2016.03.29
自動車運転過失致死被告事件(交通事故死亡判決 高裁で差し戻し)
LEX/DB25447849/最高裁判所第三小法廷 平成28年 3月18日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第1844号
被告人が、平成24年1月1日午後6時9分頃、普通乗用自動車(被告人車)を運転し、栃木県小山市内の信号機により交通整理の行われている丁字路交差点の南方道路(片側3車線)の第2車線を、交差点に向かい、先行する大型貨物自動車(A車)に追従して時速約30kmで北方へ直進するに当たり、当時、交差点内には、約5分前に発生した交通事故(先行事故)の当事者である被害者(当時20歳)が転倒横臥していたところ、交差点の対面信号が青色であるにもかかわらず、先行するA車が、それまでの時速約60kmから交差点手前で相当減速したのを認めたのであるから、A車の前方で異常事態が発生している可能性があることを予測し、第1車線に移ってA車を追い抜いた後、再び第2車線に移りA車の前方に進出するに際しては、進路前方左右を注視し、適宜速度を調節し、進路の安全を確認しながら進行すべき自動車運転上の注意義務を怠り、第1車線に移り時速約40kmに加速してA車を追い越した後、第2車線に移ろうとした際、進路前方左右を十分注視することなく、進路の安全確認が不十分のまま進行した過失により、被害者が倒れていることに気付かずに進行して、自車右前輪で同人の頭顔部を轢過し、頭蓋骨粉砕骨折を伴う脳破裂の傷害を負わせ死亡させた事故で、原判決は、被告人車が被害者を轢過した事実、及び、被告人が進路の前方左右を注視し、安全を確認すべき注意義務を怠った過失を認め、無罪とした第1審判決を破棄し、被告人に禁錮2年、執行猶予4年を言い渡したため、被告人が上告した事案において、原判決には、被告人車の走行態様に関し、防犯カメラの映像内容及び相反する2つの証言の存在を踏まえた審理を十分に尽くさなかった結果、事実を誤認した疑いがあり、これらが被告人の有罪無罪の判断に直結し、原判決に影響を及ぼすことは明らかであるとし、原判決を破棄し、高等裁判所へ差し戻した事例。