意外と悩む減価償却計算の疑問~実務上の落とし穴~

第5回(最終回) 機械及び装置にご用心!

更新日 2026.10.22

公認会計士・税理士 喜多 紀彦

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ会計システム小委員会会員

公認会計士・税理士 喜多 紀彦

固定資産の実務担当者向けに、法人における減価償却計算で悩みやすい論点を取り上げ、解説します。既出の固定資産関連のコラムに比べて、より実務的で細かな論点を多く扱っています。

当コラムのポイント

  • 固定資産台帳の確認方法
  • 減価償却費の計算方法
  • 減価償却資産を計上する際の留意点
  • 「建物附属設備」の注意点
  • 「機械及び装置」の注意点
目次

前回の記事 :第4回 建物附属設備にご用心!

 減価償却資産の種類のうち、「機械及び装置」は他の種類とは性格が大きく異なります。今回は、「機械及び装置」の減価償却費(償却限度額)※の計算における実務上の注意点を解説します。

※本コラムでは、実務上で最も多く採用されている「会計上の減価償却費=法人税法上の償却限度額」とする会計方針を前提に、法人税法上の償却限度額を「減価償却費」として解説していきます。

1.「機械及び装置」とは

 まず、「機械及び装置」とはどのようなものか確認しましょう。

(1) 「機械及び装置」の定義

 「機械及び装置」は、税法上に明確な定義はありません。裁判例では、次のように定義されています。

  • ① 外力に抵抗し得る物体の結合からなり
  • ② 一定の相対運動をなし
  • ③ 外部から与えられたエネルギーを有用な仕事に変形するもので
  • ④ 複数のものが設備を形成して
  • ⑤ 設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たすもの

 このうち、④と⑤の定義が特徴的です。
 減価償却資産の計上単位は「通常1単位として取引される単位」によることとされています。そのため、機械及び装置が単独で「設備の一部としての機能」を果たしている必要があります(⑤)。
 一方で、それぞれの資産は単独では「設備としての機能」を果たせず、複数の資産が組み合わさることで初めて設備として機能します(④)。
 つまり、機械及び装置は1単位のみでは工程を終了することができず、他の機械及び装置と一体となることで初めて工程が終了するものといえます。

(2) 「機械及び装置」と「器具及び備品」の区別

 減価償却資産の種類のなかで、「機械及び装置」と「器具及び備品」の区別には重要な論点があります。
 裁判例で、医療機器が「機械及び装置」と「器具及び備品」のいずれに該当するのかが争われた事例があります。
 この事例では、次の点から医療機器は「器具及び備品」に該当すると判断されました。

  • ① 検査、分析、判定、測定等を行うことにより、その工程がすべて終了するものであること
  • ② それ自体が単体で個別に作動するものであり、他の機器と一体となって機能を発揮するものではないこと

 つまり、上記(1)④の「複数のものが設備を形成する」という要件を満たさないため、「機械及び装置」には該当しないとされました。

(3) 「機械及び装置」と「建物附属設備」の区別

 減価償却資産の種類のなかで、「機械及び装置」と「建物附属設備」の区別にも重要な論点があります。
 以下、具体的な事例を挙げて解説します。

① 機械及び装置の専用電源の設置工事
 機械及び装置の専用電源については、電気工事であるため「建物附属設備(電気設備)」と誤解されがちです。
しかし、この専用電源は、建物附属設備の性質である「建物内に収容する人の居住性の維持のために施設するもの」とは異なります(詳細は、コラム「第4回 建物附属設備にご用心!」をご覧ください)。なぜなら、機械及び装置の専用電源は、居住性を維持するためのものではなく、機械及び装置を動作させるためのエネルギーを供給するためのものだからです。
したがって、この機械及び装置の専用電源に係る設置工事は「機械及び装置」に該当します。
② 工場内の天井クレーン
 工場内の天井クレーンは、クレーン本体とレール等の基礎によって構成されます。このうちレール等の基礎は建物に固定されて支持されているため、「建物附属設備」に該当するようにも見えます。
しかし、建物からの支持だけをもって、建物と構造上一体であるとはいえず、工場内の天井クレーンは、レール等の基礎も含めて、原則として「機械及び装置」に含めるものと考えられます(耐用年数通達1-4-7)。

2.「機械及び装置」の耐用年数

 「機械及び装置」は、耐用年数の適用方法が他の種類の減価償却資産と大きく異なります。
 これは、機械及び装置が「複数のものが設備を形成して、設備の一部としてそれぞれのものがその機能を果たす」という特殊な性質を有しているためと考えられます。
 以下、「機械及び装置」の耐用年数の適用方法について解説します。

(1) 総合償却資産

 機械及び装置は、税務上「総合償却資産」とされます。その他の種類の減価償却資産は「個別償却資産」とされているため、この点で機械及び装置は特殊な減価償却資産といえます。
 まず、個別償却資産と総合償却資産の内容を確認しましょう。

① 個別償却資産とは
 個々の資産単位ごとに、個別に減価償却計算および記帳を行う方法です。
② 総合償却資産とは
 平均耐用年数を用いて、資産グループごとに一括して減価償却計算および記帳を行う方法です。

 総合償却は、過去に実務上の便宜から採用された手法です。しかし、パソコンが普及した現在では「資産グループごとに一括して減価償却計算および記帳を行う」という実務はあまり見られません。
 一方で、税務上の機械及び装置の耐用年数は「平均耐用年数」の考え方に基づいて計算されます。そのため、現在の実務において個別管理を行っている場合であっても、耐用年数の考え方という点では、機械及び装置は「総合償却資産」といえます。

