TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2010.11.22

連結納税制度への対応のポイント

第2回 連結納税制度の有利・不利判定の注意点とシステム化の検討

税理士・公認会計士 中野伸也 TKC全国会中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
税理士・公認会計士 中野伸也
連結納税制度適用の有利・不利判定や、連結納税の承認の申請書の書き方から、連結納税制度適用後の組織再編、子法人のフォローアップ、また、電子申告の実践、タックスプランニングの実行にいたるまで、連結納税制度への対応ポイントを解説します。

第2回は、「連結納税制度の有利・不利判定についてとシステム選定のポイント」です。

1.連結納税制度の有利・不利判定について

皆さまもご存知のとおり、平成22年度の法人税法改正により、連結納税制度の大幅な改正とグループ法人税制の創設が行われました。グループ法人税制は強制的に適用される制度であることに対して、連結納税制度は選択適用が可能な制度です。

そのため、グループ子会社を持つ親会社の経理部門や経営企画部門では、連結納税制度とグループ法人税制を比較し、自社グループにとってどちらの制度にメリットがあるのか、様々な角度から分析し、判断する必要が出てきました。

なお、平成23年4月期から、連結納税制度の適用を検討している3月決算企業における連結納税申請のタイムリミットは、平成22年12月末日です。ただし、連結納税を申請する場合には、社内経営層の意思決定や申請書類の作成・提出作業日数を確保する必要があり、実際には、遅くとも11月末日までには、連結納税制度の有利・不利判定を完了しなければなりません。

2.連結納税制度の有利・不利判定の流れ

連結納税制度の有利・不利判定については、以下の流れで実施しましょう。連結納税を適用する効果を把握する事はもちろん、連結納税を適用しない理由を明確にすることも非常に重要です。なぜなら、経営層や株主から連結納税を適用しない理由について質問された場合に、税務担当者として即座に答えなければならないからです。

(1) 定量的分析
  1. 税金コスト:連結納税を適用した場合に税金負担がいくら減るのか?増えるのか?
  2. 必要コスト:連結納税を適用した場合に必要となる経費はどの程度必要か?
(2) 定性的分析
  1. 実務工数:連結納税を採用した場合に増加する業務量に対応できるか?
  2. 決算日程:連結納税業務を45日開示内で処理できるか?

3.具体的ポイント

(1) 税金コスト

定量的分析における税金コストの増減に関する分析手法については、前回の畑中税理士のコラムをご参照下さい。

ここでは、連結納税制度の有利・不利を判定する上で、重要となる必要コスト並びに定性的分析について触れています。

(2) 必要コスト

連結納税を適用することで税金コストが下がるとの試算結果が出た場合には、続いて、連結納税業務に対する必要経費を算出しなければなりません。ただし、企業規模や現状の経理部門の体制によって大きく異なります。

一般的には、自社で連結納税業務を内製化するか、税理士法人等へ外部委託するかで大きく2極化されています。それぞれのケースで一般的に必要となるコストを把握してみましょう。

  1. 内製化する場合の必要経費
    • 税務担当者の人件費(追加人件費、残業代etc)
    • 連結納税システム導入費用(システム、導入作業、インフラ構築etc)
    • 子法人担当者への教育費用(出張旅費etc)
    • その他(外部コンサルタント費用etc)
  2. 税理士法人等へ外部委託する場合の必要経費
    • 連結確定申告書作成代行費用
    • 修正申告や四半期決算時の税金・税効果計算代行費用
    • 税務調査への対応費用

一般的には、単体納税時代と同様の対応方法を選択する企業が大多数です。

ここまでの定量的分析で、連結納税を適用すると、どの程度のメリットがあるのかを分析することができます。その結果、連結納税を適用することが有利と判定できた場合は、次の定性的ステップに進む必要があります。

(3) 実務工数

連結納税を適用するにあたり、必要となる実務工数を把握します。重要なポイントは、本稼働のタイミングです。多くの税務担当者は、連結納税業務の本稼働は、連結納税事業年度の確定申告が最初の本稼働であると誤解していますが、実は、単体納税事業年度の最終確定決算時の税効果会計が最初の本稼働になります。翌事業年度から連結納税となる場合の税効果計算は、連結納税を前提とした計算が必要だからです。

つまり、連結納税の承認の申請を12月末に提出したとして、その3ヶ月後までには、連結納税における税効果計算の体制を構築する必要があるということです。その間に、連結納税業務構築をするだけの期間や実務量を確保できるかについて検討しましょう。

