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2024.01.30
株式交換無効等、株式交換無効請求控訴事件(旧アルプス電気・アルパイン間の株式交換無効等請求事件) 
LEX/DB25596584/東京高等裁判所 令和 5年 9月28日 判決 (控訴審)/令和4年(ネ)第2300号 
(1)被控訴人アルパインの株主である控訴人らが、被控訴人アルパインを株式交換完全子会社とし、被控訴人旧アルプス電気を株式交換完全親会社とする本件株式交換契約に基づく本件株式交換について、本件株式交換契約の締結を承認した被控訴人アルパインの株主総会決議(本件承認決議)に無効原因が存在するなどと主張して、本件株式交換を無効とすることを求めるとともに、控訴人オアシスらが、(2)本件株式交換を無効とする判決の確定により、被控訴人アルパインが控訴人オアシスらの株式買取請求に基づき控訴人オアシスらから買い取った被控訴人アルパインの株式の価値相当額から、被控訴人アルパインが支払った公正な価格として認める額(会社法786条5項)を控除した金額の損失を被るなどと主張して、被控訴人アルパインに対し、不当利益に基づき、〔1〕控訴人オアシスインベストメンツが380億4064万6683円等の支払を、〔2〕控訴人オアシスジャパンが21億2600万5278円等の支払をそれぞれ求め、(3)被控訴人らの各代表取締役が本件株式交換について任務懈怠又は不法行為を行ったなどと主張して、被控訴人らに対し、共同不法行為に基づき、〔1〕控訴人オアシスインベストメンツが380億4064万6683円等の連帯支払を、〔2〕控訴人オアシスジャパンが21億2600万5278円等の連帯支払をそれぞれ求め、原審が控訴人らの請求をいずれも棄却したことに対し、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの請求はいずれも理由がないと判断し、原判決は相当であるとして、本件各控訴を棄却した事例。
2024.01.23
旅券不発給処分無効確認等請求事件 
LEX/DB25596481/福岡地方裁判所 令和 5年12月 6日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第25号 
原告は、日本国籍を有する父の子として日本において出生し、日本国籍を取得したが、2004年(平成16年)頃、自己の志望により米国の国籍を取得し、原告は、平成29年12月、外務大臣に対し、日本の旅券発給申請をしたが、外務大臣は、平成30年8月、国籍法11条1項により日本国籍を喪失していることを理由として、原告の上記旅券発給申請につき旅券不発給とする処分(本件処分)をした。本件は、原告が、国籍法11条1項は憲法の規定(憲法10条、22条2項及び13条、98条2項、14条1項)に反し無効であるとして、被告(国)に対し、本件処分の無効の確認請求、原告が日本国籍を有することの確認請求、原告が精神的苦痛を受けたことを理由として、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料3億円の一部請求として、慰謝料及び弁護士費用合計22万円等の支払請求をした事案で、国籍法11条1項が、憲法10条、13条及び22条2項並びに14条1項に違反せず、国籍法11条1項を改正しなかった立法不作為をもって、国家賠償法1条1項の適用上違法であるとは認められないとして、原告の請求をいずれも棄却した事例。
2024.01.23
傷害致死被告事件 
LEX/DB25506588/東京地方裁判所 令和 5年 3月 1日 判決 (第一審)/令和3年(合わ)第99号 
被告人が、平成25年2月11日深夜、東京都内の集合住宅の自室で、テレビを見ていたが、隣室に居住するP1が自室のドアを激しくたたいたので、被告人がドアを開けたところ、P1が被告人の胸ぐら辺りをつかむなどして両者は争いになり、被告人は自分の怒りを抑えきれなくなり、被告人は、同日午前2時頃、2階廊下において、その場に仰向けになったP1(当時63歳)の上に馬乗りになり、同人の胸ぐらをつかんだ両手を上下に動かし、その両手を同人の胸ぐらに何度か押し当て、さらに、その脇腹などを拳で複数回殴るなどの暴行を加え、よって、同人に前胸部打撲による多発性肋骨骨折及び上腹部打撲による胆嚢の肝臓からの剥離の傷害を負わせ、同日午後1時43分頃、東京都墨田区の病院で、同人を前記傷害に基づく外傷性・出血性ショックにより死亡させたとして、傷害致死の罪で懲役6年を求刑された事案で、本件犯行当時心神耗弱の状態にあったとの疑いが残るが、心神喪失の状態にはなかったと認められるなどとして、懲役3年、5年間その刑の執行を猶予し、被告人には、社会内で適切な治療を受けながら更生する機会を与えることが相当であると判断した事例(裁判員裁判)。
2024.01.16
年金減額改定決定取消、年金減額改定決定取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和6年3月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573213/最高裁判所第二小法廷 令和 5年12月15日 判決 (上告審)/令和4年(行ツ)第275号 
