更新日 2025.02.25
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
税理士 吉田 公彦
令和7年3月決算にあたり、申告上注意すべき項目について改正事項を中心に解説します。
当コラムのポイント
- 令和6年度税制改正ポイントの整理
- 令和6年度以前の改正点で本年度申告上、留意すべき税制
- 実務上の注意点
- 目次
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前回の記事 : 第1回 令和6年度(令和7年3月期)税務申告の直前対策(その1)
5.交際費課税の見直し
(1) 5,000円基準から10,000円基準へ
令和6年度税制改正により、交際費等の範囲から除外される飲食費の基準が「5,000円以下」から「10,000円以下」に引き上げられました。(措令37の5①)
(2) 判定に関する注意事項
この改正は令和6年4月1日以降に支出の事実のあった飲食費に適用されますが、この「支出」については「飲食等の行為があったとき」とされています。(措法通達61の4(1)-24)
クレジットカード払いのケースなどでは適用時期の判定にご注意ください。
また、税抜経理方式を適用している場合には、10,000円以下の判定は税抜金額で行いますが、支払先がインボイス発行事業者か否かで金額が異なってきます。伝票上の税区分の誤りがないか、判定金額が微妙な取引に関してはインボイスの内容を再確認した方がよいでしょう。
具体的な実務上の留意点など、本コラムのバックナンバーをご確認ください。
6.拡大する企業版ふるさと納税制度
令和6年初めに発生した石川県能登半島地震を契機に、多くの企業が被災地支援のため寄附を行い、企業版ふるさと納税制度への関心が高まっています。寄附を行う際に税制の優遇措置が受けられる(措法42の12の2①)ほか、寄附元企業名が地方公共団体のホームページに掲載されることが多く、CSR活動のアピールにもつながります。令和6年11月時点で対象となる地方自治体は46道府県、1,623市町村に拡大しています。
なお、本税制に前年度からの変更はありません。具体的な制度内容や手続きについては本コラムのバックナンバーを参考にしてください。
7.暗号資産の評価方法の見直し
法人が所有する市場暗号資産(一定の自己発行暗号資産を除く)は、原則として期末時価評価が求められていましたが、令和6年度の改正により自己発行以外の暗号資産でも譲渡制限その他の条件が付されている一定のもの(=特定譲渡制限付市場暗号資産)については、評価方法として原価法を選択することができるようになりました。(法法61②、法令118の7)
なお、評価方法は、譲渡制限付市場暗号資産の種類ごとに選定し、その取得日の属する事業年度の確定申告期限までに、所定の様式により納税地の所轄税務署長に届け出る必要があります。(法令118の6)評価方法を選定しなかった場合には「原価法」により計算した金額がその暗号資産の期末評価額とされます。
8.その他の税制の動向
従来から適用のあるその他の税制について本年度申告への影響を簡単にまとめます。令和6年度税制改正の対象とされていても、適用年度の関係から本年度申告へ影響しないものもありますのでご注意ください。
(1) 研究開発税制
令和6年度税制改正により税額控除割合や試験研究費の範囲等に見直しがありましたが、改正内容は令和7年4月1日以降の適用であるため、本年度申告では従来の規定に基づいて処理を行う必要があります。
(2) 外形標準課税
令和6年度税制改正により「減資への対応」「大法人の100%子法人等組織再編への対応」が行われ、外形標準課税の対象法人が拡充されることになりました。適用開始は令和7年4月1日以後開始の事業年度(「減資への対応」の場合)となるため、今年度の申告には影響しません。
ただし、この改正により新たに外形標準課税適用法人になると見込まれる法人については、法人事業税の所得割の税率が変わるため税効果会計の法定実効税率が影響を受けることになります。
また、「減資への対応」については施行日前の駆け込み的な減資に対応するための経過措置が設けられており、現時点から減資では外形標準課税の対象となってしまうケースもありますのでご注意ください。(令和6年度改正地法附則7②)
(3) その他産業競争力強化法に基づく事業適応に対する支援税制
産業競争力強化法における事業適応に対する各種税制措置について、前年からの改正内容を簡単にまとめます。これらの税制は事業適応計画の作成、所管大臣への提出、認定が前提となっていることから、現時点からの対策は難しい面がありますが、参考までに制度についてはこちらをご確認下さい。
なお、すでに認定を受けたものに関しては従前どおりの適用となります。
了
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