震災時の申告・納税延長特例と「企業版ふるさと納税」の活用

第1回 災害による申告・納付の延長特例について

更新日 2024.02.08

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税理士 杉山 直

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員

税理士 杉山 直

この度の地震の被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げます。国税・地方税の災害に伴う申告・納期限延長制度の概要を解説いたします。また、活用が期待される企業版ふるさと納税についても解説いたします。

当コラムのポイント

  • 石川県・富山県に納税地のある個人及び法人については申請なしに申告・納付期限が延長されます。
  • その他の地域であっても申告・納付等ができない場合は申請により期限延長ができます。
  • 消費税関連の特例措置が設けられています。
  • 企業版ふるさと納税の概要を解説します。
目次

 この度の2024年(令和6年)1月1日に発生しました「令和6年能登半島地震」により被害に遭われた皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。皆様の安全と被災地の一日も早い復興、そして、被災された皆様の生活が1日も早く平穏に復することをお祈り申し上げます。
 本コラムでは、災害時における申告・納税期限の延長について解説をいたします。

1.地域指定による申告、申請、納付等の期限の延長

(1) 国税庁による指定

 国税庁は令和6年1月12日、「国税庁告示第1号」で富山県、石川県を指定地域として、令和6年1月1日以降に期限が到来する申告、申請、納付等について別途国税庁告示で定める期日まで延長する旨を発表しています。

  • ①対象となる納税者
    石川県及び富山県に納税地のある個人及び法人
  • ②延長される期限
    令和6年1月1日以降に到来する国税の申告・納付等の期限が、すべての税目について自動的に延長されます。延長期限については、今後の状況に応じて別途定められます。
(2) 手続きについて

 国税庁の指定による期限の延長については、申請は不要とされています。

(3) 地方税の取り扱い

 地方税(県民税、市民税)についても同様の期限延長措置が取られています(石川県告示第5の2号など)。納税地の管轄自治体のホームページで確認ができます。

2.申請に基づく申告、申請、納付等の期限の延長(個別指定)

 石川県・富山県以外に納税地がある方であっても、この度の地震により被災され、申告・納付等をすることができない場合には、所轄の税務署長に対して期限延長の申請をすることにより、申告・納付等の期限の延長を受けることができます(国税通則法11条、国税通則法施行令3条3,4項)。

(1) 必要となる手続

 所轄税務署長に期限延長の申請を行います。承認を受けることにより、その理由のやんだ日から2か月以内の範囲で申告等の期限の延長を受けられます。

(2) 申請期限

 延長申請の手続きは、期限が経過した後でも行うことができます。また利子税や延滞税はかかりません。

3.納税の猶予

 災害による損害等で一時的に納税が困難となった場合は、所轄税務署長に申請し、承認を受けることにより、納税の猶予が受けられます。具体的な取り扱いは国税庁ホームページ「災害を受けたときの納税の猶予」をご参照ください。

4.消費税関連の措置

 被害を受けた事業者向けに消費税の特例等が国税庁から公表されています。

(1) インボイス保存要件の緩和

 被災により帳簿書類を焼失した場合など買手がインボイスを保存できない場合であっても、仕入税額控除が認められます。また、売手が被災したことでインボイスの交付ができない場合も、買手において仕入税額控除が可能とされています。

(2) 届出関連の特例

 適格請求書発行事業者を選択した事業者が、被災により事業の継続が困難となり、適格請求書発行事業者を取りやめるケースも生じるかと思います。この場合、指定日までに「適格請求書発行事業者の登録の取り消しを求める旨の届出書」を提出することで、提出日の翌日から適格請求書発行事業者の登録を取り消すことができます。
 そのほか、課税事業者の選択、簡易課税の選択に関する届出についても特例があります。詳しくは以下、国税庁のリーフレット「令和6年能登半島地震により被害を受けた事業者の方へ 消費税の届出等に関する特例等について」をご参照ください。

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プロフィール

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 杉山 直

税理士 杉山 直(すぎやま なおし)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
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杉山直税理士事務所

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