国民年金法上の老齢基礎年金及び厚生年金保険法上の老齢厚生年金の一方又は双方の受給権者である上告人(原告・控訴人)らが、厚生労働大臣から、各自の老齢年金の額を改定する旨の処分を受けたことから、被上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、その取消し等を求めた事案の上告審において、国民年金法等の一部を改正する法律等の一部を改正する法律(平成24年法律第99号)1条の規定のうち、国民年金法による年金たる給付等の額の計算に関する経過措置等について定める部分は、著しく合理性を欠き、明らかに裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものといえず、年金受給権に対する不合理な制約であるともいえないとし、憲法25条、憲法29条に違反しないとして、本件上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2024.01.16
強盗殺人、死体遺棄被告事件 
LEX/DB25506587/大阪高等裁判所 令和 5年 5月23日 判決 (控訴審)/令和4年(う)第323号 
被告人が、〔1〕被害者P2(当時41歳)を殺害し、同人が代表取締役を務める株式会社P3に対する280万円の債務の返済を免れようと考え、令和2年1月22日午後7時51分頃から午後8時12分頃までの間、大阪市所在の同社において、殺意をもって包丁様の刃物を同人のけい部等に多数回突き刺すなどし、けい動脈切破により失血死させて殺害し、前記債務の返済を免れて財産上不法の利益を得(原判示第1)、〔2〕同月24日、兵庫県西宮市の竹林内にその死体を投棄して遺棄した(原判示第2)として、原判決は、弁論再開後に検察官が追加した本件債務の貸主をP3とする予備的訴因(主位的訴因は、貸主を被害者本人とするもの)に基づき、被告人が、P3に対する280万円の債務を免れる目的で、前記日時・場所・態様により被害者を殺害し、その死体を遺棄したと認定し、被告人を無期懲役に処したため、被告人が控訴した事案で、本件債務のうち230万円分について、被告人にその債務を免れる目的があったと認めた原判決の認定・判断は正当であり、また、被害者P2の妻である証人P4が本件契約を知らず、その具体的内容を把握している者がいなかったこと、同契約については、被害者の殺害によりその債務の履行請求が著しく困難になったことから、被告人が、同契約に係る債務の免除等と同程度の現実的利益を得たと認めた原判決の判断も正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2024.01.09
過失運転致傷被告事件 
LEX/DB25596170/名古屋高等裁判所 令和 5年 9月 5日 判決 (第二次控訴審)/令和5年(う)第74号 
被告人が過失運転致傷の罪で起訴され、第1審が、事故態様について、本件交差点の東側に設置されている横断歩道を進行した被害者自転車が対向する歩行者を避けて本件交差点先の本件車道に進出し、本件車道左端を走行し、脇の雑草を避けようとしてハンドルを右に切ったところ、被害者自転車の右側と被告人車両の左側が接触したと認定したうえ、検察官が過失の前提として主張する回避可能性を認めるには合理的な疑いが残るから、被告人の過失は認められないとして無罪を言い渡したところ、検察官が控訴し、控訴審が、裁判所としては、検察官に対し、注意義務を課す根拠となる具体的事実、注意義務の内容、過失の態様を確認し、どの地点及び時点におけるどのような過失を問題としているのかを明確にするよう釈明を求め、過失内容を一義的なものとすべきであったのに、こうした措置を採らずに結論を導いた原審判決には訴訟手続の法令違反があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであるとして、原審判決を破棄し、事件を当裁判所に差し戻した事案で、差し戻し後の第1審では、結果回避可能性があったとするには合理的な疑いが残り、また、予備的訴因については予見可能性がなく、いずれも過失があったとはいえないとして、被告人には無罪を言い渡されたが、控訴審では、被告人が前方を注視さえしていれば、被害者自転車が対面歩行者集団を避けるため車道上に進入したことに気付くと同時に、被害者自転車がそのまま車道を走行するであろうことを認識でき、本件車道の狭さから、被害者自転車を安全に追い抜くことはできず、そのまま走行すれば被害者自転車と接触し、あるいは衝突するおそれがあることも予見できたとして、原判決を破棄し、被告人を禁錮6月(執行猶予3年間)に処した事例。
2024.01.04
不当利得返還請求事件 
LEX/DB25573204/最高裁判所第三小法廷 令和 5年12月12日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第317号 
