2023.04.11
死体遺棄被告事件
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LEX/DB25572744/最高裁判所第二小法廷 令和 5年 3月24日 判決 (上告審)/令和4年(あ)第196号
被告人は、当時の被告人方において、被告人が出産したえい児2名の死体を段ボール箱に入れた上、自室の棚上に放置し、死体を遺棄したとして、第1審判決は、死体遺棄罪の成立を認め、被告人を懲役8月、3年間執行猶予に処したが、これに対し被告人が控訴し、原判決は、被告人の行為が刑法190条にいう「遺棄」に当たるか否かに関し、死体について一定のこん包行為をした場合、その行為が外観からは死体を隠すものに見え得るとしても、習俗上の葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものであれば、その行為は、死者に対する一般的な宗教的感情や敬けん感情を害するものではなく、「遺棄」に当たらないとした上で、双子のえい児の死体を段ボール箱に入れて自室に置いた行為は、本件各えい児の死体を段ボール箱に二重に入れ、接着テープで封をするなどし、外観上、中に死体が入っていることが推測できない状態でこん包したもので、葬祭を行う準備、あるいは葬祭の一過程として行ったものではなく、本件各えい児の死体を隠匿する行為であって、他者がそれらの死体を発見することが困難な状況を作出したものといえるから、「遺棄」に当たるとし、第1審判決を破棄し、懲役3月、2年間の執行猶予を言い渡したため、被告人が上告をした事案で、被告人の行為は、死体を隠匿し、他者が死体を発見することが困難な状況を作出したものであるが、それが行われた場所、死体のこん包及び設置の方法等に照らすと、その態様自体がいまだ習俗上の埋葬等と相いれない処置とは認められないから、刑法190条にいう「遺棄」に当たらないとし、原判決は、「遺棄」についての解釈を誤り、本件作為が「遺棄」に当たるか否かの判断をするに当たり必要なその態様自体が習俗上の埋葬等と相いれない処置といえるものか否かという観点からの検討を欠いたため、重大な事実誤認をしたとし、本件作為について死体遺棄罪の成立を認めた原判決及び第1審判決は、いずれも判決に影響を及ぼすべき法令違反及び重大な事実誤認があるとして、原判決を破棄し、既に検察官による立証は尽くされているので、当審において自判し、被告人に無罪の言渡しをした事例。