個人保有の株や不動産を売るなら令和8年中が有利?ミニマムタックスの改正

個人保有の株や不動産を売るなら令和8年中が有利?ミニマムタックスの改正

更新日 2026.08.24

畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事

税理士 畑中 孝介

ミニマムタックス(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)は、いわゆる「1億円の壁」を是正するために導入された制度ですが、令和9年1月1日の適用開始以降は税率の引き上げや特別控除額の引き下げ等の見直しが行われることとなり、適用対象者は年間約200 人から約2,000 人になるなど、オーナー経営者や富裕層に甚大なインパクトを与えると予測されています。大きな売却益が出る可能性がある不動産や有価証券を保有している資産家の方や、会社の売却・M&Aを検討される方は令和8年中の売却も検討すべきでしょう。

当コラムのポイント

  • 特別控除額の大幅引き下げ: 3.3億円 → 1.65億円
  • 最低税率の大幅引き上げ: 22.5% → 30.0%
  • 対象者は年間200人⇒2000人に拡大が見込まれる
目次

1.はじめに

 ミニマムタックス(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)は、いわゆる「1億円の壁」を是正するために導入された制度です。株式譲渡益などの金融所得が一律約20%(分離課税)で課税されるため、年収が数億円~十数億円規模になると総合課税よりも実効税率が下がるという不公平感を解消するのが狙いです。
 現在、一定程度以上の所得がある方は分離課税(株式・長期保有不動産等)の所得を含め所得税率を22.5%(別に住民税10%)にすることになっています(注)。税負担の公平性を確保する観点から、税率の引き上げや特別控除額の引き下げ等の見直しが行われ、2027年分(令和9年1月1日~)の所得から適用される予定の改正案は、オーナー経営者や富裕層に大きなインパクトを与えることになります。適用対象者は年間約200 人から約2,000 人になると予測されていましたが、現状の市場動向や不動産価格等の値上がりもあり対象者はもう少し増えると考えられます。
 特に会社の売却(M&A)やIPOまたは個人資産管理会社への自社株の売却で、株式譲渡益が出たオーナー経営者、長期保有不動産の売却で不動産の譲渡益が出た不動産オーナーなどには大きな影響が出ます。

(注)従来の所得税額より低い場合に限る。

2.改正の概要

主な改正ポイント

  • 特別控除額の大幅引き下げ: 3.3億円 → 1.65億円
  • 最低税率の大幅引き上げ: 22.5% → 30.0%
  • 対象者は年間200人⇒2000人に拡大が見込まれる

主な改正ポイント

(出典:財務省「パンフレット「令和8年度税制改正」」)

 今回制度の対象となる基準所得金額が、令和9年から3.3億円から1.65億円に引き下げられるとともに、所得税の最低税率が22.5%から30%に引き上げられます。
 住民税と合わせた最低税率が32.5%(22.5%+住民税10%)から40%(30%+住民税10%)に引き上げられます。令和9年からは1.65億円を超える金額に30%の税率を乗じた金額が、その年分の基準所得税額を超える場合には、その超える金額に相当する所得税額を申告納税することになります。
 大きな売却益が出る可能性がある長期保有不動産や有価証券を保有している資産家の方や、会社の売却・M&Aを検討される方は令和8年中に売却したほうが有利になるケースがありますのでご注意ください。

3.基準所得金額の範囲に注意

 「基準所得金額」とは、その年分の所得税について申告不要制度を適用しないで計算した合計所得金額(その年分の所得税について適用する特別控除額を控除した後の金額)をいいます。つまりこの所得金額には「申告不要制度」を適用して確定申告を要しない上場株式等の譲渡・配当による所得の特例や申告分離課税の退職所得なども含まれることになります。

基準所得金額

(出典:「令和8年度税制改正のポイント」TKC出版)

4.影響が出る人のイメージ

 基準所得金額が1.65億円を超える方が改正の影響を受けることになり、30%に満たない税率の場合に追加納税が発生します。ただし上場株式等の譲渡・配当等にかかる所得税に関しては15%分をすでに納税していますので、下記の財務省資料の通りおおよそ所得が3.4億円以上の場合に追加納税が発生する可能性があります。

 これまで個人のミニマムタックスは、株式売却益などが約10.3億円を超えないと追加課税が発生しにくい仕組みでした。しかし、この改正により適用対象が一気に拡大し、約3.4億円を超える所得から追加課税の影響を受けるようになります。

具体例(株式譲渡益10億円の場合):
現行(~2026年): 通常の分離課税額(約1.53億円)が最低負担額を下回らないため、追加納税は基本的に発生しません。

改正後(2027年~): 最低税額の計算式「(10億円 - 1.65億円)× 30%」が適用され、税負担額が約2.5億円へと跳ね上がり、1億円近い増税となる可能性があります。

影響が出る人のイメージ

(出典:財務省「パンフレット「令和8年度税制改正」」)

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業のグループ通算コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『令和8年度 すぐわかるよくわかる税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和6年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
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ビジネス・ブレイン税理士事務所

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