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2016.08.16
(東住吉事件執行停止異議申立決定) 
LEX/DB25543253/大阪高等裁判所 平成27年10月26日 決定 (異議審)/平成27年(け)第35号
再審請求人両名からの各再審請求について大阪地方裁判所がした各再審開始決定に対する各即時抗告申立事件に関して、平成27年10月23日大阪高等裁判所がした各刑の執行停止決定に対し、検察官からそれぞれ異議の申立てがあった事案で、原決定の判断手法は、再審の裁判において無罪判決が言い渡される蓋然性に加え、特別抗告審での抗告理由の制限や、身柄保全の必要性、早期釈放の必要性等をも総合考慮した相当なものであり、各事情の評価にも誤りはなく、本件について各刑の執行を停止しないことが正義に反するとの判断も、即時抗告審を自ら担当した原裁判所による合理的な裁量の範囲内として、首肯することができ、さらに、原決定が、各刑の執行を停止するに当たり、各請求人について、指定された住居に居住し、住居変更時には裁判所の許可を受け、海外渡航はせず、逃亡や証拠隠滅はしないことを指定条件としたことも相当であるとして、検察官の各異議の申立てをいずれも棄却した事例。
2016.08.16
(東住吉事件刑の停止決定) 
LEX/DB25543252/大阪高等裁判所 平成27年10月23日 決定 (抗告審)/平成24年(く)第144号
受刑中両名からの各再審請求について、平成24年3月7日大阪地方裁判所がした各再審開始決定に対する各即時抗告申立事件につき、請求人B主任弁護人及び請求人C主任弁護人から、請求人両名についてそれぞれ刑の執行停止を求める申出があった事案において、刑事訴訟法435条6号該当事由があるとした地方裁判所の再審開始決定を高等裁判所が更に事実取調べをした上で維持しており、請求人両名に対して無罪を言い渡すべき蓋然性がより高くなっているといえること、高等裁判所の即時抗告棄却決定に対する不服申立の方法は特別抗告であって、抗告理由が限られていること、請求人らの逮捕以来の身柄拘束期間が約20年と非常に長期に及んでいることに照らすと、請求人両名に対する確定判決に基づく刑の執行を今後も継続することが正義に反する場合に当たるとして、請求人両名に刑の執行停止を決定した事例。
2016.08.16
(東住吉事件再審開始決定に対する即時抗告審) 
LEX/DB25543255/大阪高等裁判所 平成27年10月23日 決定 (抗告審(即時抗告))/平成24年(く)第144号
各現住建造物放火、殺人、詐欺未遂被告事件につき大阪地方裁判所が請求人Z1に対し平成11年3月30日、請求人Z2に対し同年5月18日、それぞれ言い渡した有罪の確定判決に対する請求人両名からの各再審請求について、平成24年3月7日大阪地方裁判所がした各再審開始決定に対し、検察官が各即時抗告を申し立てた事案において、新証拠が確定審に提出されていれば、各確定判決においてなされたような事実認定には到達しなかったと考えられ、各確定判決の有罪認定には合理的な疑いが生じているというべきであり、原決定の検討判断に不十分な点はあるものの、請求人両名に対し、無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとき(刑事訴訟法435条6号)に該当するとして、請求人両名について、それぞれ再審を開始した原決定の判断は、当審の事実取調べの結果により、正当として是認できることが明らかになったといえるとし、本件各即時抗告をいずれも棄却した事例。
2016.08.09
覚せい剤取締法違反被告事件 
LEX/DB25448089/最高裁判所第一小法廷 平成28年 7月27日 決定 (上告審)/平成28年(あ)第456号
本件覚せい剤取締法違反の被告人の弁護人が、原判決の事実誤認、量刑不当を主張し上告した事案において、刑法等の一部を改正する法律(平成25年法律第49号)による刑の一部の執行猶予に関する各規定(刑法27条の2ないし刑法27条の7)の新設は、被告人の再犯防止と改善更生を図るため、宣告刑の一部についてその執行を猶予するという新たな選択肢を裁判所に与える趣旨と解され、特定の犯罪に対して科される刑の種類又は量を変更するものではなく、刑の一部の執行猶予に関する前記各規定の新設は、刑事訴訟法411条5号にいう「刑の変更」に当たらないとして、上告を棄却した事例。
2016.08.09
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反被告事件(松橋事件再審開始決定) 
