グループ通算制度の修更正の遮断措置に関する論点解説

第3回 どのように遮断されるの?

更新日 2024.03.25

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税理士・公認会計士 足立 好幸

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

税理士・公認会計士 足立 好幸

グループ通算制度の修更正の遮断措置について、その概要と実務で生じる論点について解説します。

当コラムのポイント

  • 遮断措置とは、自社のみで修更正を完結させる仕組み。
  • 全体再計算に該当するケースは多くない。
  • 遮断のさせ方は3つのパターンに分かれる。
  • 修更正の情報は親法人が一括管理する必要がある。
  • 修更正で通算税効果額の見直しが必要な場合もある。

前回の記事 : 第2回 全体再計算に該当するケースって多いの?

 第2回コラムで解説したとおり、実務上、基本的には遮断措置が適用されると考えればよいが、実際に各計算項目に遮断措置が適用される場合、どのような計算方法になるだろうか。第3回はその点について解説したい。
 まず、グループ通算制度の遮断措置について、計算項目ごとに遮断のさせ方は次のように整理できる。

 上記を分類すると、次の3つのタイプに分類できる(外国税額控除は[Aタイプ]と[Cタイプ]の混合。試験研究費の税額控除は、[Bタイプ]と[Cタイプ]の混合)。

  • [Aタイプ]修更正事由が生じる通算法人でも当初申告固定措置が適用されるタイプ
  • [Bタイプ]修更正事由が生じる通算法人では独自の再計算を行うタイプ
  • [Cタイプ]修更正事由が生じる通算法人及び他の通算法人で進行事業年度において誤り分を調整するタイプ

 どのタイプでも、他の通算法人では、当初申告固定措置が適用され、修更正をしなくてよい。
 ただし、外国税額控除又は試験研究費の税額控除については、他の通算法人では過去適用事業年度において当初申告固定措置が適用されるが、結局のところ、進行事業年度においてすべての通算法人で全体再計算を行うことから、正確には遮断されているとはいえない。

 各計算項目の遮断措置の計算例は次のとおりとなる。

 試験研究費の税額控除について、取戻し超過部分がある場合の税額控除の計算が難しいと感じたかもしれないが、簡単に言うと、通算グループ全体で正しい税額控除可能額は50、当初申告の税額控除可能額は75だから、25だけ追徴されておけばよいところ、各法人でバラバラに遮断措置が適用されたことによりA社25、B社12の合計37も追徴されているので、12を返してもらうぞ、ということになる。なお、進行事業年度にそもそも法人税額が発生していない場合は他の税額控除と同様に控除を受けることはできない(繰越制度もない)。

 なお、遮断措置の取扱いは複雑で難解であるため、まずは本コラムで紹介する計算例を理解することから始めることをお勧めするが、さらに詳細な取扱いと計算例を知りたい場合は、国税庁「グループ通算制度に関するQ&A(令和4年7月改訂)」の関連する問を参照するとよいだろう
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/index.htm)。

 最後に、今回、グループ通算制度の遮断措置の計算について、難しいなと感じたかもしれない。ただ、実務では、TKCグループ通算申告システム(e-TAXグループ通算)に修更正事由を入力すると、全体再計算の判定から、遮断措置の計算から、遮断措置の別表作成まで、何から何まで自動で行ってくれるので、理屈(プロセス)が気にならない方はほとんどその難しさを感じることはないだろう。

 次回は、グループ通算制度の修更正と遮断措置に関する実務上気になることについて書いてみたい。

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