更新日 2024.09.09
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
税理士 吉田 公彦
補助金により資産を取得した場合の圧縮記帳について、会計と税務の基本的事項を解説します。
当コラムのポイント
- 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳の基本
- 設例による会計処理の解説
- 会計処理に応じた税務調整と別表の記載方法
- 目次
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1.はじめに
近年、デジタル化の促進や経済の活性化、コロナ禍の影響による事業再構築の支援などの目的により、多様な補助金制度が整備されています。中でも、IT導入補助金、ものづくり補助金、事業再構築補助金などは申請件数が多く、大企業から中小企業まで広く利用されています。
これらの補助金収益に対して一度に課税されることを調整し、補助金のメリットを損なわないようにするための制度が圧縮記帳です。本稿では、昨今会社規模を問わず適用が増えている補助金等に伴う圧縮記帳について、その要件や手続きなどを確認していきます。
2.補助金と圧縮記帳
(1) 国庫補助金等で取得した固定資産等の圧縮記帳
法人が固定資産の取得または改良に充てるために一定の補助金等の交付を受け、その目的に適合した取得等をした場合には、その取得等に充てた補助金等の範囲内で圧縮記帳が可能となります。
具体的には、新たに取得等した固定資産の価額を圧縮(減額)するために圧縮損を計上することにより、補助金等による収入について一度に課税関係が生じないようにします。ただし、固定資産の価額が減額されたことにより、その後の減価償却費が減少し将来の税負担が増加する点には注意が必要です。(法法42~44)
(2) 一定の補助金とは?
圧縮記帳の対象となる国庫補助金等は、法令79条において限定列挙されています。つまりここに書かれているもの以外は対象とはならないため、補助金等を運営する事務局等への確認が必要となります。
例えばIT導入補助金については、事務局より出された「サービス等生産性向上IT導入支援事業の税務上の取り扱いについて」という文書により国庫補助金等に該当するものであることが確認できます。ものづくり補助金や事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金なども圧縮記帳ができる補助金の例として挙げられます。
(3) 圧縮記帳の時期
- ①原則
- 国庫補助金等の交付を受けた場合、当該事業年度末までにその補助金等の「返還不要が確定しているとき」は、その交付の目的に適合した取得固定資産について圧縮記帳ができるとされています。(法法42)基本的には補助金等にかかる交付決定通知によって返還不要が確定、収益の計上が行われることになります。(法基通10-2-1)
- ②資産の取得が先行する場合
- 補助金等の中には、資産の取得が先に行われ、その支払いをもとに実績報告を行い、その後に支給額が確定するようなものもあります。資産の取得が先行し、補助金等の交付が翌期に確定するケースも考えられますが、この場合でも交付確定をもって圧縮記帳の適用が認められます。
なお、このようなケースでは圧縮限度額について一定の調整計算が行われます。(法法42①)
事業再構築補助金、ものづくり補助金に代表されるように、最近はこのタイプの補助金等が増えているようです。 - ③補助金等の交付年度後に固定資産の取得等をする場合
- ②とは逆に、補助金等の交付を受けた事業年度の翌事業年度以後に、固定資産の取得等をするケースです。このケースでは、交付を受けた事業年度においてその補助金等を仮勘定として経理し、その後固定資産の取得等をした事業年度で仮勘定を取り崩して益金算入した上で、圧縮記帳ができるとされています。(個通51.5.15直法2-19)
(4) 適用要件
以下、国庫補助金等の圧縮記帳について主な適用要件をあらためて整理します。(法法42)
- ①国庫補助金等の交付を受け、交付事業年度末までに返還不要が確定したこと
- ②交付事業年度に交付目的に適合した固定資産の取得等をしたこと
→補助金等の交付時期と資産取得時期が前後する場合の適用関係については上記(3)参照 - ③以下のいずれかの経理方法により処理を行うこと
- 取得資産の帳簿価額を圧縮限度額の範囲内で損金経理により減額する方法
- 圧縮限度額以下の金額を積立金として積み立てる方法
→本稿第2回にて解説
- ④確定申告書に圧縮額の損金算入に関する明細書の添付があること
→具体的には別表13(1)等の添付が必要
なお、本制度は当初申告が要件であり、失念等により圧縮記帳を選択しなかった場合は、修正申告や更正の請求による適用ができないことにご注意ください。
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