一般的には、以下のスケジュールで連結納税業務体制構築を進める企業が多いです。

  1. 決算対応:連結納税申請時~単体事業年度末
    (3月決算例:22年12月~23年3月末)
  2. 申告対応:単体申告完了時~中間申告前
    (3月決算例:23年7月~23年9月末)

※一般的な連結納税システムでは、連結納税事業年度以降の計算処理にしか対応していませんが、TKCの税効果会計システム(eTaxEffect)では、単体最終年度の税効果計算にもしっかり対応しているので、このようなシステムを利用する場合には、十分に本稼働業務に間に合うことができます。

4.決算日程

連結納税を適用した場合、今までの業務に追加して、子法人からの連結納税計算に必要なデータ収集、連結納税・税効果会計の全体計算、そして計算結果の各社への配賦というプロセスが加わります。

つまり、個別財務諸表を確定するための作業量が増加することにより、決算開示日程を圧迫する可能性があります。現在の、決算早期化の流れにおいて、決算開示日程を遅らせることなく、連結納税を適用させるためには、連結決算まで含めた全体の決算業務を見直す必要も出てきます。

連結納税適用後の対応については、監査法人や連結決算担当者とも協議が必要です。

(1) 決算時における業務体制構築検討のポイント
  1. 連結納税の対象子法人は、すべて100%子法人とするか?また、連結対象子会社に限定するか?
  2. 連結決算全体の開示に向けた全体決算スケジュール内に連結納税業務日程や実務をどう盛り込むか?
  3. 四半期決算について、原則法・簡便法のどちらを採用するか?

以上のことから、連結納税業務にかかる定性面での分析や対応方法についての検討が完了した時点で、経理部門内での連結納税適用に関する協議を実施し、取締役会で最終決議した後に、連結納税適用を意思決定する必要があります。

(2) システム選定のポイント

続いて、システム選定のポイントです。

連結納税をこれから適用する企業がほとんどですので、何を軸に連結納税システムを検討すべきか悩まれる方が多くいらっしゃると思います。我々は、連結納税システムの導入を通じて、最も多くの連結納税適用企業の導入支援を実施させていただきました。また、一度導入したシステムを捨て、新たにTKCのシステムへ移行する作業支援も数多く経験しました。その経験を通じて感じたシステム選定のポイントについてご紹介します。

後々、システムを切り替える場合、修正申告に備え、過年度の申告データを移行する膨大な作業が発生するため、初めてのシステム導入に際しては、中長期的視点かつ慎重にシステムを選定してください。

1)連結納税システム選定のポイント

a.適法性

  • 継続的に適法性を担保するシステム開発体制や実績があるか?
  • 連結納税適用前の単体最終年度の税効果計算に対応できるか?
  • 子法人への統制が効いたシステムであるか?(子会社側の自由度はリスク増)
  • 地方税の税率は、最新情報にメンテナンスされているか?
  • データセンター利用の場合は、データ保全に関する監査証明(18号報告)を取得し、ユーザーで受取が可能か?

b.効率性

  • 連結納税の計算スピードは早いか?(1社の税務数値の変更は全体の再計算が必要です。再計算に要する時間は全体のスケジュールに大きく影響します。)
  • 決算効率化を目的としたシステムを保持しているか?(仕訳や注記が作成できるか)
  • インフラ投資やサーバー管理業務が不要か?
  • 将来の組織再編(加入離脱)時にも対応可能なソフトであるか?
  • 電子申告(法人税・地方税)に対応しているか?

c.サポート

  • 専門家が専属でサポートし、確実に連結納税業務構築を実現できるか?
  • 子法人への教育支援やサポートを実施してもらえるか?

以上がシステム選定のポイントになります。

適法性と効率性は、トレードオフの関係であると感じる方も多いと思いますが、実は、適法性を高めることで、グループ全体の効率性は高まるという相関関係にあります。多くの、連結納税適用企業においては、グループ企業へのタックスマネジメントを徹底することで、決算日程を遅らせることなく、単体納税時代以上に正確な税金計算を実施できています。皆様も是非、連結納税適用を機会にタックスマネジメント体制を構築しましょう!

筆者紹介(中野伸也)

税理士・公認会計士 中野伸也(なかの しんや)

TKC全国会中堅・大企業支援研究会 副代表幹事
TKC連結納税システム推進プロジェクト会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員長

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中野会計事務所

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