上告人が、市会議員であった被上告人に対し、本件有罪判決が確定したため、被上告人の当選は公職選挙法251条の規定により無効となり、被上告人は遡って市会議員の職を失ったなどとして、本件議員報酬等相当額及び本件政務活動費相当額の不当利得の返還等を求めたところ、原審は、上告人は本件会派の唯一の所属議員であった被上告人に対し本件政務活動費相当額の不当利得返還請求権を有するなどとした上で、被上告人の相殺の抗弁を一部認めて、上告人の不当利得返還請求を相殺後の残額の限度で認容したため、上告人が上告した事案で、上記市会議員の職を失った当選人は、上告人に対し、市会議員として行った活動に関し、不当利得返還請求権を有することはないとし、被上告人は、上告人に対し、相殺の抗弁に係る不当利得返還請求権を有するものということはできないとし、相殺の抗弁は全部認められないところ、これを一部認めた原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を変更した事例(反対意見及び補足意見がある)。
2024.01.04
暴行、建造物損壊、器物損壊被告事件 
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和6年2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596404/神戸地方裁判所 令和 5年11月27日 判決 (第一審)/令和4年(わ)第843号
被告人は、令和4年9月20日午前3時10分頃から同日午前3時16分頃までの間に、神戸市の被害者V1方で、被害者V1に対し、その左頬を手拳で殴打する暴行を加え(判示第1)、同日午前3時16分頃から同日午前3時22分頃までの間に、3階廊下で、同所に設置されたV2所有の消火器を噴射し、V2が所有する本件建物の3階廊下、壁面及び玄関扉等に消火剤を付着させて汚損(損害額4万8000円)するとともに、同消火器を使用不能にさせて損壊(損害額4300円)し、もって他人の建造物及び他人の物を損壊した(判示第2)として、懲役1年6月を求刑された事案において、被告人の本件行為は、器物損壊罪にいう「損壊」、建造物損壊罪にいう「損壊」に当たり、被告人には器物損壊及び建造物損壊の各罪が成立するとして、被告人を懲役1年2月に処した事例。
2023.12.26
取立金請求事件 
LEX/DB25573172/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月27日 判決 (上告審)/令和3年(受)第1620号 
建物の根抵当権者であり、物上代位権を行使して賃料債権を差し押さえた上告人が、賃借人である被上告人に対し、当該賃料債権のうち2790万円の支払を求める取立訴訟で、原審は、上告人の請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、被上告人は、物上代位権を行使して本件将来賃料債権を差し押さえた根抵当権者である上告人に対し、本件相殺合意の効力を対抗することはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決を破棄し、本件将来賃料債権(2790万円)の支払を求める上告人の請求は理由があるから、これを棄却した第1審判決を取消し、請求を認容した事例(補足意見及び意見がある)。
2023.12.26
損害賠償請求事件 
「新・判例解説Watch」環境法分野 令和6年2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573135/大阪地方裁判所 令和 5年 9月27日 判決 (第一審)/平成26年(ワ)第9280号
不知火海沿岸地域等にかつて居住し、本件共通診断書検診によって水俣病に罹患していると診断された者又はその承継人である原告らが、本件患者らは、被告チッソが排出したメチル水銀化合物を含む廃水により汚染された上記地域の魚介類を摂食したことにより、水俣病(慢性水俣病)に罹患したとして、被告チッソに対しては、上記排出をした不法行為に基づき、被告国及び被告熊本県に対しては、同被告らが各規制権限を行使して水俣病の発生及び拡大を防止し、又は水俣病に関する健康調査を実施すべき義務があったのにこれを怠ったとして、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償を求めた事案において、期間の起算点について、慢性水俣病において損害の全部又は一部が発生したと認めることができるのは、神経学的検査等に基づいて水俣病と診断された時、すなわち本件患者らについては共通診断書検診が行われた時であると示して、一部原告の一部請求を認容した事例。
2023.12.26
軽犯罪法違反被告事件 
「新・判例解説Watch」刑法分野 令和6年2月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596259/大阪高等裁判所 令和 5年 8月 1日 判決 (控訴審)/令和5年(う)第146号
