014.08.05
傷害致死被告事件(寝屋川市女児虐待事件 裁判員裁判の求刑超え判決見直し)
LEX/DB25446523/最高裁判所第一小法廷 平成26年7月24日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第689号
被告人両名は、三女にそれぞれ継続的に暴行を加え、かつ、これを相互に認識しつつも制止することなく容認することなどにより共謀を遂げた上、当時の被告人両名の自宅で、被告人Aが、三女(当時1歳8か月)に対し、その顔面を含む頭部分を平手で1回強打して頭部分を床に打ち付けさせるなどの暴行を加えた結果、急性硬膜下血腫などの傷害を負わせ、三女を急性硬膜下血腫に基づく脳腫脹により死亡させた傷害致死の事案の上告審において、裁判員裁判の第一審判決は、児童虐待を防止するための近時の法改正からもうかがえる児童の生命等尊重の要求の高まりを含む社会情勢等の事情を本件の量刑に強く反映させ、これまでの量刑の傾向から踏み出し、公益の代表者である検察官の懲役10年という求刑を大幅に超える懲役15年という量刑をすることについて、具体的、説得的な根拠が示されているとはいい難く、甚だしく不当な量刑判断に至ったものであるとし、また、法定刑の中において選択の余地のある範囲内に収まっているというのみで合理的な理由なく第一審判決の量刑を是認した原判決は、甚だしく不当であって、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとして、原判決及び第一審判決を破棄し、第一審判決の認定した罪となるべき事実に法令を適用すると、被告人両名の各行為は、いずれも刑法60条、刑法205条に該当するので、各所定刑期の範囲内で、被告人Aは、原判決が是認する第一審判決の量刑事情の評価に基づき検討を行って懲役10年に処し、被告人Bは、実行行為に及んでいないことを踏まえ、犯罪行為にふさわしい刑を科すという観点から懲役8年に処した事例(補足意見がある)。
2014.08.05
不当利得返還請求事件
LEX/DB25446524/最高裁判所第一小法廷 平成26年7月24日 判決 (上告審)/平成24年(受)第2832号
被上告人が、貸金業者であるA株式会社及び同社を吸収合併した上告人との間で、指定された回数に応じて元本及び利息の合計支払額が毎月同額となるよう分割して返済する方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約を締結したところ、各弁済金のうち利息制限法1条1項(平成18年法律第115号による改正前のもの)所定の制限を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると過払金が発生しているなどと主張して、上告人に対し、不当利得返還請求権に基づき、過払金の返還を求めたところ、原審は、被上告人の請求を一部認容すべきものとしたため、上告人が上告した事案において、元利均等分割返済方式によって返済する旨の約定で金銭消費貸借契約が締結された場合において、借主から約定分割返済額を超過する額の支払がされたときには、当該超過額を将来発生する債務に充当する旨の当事者間の合意があるなど特段の事情のない限り、当該超過額は、その支払時点での残債務に充当され、将来発生する債務に充当されることはないと解するのが相当であるとし、また、借主から利息制限法1条1項の制限を超えて利息として支払われた部分は,当然にその支払時点での残債務に充当されるとするが、原審は、上記特段の事情の有無について審理判断しないまま、被上告人の支払のうち約定分割返済額を超過する部分や利息制限法1条1項の制限を超えて利息として支払われた部分について、将来発生する債務、すなわち本件各期日における元本だけでなく利息にも充当される旨判断したもので、この原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな違法があるとし、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れないとして、更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻しを命じた事例。
2014.08.05
業務上過失致死被告事件(明石市人工砂浜陥没事故)
LEX/DB25446525/最高裁判所第一小法廷 平成26年7月22日 決定 (第二次上告審)/平成24年(あ)第1391号