「新・判例解説Watch」H28.9下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25543182/熊本地方裁判所 平成28年 6月30日 決定 (再審請求審)/平成24年(た)第3号 等
昭和61年12月22日熊本地方裁判所が言い渡した殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反被告事件の有罪確定判決について、被告人の法定代理人成年後見人である弁護士P1(請求人)及び被告人の長男であるP2(請求人)が、上記有罪の言渡しを受けた事件のうち殺人被告事件について無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したと主張して、それぞれ再審請求をした事案において、確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じたものと認められるから、本件再審請求は、刑事訴訟法435条6号所定の有罪の言渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したときに該当するとし、本件再審請求は理由があることになるが、確定判決は、P3に対し、本件事件と別事件とを併合罪として、1個の刑を言い渡しているから、その全部について再審開始の決定をすべきであると解するので、刑事訴訟法448条1項により本件について再審を開始することとした事例。
2016.08.09
(恵庭OL殺人事件特別抗告審) 
LEX/DB25543233/最高裁判所第一小法廷 平成28年 6月13日 決定 (特別抗告審)/平成27年(し)第422号
殺人、死体損壊被告事件(申立人が、北海道千歳市、恵庭市又はそれらの周辺で、被害女性(当時24歳)に対し、殺意をもって、その頸部を何らかの方法で圧迫し、同女を窒息死させて殺害し、路上で、同女の死体に灯油をかけた上、それに火を放って焼損し、死体を損壊したという)について、札幌高高等裁判所がした即時抗告棄却決定に対し、特別抗告の申立てがあった事案(特別抗告審)において、申立人の抗告趣意は、単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法433条の抗告理由に当たらないとし、抗告を棄却した事例。
2016.08.09
保証債務履行請求控訴事件(融資後に反社会的勢力と判明 信用保証協会に保証命令) 
LEX/DB25543072/東京高等裁判所 平成28年 5月26日 判決 (差戻控訴審)/平成28年(ネ)第464号
控訴人(H信用金庫)が、A社及びB社に貸し付けた金銭債権について信用保証をした被控訴人(K協会)に対し、主位的請求として保証契約に基づき、貸金残元金、未払利息及び未払遅延損害金等の支払を求め、予備的に被控訴人において反社会的勢力を主債務者とする保証契約を締結しないように注意すべき義務を怠ったことにより、控訴人は回収不能となった貸金相当額について不法行為に基づく損害賠償を請求した事案の控訴審において、本件各保証の締結当時において、反社会的勢力対応部署を整備して一元的な管理態勢を構築すること、融資に伴う審査等の通常業務の中で、主債務者及びその関係者について反社会的勢力でないかどうかを調査、確認すること等が金融機関において求められていたといえるから、これらの方法を用いて反社会的勢力か否かの調査を行うことは一般的に行われている調査方法に含まれていたとして、原判決を取り消し、控訴人の主位的請求を認容した事例。
2016.08.09
請負代金等請求本訴事件(本訴事件)、違約金請求反訴事件(反訴事件)
(F15戦闘機契約解除を巡り 違約金支払い命令) 
LEX/DB25543078/東京地方裁判所 平成28年 3月18日 判決 (第一審)/平成23年(ワ)第24885号 等
原告(T社)が、被告(国)に対し、F-15戦闘機を母体とする偵察機を用いた偵察システムを構成する装置等を調達することを内容とする請負契約に基づきDBRP(光学・赤外線偵察ポッド)を製造して被告に納入する義務が被告の帰責事由により履行不能になったと主張して、危険負担の債権者主義に基づき、DBRPの代金の支払を求めた(本訴請求)事案と、被告が、原告に対し、上記偵察システム等契約は、原告が同意内容どおりのDBRPを製造しなかったため、原告の帰責事由によりその全部が履行不能により解除されたと主張して、違約金の支払を求めた(反訴請求)事案において、DBRPを被告に納入する義務が履行不能になったことにつき、原告に帰責事由があり、当該債務不履行を理由に、上記偵察システム等契約は解除されたとして、本訴請求を棄却し、反訴請求を認容した事例。