大阪市内の路上で、自転車に乗って交差点の横断歩道で、赤信号を無視して横断したところを、警察官から現認され、職務質問を受け、路上に停止したパトカー内で、所持品検査を受けた際、肩に掛けていたかばんの、チャックで閉じている外ポケットの中に、大刃等を折り畳んだ状態の本件十徳ナイフ1本(刃体の長さ約6.8cm)を携帯していたとして、原判決が、軽犯罪法違反の罪で有罪としたため、被告人が控訴した事案で、弁護人の「隠して」に関する法令適用の誤り、事実誤認の主張について、被告人が、自己の意思により同ナイフを隠された状態にして携帯していた以上、軽犯罪法1条2号所定の「隠して」携帯したことに当たり、「隠すことについての積極的な意思」というものが、それ以上の何らかの主観的な要素を必要とするという趣旨であれば、根拠がなく、採用できないとし、「隠して」携帯したとの事実を認定し、同号を適用した原判決に、事実の誤認はなく、法令の適用の誤りもないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2023.12.19
公職選挙法違反被告事件 
LEX/DB25573164/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月20日 判決 (上告審)/令和5年(あ)第976号 
被告人が、第49回衆議院議員総選挙に際し、選挙運動期間前に35か所にわたって法定外選挙運動用文書を頒布した公職選挙法違反の事案で、第1審判決は、公職選挙法129条にいう「選挙運動」に当たるなどとして、原告を罰金30万円に処したため、被告人が控訴し、原判決は、本件行為のうち本件選挙はがきの宛名書きを含む推薦依頼の部分は、投票を依頼するのと同様の効果を目的として行われた、すなわち得票目的で行われた実質的な投票依頼行為であって、選挙運動に該当し、本件行為は全体として選挙運動に該当するなどとして、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、弁護人らの上告趣意のうち、公職選挙法129条、142条1項の各規定について憲法21条、31条違反をいう点は、公職選挙法の上記各規定が憲法21条、31条に違反しないから、理由がなく、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2023.12.19
助成金不交付決定処分取消請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573159/最高裁判所第二小法廷  令和 5年11月17日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第234号 
映画製作会社である上告人(原告・被控訴人)が、被上告人(被告・控訴人)の理事長に対し、「宮本から君へ」と題する劇映画の製作活動につき、文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をしたところ、理事長から、本件助成金を交付することは公益性の観点から適当でないとして、本件助成金を交付しない旨の決定(本件処分)を受けたため、被上告人を相手に、本件処分の取消しを求めたところ、第1審判決は、上告人の請求を認容したため、被上告人が控訴し、原判決は、本件処分は適法であるとして、本件処分の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案において、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法であるとし、これと異なる原審の前記判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原判決を破棄し、本件処分の取消請求を認容した第1審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却した事例。
2023.12.19
傷害被告事件 
LEX/DB25596304/大阪地方裁判所  令和 5年 1月17日 判決 (第一審)/令和3年(わ)第2757号 
被告人が、深夜、ビル5階の飲食店で、被害者(当時32歳)に対し、右手の拳骨でその左目付近を1回殴る暴行を加え、同人に通院加療約2か月間を要する左眼窩底骨折、左眼網膜震盪の傷害を負わせたとして、傷害の罪で懲役1年6月を求刑された事案において、被告人に殴られた旨の被害者証言は採用できず、被告人以外の者の行為によって被害者が傷害を負った可能性が否定できない上、被告人供述も排斥できないから、被告人が、被害者に暴行を加え上記傷害を負わせた犯人であると認めるには合理的な疑いが残るとして、本件公訴事実(訴因変更後)については犯罪の証明がないことになるから、刑事訴訟法336条により、被告人に対し無罪を言渡した事例。
2023.12.12
仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件 
LEX/DB25573136/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月 6日 決定 (特別抗告審)/令和5年(し)第735号 