(2) 「機械及び装置」の耐用年数とは

 耐用年数省令別表第2において、機械及び装置の耐用年数が規定されていますが、ここでは業用の設備別(細目のあるものは細目別)に単一の耐用年数が規定されています。
 通常、どの業用の設備も耐用年数の異なる複数の機械及び装置で構成されていると考えられますが、税法では次の方法により単一の耐用年数を規定しています。

  • ① 業種ごとに標準設備を想定する
  • ② 標準設備を構成する各資産の耐用年数を見積る
  • ③ 各資産の耐用年数を価額により加重平均して算出する

 このように、「機械及び装置」の耐用年数は平均耐用年数として算定されています。そのため、「機械及び装置」の耐用年数は、別表第2において他の減価償却資産とは区分して規定されています。

(3) 「機械及び装置」の耐用年数の適用

 機械及び装置に耐用年数を適用するためには、法人の設備の使用状況等から、いずれの業用の設備として「通常使用しているか」により判定(耐用年数通達1-4-2)します。
 具体的には、次の手順で耐用年数を適用します。

  • ① 「通常使用しているか」どうかは最終製品に基づき判定(耐用年数通達1-4-3)するため、「最終製品」を確認する。
  • ② 「最終製品」に対応する「日本標準産業分類」を判定する。
  • ③ 「日本標準産業分類」に対応する「設備の種類・細目」を確認する。
    ※耐用年数通達付表8「「設備の種類」と日本標準産業分類の細分類番号との対比表」
  • ④ 「設備の種類・細目」に応じた「耐用年数」を適用する。
    ※耐用年数省令別表第2

 したがって、最終製品が1種類の場合は、機械及び装置の耐用年数は原則としてすべて同じになります。
 なお、複数の業用設備がある場合は、「前掲の区分によらないもの」を適用することもできます。

(4) 中古の機械及び装置の耐用年数

 機械及び装置は、税務上、総合償却資産として平均耐用年数を適用しています。
 仮に設備を構成する機械及び装置の一部について中古の資産を取得し、既存の設備に組み込んだとしても、平均耐用年数にはほとんど影響を及ぼさないと考えられます。
 そのため、機械及び装置については、他の種類の減価償却資産と異なり、中古資産の耐用年数(「見積法」(耐用年数省令第3条第1項第1号)や「簡便法」(同条第2号))の適用に制限があります。
 例外的に、法人が工場を一括して取得する場合など、機械及び装置の相当部分につき中古資産を一時に取得した場合に限り、「見積法」または「簡便法」を適用できることとされています(耐用年数通達1-5-8、1-5-10)。
 したがって、一部の中古の機械及び装置を取得しただけでは中古資産の耐用年数を適用することはできず、新品と同様に耐用年数省令別表第2に規定する平均耐用年数を適用します。

3.機械及び装置の試運転

 機械及び装置を取得するとき、既存の設備に組み込むため、または新しい生産ラインを構築するために試運転が必要になることがあります。この試運転につき、実務上の論点を解説します。

(1) 試運転とは

 機械及び装置の検収条件として、一定の稼働能力の実現が求められる場合があります。稼働能力を実現するためには、さまざまな調整が必要となることがあり、その場合、試運転が行われます。
 試運転は、一定の稼働能力(生産スピード等)が実現されるまで継続して行われることがあり、長期間にわたることもあります。そして、試運転期間中であっても、生産スピードが遅いだけで最終製品の品質には問題がなく、その製品が出荷されることがあります。

(2) 試運転と費用と収益の対応

 試運転期間中に製造した最終製品が出荷された場合、会計的な観点からは費用と収益の対応のため(正確な製品原価を計算するため)、減価償却費を計上したいところです。
 しかし、実質的には事業の用に供されている状態とはいえ、検収条件を満たしていないので機械及び装置はまだ取得していません。この場合、減価償却費は計上することができるのでしょうか。

(3) 試運転と減価償却費の計上

 法人税法第31条第1項では、「各事業年度終了の時において有する減価償却資産」について減価償却費(償却限度額)を計算できるとされています(第3回「減価償却資産を登録しよう!」を参照してください)。したがって、検収条件を満たしておらず、まだ所有していない減価償却資産については、税務上、減価償却費を計算することはできません。仮に、会計上の要請により減価償却費を計上した場合は、税務調整により否認することになります。

4.まとめ

 本コラムは今回で最終回となります。最後までお読みいただき、ありがとうございました。
 これまでお読みいただいたように、減価償却費の計算は実務上非常に難しい業務です。
 その理由は、経理担当者と現場担当者が、お互いの知識と認識を補完し合わなければ、正しい計算にたどり着くことができない点にあります。

  • 経理担当者
     会計基準・税法に関する知識
     資産の取得価額や取得関連費用の把握
  • 現場担当者
     資産の物理的・機能的な知識
     資産の使用状況に関する認識

 この両者の知識・認識が合わさることで、はじめて正確な減価償却費の計算が可能となります。
 固定資産管理システムなどのツールを活用することも有効ですが、最も重要なのは、経理担当者が現場に足を運び、現場担当者と対話することです。
 本コラムが、現場と会計をつなぐ適切な固定資産管理の一助となれば幸いです。
 最後までお読みいただきありがとうございました。

了

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プロフィール

公認会計士・税理士 喜多 紀彦

公認会計士・税理士 喜多 紀彦(きた のりひこ)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ会計システム小委員会会員

略歴
TKC全国会の中堅・大企業支援研究会員として、プライム上場企業グループ4グループ、中堅企業4グループのシステムコンサルタントを担当し、複数のグループ子会社に税務顧問サービスを提供
また、関東を中心に中小企業に税務顧問・コンサルティングサービスを提供
ホームページURL
公認会計士・税理士 喜多事務所

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