令和7年度(令和8年3月期)税務申告の直前対策

第1回 令和7年度(令和8年3月期)税務申告の直前対策(その1)

更新日 2026.03.02

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 吉田 公彦

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員

税理士 吉田 公彦

令和8年3月決算にあたり、申告上注意すべき項目について改正事項を中心に解説します。

当コラムのポイント

  • 令和7年度税制改正ポイントの整理
  • 令和7年度以前の改正点で本年度申告上、留意すべき税制
  • 実務上の注意点
目次

1.はじめに

 令和7年度は物価上昇が企業活動の前提となる一方で、賃上げ・投資を軸に「成長型経済」への移行を確かなものにできるかが問われる年となりました。国際情勢の緊張やサプライチェーンの再構築が続く中、防衛力強化の財源確保、企業の投資行動を後押しする制度整備など、政策課題が税制にも色濃く反映されています。令和8年3月期決算を迎えるにあたり、税務担当者としては、改正の背景を踏まえつつ、実務に直結する論点を押さえたうえで、申告作業に落とし込むことが重要です。
 本コラムでは、令和7年度税制改正を中心に、決算・申告直前に見落としがちな改正点や留意事項を取り上げ、申告準備に資する情報を整理します。
 なお、本稿は中堅・大企業向けの税制を中心に解説するため、中小企業特有の税制は基本的には取り扱いません。また、事前の計画提出や届出等が必要で、直前対策の趣旨にそぐわない事項は割愛しています。あらかじめご了承ください。

2.適用税率

 まず、本年度申告において適用される各税目の税率について整理します。
 大企業について基本的に変更はありませんが、中小企業者等に関しては法人税の軽減税率に見直しが行われております。

(1) 法人税・地方法人税

 本事業年度申告に適用される法人税率(普通法人の本則)は23.2%で前年から変更はありません。ただし、大企業の本則税率には直接影響しないものの、中小法人等の軽減税率(年800万円以下部分)について、単年所得10億円超の場合は17%(改正前:15%)とする見直しが行われております。(措法42の3の2①②)
 なお、地方法人税率に関しては、課税標準法人税額の10.3%で変更はありません。

(2) 地方税

 いずれの税目においても前年度からの変更はありませんが、超過税率を採用している自治体もあるため、実務上は各自治体が公表する税率をもって最終確認を行う必要があります。(地法51、地法314の4、地法72の24の7)
 また、外形標準課税については、過年度改正により「所得割の年800万円以下部分の軽減」が廃止されている点について、引き続き留意が必要です。(地法72の24の7①)

(3) 防衛特別法人税の新設による影響

 防衛特別法人税は、令和8年4月1日以後開始事業年度から課税されます。(防確法11)
 そのため、本事業年度申告の税額には影響しません。
 一方、税効果会計においては、期末時点で存在する一時差異のうち、解消時期が令和9年3月期以降(=防衛特別法人税の課税開始後)にかかる部分について、当該税率を将来税率にとして織り込む必要があります。

3.研究開発税制

 研究開発税制について、令和8年3月期においては、基本的に前年から大きな変更はありませんが、対象となる試験研究費の範囲について一部見直しが行われています。「対象から外れる費用」がありそうな企業は、早期に(できれば業務プロセスの上流段階で)区分できる仕組みを整備しておくことが重要です。

(1) 見直しのポイント

 海外拠点を有する企業では「控除対象となる試験研究費の範囲」に注意が必要です。令和6年度改正により、本年度申告から内国法人の「国外事業所等」を通じて行う事業に係る費用は、研究開発税制の対象となる試験研究費の額から除外されることとなりました。(措法42条の4⑲一)。
 このため、海外拠点で発生した研究開発費については、会計上は研究開発費として計上されていても、税額控除計算上は対象外となるケースが生じます。

(2) 実務上の注意点

 海外PE(租税条約上の恒久的施設拠点)を持つ企業は、研究開発コストについて会計上の区分のみでは対応できない場合があり、本税制用の区分が必要です。後工程での集計負担を軽減するためにも、可能な限り業務プロセスの上流段階で区分を行うことが有効です。
 また、研究開発税制による税額控除額は、当然ながら他の税額控除の控除余地にも影響を及ぼします。年度末に向けた早いうちにシミュレーションを行い、影響額を算出することを推奨します。

4.外形標準課税制度の対象拡充

 外形標準課税(法人事業税のうち「付加価値割・資本割」)は、従来「事業年度終了日の資本金が1億円超の法人」が主な対象でした。しかし、近年、形式的な資本金操作(減資)やグループ再編により、実態として大企業であるにもかかわらず対象外となるケースが増えたことを受け、対象判定ルールが拡充されています。該当の可能性がある企業においては、適用開始年度も含め、あらかじめ影響の有無を確認しておくことが重要です。

(1) 影響を受ける法人とその時期
① 減資への対応(令和7年4月1日以後開始事業年度から)
前期に外形標準課税の対象であった法人が、当期に減資を行い、期末資本金が1億円以下となった場合であっても、期末の「払込資本(資本金+資本剰余金)」が10億円超であれば、引き続き外形標準課税の対象となる取扱いが導入されています。(地法附則8の3の3)
② 100%子法人等への対応(令和8年4月1日以後開始事業年度から)
特定法人(払込資本50億円超等)の100%子法人等については、資本金が1億円以下であっても、払込資本(資本金+資本剰余金)が2億円超などの要件を満たす場合、外形標準課税の対象に加えられます。本事業年度申告(令和8年3月期)については適用されません。(地法72の2①一ロ)
(2) 令和8年3月期の要注意ポイント
① 当期から対象となる企業:税額計算プロセスの再点検
「減資への対応」により、当期から外形標準課税の対象となり得る場合は、付加価値割・資本割の集計業務を早めに再点検するとともに、計算根拠(証跡)が説明可能な形で残るよう整備しておく必要があります。
② 翌期以降に対象となり得る企業:税効果会計への反映
当期に直接影響しないものの、翌期以降に「100%子法人等への対応」により外形標準課税の対象となる見込みがある場合、将来の法定実効税率の見積り(外形標準課税を織り込む前提)を及ぼす可能性があります。 
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