東京高等裁判所裁判官がした仮拘禁許可状の発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑事訴訟法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.12.12
株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
LEX/DB25573122/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第11号
S社の株主である抗告人が、利害関係参加人を吸収合併存続株式会社、S社を吸収合併消滅株式会社とする吸収合併についての会社法785条2項所定の株主(反対株主)であるとして、S社に対し、抗告人の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求したが、その価格の決定につき協議が調わないため、同法786条2項に基づき、価格の決定の申立てをしたところ、原審は、抗告人は反対株主ではないから、本件申立ては不適法であるとして却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、本件委任状の送付は、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思をS社に対して表明するものということができるとして、抗告人がS社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当であるとし、これと異なる見解の下に、本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとして、原決定を破棄し、原々決定を取消し、更に審理を尽くさせるため、本件を原々審に差し戻すこととした事例。
2023.12.12
各監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反被告事件 
LEX/DB25596133/松江地方裁判所 令和 5年 9月27日 判決 (第一審)/令和5年(わ)第32号 等
(第1)被告人両名は、共謀のうえ、被告人Aの長女であるBが18歳に満たない児童であることを知りながら、29回にわたり、Bにその乳房又は陰部を露出した姿態をとらせ、被告人Aが、これらを撮影したうえ、各静止画データ合計29点をそれぞれ保存し、もって児童ポルノを製造し、(第2)被告人Aは、Bを現に監護する者、被告人aは、被告人Aの交際相手であるが、被告人両名は、共謀のうえ、Bが18歳未満の者であることを知りながら、被告人aがBと性交をすることを企て、被告人A方において、同人がBを現に監護する者であることによる影響力があることに乗じて、被告人aがBと性交をし、(第3)被告人aは、前記被告人A方において、衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態の静止画データ66点を記録した児童ポルノである携帯電話機1台を所持したとして、被告人両名が、各監護者性交等、児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律違反の罪で、被告人aにつき懲役9年、被告人Aにつき懲役6年を求刑された事案で、Bが被った身体的、精神的苦痛は多大であり、本件事案の性質上、被告人Aの精神障害等について、情状面で考慮するほどの各犯行への影響はなかったと認められるところ、被告人aの刑事責任は重大であり、被告人Aの刑事責任は、被告人aほどではないが相応に重いとしたうえで、被告人両名にはさしたる前科がないこと、被告人aについて、Bに対し300万円の被害弁償を行い、反省の言葉を述べていること、母親が更正に協力する旨証言していること、被告人Aについて、Bが重い処罰を求めているとまではいえないこと、反省の言葉を述べ、更生環境の整備に着手しつつあること等の各被告人に有利な事情があるが、被告人両名のいずれについても酌量減軽をすることは相当ではないとして、被告人aを懲役6年に、被告人Aを懲役5年に処した事例。
2023.12.05
法人税更正処分等取消請求事件 
「新・判例解説Watch」租税法分野 令和6年1月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573132/最高裁判所第二小法廷 令和 5年11月 6日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第228号 等