2016.08.02
売掛金請求控訴事件 
LEX/DB25448029/知的財産高等裁判所 平成28年 6月23日 判決 (控訴審)/平成28年(ネ)第10026号
カメラマンである控訴人が、被控訴人に対し、控訴人の著作物である本件各写真を被控訴人が控訴人の許諾を得ることなく電子データ化し、これを被控訴人が管理運営するホームページに掲載したなどとして、著作権及び著作者人格権の不法行為による損害賠償を請求した事案において、ホームページ掲載行為につき控訴人による黙示の許諾があったとは認められないとして、控訴人の請求を棄却した原判決を変更した事例。
2016.08.02
売掛金請求事件
(上記平成28年6月23日知的財産高等裁判所(平成28年(ネ)第10026号)の原審) 
LEX/DB25543177/水戸地方裁判所龍ケ崎支部 平成28年 2月 1日 判決 (第一審)/平成27年(ワ)第24号
カメラマンである原告が、被告との間で、被告が発行する冊子に掲載するための写真撮影を行う契約を締結し、撮影した写真を納品したが、〔1〕被告が、原告の許可を得ずに上記冊子をいわゆるPDFファイルにして被告が運営するホームページに掲載したこと、〔2〕仮に原告が許可していたとしても、原告は、被告が上記撮影契約は有償であると偽った詐欺を理由に同契約を取り消したにもかかわらず、その後も掲載を続けたことにより、著作権及び著作者人格権を侵害され、著作権の侵害により314万2800円の、著作者人格権の侵害により500万円の損害を受けたとして、いずれも不法行為に基づき、合計814万2800円及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案において、本件掲載行為が、原告の著作権及び著作者人格権を侵害したとはいえないとして、原告の請求を棄却した事例。
2016.08.02
国家賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」H28.8下旬頃 解説記事の掲載を予定しています
LEX/DB25543007/和歌山地方裁判所 平成28年 3月25日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第229号
原告が、被告が設置・管理する太地町立くじらの博物館に来館したが、捕鯨反対者を本件博物館から排除する目的で、原告が外国人であることを理由に本件博物館への入館を拒否されたところ、このような入館拒否は、憲法14条、憲法19条及び憲法21条、市民的及び政治的権利に関する国際規約26条等に反し、上記入館拒否によって精神的苦痛などを受けたと主張して、被告に対し、国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を求めた事案において、さまざまな意見、知識、情報に接する自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び両親の自由の不可侵を定めた憲法19条の規定や、表現の自由を保障した憲法21条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれると示し、本館入館拒否は、本件博物館条例の要件を欠く違法なものであり、憲法19条、憲法21条の趣旨、目的から導かれる原告の情報摂取行為を妨げるものである等として、原告の請求を一部認容した事例。
2016.08.02
損害賠償請求控訴、同附帯控訴事件 
LEX/DB25543016/高松高等裁判所 平成28年 4月25日 判決 (控訴審)/平成27年(ネ)第144号 等
1審被告在特会の会員らである1審被告らが、1審原告らを抗議対象者とする街頭宣伝活動を行った際、1審原告組合の事務所内に住居侵入の上、1審原告bらの執務する事務所内において、拡声器を用いて大音量による示威活動を行い、1審被告fにおいてその映像をインターネットを通じて公開したことなどについて、1審原告組合が、上記示威活動等やその映像をインターネットで公開する行為は、業務を妨害し、名誉を毀損する不法行為に該当すると主張して、1審被告在特会に対しては民法715条1項に基づき、1審被告dらに対しては民法709条、民法719条1項に基づき、損害賠償を求めた等の事案において、1審原告bは、本件各示威行動等やその映像をインターネット上で公開するという不法行為により、私生活の平穏・人格権を侵害されるとともにその名誉を毀損され、外傷後ストレス障害に罹患した等として、1審原告らの控訴に基づき、原判決を変更した事例。
