令和7年度(令和8年3月期)税務申告の直前対策

第2回(最終回) 令和7年度(令和8年3月期)税務申告の直前対策(その2)

更新日 2026.03.09

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 吉田 公彦

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TKC企業グループ税務システム普及部会会員

税理士 吉田 公彦

令和8年3月決算にあたり、申告上注意すべき項目について改正事項を中心に解説します。

当コラムのポイント

  • 令和7年度税制改正ポイントの整理
  • 令和7年度以前の改正点で本年度申告上、留意すべき税制
  • 実務上の注意点
目次

5.新リース会計基準への対応

 リース会計基準の改正は実務上の重要論点ですが、令和8年3月期申告(令和7年4月1日開始事業年度)では、早期適用企業を除き税務申告への直接影響は限定的と考えられます。一方、早期適用企業では会計処理の変更に伴い、申告調整や税効果見積りの論点が増えるため、令和7年度税制改正で整理された税務対応を押さえておく必要があります。以下、税務上の取扱いの要点を整理します。
 さらに詳しい内容を確認したい方は、こちらの特集ページが参考になります。

(1) リース取引に係る借り手の取扱い
① オペレーティングリース区分と損金算入(支払リース料)の維持
会計上は、借り手の区分(ファイナンスリース/オペレーティングリース)がなくなる一方、税務上は従来どおり区分を維持します。税務上は、オペレーティングリースの支払リース料は、債務確定部分の金額をその事業年度で損金算入するため、会計と税務に差異が生じる場合は申告調整が必要です。
② 所有権移転外ファイナンスリースの償却
新会計基準に合わせ、所有権移転外ファイナンスリースでは、残価保証の取り決めがあっても、税務上の償却(リース期間定額法)は備忘価額(1円)に達するまで償却できるものとされました。(法令48の2①六、法令61①二イ)
(2) リース取引に係る貸し手の取扱い

 新会計基準でリース料受取時の延払基準が廃止されることに合わせ、法人税法上の「リース譲渡に係る収益及び費用の帰属事業年度の特例」(旧法法63)は廃止されます。これにより貸し手の処理については基本的に会計と税務で一致することになります。令和9年4月1日以後開始事業年度から適用されますが、本事業年度(令和7年4月1日開始事業年度)において延払基準の適用をやめた場合には、繰延リース利益額を5年間で均等に収益計上する経過措置が設けられています。(令和7年改正法附則17)

6.フリーレント期間に係る法人税の取扱いの新設

 オフィスビル等の賃貸借でフリーレント期間(無償期間)が定められた契約について、これまで税務上の処理については明確に整理されていませんでした。収益認識基準および新リース会計基準の導入により、無償期間に係る会計処理が整理・明確化されたことに伴い、税法側においてもその対応の一環として、借り手の税務上の取扱いが明らかにされています。この取扱いは本年度申告から適用されます。(法基通12の5-3-2)
 以下、法人税の取扱いの概要を示しますが、本論点には、会計・法人税・消費税それぞれの観点から留意すべき事項があります。

(1) 賃料総額を賃借期間で按分

 フリーレント期間が定められた契約について、借り手は損金経理を要件に「賃料総額を賃借期間にわたって均等に支払われるものとした金額」が各事業年度の損金の額に算入されることとされました。

(2) 課税上弊害がある場合の取り扱い

 以下のようなケースでは課税上弊害があるとされ、上記(1) の処理は認められません。

  • フリーレント期間の定めがないものとした場合の賃料と、実際の契約賃料総額との差額が、当該契約賃料総額のおおむね2割を超える場合
    つまり、フリーレント期間があることで賃料が大きく〔2割以上〕あがるケースです。
  • フリーレント期間の属する事業年度のうち、当該事業年度の賃借期間のおおむね5割を超える期間が賃料の支払いがない又は通常に比して少額であると見込まれる場合(無償等賃借期間が4月を超える場合に限る)。
    すなわち、事業年度のおおむね半分以上がフリーレント期間となるようなケースです。

7.その他の税制

 ここまで本年度申告において影響が見込まれる主要な改正点・実務論点を中心に整理してきました。もっとも、実務上は個々の企業の状況によっては無視できないものの、適用対象が限定されるものや、制度自体に大きな改正はないものの誤りやすいものも存在します。以下では、そうした論点のうち、本年度申告にあたって最低限押さえておきたい事項について簡潔にまとめます。

(1) 賃上げ促進税制

 本制度自体に前年度申告からの大きな変更はありません。一方で、申告実務では、集計範囲や手続面の論点が多い(=ミスが起きやすい)制度でもあります。
 細かい論点については、経産省のガイドブックやFAQにて相当分量が整備されていますので目を通して頂くことをお勧めします。

経済産業省:大企業向け「賃上げ促進税制」よくある御質問 Q&A 集

 なお令和8年度税制改正大綱では、大企業向けの賃上げ促進税制について「令和8年3月31日をもって廃止」と整理されています。大綱通りに改正法が成立すれば3月決算法人は現行制度を適用できる実質的に最後の年度になります。

(2) 外国子会社合算税制における合算課税時期の見直し

 外国子会社合算税制の事務負担を軽減するため、合算課税の時期について「外国関係会社の事業年度終了日翌日から2か月を経過する日を含む親会社の事業年度」から「外国関係会社の事業年度終了日翌日から4か月を経過する日を含む親会社の事業年度」へと見直されました。(措法66の6①、措規22の11㊽)。これにより、特に親会社3月決算、外国子会社12月決算の組み合わせにおいては、合算時期が後ろ倒しになり時間的な余裕が生じます。

(3) イノベーションボックス税制

 令和6年度改正で創設されたイノベーションボックス税制が、本年度申告(令和7年4月1日以後開始事業年度)から適用が可能です。令和7年4月1日以後に取得・製作した特許権等(AI関連プログラム著作物を含む)に係る「ライセンス貸付/譲渡」所得を、自己創出比率で按分したうえで最大30%を所得控除できる点が特徴です。(措法59の3①)
 一方で、関連者取引(譲渡は外国法人取引も)など除外要件が多く、適用可否は契約形態・取引相手・対象IP(知的財産)の取得時期で大きく左右されます。思い当たる取引がある場合は、申告前に慌てないよう、期中のうちからIP台帳上の各知的財産と研究開発費の紐付け、証憑管理の棚卸しまで進めておくことをお勧めします。

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