内国法人である被上告人(原告・控訴人。都市銀行)は、平成27年度の本件事業年度に係る法人税及び地方法人税の申告をしたところ、処分行政庁から、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)66条の6第1項の規定により、ケイマン諸島において設立された被上告人の子会社の課税対象金額に相当する金額が、被上告人の本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受け、また、被上告人は、本件事業年度の法人税等について更正の請求をしたが、処分行政庁から、更正をすべき理由がない旨の各通知処分を受けた。本件は、被上告人が、上告人(被告・被控訴人。国)を相手に、上記各増額更正処分の一部及び上記各賦課決定処分並びに本件各通知処分の取消しを求めた事案の上告審において、増額更正処分後に国税通則法23条1項の規定による更正の請求をし、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた者は、当該通知処分の取消しを求める訴えの利益を有するとし、被上告人は、本件各通知処分の取消しを求める訴えの利益を有するものということができるから、これと異なる原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原判決主文第1項から第3項までを破棄した事例(補足意見がある)。
2023.12.05
特別の寄与に関する処分申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」民法(家族法)分野 令和6年3月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573121/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 決定 (許可抗告審)/令和4年(許)第14号
亡Aの親族である抗告人が、Aの相続人の1人である相手方に対し、民法1050条に基づき、特別寄与料のうち相手方が負担すべき額として相当額の支払を求め、原審は、相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料について、民法900条から902条までの規定により算定した相続分(法定相続分等)に応じた額を負担するから(同法1050条5項)、遺言により相続分がないものと指定された相続人は特別寄与料を負担せず、このことは当該相続人が遺留分侵害額請求権を行使したとしても左右されないと判断して、本件申立てを却下したため、抗告人が許可抗告をした事案において、遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができるとして、本件抗告を棄却した事例。
2023.11.28
情報不開示決定取消等請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年3月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573120/最高裁判所第一小法廷 令和 5年10月26日 判決 (差戻上告審)/令和4年(行ヒ)第296号
東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた被上告人が、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(令和3年法律第37号による廃止前のもの)に基づき、東京矯正管区長に対し、被上告人が収容中に受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報の開示を請求したところ、同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定を受けたことから、本件決定は違法であると主張して、上告人を相手に、その取消しを求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求め、第1審及び第1次控訴審は、本件情報は、行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たり、同法12条1項の規定による開示請求の対象から除外されるから、本件決定は適法であるとして、被上告人の請求をいずれも棄却したが、第1次上告審は、刑事施設に収容されている者(被収容者)が収容中に受けた診療に関する保有個人情報は行政機関個人情報保護法45条1項所定の保有個人情報に当たらないとし、本件情報は同法12条1項の規定による開示請求の対象となる旨判断して、第1次控訴審判決を破棄し、本件を原審に差戻した。その後の第2次控訴審は、本件訴えのうち本件決定の取消請求に係る部分につき、訴えの利益を欠くとして却下する一方、本件決定は行政機関個人情報保護法に反し違法であるとした上で、損害賠償請求を一部認容したため、上告人が上告した事案で、第2次上告審は、本件決定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとし、これと異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるとし、原判決中上告人敗訴部分を破棄し、被上告人の損害賠償請求は理由がなく、これを棄却した第1審判決は結論において正当であるから、上記部分につき被上告人の控訴を棄却した事例。