2016.08.02
犯人隠避被告事件(犯人隠避罪 逆転無罪) 
LEX/DB25542948/仙台高等裁判所 平成28年 5月10日 判決 (控訴審)/平成27年(う)第21号
被告人が、Bが犯した道路交通法違反(酒気帯び運転、事故不申告)事件につき、これが罰金以上の刑に当たる罪であることを知りながら、同人にその刑責を免れさせる目的で、同日午前2時5分ころ、宮城県加美警察署司法警察員巡査Cに対し、同事件の犯人は自己である旨虚偽の申立てをし、前記Bを隠避させたとして起訴された事案の控訴審において、Bが本件運転者であること、したがって、被告人が自己が犯人である旨虚偽の申立てをしたことについては、合理的な疑いが残るといわざるを得ないとして、原判決を破棄し、被告人に対して無罪を言い渡した事例。
2016.08.02
特定秘密の保護に関する法律無効確認等請求控訴事件
(秘密保護法訴訟 東京高裁 再び敗訴) 
LEX/DB25542979/東京高等裁判所 平成28年 4月26日 判決 (控訴審)/平成27年(行コ)第445号
フリージャーナリスト、フリーライター等である控訴人らが、特定秘密の保護に関する法律が違憲無効な法律であり、特定秘密保護法の立法及び施行により平穏に生活する法的利益が侵害されて精神的苦痛を被ったなどと主張して、特定秘密保護法が無効であることの確認を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づいて、損害賠償を求めた事案の控訴審において、特定秘密保護法の立法及び施行が取材行為を従前よりも制約していると認めることはできないから、仮に控訴人らの取材活動について、その取材を受ける側の対応に控訴人らが主張するような変化が生じているとしても、特定秘密保護法を正しく理解しないままの対応であるか、特定秘密保護法に藉口しての対応等であって、特定秘密保護法の立法及び施行が控訴人らの取材活動を従前よりも制約していると認めることはできないといわなければならないとして、控訴をいずれも棄却した事例。
2016.07.26
鳴門市競艇従事員共済会への補助金違法支出損害賠償等請求事件
LEX/DB25448064/最高裁判所第二小法廷 平成28年 7月15日 判決 (上告審)/平成25年(行ヒ)第533号
鳴門競艇従事員共済会から鳴門競艇臨時従事員に支給される離職せん別金に充てるため、鳴門市が平成22年7月に共済会に対して補助金を交付したことが、給与条例主義を定める地方公営企業法38条4項に反する違法、無効な財務会計上の行為であるなどとして、市の住民である上告人らが、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被上告人市長を相手に、当時の市長の職にあった者に対する損害賠償請求をすることを求めるとともに、被上告人市公営企業管理者企業局長を相手に、当時の市の企業局長及び企業局次長の各職にあった者らに対する損害賠償請求、当時の市企業局競艇企画管理課長の職にあった者に対する賠償命令並びに共済会に対する不当利得返還請求をすることを、それぞれ求めた住民訴訟で、原判決は、離職せん別金が退職金としての性格を有し、本件補助金の交付が実質的に臨時従事員に対する退職金支給としての性格を有していることは否定できないが、臨時従事員の就労の実態が常勤職員に準じる継続的なものであり、退職手当を受領するだけの実質が存在すること等からすれば、本件補助金の交付が給与法定主義の趣旨に反し、これを潜脱するものとはいえず、本件補助金の交付に地方自治法232条の2の定める公益上の必要性があるとの判断が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものであるとは認められないから、本件補助金の交付が違法であるということはできないとし、上告人らの請求を棄却したため、上告人らが上告した事案において、職権による検討で、原判決のうち請求を棄却すべきものとした部分には明らかな法令の違反があるとし、当該部分につき、原判決を破棄し、第1審判決を取消し、上記請求に係る訴えを却下し、A、B、C及びDの各損害賠償責任の有無並びに共済会の不当利得返還債務の有無につき更に審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととした事例。
