2016.12.27
殺人,銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25448338/最高裁判所第一小法廷 平成28年12月19日 判決 (上告審)/平成27年(あ)第1856号
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反の事実により、第1審裁判所は、第1回公判期日で、弁護人により、被告人が精神疾患に罹患していることを理由に公判手続の停止の申立てがされ、第2回公判期日以降、公判手続の停止に関する審理が行われ、第7回公判期日で、被告人が心神喪失の状態にあると認め、刑事訴訟法314条1項により、その状態の続いている間、公判手続を停止する旨決定した後、被告人の勾留の執行を停止する旨決定し、被告人は、措置入院を受け、被告人の入院治療はその後も続けられ、第1審判決まで約17年間にわたり公判手続が停止された審理経過を経て、第1審判決は、被告人について、非可逆的な慢性化した統合失調症の症状に脳萎縮による認知機能の障害が重なっており、訴訟能力はなく、その回復の見込みがないとし、公訴棄却の判決を言い渡したが、検察官が控訴し、原判決も、第1審判決と同様、被告人が訴訟能力が欠けており、その回復の見込みがないとしたいと判断した上で、公訴を取り消さない判断をした検察官の裁量を合理的でないと断定することはできず、検察官が公訴を取り消さないことが明らかに不合理であると認められる極限的な場合に当たるとはいえないとし、本件公訴を棄却した第1審判決は、刑事訴訟法338条4号の解釈適用を誤り、不法に公訴を棄却したもので、第1審判決を破棄し、第1審裁判所に差し戻しを言い渡したため、弁護人が上告した事案において、被告人に訴訟能力がないために公判手続が停止された後、訴訟能力の回復の見込みがなく公判手続の再開の可能性がないと判断される場合、裁判所は、刑事訴訟法338条4号に準じて、判決で公訴を棄却することができると判断し、これと異なる解釈に基づいて、公訴棄却を言い渡した第1審判決を破棄した原判決には、刑事訴訟法338条4号の解釈適用を誤った違法があり、この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるとして、原判決を破棄し、本件公訴を棄却した第1審判決は正当であり,第1審判決には不法に公訴を棄却した誤りがある旨主張する検察官の控訴も理由がないとし、控訴を棄却した事例(補足意見がある)。





















