2019年10月号Vol.116
【トレンドビュー/寄稿】事務合理化と利便性向上へ、新しくなったeLTAX
地方税共同機構 参与 江尻 芳雄
eLTAXは、多数の納税者とすべての地方公共団体を接続する全国唯一の地方税の総合窓口です。これまで、税務事務の合理化と納税者の利便の向上を目的として段階的に税目追加やサービス拡大を続け、このたび3回目のシステム更改を実施しました。
本稿では、今後予定される追加開発を含め、地方の税務事務に直接影響すると思われる機能追加等についてご紹介します。
運用時間の拡大
eLTAXの運用時間は、これまでも徐々に拡大してきたところです。
現在、通常期の運用時間は平日8時30分~24時ですが、このたび毎月末の土日の運用を追加しました。また、繁忙期となる給与支払報告書等の提出・確定申告期(1月15日~3月15日)には、土日を含め毎日運用するとともに、利用者の要望が多かった24時間運用についても1月15日~31日の期間で実施します。さらに、地方公共団体が利用する審査システムについても、毎月末の土日および繁忙期の土日を運用することとしました(図1)。
LGWAN経由の電子申告
地方公共団体は地方税の課税主体である一方で、個人住民税等の特別徴収義務者として申告義務があります。また、給与支払報告書は2021年から電子的提出義務の基準が引き下げられ、大部分の地方公共団体が電子的提出の義務化対象となります。
地方公共団体が納税者の立場で電子申告を行う場合、従来は一般の利用者と同様にインターネットを介していました。しかし、自治体情報システム強靭化への対応により、業務用端末はインターネットから分離されていることから、LGWAN経由で電子申告できる機能を追加しました。
ポータルセンタ受付チェック強化
17年1月に発生したシステム障害等を踏まえ、ポータルセンタで受け付ける各種データの受付1次チェックを強化。また、不正データは即時通知の段階で利用者に返却するとともに、受付2次チェックでエラーとなった場合は審査システムに配信しない仕組みとしました。これにより不正確な申告書等の作成・受理は防げますが、今まで受け付けられていた申告書等が受理されなくなるため、利用者からの問い合わせが増加する可能性があります。
法人二税課税標準額通知の電子化
団体間において書面で送付されている法人二税課税標準額通知書を、電子的に回送できる仕組みを提供しました。
複数の都道府県に事業所(本店・支店)がある法人(分割法人)について、〈主たる事業所(本店)を所管する都道府県→関係都道府県〉〈都道府県→関係市町村〉へと、課税に必要な情報を電子的に通知できるようになります。これにより、地方公共団体では事務負担軽減や送付コストを削減できます。
ふるさと納税への対応
18年度から寄附金税額控除の申告特例通知は電子的送付が原則とされ、初年度は便宜的に国税連携システムの団体間回送機能を用いて伝送しました。これについて、電子申告等システムを利用して送付するシステムを開発。データフォーマットや必須項目などチェック機能を強化するとともに、税務職員でなくても対応できるようユーザーの権限制御等を行えるようにしました。
法人税関係書類の国税との連携
大法人の電子申告義務化に伴い、法人税申告をe-Taxにより行い、財務諸表(別表16等を含む)を電子データで提出している場合、国税当局と地方公共団体が情報連携することにより、地方税の電子申告での財務諸表の添付が不要とされました。
このため、来年3月に国税申告連携サーバによる情報連携を開始する予定です(図2)。法人担当や償却資産担当の方の活用を期待しています。また、法人税情報(課税標準額通知書や法人税額等通知書に係る法人名簿情報と申告決議情報)も同9月に連携される予定です。
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このほかにも、eLTAXでは納税者や地方公共団体の利便性向上のため多くの改善を行っています。
特に共通納税システムの稼働を含む今回の更改は歴史的な転換点となるものでした。多様化する社会経済の中、eLTAXには一層の役割拡大が求められており、その期待に応えられるよう今後も税務事務の合理化と納税者の利便性の向上に努めてまいります。