2016.07.26
鳴門市競艇従事員共済会への補助金違法支出損害賠償等請求事件
LEX/DB25448065/最高裁判所第二小法廷 平成28年 7月15日 判決 (上告審)/平成26年(行ヒ)第472号
鳴門競艇従事員共済会から鳴門競艇臨時従事員に支給される離職せん別金に充てるため、鳴門市が平成23年11月から同24年6月にかけて共済会に対して補助金を交付したことが、給与条例主義を定める地方公営企業法38条4項に反する違法、無効な財務会計上の行為であるなどとして、市の住民である上告人らが、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、被上告人市長を相手に、当時の市長の職にあった者に対する損害賠償請求をすることを求めるとともに、被上告人市公営企業管理者企業局長を相手に、当時の市の企業局長の職にあった者に対する損害賠償請求及び共済会に対する不当利得返還請求をすることを、それぞれ求めた住民訴訟で、原審は、「鳴門市モーターボート競走事業に従事する臨時従事員の給与の種類及び基準に関する条例」の制定経過も踏まえた上で、同条例附則2項及び改正条例附則2項の定めを解釈すれば、平成25年3月26日までに支払われた臨時従事員の退職手当について、鳴門市モーターボート競走事業に従事する臨時従事員の給与の種類及び基準に関する条例12条が遡及的に適用されることは明らかであり、離職せん別金は、市から臨時従事員に直接支払われるものではないが、上記条例の立法趣旨が離職せん別金の支給につき条例上の根拠を明確にする点にあることは、上記条例の制定経過からみて明らかであり、本件補助金を介して支払われた実質的な退職手当としての性格を有する離職せん別金についても、同条は適用され、また、上記条例は、地方公営企業法38条4項にいう「給与の種類及び基準」を定めたものということができるとして、本件補助金を介して支払われた離職せん別金には遡って同項にいう条例の定めがあったことになり、本件補助金の交付は適法であるとし、上告人らの請求(Aによる予算の調製を違法な財務会計上の行為として同人に対し損害賠償請求をすることを求めた請求を除く。)をいずれも棄却したため、上告人らが上告した事案において、原審の判断には明らかな法令の違反があるとし、原判決中、上告人らの請求を棄却した部分は破棄し、A及びEの各損害賠償責任の有無並びに共済会の不当利得返還債務の有無につき審理を尽くさせるため、上記部分につき本件を原審に差し戻すこととした事例。
2016.07.26
業務上過失致死傷被告事件(明石歩道橋事故 元副署長の免訴確定へ)
LEX/DB25448062/最高裁判所第三小法廷 平成28年 7月12日 決定 (上告審)/平成26年(あ)第747号
被告人(当時兵庫県明石警察署副署長)は、明石市に所在する歩道橋上で平成13年7月21日に発生して死者11名及び負傷者183名を出した事故に係る業務上過失致死傷被疑事件について、不起訴処分を受けたが、検察審査会において起訴相当の議決を受け、公訴提起をされ、第1審判決は、公訴時効が完成しているから、被告人に対し、免訴を言い渡したため、指定弁護士が控訴し、控訴審判決も、第1審判決は正当であるとし控訴を棄却したため、検察官の職務を行う指定弁護人が、上告した事案において、本件事故は、当時明石警察署地域官であったB地域官が平成14年12月26日に業務上過失致死傷罪で起訴され、平成22年6月18日に同人に対する有罪判決が確定しているため、被告人とB地域官は刑事訴訟法254条2項にいう「共犯」に該当し、被告人に対する関係でも公訴時効が停止していると指定弁護人が主張したが、最高裁は、被告人につき、B地域官との業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立する余地はないとし、原判決が被告人を免訴とした第1審判決を維持したことは正当であるとして、上告を棄却した事例。
2016.07.26
住居侵入,逮捕監禁,殺人,現住建造物等放火,有印私文書偽造・同行使,ストーカー行為等の規制等に関する法律違反被告事件(山形東京連続放火殺人事件)
LEX/DB25448054/最高裁判所第二小法廷 平成28年 6月13日 判決 (上告審)/平成26年(あ)第1655号
