意外と悩む減価償却計算の疑問~実務上の落とし穴~

第4回 建物附属設備にご用心!

更新日 2026.10.13

公認会計士・税理士 喜多 紀彦

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ会計システム小委員会会員

公認会計士・税理士 喜多 紀彦

固定資産の実務担当者向けに、法人における減価償却計算で悩みやすい論点を取り上げ、解説します。既出の固定資産関連のコラムに比べて、より実務的で細かな論点を多く扱っています。

当コラムのポイント

  • 固定資産台帳の確認方法
  • 減価償却費の計算方法
  • 減価償却資産を計上する際の留意点
  • 「建物附属設備」の注意点
  • 「機械及び装置」の注意点
目次

前回の記事 :第3回 減価償却資産を登録しよう!

 減価償却資産の計上において、資産の種類や勘定科目の設定で特に判断が難しいのが「建物附属設備」です。資産の種類の選択は法定耐用年数、ひいては減価償却費計算に影響を与えますので、実務上重要な判断です。
 今回は、減価償却資産の種類の1つである「建物附属設備」について、実務の観点から解説します。

※本コラムでは、実務上で最も多く採用されている「会計上の減価償却費=法人税法上の償却限度額」とする会計方針を前提に、法人税法上の償却限度額を「減価償却費」として解説していきます。

1.「建物附属設備」とは

 「建物附属設備」は、その文言から建物と構造上一体となっている設備と解釈できますが、税法上に明確な定義はありません。
 ただし、法人税法施行令第13条第1号および耐用年数省令別表第1に具体例が示されており、その性質により次のように分類をすることができます(カッコ内が法令上の具体例)。

  • ① 建物内に収容する人の居住性を維持するために施設するもの
    (電気設備(照明設備を含む)、給排水設備、衛生設備、ガス設備)
  • ② 建物内に収容する人の作業環境の調整及び建物固有の機能を向上させるために施設するもの
    (冷暖房設備、通風設備、ボイラー設備、昇降機)
  • ③ (1)および(2)以外で、その使用可能期間が比較的短いことなどから、特に建物から分離して償却することとされているもの
    (その他建物に附属する設備:消火、排煙又は災害報知設備、格納式避難設備、エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備、アーケード又は日よけ設備、店用簡易設備、可動間仕切り)

 ただし、実務ではこの具体例だけでは判断が難しいケースも少なくありません。

2.「建物」と「建物附属設備」の区別

 減価償却資産の種類のなかでも、「建物」と「建物附属設備」の区分は判断が難しい論点の一つです。まず、「建物」とは何か確認しましょう。

(1) (広義の)建物の定義

 建物附属設備と同様に、建物についても税法上に明確な定義はありません。裁判例では他の法令(不動産登記規則第111条)の定義から借用し、建物について次のように解釈しています。

  • ① 外気遮断性(屋根及び周壁又はこれらに類するものを有していること)
  • ② 土地の定着性(土地に定着していること)
  • ③ 用途性(目的とする用途に供し得る状態にあること)
(2) 「建物」と「建物附属設備」の区別

 しかし、上記の建物の解釈だけでは、建物の内部造作についての資産の種類を判断することはできません。税法では、内部造作については、建物附属設備に該当しない限り建物に含めるものとされています(耐用年数通達1-2-3)。
 したがって、次の手順で判断をすることになります。

  • ① 建造物が(広義の)建物かどうかを判断する
  • ② (広義の)建物から建物附属設備を抽出する
  • ③ ①-②で、(狭義の)建物を判断する

 実務上で難しいのは、②の建物附属設備の抽出です。
 耐用年数省令別表第1の建物附属設備には「前掲のもの以外のもの」も規定されていますので具体例(上記1.)は限定列挙ではありません。そのため、具体例の性質(上記1.①~③)を踏まえながら判断する必要があります。なお、実務上は保守的な観点から限定的に判断すべきと考えられます。

(3) 木造造り等の建物の特例

 原則として、建物附属設備は建物本体と区分して耐用年数を適用します。
 しかし、木造、合成樹脂造り又は木骨モルタル造りの建物の附属設備については、建物と一括して建物の耐用年数を適用することができます(耐用年数通達2-2-1)。
 逆に言えば、これら以外の建物については、(狭義の)建物と建物附属設備とを区分すべきであり、特に中古建物を購入した場合などは、取得価額の配分計算等が必要となります。

3.「建物附属設備」と「器具及び備品」の区別

 減価償却資産の種類のなかでは、「建物附属設備」と「器具及び備品」の区別は比較的判断しやすいように思われます。しかし、一部の資産については判断が難しいことがあります。例えばエアコンやLAN設備がその典型例です。

(1) エアコン

 エアコンは、「建物附属設備」と「器具及び備品」のいずれかに該当します。
 具体的には、ダクトを通じて相当広範囲にわたり機能するものについては、「建物附属設備」の冷暖房設備に該当します(耐用年数通達2-2-4)。
 実務上で気をつけたいのは、上記以外のルームクーラー等、「器具及び備品」として扱うべきエアコンです。工事請負契約書等では空調設備として記載されているものの、そのなかに建物附属設備とすべき空調設備と、器具及び備品とすべきルームクーラー等が混在しているケースがあります。誤って「建物附属設備」として一括計上してしまうと、課税所得計算の誤りにつながることはもちろん、固定資産管理上も混乱を招きますので注意が必要です。

(2) LAN設備

 LAN設備は、原則としてLANを構成する個々の資産(サーバー、OS、ハブ、ルーター、端末機、各種ケーブル等)ごとに耐用年数を適用しますが、「建物附属設備」、「器具及び備品」又は「ソフトウェア」に該当する可能性があります。このうち、「建物附属設備」となる可能性があるのは、ツイストペアケーブル、同軸ケーブル、光ケーブル(以下、「LANケーブル」)です。
 工事請負契約書等でLANケーブルの位置付けを確認し、次のように区別する必要があります。

  • ① LANケーブルのうち、建物内に敷設され、建物と一体不可分なもの
    「建物附属設備」
  • ② LANケーブルのうち、各機器を接続するためのもの
    接続する機器の付属品として、その機器に含めて「器具及び備品」

 特に、LAN設備の追加敷設工事などでは、LANケーブルが建物と構造上一体になっているかどうかの判断が難しく、慎重に判断する必要があります。

4.「建物附属設備」と「機械及び装置」の区別

 減価償却資産の種類のなかで、「建物附属設備」と「機械及び装置」の区別にも重要な論点がありますが、詳細については「第5回 機械及び装置にご用心!」で解説します。

5.まとめ

 建物附属設備に限らず、減価償却資産の計上、特に資産の種類の設定には、判断が難しい論点が数多くあります。
 本コラムで紹介した論点を参考に、基礎資料の保管・計算過程の記録を丁寧に行いながら、1件ずつ確実に登録していくことが重要です。
 次回は、減価償却資産のなかでも特殊な種類である「機械及び装置」について、「第5回 機械及び装置にご用心!」と題して解説します。

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プロフィール

公認会計士・税理士 喜多 紀彦

公認会計士・税理士 喜多 紀彦(きた のりひこ)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ会計システム小委員会会員

略歴
TKC全国会の中堅・大企業支援研究会員として、プライム上場企業グループ4グループ、中堅企業4グループのシステムコンサルタントを担当し、複数のグループ子会社に税務顧問サービスを提供
また、関東を中心に中小企業に税務顧問・コンサルティングサービスを提供
ホームページURL
公認会計士・税理士 喜多事務所

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