兵庫県明石市の大蔵海岸東地区に位置し、東側及び南側をコンクリート製ケーソンを並べて築造されたかぎ形突堤に接していた砂浜において、東側突堤のケーソン目地部に取り付けられたゴム製防砂板が破損し、その破損部から同目地部付近の砂層の砂が海中に吸い出されて砂層内に大規模な空洞が形成され、同空洞上部を小走りで移動していた被害者(当時4歳)が、その重みのため同空洞が突如崩壊して生じた陥没孔に落ち込んで生き埋めとなり、約5か月後に死亡した事故につき、第二次第一審判決は、被告人に本件事故発生の予見可能性があったとした上、国土交通省による抜本的な砂の吸出防止工事が終了するまでの間、工務第一課自ら、本件砂浜に人が立ち入ることができないよう、本件かぎ形突堤が階段護岸に接合する地点からその西方の水面を結ぶ線上にバリケード等を設置し、本件砂浜陥没の事実及びその危険性を表示するなどの安全措置を講じ、あるいは明石市又は東播海岸出張所に要請して前記安全措置を講じさせ、もって陥没等の発生により本件砂浜利用者等が死傷に至る事故の発生を未然に防止すべき業務上の注意義務があったにもかかわらず、その注意義務を怠り、南側突堤沿いの砂浜及び東側突堤沿い南端付近の砂浜に現出した陥没の周囲のみにバリケード等を設置する措置を講ずることで事足りると軽信し、漫然と前記安全措置を講ずることなく放置した過失により、本件事故を発生させて被害者を死亡するに至らしめた旨認定し、第二次控訴審判決はこれを是認したため、被告人が上告した事案において、被告人に本件砂浜に関する安全措置を講ずべき業務上の注意義務があるとした原判決は相当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2014.08.05
威力業務妨害被告事件(JR大阪駅構内でのビラ配布事件)
LEX/DB25504286/大阪地方裁判所 平成26年7月4日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第6191号等
いわゆる震災がれきの受入に反対する被告人が、駅構内において、被告人らによるビラ配布などの行為を制止するなどの業務に従事していた同駅の副駅長に対し、顔を近づけ、大声を出して威圧しながら執拗につきまとうなどし、もって威力を用いて人の業務を妨害したという公訴事実につき、被告人の行為が行われた状況を前提として、ビラ配布の制止業務の統率者の立場にある副駅長の業務の性質も考えると、被告人1人から顔を近づけられて大声を出され、短時間言い争いをしたからといって、その立場にある普通の人が心理的な圧迫感を覚え、円滑な業務の遂行が困難になるとまではいえないなど、副駅長の同業務に対する被告人の行為は、威力を用いて業務を妨害する行為とはいえないなどとして、同公訴事実については被告人を無罪とした事例。
2014.08.05
生活保護変更決定取消等請求控訴事件
LEX/DB25504279/仙台高等裁判所秋田支部 平成26年6月30日 判決 (控訴審)/平成25年(行コ)第1号
生活保護を受給している控訴人(原告)らが、平成16年3月までは老齢加算により加算された生活保護費の給付を受けていたところ、同年4月以降、厚生労働大臣が老齢加算を段階的に廃止する内容に生活保護基準を改定し、同月から生活保護費が減額されたことによって生存権が侵害されたなどとして、被控訴人(被告。秋田市・能代市)らに対し、居住地の各福祉事務所長が行った減額変更処分の取消しを求め、加えて、減額された老齢加算相当額の支払いの義務付けを求め、原審が、義務付請求は却下し、その余の請求を棄却した事案において、死亡した控訴人の請求に関する部分は終了したものとし、その余の控訴を棄却した事例。
2014.08.05
三井金属神岡鉱山じん肺損害賠償請求事件
LEX/DB25504278/岐阜地方裁判所 平成26年6月27日 判決 (第一審)/平成21年(ワ)第585号等
被告らの所有管理する鉱山において、被告ら又はその下請会社との間の雇用契約に基づき稼働していた従業員又はその遺族が、被告らの安全配慮義務違反によってじん肺に罹患したなどと主張し、被告らに対し、債務不履行に基づく損害賠償金の連帯支払いを求めた事案において、原告らの一部に生じた損害が被告らの安全配慮義務違反のいずれか又はこれが競合して発生したことは明らかであるものの、現実に発生した損害の一部又は全部がそのいずれによってもたらされたかを特定することができない場合に当たるので、民法719条1項後段の類推適用に基づき、原告らの一部の被った損害と、被告らの各安全配慮義務違反との間の因果関係が推定されるところ、被告らは、事故の寄与度の主張及び立証をしていないので、連帯して賠償責任を負うとして、一部の原告らについて、請求を一部認容した事例。