被告人と同性愛の関係にあった男性Aが、山形市のAの実家に帰り、身体に不具合のある両親の世話と家業を手伝っていたところ、被告人が、Aをその実家から連れ戻す目的で、Aの実家の建物への放火を計画し、同建物内にAの両親がいるかもしれず、同建物に放火すればAの両親が死亡するかもしれないことを認識しながら、同建物付近に灯油をまいた上放火し、同建物を全焼させるとともに、Aの両親を焼死させた事案(山形事件)、また、被告人が、その後同性愛の関係にあった別の男性Bの居所を知るため、同人に対する執ようなストーカー行為等を繰り返したが知るに至らず、居所を教えようとしないBの母親Cに対する逆恨みから同人を殺害し、その犯行を隠蔽するため同人方(集合住宅の一室)に放火することを計画し、被告人の妻と共謀の上、C方に侵入し、帰宅したCの両手足を結束バンドで緊縛するなどして約4時間半にわたって逮捕監禁した後、同人の身体に大型のたらいを覆い被せ、燃焼した炭をその中に入れ、同人を一酸化炭素中毒により死亡させ、その後Bが現に住居に使用していた同居宅の床面に灯油をまいた上で放火し、同居宅を全焼させた事案(東京事件)の上告審において、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、これを是認せざるを得ないとし、上告を棄却した事例。
2016.07.19
清算金請求事件(民事再生手続開始後の3者間相殺無効) 
LEX/DB25448048/最高裁判所第二小法廷 平成28年 7月 8日 判決 (上告審)/平成26年(受)第865号
再生手続開始の決定を受けた上告人(原告・控訴人。証券会社)が、被上告人(被告・被控訴人。信託銀行)との間で基本契約を締結して行っていた通貨オプション取引等が平成20年9月15日に終了したとして、上記基本契約に基づき,清算金11億0811万1192円及び約定遅延損害金の支払を求め、被上告人は、上記再生手続開始の決定後、自らと完全親会社を同じくする他の株式会社が上告人に対して有する債権(再生債権)を自働債権とし、上告人が被上告人に対して有する上記清算金の支払請求権を受働債権として上記基本契約に基づく相殺をしたことにより、上記清算金の支払請求権は消滅したなどと主張し、原審が本件清算金債権は本件相殺によりその全額が消滅したと認め、原告の請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件相殺が民事再生法92条により許容されるとした原審の判断には法令違反があるとして、原判決を変更し、上告人の請求は、被上告人に対し、清算金4億3150万8744円並びに期限前終了日である平成20年9月15日から同年10月1日までの確定約定遅延損害金16万6841円及び上記清算金に対する同月2日から支払済みの前日まで2%を365で除した割合を日利とする各日複利の割合による約定遅延損害金の支払を求める限度で認容し、その余の請求は棄却した事例(補足意見がある)。
2016.07.19
遺族補償給付等不支給処分取消請求事件(歓送迎会後に残業へ 帰社途中に事故で労災認定) 
LEX/DB25448049/最高裁判所第二小法廷 平成28年 7月 8日 判決 (上告審)/平成26年(行ヒ)第494号
A社に勤務していた労働者であるBが交通事故により死亡したことに関し、上告人(亡Bの妻)が、労働者災害補償保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の支給を請求したところ、行橋労働基準監督署長から、Bの死亡は業務上の事由によるものに当たらないとして、これらを支給しない旨の決定を受けたため、その取消しを求め、原審は、本件歓送迎会が、中国人研修生との親睦を深めることを目的とし、A社の従業員有志によって開催された私的な会合であり、Bがこれに中途から参加したことや歓送迎会に付随する送迎のためにBが任意に行った運転行為が事業主であるA社の支配下にある状態でされたものとは認められないとして、本件事故によるBの死亡は、業務上の事由によるものとはいえないと判断したため、上告人が上告した事案において、本件事故によるBの死亡は、労働者災害補償保険法1条、労働者災害補償保険法12条の8第2項、労働基準法79条、労働基準法80条所定の業務上の事由による災害に当たるというべきであるとし、原審の判断には法令の違反があるとして原判決を破棄し、遺族補償給付及び葬祭料の不支給決定は違法であり、その取消しを求めた上告人の請求は認容されるべきものであるとし、これを棄却した第1審判決を取消し、遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の決定を取り消した事例。